https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180402-00000069-sasahi-pol

 一連の森友事件で9月に総裁選を控える自民党の政局が “混沌”としてきた。4月2日付の読売新聞の世論調査で次の自民党総裁にふさわしい人物のトップに安倍晋三総理を抜いて小泉進次郎氏が躍り出たのだ。ジャーナリストの大下英治氏が総裁選の行方を大胆予測した。

 今年秋に予定される総裁選で、3選をめざす安倍晋三総理が一番怖いのは岸田文雄政調会長だろう。

 これまでは安倍一強で、本来は秋に予定される自民党総裁選挙で安倍総理が3選して政権を作り、2021年の総裁選で、岸田氏に禅譲するというシナリオだった。それを番狂わせにしたのが、森友学園絡みの決算文書改ざん事件だ。

 来年は参院選と統一地方選がある。安倍内閣の支持率が低下し、30%を切ると危険ゾーンに入る。自民党内で安倍では戦えないという「安倍下ろし」の動きが強まる。

 大阪地検特捜部が捜査する森友学園事件の進展如何で、もしかしたら、安倍総理が3選に出ないというかもしれないし、出ても、勝てるとは限らない。

 安倍総理を推すのは、二階派の約44数人と、安倍総理の所属する細田派94人、それに麻生派59人。

 先日、二階幹事長と2人でだけ数時間会っていた。二階氏は「安倍の次は安倍」という言葉をひるがえさなかった。

 もともと、麻生太郎副総理兼財務相と岸田氏の関係は近しいものがある。麻生派、岸田派はともに宏池会の流れをくむ。大宏池会構想が取り沙汰された時期もある。

 森友事件がなければ、安倍総理、石破茂元幹事長、野田聖子総務相の3人が総裁選を戦うところだった。岸田氏がこれまでのシナリオ通りに9月の総裁選に出馬しなければ、岸田氏の存在感はいっそう薄くなる。安倍総理の力が弱まったのに、なお安倍総理の禅譲を待っても意味がない。岸田氏は出馬して戦わざるをえなくなるのではないか。

 4月2日付の読売新聞で発表された次の自民党総裁に誰がふさわしいと思うかという世論調査(3月31日〜4月1日)のトップは、小泉進次郎氏(30%)、次いで安倍総理(26%)、石破茂氏(22%)、岸田氏(5%)、野田聖子氏(3%)という順位。岸田氏の存在感は薄い。

 森友事件で捜査が展開し、麻生氏が詰め腹を切らされると、総裁選の地図はがらっと変わってくる。

 安倍総理は麻生氏を切るかわりに、内閣改造をして、麻生氏を外そうとするかもしれない。

 財務省の決裁文書改ざんは、自民党はじまって以来の大事件だが、財務相の麻生氏に責任をとらせずに、内閣改造で外せば、クビを切るよりは傷が少なくてすむという狙いだ。

 内閣を出たら、今度は麻生氏がキングメーカーになる。麻生氏は森友事件のとばっちりを受けて、頭に来ている。本来は自分の問題というよりも、安倍夫妻の問題と考えているからだ。

 内閣を出ると、麻生氏は、岸田政権を担ぎ、安倍総理と岸田氏の決戦投票になれば、麻生派、石破派、かつて参議院のドンと呼ばれた青木幹雄元参院議員会長がたばねる「平成研究会」も岸田氏に乗るだろう。

 もし、岸田政権となれば、麻生氏が力を振るうことになる。麻生氏は大キングメーカーになれる。

 一方、総裁選出馬を明言している石破総理誕生の可能性もゼロとは言えない。

 安倍総理を支えていた者たちは一蓮托生で、岸田氏も同じ仲間と見られ、不利という向きもある。

 自民党内で「安倍下ろし」をひっぱるのが、前出の青木氏だ。自民党の「平成研究会」(額賀派)で、青木氏は親安倍だった額賀福志郎元財務相を会長から外し、後任に竹下亘総務会長を会長に据えた。

 これは青木氏が額賀氏に対して、安倍総理にいつまでくっついているんだ、もうやめとけと考えたからだ。石破氏を推すために額賀氏を切り、竹下氏を持ってきたとみられている。

 石破派は総勢20人だが、青木氏が後押しすれば、勢力は拡大する。

 小泉進次郎氏も安倍総理と石破氏をくらべれば石破氏を選ぶだろう。前回の総裁選で安倍総理と石破氏が戦った時には石破氏に一票を入れている。

 進次郎氏は政権の腐った部分に新しい風を吹かせられる存在だ。

 進次郎氏は3月1日、新しい若手勉強会「2020年以降の経済社会構想会議」をつくって、ひとまず30人も集めた。「進次郎派」の結成と見ていい。これからより膨らんでいくだろう。

 小泉氏が誰を推すか。その票が総裁選、地方の党員票、国会議員の1、2位の決戦投票にも大きく影響を及ぼすことになる。

(構成/本誌・上田耕司)