議員圧力ゆがむ行政 北口・熊本市議に4回目辞職勧告へ 不当要求応じ、不適正な支出
2017年12月10日 08時30分
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勤続25年表彰を受けた後、報道陣に囲まれる熊本市議の北口和皇氏=2016年12月5日、熊本市

 職員への暴言やパワハラ、不当要求を繰り返したとして2015年以降、3度にわたり辞職勧告を突き付けられた熊本市議の北口和皇(かずこ)氏(59)に対する辞職勧告決議案が12日、市議会に提出される。
北口氏を巡っては圧力により不適正な予算支出が繰り返されたと市の外部監査人が報告。
権威を振りかざす議員と市側の過剰配慮で行政がゆがめられた実態が浮かび、大西一史市長が自身の減給を表明するなど波紋が広がっている。

 北口氏は現在7期目。元市議の祖父の後継として1991年の市議選に無所属で出馬、初当選した。同年、胸を触られたとして男性県議を刑事告訴(後に起訴猶予)。
当時なじみの薄かったセクハラ問題を社会に問い掛け、全国的な話題になった。決議案は12日の本会議で可決される見通しだが、法的拘束力はなく、北口氏は今回も応じないとみられる。

 一連の行為が表面化したきっかけは2015年3月、市食肉処理業務の民間移譲に伴う調印式。北口氏は会場で、市が式に知人を呼ばなかったと激怒し「腹ん立つ。どういうこつなのか」などと担当職員を怒鳴り、何度も机をたたくなど妨害。
式は中止された。

 出席していた市民が市議会に「パワハラがあった」との文書を提出し、明るみに出た。市は対策会議を設置。
調査の結果、ほかに北口氏が大声を上げたり大量の資料要求をしたりした27件を不当要求と認定した。市議会は15年と16年の2度、市政治倫理審査会も16年に辞職勧告した。

 さらに今年11月の個別監査で、北口氏が代表理事を務める市漁協と市が結んできた外来魚駆除などの業務委託契約や補助事業5件に関し、外部監査人が「不適正」と報告。
「北口氏の強い働きかけで行われた」「市幹部職員が唯々諾々と従う中で事業の必要性の検討が忘却された」などと指弾した。

 これを受け、大西市長は市議会で「組織として毅然(きぜん)とした態度を取れなかった」と陳謝し、自身と副市長の減給を表明。併せて業務委託費など約122万円の返還を市漁協に求めた。
元市幹部は「多くの職員は議員を怒らせると面倒だという心理が働く。良くない要求と感じてもなかなかノーと言えない」と話す。

 豊田真由子元衆院議員の暴言問題が話題になったことから、最近になって在京のワイドショー取材班が北口氏に密着するなど騒動は拡大。
北口氏は12月に入り、体調不良を訴えて定例市議会を欠席している。

=2017/12/10付 西日本新聞朝刊=