2018年2月15日 朝刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018021502000145.html

安倍晋三首相が十四日の衆院予算委員会で、裁量労働制で働く人の労働時間が一般の労働者より短いデータがあるとした国会答弁を撤回し、陳謝したのは、データに不自然な点が見つかり、野党から調査結果の信頼性に疑問符を突き付けられたからだ。首相の答弁は、裁量労働制が長時間労働につながるとのイメージを払拭(ふっしょく)する狙いだったが、逆に不信感を募らせる結果となった。

 首相は一月二十九日の衆院予算委で、厚生労働省の「二〇一三年度労働時間等総合実態調査」を基に「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」と答弁した。実態調査では一日当たりの労働時間は、裁量労働制で九時間十六分、一般で九時間三十七分となっていた。

 この調査は、全国一万一千五百七十五社を対象に労働基準監督官が働く人の労働環境について聞き取りしたもの。労働時間について、裁量労働制が適用されている人とそうでない人、平均的な労働時間の人、長時間労働の人に分けて聞き取り調査した。

 国会で不自然さが指摘されたのは、裁量労働制ではない平均的な労働時間のグループに分類された九千四百四十九人のうち、九人の一日の残業時間が十五時間超だった点だ。一日二十三時間超も働いた計算になり、調査の信頼性が揺らぐ結果になった。

 野党が、厚労省の調査結果に疑問をぶつけ続けたのは、裁量労働制が長時間労働につながるとの別の調査結果があるからだ。

 厚労省の要請を受けて独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が全国一万三千社を対象に行った二〇一三年の調査では、一般労働者の一月あたりの平均労働時間は百八十六時間。専門業務型裁量労働制の人は二百三時間だった。