東京新聞 2018年3月8日 08時59分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018030890070444.html
(消費電力と供給量のグラフ)
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 年間通じて最も電力が必要になる夏の発電状況について、電力の供給余力が昨年、東日本大震災前の
二〇一〇年を大幅に上回っていたことが明らかになった。再生可能エネルギーが過去最大まで拡大したほか
節電が進み、震災前に稼働していた原発の合計分を大きく上回る電力の余裕が生まれたため。
東京電力管内では厳寒となった今年一月下旬も、大手電力間で電力を融通し合う仕組みなどで電力不足を回避した。

 政府と電力業界は原発再稼働を急ぐが、原発がなくても十分な余力があることが裏付けられた形だ。

 電力業界の組織「電力広域的運営推進機関」の数値をもとに本紙が計算した。

 電力の余裕は実際の電力消費に対し、供給余力がどの程度あるかを表す「予備率」で示される。
例年、冷房で電力が使われる夏に最も低くなる。3%を下回ると停電懸念が生じるとされるが、
一七年夏は最大需要を記録した瞬間でも供給余力が二千百万キロワットあり、一億五千五百万キロワットの需要に対する
予備率は約14%と、震災前の約9%を大きく上回った。予備率は一六年も約13%あり、供給に大きな余裕がある状況は定着した。

 背景にあるのはまず再生エネの拡大。再生エネは震災前までは地熱発電の三十万キロワットだけだったが、
昨年は太陽光を中心に約二千万キロワットに増加。これは原発二十基分(一基百万キロワットとして計算)に相当する。

 需要についても夏の最大使用電力は節電の定着で震災前の一〇年に比べて二千四百万キロワット減っている。
再生エネと節電合計で、原発四十四基分にあたる四千四百万キロワットの余力をつくり出した計算。
これは一〇年当時稼働していた全ての原発が生み出した三千四百万キロワットを一千万キロワット近く上回る。

 震災後、電力を融通し合うルールが進んだことも余裕を生んでいる。

 今年一月は厳しい寒さで暖房利用が急増。このため震災後に発足した電力広域的運営推進機関を通じ
東北電力などが余剰電気を首都圏に供給、東電はさらに事前に契約している企業に電力利用を抑えてもらう
「ネガワット(節電)取引」も初めて使い、問題なく乗り切った。


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