2017.11.18 DIAMOND online
http://diamond.jp/articles/-/149731

週刊ダイヤモンド11月18日号の特集は「右派×左派 ねじれで読み解く企業・経済・政治・大学」。300人近い国会議員を関連団体に擁し、会員数は約4万人――。今や名実ともに日本“最強”の右派組織に膨張した日本会議。だが関係者の証言によれば、膨張したが故の組織の脆さも見えてくる。かつて参議院のドンとして君臨し、日本会議の設立に関わった元自民党参議院議員の村上正邦氏にその内実を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

人間的に信頼の置けない人たちが
日本会議の周辺にいる

――村上さんは日本会議の設立に関わりましたが、今は距離を置いています。なぜでしょうか。


むらかみ・まさくに/1932年、福岡県生まれ。拓殖大学卒業。玉置和郎参議院議員秘書を経て80年に参議院全国区で初当選。労働大臣や自民党参議院議員会長などを歴任したが、2001年議員辞職。KSD事件を巡る受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕、有罪となり10年に刑期満了した。
 自然にそういう形になったんです。というのは人間的に信頼の置けない人たちが日本会議の周辺にいるから。国会議員は日本会議に入れば、選挙で票が取れる。確固たる信念を持って日本会議に入っているわけじゃない。だから信頼が置けない。自分の全てを投げ打ってでも自主憲法の制定をやり遂げる国会議員は何人いるだろうか。常にそんな疑問を持ちながら、僕は冷ややかに見ているんです。

――疑問を持った具体的なきっかけががあるのでしょうか。

 メンバーを見れば分かる。僕が推薦したメンバーがいるが、そうじゃない人もかなり増えている。僕の憲法問題の原点は、生長の家(創始者)の谷口雅春先生の教えにある。ただ単に、今の憲法は米国製の憲法だから改正すべきだという単純な話ではない。今の日本会議には「日本人の手によって日本の憲法をつくるんだ」という自主憲法を制定するという気概がない。僕はそれだけでなく、自主憲法の制定によって日本をどういう国にするのかをもっと真剣に考えないといけないと思っている。

――今、生長の家は日本会議と距離を置いています。それも同じ理由からでしょうか。

日本会議の方向性に対し、今の(生長の家第3代総裁の谷口)雅宣さんが疑問を持っておられる、ということじゃないかと僕は思う。日本会議の国会議員メンバーは 憲法改正を主張しておけば選挙で当選できると考え、それに甘えている。

――一方で、日本会議事務総長の椛島有三氏ら中枢には当初から変わらないメンバーもいる。

 椛島くんあたりの考えはぶれていないと思う。また(生長の家の)安東巌さんは谷口雅春先生が一番信頼を置いていた人物。決して表には出ないが、安東さんは根っからの国家論を持っており本物だ。しかし、そこに憲法改正を選挙に当選するためのスローガンとしてしか考えていない人たちが混ざっている。

――具体的には。

(日本政策研究センター代表の)伊藤哲夫や大学教員のインテリたち。いつのまにか経済人も入ってきて政治と結託し、“不純”なものにつながっていった。経済と自主憲法制定は基本的に相反する。政治と財界、宗教人、インテリが一体になることが国民運動としては理想ではあるが、どうしても経済人の力に負けていく。色々な考えを混ぜ込んだら、宗教的な理念から離れていくことになる。僕らは元々、経済人に眼目を置いていなかった。やはり日本会議が(1997年に)合同されて変わってきたんでしょうね。

――だとすれば日本会議を中から純化しようとは考えなかったのか。

 あったし、今もある。チャンスがあればそういう運動を起こしていきたいね。日本会議とは別に、谷口雅春先生に学ぶ会もある。そういった運動が純化につながっていくのか、見極めないといけない。

日本人というのは、年代を問わず
だいたい保守なんですよ

――ところで日本会議は選挙でどのような活動をしているのでしょうか。

 オルグ活動を拡大している。地方で小さな集会をいっぱい開いている。それで例えばAという市会議員と付き合っていますよね、これはなかなかいい人物だから、次は県会議員に、その次は国政へという方程式を作る。そうすれば国会議員の周りに官僚が集まる。その官僚の周りに財界人が集まる。

――地方議会では日本会議が主導した、改憲を求める意見書や誓願書の採択が増えています。

 それが日本会議の一貫した戦略で、これはずっと継続されている。日本人というのは、年代を問わずだいたい保守なんですよ。野党にしたって結局は憲法改正。日本人はそこらあたりが好きとなれば、改憲に反対する政党がなくなってくる。