https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180110-00000003-pseven-kr

 韓国のメディアではしばしば「良心的」と評される日本知識人が登場する。韓国の報道、教育現場における「反日」の実態について研究している韓国人の崔碩栄(チェソンギョン)氏はこう指摘する。

「韓国メディアではいつも決まった日本の識者が重宝されています。彼らが韓国の姿勢や主張に背く発言をすることはほとんどなく、その一方で日本に対しては厳しい姿勢をとるのが普通。日本のメディアでは日本批判をする外国人が有難がられる傾向がありますが、韓国では逆に韓国寄りの発言をする日本の識者ばかり。非常に偏っているのです」
 
 では、韓国メディアに登場する日本の識者は、竹島や慰安婦、徴用工などの問題で、具体的にどのような発言をしているのだろうか。

 こうした記事で頻繁に登場するのが韓国・世宗大学教授の保坂祐二氏だ。日本による朝鮮統治の研究が専門で、同大「独島(編集部注・竹島)総合研究所」所長を2008年から務める。韓国では竹島研究の第一人者として知られ、“独島の番人”と呼ばれる。

 東京大学卒業後、1988年に韓国に渡った保坂氏は、高麗大学大学院で政治学博士号を取得。1998年に世宗大学の教員となった。2003年に韓国に帰化。文在寅氏の大統領選ではブレーンの一人に起用された。韓国外交部の諮問委員や韓国独立記念館(*注1)の非常任理事なども歴任している。

【注1/日本統治時代の“被害”や独立運動の歴史資料などを集めた博物館。天安市にある。】

 現在は韓国籍だが、韓国では“日本を正す良心的な日本人”のように扱われている。保坂氏は例えば、韓国の日刊紙「世界日報」(2017年10月24日付)の「独島番人教授が伝える“独島が韓国領土”である3つの理由」と題した記事では、竹島について〈韓国の領土である〉、〈独島の主人は“韓国”だという結果になる〉などと繰り返し述べている。

 本人にこの発言について尋ねたところ、「私の考えですが、私だけの考えではない。韓国では一般的な考え方です。日本人学者でも、独島に関する日本政府の主張は一方的で、歪曲されているという見解を持つ人は意外と多い。池内敏、坂本悠一、竹内猛などがいます」との回答があった。

 ただし、保坂氏が挙げた池内敏・名古屋大教授は、その著書『竹島─もうひとつの日韓関係史』で、日本だけでなく韓国政府の主張も正当性に欠けると指摘している。また坂本悠一氏は、2013年5月に竹島に上陸する際、「独島を韓国領と見なすことはできない」との見解を示し韓国側に止められたことがある人物だ。

 さらに保坂氏は、慰安婦や徴用工の問題についても次のように発言している。

〈日本安倍政権は慰安婦強制連行の事実を否認している〉(「中央日報」2017年3月16日付)
〈韓国側から見れば(徴用工の)個人請求権が充分に残っている〉(韓国YTNラジオのインタビュー。2017年8月25日)

 このような保坂氏の発言は、韓国側の主張そのもの。韓国のメディアが、日本を批判する“元日本人の発言”を都合良く使っている様子が窺える。

 こうした発言についても、保坂氏は、「日本では少数派かもしれませんが、慰安婦に関しては日本の慰安婦支援団体や女性の権利を訴える市民団体、慰安婦問題の研究者などの間では当然の考え方ですし、徴用工問題についても、私や韓国側と同じ考え方の日本人学者が結構います」と重ねる。

 だが、韓国市民の中には、保坂氏の発言を冷静、というより冷ややかに見ている者もいる。「学者が政治に関わりを持つと、客観性が保てなくなるのではないか」(40代男性)、「独島問題以外の発言が雑で、残念だ」(50代男性)といった声が聞こえてくる。