27日に韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が首脳会談を行い、北朝鮮の非核化について真剣に議論を行ったことは、北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けた動きであり、歓迎します。会談実現に至る韓国政府の努力を称賛します。南北、米朝首脳会談を通じて北朝鮮が具体的な行動を取ることを強く期待します。

昨秋の衆院選で、北朝鮮に対して圧力を最大限まで高めていくと申し上げました。「圧力だけかけてもしょうがないじゃないか。まず話し合え」との声もありましたが、まず国際社会がしっかりと連携して「テーブル上にあらゆる選択肢がある」という米国の姿勢を支持する中で、北朝鮮から話し合いを求めてくる状況を作らねばならないと私は主張しました。

 洋上で積み荷を移し替える「瀬取り」にも「抜け道は許さない」という姿勢で国際社会と協調し、日本も役割を果たしてきた。その結果として平昌五輪を契機に北朝鮮が話し合いを求めてきた。

 まさに日本が国際社会をリードしてきた成果ではないですか。決して日本が蚊帳の外に置かれていることはありません。

 南北首脳が署名した「板門店宣言」には、終戦を宣言し、現在の休戦協定を平和協定に転換するため、南北と米国の3者、または南北米中の4者会談の開催推進が盛り込まれましたが、2007年の南北首脳会談での声明にもほぼ同じ文言がある。過去の首脳会談で出された文書や、会談内容との違いをよく分析する必要があります。大切なことは、今スタートしたばかりだということです。


北朝鮮に対して日本は、拉致や核・ミサイルの問題を解決し、過去の問題を清算し、日朝関係を正常化していく方針に変わりはありません。こうした問題を解決することが、北朝鮮が国際社会に受け入れられ、発展していく上において決定的に重要な要素なのです。

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 先日訪米し、トランプ米大統領と2日間にわたり11時間以上、時をともにすることができました。いかに日米の絆が強固なものであるかを示せたのではないでしょうか。

 訪米直前に私は拉致被害者の横田めぐみさん(53)の父、滋さん(85)を見舞いました。滋さんの手を握って「米朝首脳会談でトランプ大統領が拉致問題の解決を強く要請するようしっかり話してきます」と約束しました。

 トランプ氏の別荘「マールアラーゴ」での私と妻、トランプ夫妻の夕食会でも、夫妻が拉致被害者家族に面会したときのことに話が及びました。夫妻は「13歳の少女を拉致された両親の悲しい気持ちは伝わってきた」と口をそろえ、メラニア夫人は「首相が情熱を持って取り組んでいることに感銘を受けた」と、トランプ氏は「必ず力になる」と言ってくれました。

 トランプ氏は共同記者会見でも「米朝首脳会談で拉致問題を提起し、被害者を連れて帰るためにできる限りのことをする。シンゾー、あなたに約束する」と述べてくれた。これが全米でライブ放送された。世界にコミットメントを示してもらった意義は大きいと思っています。

 トランプ氏は首脳会談で環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「良いものになるのであれば考える」と発言しました。選択肢から外さなかった。これは非常に重要な点です。

 それに日本が米国の雇用にいかに貢献しているかも理解してもらえたのではないでしょうか。首脳会談で茂木敏充経済再生担当相が「ボルトン大統領補佐官のお嬢さんも日本の自動車メーカーに勤めておられますよね」と切り出したので、私もすかさず「日本は雇用を作っているのです」と胸を張りました(笑い)。

 会談で「自由で公正かつ相互的な貿易取引のための日米協議」を開始させることで合意しました。両国がお互いに貿易や投資を増やしていく関係になっていくという共通認識に立ったということです。

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 昨年5月、憲法論議に一石を投じる思いで私の考え方について述べました。その結果、議論は相当活性化しました。自民党でも4項目に絞って議論は深まったし、懸案の9条についても「必ず成案を得る」という認識を共にしています。

 3月の自民党大会で演説した際、一番拍手が大きかったのは憲法について決意を述べたところではなかったでしょうか。国を守るため、国民を守るために、命を懸ける者について憲法に明記するのは安全保障の基本です。今を生きるわれわれの世代の責任を果たさねばなりません。われわれはさまざまな課題に常に直面しますが、憲法改正は自民党立党以来の課題です。困難があっても乗り切っていかねばなりません。


続きはWebで

産経新聞
2018.4.29 07:35
https://www.sankei.com/world/news/180429/wor1804290006-n1.html