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 与野党は1日、特別国会の召集日を会期も決まらないまま迎える。自民党は延長を念頭に「8日間」を提案しており、与野党協議がととのわず閉会して臨時国会も見送れば、2017年の会期の合計は159日間で、現憲法下で2番目の短さとなる。大勝した衆院選後、安倍晋三首相が森友・加計学園問題で「国会で質問されれば丁寧に答えたい」と語った姿勢はどこに行ったのか。【和田浩幸】

 「『国難』ってモリカケのことだったってことね」「政治の私物化が止まらない」。南部義典・元慶応大講師(政治学)が衆院選後の10月24日、会期の短さをツイッターで指摘すると、1800件以上もリツイート(拡散)された。

 1947年の憲法施行後の70年で、年ごとの会期の合計は平均229日。最短は佐藤内閣の70年の151日で、今年は冒頭解散された9月の臨時国会時点でこれに並ぶ。自民党が延長を検討するのは「逃げ腰」との批判を避けるためで、野党の要求通り1カ月(30日)延長しても189日で9番目に短い。

 首相は8月に発足した改造内閣を「結果本位の『仕事人内閣』」と命名。閉会中審査を除けば既に本格論戦なく3カ月がたっており、1日の組閣で全員が留任する。南部さんは「仕事人のはずが閣僚が国会にこれだけ来ないのは前代未聞。与党の国会対策は選挙前と同じで官邸の言いなりだ」と語る。

 召集後はトランプ米大統領が5〜7日の日程で初来日する。個人的な関係強化のため首相とのゴルフも予定され、会期内での実質的な審議は難しい。自民党はさらに、国会の質問時間の配分も現行の「与党2対野党8」を見直して与党の時間を増やすよう要求しており、野党は反発している。

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 会期が最短だった70年はどんな状況だったのだろうか。

 69年11月、佐藤栄作首相は米国でニクソン大統領(いずれも当時)と会談し、沖縄返還で合意した。帰国後の臨時国会で「長きにわたる国民の願望が達成された」と成果を誇り衆院を解散。自民党を大勝に導いた。

 70年1月召集の特別国会は、6月の日米安全保障条約の自動延長を前に120日で閉幕。政府が野党を刺激するのを避けたことなどから「無気力国会」と皮肉られた。その後も佐藤首相の自民党総裁4選に向けた政局に重心が移り、国会は31日開かれたのみ。論戦を避け、政局を優先した結果が際だって短い会期となった。

 加計学園の獣医学部新設では、文部科学省の審議会答申が11月前半に出る見通しだ。コラムニストの小田嶋隆さんは加計問題が注目された臨時国会の冒頭解散に触れ、「時間がたてば森友・加計は忘れられると思っているかもしれないが、今度は逃げっぷりがクローズアップされ、問題が大きくなっているのが現状だ」とみる。

 安倍首相の母校・成蹊大の加藤節(たかし)名誉教授(政治哲学)も「国会論戦から逃げていることは見え見えだ。衆院選で『国難』と位置づけた北朝鮮情勢や少子化を国会で議論しないのは論理矛盾だ」と指摘した。