毎日新聞 2018年4月7日 地方版
https://mainichi.jp/articles/20180407/ddl/k23/070/137000c


 森友学園に関して、首相夫人も証人喚問すべきだ、という声をかなり聞く。必要だと思うが、
僕が一番疑問なのは、なぜ首相夫人は、そもそも記者会見すらしないのだろうという点だ。

 人前に出るのが苦手なら記者会見も大変だが、首相夫人はこれまでに何度もさまざまな講演会を行い、
これまでに何度もさまざまなインタビューを受けている。なのに、この問題だけは表に出てこない。
疑惑がないなら堂々と、開かれた形で説明すればいい。後ろめたいことがないなら、会見を開けない理由はゼロだ。
もうこの時点で、答えは出ているのではないだろうか。

 加計学園の理事長も、獣医学部新設の問題に対し、記者会見を開かなかった。あれだけ疑問が噴出し、
そして開校には税金も膨大に使われているのだから、教育に携わる学校法人の長として、社会にきちんと
説明する責任があったはず。ジャーナリストの伊藤詩織氏から、強姦(ごうかん)被害を受けたと訴えられた
山口敬之氏(本人は犯行を否定)も、ジャーナリストなのに記者会見を開いていない。それどころか、
伊藤氏から民事で訴えられた初回の裁判すら欠席している。3件に共通するのは、どうも「隠れている」イメージだ。

 財務省の文書改ざん問題を見ながら、防衛省の日報隠蔽(いんぺい)問題、厚生労働省の労働に関する
虚偽データ問題が頭にちらついた。もうこの国は、相当まずい状態にまで来てしまった。政権にとって
都合の悪い書類が、隠蔽や改ざんされる国。もう、政府発表のあらゆる社会データ、その数値も、
本当にそうなのか、政権が気に入りそうに改ざん・捏造(ねつぞう)されたものなのか、信用できなくなった。
これはあまりに典型的な独裁政権で、ものすごい。佐川氏の証人喚問の後、こともあろうに財務大臣が、
森友問題ばかりでTPPの記事が新聞に載っていなかったと堂々とうそをついてしまった。
この国はもう、事実も責任もどうでもよくなったらしい。事実より、安倍政権が気に入るかどうかが
重要な国になったらしい。政治的公平性を記した放送法4条まで、変えようとする動きがある。
もう来るところまで来た。

 安倍政権が何をしても、絶対に擁護する人たちがいる。しかしそんな人たちも、たとえば立憲民主党の
枝野氏の妻が森友学園に関わり、獣医学部の規制に「ドリルで穴を開け」たら枝野氏の長年の友人の学校法人だけが
認可され、枝野政権にとって都合の悪い決裁文書が改ざんされていたらどうか。問題ないと言うだろうか。
こんな人に政権は任せられないと恐らく批判するだろう。ちなみに僕は、もし枝野政権が同じことをしても、
安倍政権と同様絶対批判する。逆に安倍首相が、蓮舫氏の二重国籍問題のような批判にさらされても絶対批判しない。


(続きは記事元参照)