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 巨大与党のおごりが、またあらわになった。

 日本維新の会を除く野党6党が欠席するなか、きのう衆参両院の予算委員会で集中審議が強行された。与党の質問は外交が大半で、安倍首相が先の日米首脳会談の成果をアピールするお手盛り色の強いやりとりばかりが目立った。

 森友・加計問題、防衛省・自衛隊による情報隠蔽(いんぺい)、財務事務次官のセクハラ疑惑……。行政に対する国民の信頼が失墜した今、国会にまず求められるのは、政府に真相をただし、責任の所在を明らかにすることではないか。

 にもかかわらず、加計学園の関係者との面会の事実を否定し続けている柳瀬唯夫・元首相秘書官の証人喚問はおろか、参考人招致も見送られ、一連の不祥事に関する質問はアリバイ程度にしか見えなかった。

 答える首相の側からも、この機会に説明責任を果たし、信頼回復につなげたいという真剣さは伝わってこなかった。

 「私の妻や長年の友人がかかわる話であれば、疑念の目を向けられるのはもっとも」「国会審議が政策論争以外に集中してしまう状況を招いたことは率直に反省」との弁はあったが、それ以上に踏み込んだ説明はなかった。「全容を解明し、うみを出し切る」というには程遠いと言わざるを得ない。

 衆院の審議では、野党との質疑に割り当てられた2時間ほどが、無言のまま過ぎた。いったい何のために予算委を開いたのか、首をひねらされる場面だった。野党の審議拒否を印象づけ、世論の批判の矛先を向けようという狙いなのか。

 与党は首相が今国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案を、きょうにも野党抜きで審議入りさせる方針だ。働く人すべてに関わるルールづくりで、各党の意見も割れている。丁寧な議論と幅広い合意形成こそが求められるのに、政権・与党の強引さは際立っている。

 「内閣不信任案が出されれば、衆院解散も選択肢だ」。自民党幹部からは、そんな発言まで飛び出した。よもや「森友・加計隠し」と言われた昨年の衆院選の再現を考えているわけではなかろうが、野党への牽制(けんせい)にしても無責任であろう。

 政権・与党はこのまま数の力で強引な国会運営を続けるつもりなのだろうか。国会で政策論争を進めるためにも、疑惑・不祥事の徹底解明は不可欠だ。とりわけ首相には、言葉通り、「うみを出し切る」覚悟が求められる。