https://www.ehime-np.co.jp/article/news201802010014

 新事実が出てきても、政府が説明責任を果たす姿勢は全く見られなかった。

 衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」への格安での国有地売却を巡り、野党は新たに判明した財務省と学園との価格調整をうかがわせる文書と、佐川宣寿前理財局長が「文書は破棄した」としてきた答弁との食い違いを追及した。だが、政府の答弁は「適切に対応した」と従来見解をなぞるだけで、疑惑解明は一歩も進まなかった。もうこれ以上、不毛な議論を続けることは許されない。

 新文書には「売買金額の事前調整に努める」と記され、財務省近畿財務局が保管。情報公開請求に対し先月、開示した。森友問題を調べていた会計検査院に財務省がこの文書を出したのは昨年11月、売却額算定はずさんだったとする報告書公表の前日だったことも分かっている。

 予算委で、検査院は新文書を結果報告に反映できなかったと明らかにした。財務省の責任は極めて重い。麻生太郎財務相は「(新文書は)検査院の検査過程では気付かなかった。情報公開請求への対応で判明した」と釈明したが、隠していたのではないかと疑わざるを得ない。

 佐川氏が国税庁長官に就任以降、会見を開いていないことに麻生氏は「所管以外に関心が集まっており、国税庁が実施しないと決めた」とし、追及回避が会見拒否の狙いだったと事実上認めた。政権が組織的にかばっているのは明らか。野党が求める佐川氏の国会招致に、与党は応じるべきだ。

 問題の発端は、安倍晋三首相の昭恵夫人が学園の小学校名誉校長に一時就任していたことから、値下げに官僚の忖度(そんたく)が働いたのではないかという疑いだ。

 その夫人について野党は、学園前理事長の籠池泰典被告が国側に「棟上げに夫人が来る」と伝えたことを記録した音声データを示して事実関係をただしたが、首相は「突然聞かれても答えようがない」と逃げた。これまでの野党からの夫人の証人喚問要求を「自分が全て知っている」とはねつけかわしてきた。籠池被告が夫人の名前を挙げて国有地の値下げを迫ったのは、2人が緊密な関係にあった証左だ。首相は自身の説明なしには問題が解決しないと自覚し、責任を果たさねばならない。

 籠池被告は昨年7月の逮捕以降、長期の勾留が続き、結果として事情を聴く機会が奪われている。このまま、疑惑の幕引きを図ることは許されない。

 野党は連携に課題が残った。森友問題に希望の党幹部は「同じ答弁の繰り返しで、堂々巡りになる」と消極的だが「堂々巡り」を打開し、新しい答弁を引き出すのが野党の役割だ。茂木敏充経済再生担当相の有権者への線香配布などの追及も、政府にかわされた。野党が巨大与党に対抗するには共闘は不可欠。連携を密にし、国民の視点から政権のチェック機能を果たすよう強く求めたい。