産経ニュース 2018.4.11 11:40
https://www.sankei.com/column/news/180411/clm1804110004-n1.html

対中優位の確保に腰上げた米国

 金正恩朝鮮労働党委員長が米朝会談に先立ち、急遽(きゅうきょ)北京を訪問し習近平国家主席と会談した。
中国側の発表によれば、北朝鮮は朝鮮半島の非核化に条件付きで賛成し、段階的に実現することで合意したとされる。

 この動きは、最近とみに強まりつつある米国の対中警戒心を意識したうえでの中国の演出のように感じられる。
中国が真の非核化に向けて北朝鮮にプレッシャーをかけるのか、はたまた現状維持を企図して北朝鮮を
かばうのかは、米国の決意と同盟国・日本や国際社会の結束次第ということだろう。

 21世紀、国際政治の主舞台はアジア、太平洋・インド洋地域となり、中国との間に勢力均衡を確立する
必要があるという認識が米国でも高まってきた。

 そこでまず米国は「核態勢見直し」の中で戦略核兵器を更新し、非戦略核兵器の新規開発と再配備を進めて
抑止態勢を強化するとともに、抑止が破れた場合の核使用を否定しない方針を明確にした。


(中略)


強いリーダーの下で結束せよ

 その際に大切なのは、国際社会の冷徹な現実を直視したうえでの大局観である。安倍晋三首相は、
早い段階からトランプ大統領との信頼関係を築き上げ、日米同盟を強化してきた。同時に志や価値観を同じくする
関係諸国のリーダーとの間に幅広い「横」の連携を構築すべく、積極的な外交を展開してきた。
「開かれたインド太平洋戦略」は海洋国家である日本にふさわしい壮大な戦略的イニシアチブであり、
「大局」的見地から日米同盟を補強するものだ。

 海に守られて平和は天与のものと感じてきた日本人は、元来内向きであるが、民族存亡の危機には
脅威に対して結束する。遠くは2度にわたる蒙古襲来、あるいは西欧列強によるアジア植民地化の波を受けた
幕末などがそうであった。近くは冷戦時の親ソ派の非武装中立化策動が好例で、その都度強いリーダーの下で
切り抜けてきた。現在の日本は往時に匹敵する危機に瀕(ひん)している。今後、北朝鮮や米中関係、
日中関係でさまざまな紆余(うよ)曲折があるだろう。その際に大切なのは大局観を持つリーダーの下での
結束だと思う。
(JR東海名誉会長 葛西敬之 かさいよしゆき)


(全文は記事元参照)