「元国会議員でホームレスになったりする方もいる」――。自民党総務会長の発言に世間が驚いた。
いったい、ホームレス状態にまで追い込まれている元国会議員は実在するのか。
11月27日(月)発売の週刊現代が、小泉チルドレンとして世間の注目を浴びた「あの人」の切実すぎる近況を報じている。

「元国会議員で生活保護を受けたり、ホームレスになったりする方もいると聞いている」
自民党の竹下亘総務会長の発言が話題だ。国会議員の議員年金は、'06年に廃止されている。
だが、「このままでは有為な人材が集まらなくなる」と、11月14日に開かれた自民党総務会で、議員年金復活が議題になったのだ。

村上誠一郎代議士が言う。「国会議員の報酬は年間約2100万円ですが、私設秘書への給与や地元事務の経費でほとんどがなくなる。
議員年金がないと、引退すればホームレスになってしまってもおかしくないのです」
言及された「ホームレスになった元議員」とは誰か。「彼女では?」と記者のあいだで噂になったのが、この女性である。

井脇ノブ子。

「やる気、元気、井脇!」をキャッチフレーズに、'05年の郵政選挙で「小泉チルドレン」の一人として初当選(比例近畿ブロック)。
ピンクのスーツを着込み、中年のオッサンばりのルックスで知られていた。

'09年に落選後は、いつの間にか世間から姿を消していた井脇氏が、本誌の取材に答えた。
「おカネ、まったくないねん。持ち家ももちろんない」

井脇氏は、いま71歳。オッサン化に磨きがかかった風貌だ。
ホームレス疑惑は否定するが、都内のアパートで、元支援者の女性(76歳)と、「シェアハウス」状態で生活しているのだという。
「いまの収入は国民年金が毎月7万8000円。そこから毎月3万円だけ払って、(元支援者の)部屋に住ませてもろうとんねん。

選挙は何回も出たけど、費用は全部自己負担やった。
ポスター代や宣伝カーのガス代といった借金の返済が、やっと来年の3月ごろ終わるのよ。ほっとするわあ」
生活のやりくりは大変のようだ。この日も着ていたピンクのスーツは、かつての教え子に送ってもらったものだという。

議員年金があれば……と思わないか?
「あったほうが助かるわな。私は保険もゼロや。死んでも一銭も出えへん。
だから月3000円の保険、あるやろ。あれを掛けようかなと思うとんねん。そしたら葬式代100万円くらい出るやろ」

原点は弱者を救う政治だった
井脇氏は、小学4年のとき、兄が殺人容疑で誤認逮捕された。真犯人が捕まるまで地元・大分で村八分同然だったという。
「村の人が通りかかって『殺人犯の妹や』というてくんですよ。私は『大人が何を言うか』と大声で言い返したよ。負けておれるかと思った」
母親に「差別のない社会をつくりなさい」と言われたことが井脇氏の政治家としての原点だ。

地盤も看板もカバンもないなか、代議士になった。
だが'11年には、経営していた学校法人が12億円もの負債を抱える。連帯保証人として、債務の返済に追われた。自宅は差し押さえられ、'15年には競売によって強制売却された。
それ以来のシェアハウス暮らしである。「二世、三世の議員が多いことはおかしい。そりゃあ選挙は強いよ。だけどそれだけの情熱をみんなが持っているかというと、疑問やなあ。
小選挙区制は、政治家をダメにしたね。ペコペコ頭を下げる議員ばっかりになっちゃったよ」

今は政界引退の身だが、自民党二階派の「特別参与」の肩書を持ち、毎週の会合にも出席している。
今の彼女なら、弱者の視点に立った政治ができるかもしれない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53616


取材に応じた井脇ノブ子氏
http://gendai.ismcdn.jp/mwimgs/3/4/400/img_346f494e92604852450f2396b3970ad9171280.jpg