2018.3.10 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/special/spe1090/20180310_05.html

 東京電力福島第1原発は事故発生から7年を迎える。原子炉格納容器の内部調査で溶融燃料(燃料デブリ)とみられる堆積物が初めて確認されるなど、この1年で溶融燃料回収に向けた準備が進んだ。内部の状況が明らかになるにつれ、炉心溶融(メルトダウン)の激しさや廃炉の難易度の高さも改めて浮き彫りになった。

◎格納容器の内部調査/映像で確認 損傷激しく

 東電と国際廃炉研究開発機構(IRID)は2017年3月に1号機、17年7月に3号機、18年1月に2号機の格納容器の内部調査に取り組んだ。
 3号機の調査は水中遊泳型ロボットを使用。溶融燃料の可能性がある複数の堆積物を映像で初めて捉えた。
 見つかったのは塊状の堆積物や小石、砂状の物体。圧力容器を支える台座の底部に広範囲に広がっていた。落下した炉内構造物が散乱し、堆積物に埋まっている状況も確認され、損傷の激しさが見て取れた。
 2号機の調査は17年1〜2月に続いて2度目。前回調査の失敗を踏まえてロボットを使わず、先端にカメラを装着した伸縮パイプを圧力容器直下に差し入れた。
 小石のような物体の近くに、燃料集合体の最上部にあったハンドルも見えた。東電は「小石状の物体は溶融燃料とみて間違いない」との見解を示した。
 圧力容器の真下で毎時7〜8シーベルトの空間線量を計測。圧力容器の外側より低かったものの、人が近づけない極めて高い線量に変わりはない。溶融燃料取り出しには、高線量下で長時間の使用に耐えられる遠隔装置の開発が必要となる。
 1号機は格納容器の壁の貫通部付近の放射線量が特に高い。そのため、2、3号機と異なる経路からロボットを投入し、圧力容器を支える台座の外周部を調べた。
 鉄製足場にロボットを走らせ、隙間からカメラを滞留水の中に釣り下ろした。厚く積もった砂状の堆積物に阻まれ、溶融燃料は撮影できなかった。

◎工程表改定/気中工法軸 着手に遅れ

 政府と東電は17年9月、廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)を改定した。廃炉の核心である溶融燃料の取り出しについて、原子炉格納容器を水で満たさず、冷却水を掛け流しながら側面から回収する「気中工法」を軸とする方針を盛り込んだ。工法確定と最初に取り出す号機の決定時期は1年遅らせ、19年度中とした。
 国や東電に技術的助言を行う原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は、格納容器に水を張って上から回収する「冠水工法」を軸に検討を進めてきた。容器上部の放射線量が高く、前提となる止水工事が現状では困難と分かり「気中工法が現実的」と判断した。
 ただ、気中工法では圧力容器に残る溶融燃料の取り出しは難しい。2号機は溶融燃料の多くが圧力容器にとどまっているとみられ、回収に向けた工法の検討は棚上げされた格好だ。
 東電やIRIDは、気中工法の具体的な工法確立に向け、技術的な課題を事前に検討する「予備エンジニアリング」を進める。初号機の選定は溶融燃料とみられる物体を確認できた2、3号機を中心に進むとみられる。
 工程表改定では1、2号機に残る使用済み核燃料の搬出開始時期を3年遅らせ「23年度をめど」とした。21年度にいずれかの号機で溶融燃料の回収を開始し、事故発生から40年後の51年までに廃炉を完了させる枠組みは維持した。


(以降ソースにて)