社会部ネタは、基本的にエンタメである。安保法制の話は重要だが、地味で分かりにくい。
横綱の傷害事件は重要ではないが、絵になって面白い。どっちを優先するかは難しい判断だが、
読者数を基準にすると社会部ネタのほうがはるかに売れる。

 どこの社でも、社会部には左翼バイアスがある。保守では面白い記事が書けないからだ。電波利権が大きかったころは、
社会部ネタを牽制する自民党の最大の武器は電波だった。最近はその効果が弱まったため、相対的に社会部の力が強まっているのだろう。

 世界的にみると、日本のように1面に政治経済の記事を掲載する新聞は少ない。数百万部売れる新聞のほとんどは、
タブロイド紙と呼ばれる大衆紙である。そこで売れるのは客観報道ではなく、人々が何を面白いと思うかという「感情をこめた身体性」が大事だ。

 日本でもマスコミの独占していた記者クラブの1次情報は、今はすぐネットで拡散してコモディタイズ(陳腐化)するので、
論評などの2次情報で付加価値を出すしかない。「トイレをつまらせろ」とか「スットコドッコイ」とか、意味不明でもアクセスを集めればいいのだ。

「安倍政権は気持ち悪い」という感情をもつ読者は、国民全体では少数派だが、朝日新聞の購読者の中ではかなり多いと思われる。
紙の新聞を定期購読してもらうという営業政策から考えると、エビデンスより感情論を優先することは一つの割り切りである。

 新聞が大衆紙になるのは世界的な傾向で、日本の新聞だけがいつまでも天下国家を論じているわけにはいかない。
「安倍政権は気持ち悪い」という感情を売り物にする朝日新聞は、それなりにエンタメとして生き残りの道を探っているのだろう。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51992