2018年3月16日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018031602000266.html

 文部科学省の前川喜平前事務次官が今年二月、名古屋市の公立中で行った授業内容について、同省が市教育委員会に報告を求めた問題で、林芳正文科相は十六日午前の記者会見で、同省が市教委に送ったメールの内容や表現について「誤解を招きかねない面もあった」として、高橋道和・初等中等教育局長らを注意したことを明らかにした。一方で「教育委員会に対して、個別の学校の教育活動に関して問いあわせをすることは一般的にある」と述べ、調査は適切だったとの認識を示した。

 調査のきっかけについて、林氏は「報道もされているので外部から問い合わせがなかったわけではないが、文科省として判断した」と説明。前川氏が同省の組織的天下り問題で、自らの違法行為により「停職相当」とされたことを挙げ、「こうした背景も踏まえ、適切な教育的配慮のもとで行われたものであったか確認する必要があった」と話した。

 授業自体に法令違反などは確認されなかったとした上で、校長が事実関係を十分把握していなかったとして、「十分に調べることなく、授業の講師として招いたことは必ずしも適切ではなく、もうちょっと慎重な対応が必要だったのではないか」と述べた。

 同省は市教委に対し、前川氏に講師を依頼した経緯など十五項目をメールで質問。授業の録音データの提出なども求めた。

 林氏は「教育現場に誤解が生じないよう、事実確認を行う際には表現ぶりと手法について十分留意する必要があると(高橋局長らに)伝えた」と話した。

◆前川氏の講演要旨
 前川氏が名古屋市北区の八王子中学校の授業で講演した要旨は次の通り。

 奈良県の田舎に生まれ、小学校の途中で東京に引っ越した。その時、都会になじめず一時、不登校になった。学生時代は引っ込み思案で、今のように人前で話すタイプではなかった。人の性格は変えられる。

 学生時代に読んだ、宮沢賢治の「農民芸術概論綱要」という本に影響を受けた。本から「人と人とはつながるけれど、別々の人間として分かり合っていく、人とはそういう存在だ」ということを学んだ。

 これからの日本、世界がどうなっていくのか分からないが、未来をつくっていくのは二十二世紀まで生きる皆さんだ。少子高齢化もあり、今までのように日本人だけでつくる社会ではなくなる。多文化共生社会を外国から来た人とも一緒につくれるかが大きな鍵。そのためにも、いろいろな人と話しながら問題を解決していく力、生涯学びながら生きていく力が必要。そうした力を中学生の間に身に付けてほしい。

 文部科学省を辞めてから、夜間中学を拡充する活動に力を入れていて、実際に自分が教えることもある。昔は中学にいけない人がたくさんいた。高齢の人に小学校低学年が学ぶ漢字を教えることもある。在任中から気になっていたが、ほったらかしにしていた。今は「学び直す場をつくる」ということが活動のテーマです。