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 4日の沖縄県名護市長選で名護市辺野古の新基地建設を推進する政府与党が全面支援した渡具知武豊氏が勝利した。翁長雄志知事は県政の最重要課題とする新基地建設阻止の主張の柱を失った形で、県政運営の先行きは極めて不透明になった。政府は、名護市民の「信任」を得たとして基地建設を推し進める構えだ。(政経部・大野亨恭、東京報道部・大城大輔、北部報道部・城間陽介)


県政運営は不透明に

 「辺野古反対の大義を失った。戦略見直しは必至だ」。県幹部は、声を振り絞った。

 翁長氏は新基地建設阻止を公約の柱に据え、「民意」を最大の根拠に政府と対峙(たいじ)してきた。4年前の市長選で「オール沖縄」勢力結集の原動力となった稲嶺氏の勝利は、公約実現、そして今秋の知事選を占う上で「絶対に落とせない戦い」(県幹部)で、知事自ら連日、市内で支持を訴えた。しかし、力及ばなかった。

 知事は投開票前日の3日、記者団に選挙結果にかかわらず辺野古反対の姿勢は変えないと強調した。ただ、地元民意の「変容」で辺野古を巡る政策にも大きな転換を強いられるのは必至だ。

 「知事の求心力が低下しているのは明らかだ」。政府関係者は確信を得たように語った。

 沖縄防衛局は、辺野古で今夏の土砂投入を目指す。「市長が代わったとはいえ、最終的には知事権限がある。一気に加速とはならないが、知事は難しい判断を迫られるだろう」と語る。

 昨年は知事が新基地用の石材搬出を目的とした国頭村奥港の使用許可を出し、市民の反発が噴出。今回の結果は、さらに亀裂を広げるきっかけになると見込む。別の関係者は「撤回もできないだろう。知事が知事選で辺野古に反対する大義はない」と言い切った。
「あきらめムード」

 一方、選挙戦では一貫して辺野古問題への賛否を明確にしなかった渡具知氏。今後の対応は不透明だが、政策発表で掲げた海兵隊の県外・国外移転は普天間の辺野古移設を含む米軍再編に沿うものとの認識だ。

 選対関係者は「辺野古移設は沖縄の基地負担軽減につながるものだ」と辺野古「容認」の態度をにじませる。渡具知氏は、美謝川の切り替え協議など市長権限の行使に関し「権限の実効性を精査してみないと分からない」と慎重な姿勢だ。

 選挙戦では、自民党幹部らが繰り返し来県し、「政府与党とのパイプ」を見せつけた。国は再編交付金の交付もちらつかせ、渡具知氏を支援した。

 それに引き換え、国は沖縄関係予算を大幅に削減する一方、辺野古の工事を着々と進め市民の「あきらめムード」を醸成してきた。

 今後、一括交付金の厳格査定や県議会での執行部への追及など、県には試練が待ち構える。知事側近は、知事任期までの10カ月間は「まさに四面楚歌(しめんそか)だ」とうなだれる。

 そして、政府与党による県への「兵糧攻め」と、対照的に圧倒的な物量の投入で渡具知氏勝利をもぎ取っていった結果に天を仰いだ。「国家にはひれ伏せということか」