【特集】不安が残るまま…住吉市民病院閉鎖へ
3/30(金) 15:05配信 MBSニュース
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3月末、大阪市立住吉市民病院が約70年の歴史に幕を閉じます。大阪市南部の医療を長年支えてきました。しかし、近くに府立の病院があることから、大阪府と市の「二重行政」の象徴だとして統合されることになりました。若い妊婦や貧困家庭の患者の“駆け込み寺”となっていた病院の廃止には、いまも地元から反対の声があがっています。

■“府市統合”新病院完成の裏で
大阪府の松井知事、大阪市の吉村市長が出席して完成式が行われた「大阪府市共同住吉母子医療センター」。小児科と産婦人科に特化して、重症の新生児の治療やハイリスクな出産など高度な医療に対応できる病院として期待されています。

「ハイリスク出産分娩にも対応できる、この南部医療圏の小児周産期機能が本当にこれで充実される」(大阪市 吉村洋文市長)
「府市一体で取り組んだからこそ、これだけの医療機能をもった住吉母子医療センターができあがりました。これ大阪府単体、大阪市単体では財政的にも人員的にも、それぞれ別々ではこれだけのものをつくれません」(大阪府 松井一郎知事)

その名前からも府と市が掲げる「府市統合」への象徴といえる新病院ですが、この統合により3月末、閉鎖される病院があります。

大阪市住之江区にある市立住吉市民病院。産婦人科と小児科があり入院もできる数少ない病院として約70年、地域の医療を支えてきました。

「閉館されるということで、ショックとなんとかならないのかなという気持ちはあります」(利用者)
「(近くで)入院できる機関はここしかないので、やっぱり不安は残りますね」

■「民間病院を誘致」のはずが…
もともと、住吉市民病院は老朽化のため建て替えられる計画でしたが、6年前、当時の橋下市長が府と市の「二重行政」を解消することで市の財政負担も減るとして、2キロ先の府立病院との統合を打ち出しました。

「住吉市民病院を統合するっていう話をやっただけで、これまで8億円赤字でキャッシュ入れてたのが、8億円が3億円で済むんでしたっけ。だから年間5億円ですよ、キャッシュで」(大阪市 橋下徹市長・当時)

病院の廃止には地元住民らの反対が強く、橋下前市長は跡地に「入院設備のある民間病院を誘致する」と約束しました。

ところが…市は民間病院の誘致に4度失敗。跡地には、外来だけの診療所が暫定的に設置されることになりました。

約束が守られず統合だけが進められることに、地元住民からは「話が違う」と不満の声が相次いでいます。3月に行われた住民説明会では…

「なんでこんなに、市民病院をつぶされなあかんのか…許されないというか」(住民)
「ずるずるきて、直前になって住之江診療所と。そんなバカな話あるかと。ちゃんと(跡地に)出産も入院できる病院をただちに設置するという決断をすべき」(住民)

「大阪市民のことを考えてやっているんです。ご意見だということでたまわりますが、我々職員も一丸となってやっていこうとやっているんです。そこをぜひご理解いただきたい」(大阪市 吉村洋文市長)

■福祉的な役割も担っていた
これまで、住吉市民病院は福祉的な役割も担っていたため病院の閉鎖に不安を感じている人もいます。大阪市西成区に住む洋子さん(55)。住吉市民病院は20年以上、長男の智貴さん(26)のかかりつけの病院です。

智貴さんは赤ちゃんのときに転倒して頭を打ち、重い障害が残りました。体の自由がきかず栄養や水分は鼻から注入します。

「1日5回なんですけど、結構忙しいですよ。もうこんな時間みたいな。もう栄養の時間とか、あとおむつ替えたり、吸引とかもあるから」(洋子さん)

智貴さんは体重43キロ、洋子さんひとりではお風呂に入れることができないためヘルパーに頼んでいます。こうした重症心身障がい児者の家族の負担を軽減するため、住吉市民病院では患者を一時的に預かる「医療型短期入所」を行ってきました。統合後は、1日に受け入れられる人数が減る可能性もあり、洋子さんは不安を拭えないといいます。

「主人も何年か前から病気をしたりして入院とか多くなったので。急に行かなあかんときも住吉(市民病院)だったら、来週とか近い日にお願いしてもいけたので。そういう面では助かったんですけど、今後そういう場合どうしようかなと」(洋子さん)