2018年2月11日 朝刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018021102000121.html

 旧優生保護法を巡る共同通信の調査で、障害などを理由に人工妊娠中絶を施された個人名記載の資料が千葉、広島の両県に十三人分現存していることが分かった。延べ約六万人とされる対象のごく一部にとどまるが、行政への提出資料は一時期を除き無記名が原則だったとされ、実態を知る上で貴重な資料といえる。旧法下での中絶には本人らの同意義務があったが、周囲の圧力による事例も疑われ、調査など国の対応が求められる。

 日弁連によると、旧法下では約二万五千人に不妊手術が行われ、うち約一万六千五百人は強制だったとされる。共同通信の調査では、不妊手術では個人名記載資料が二十一道県に約二千八百人分現存していることが確認されており、今回は中絶分の保存状況も判明した。

 立命館大大学院の松原洋子教授(生命倫理)は「中絶手術に関しては、旧法施行から四年後の法改正により、行政への提出資料は原則無記名とされた。二県は自治体独自の運用などで記名資料が残っていたのではないか。実態に迫れる可能性がある」と評価。ほかに記名のカルテなどが医療機関に残っている可能性を指摘している。

 「不良な子孫の出生防止」を目的に一九四八年から九六年まで存続した旧法は、女性や配偶者、親族が知的障害や精神疾患などだった場合の中絶手術を容認。日弁連は、国の統計などから中絶手術は延べ五万八千九百七十二人に実施されたとしている。

 旧法は経済的事情などがある健常者と同様に「本人および配偶者の同意」を規定していたが、日弁連は意見書で「自由な意思決定による真の同意とは言えず、憲法の自己決定権を侵害している。国の不当な働き掛けで胎児を死亡させる点も極めて問題だ」として当事者の救済を訴えている。

 共同通信は昨年十二月以降、全都道府県(担当部署と公文書館)に対し、旧法下での障害者らへの中絶手術に関する資料の有無や内訳を聞いた。

 その結果、手術を受けた人の氏名が記載された資料は千葉県で十二人分(五一、五二年度)、広島県で一人分(八〇年度)が確認された。手術の実施報告書などで、年齢や住所、手術の理由となる疾患名などが書かれている。広島の一人は未成年で、千葉は年齢層を「調査中」としている。

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