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 衆院選(22日投開票)で、共産党が誤算に焦っている。「野党共闘」の主導権を握って影響力拡大を目指したが、民進党が分裂し、多くが希望の党に合流したことで、共闘は“ご破算”となった。やむを得ず立憲民主党、社民党と協力し、左派3党で勢力進展を図るが、存在感は薄れた。九州・山口でも選挙区の戦いは厳しく、比例に活路を求める従前の路線に先祖返りした。(村上智博)

 「今度の選挙の構図は、『自公政権と、それを支える補完勢力』対『市民と野党の共闘』だ」

 共産党の小池晃書記局長は11日、福岡・天神で、300人の支持者らを前に、声を張り上げた。

 補完勢力とは、民進党と合流した希望の党を指す。小池氏は「(希望の党代表の)小池百合子さんは、自民党政治のど真ん中にいた。自民党と変わらない」と容赦なかった。

 その上で「市民と野党の共闘を揺るがぬものにするためにも、共産党の比例票を伸ばそう」と訴えた。

 ■参院選の再現

 共産党は前回衆院選(平成26年)で、九州・山口の全37選挙区に候補者を立てた。選挙区は全敗し、比例九州・沖縄ブロックで2人が復活当選した。

 28年参院選では、民進、生活、社民の各党と、候補一本化を図った。共闘の甲斐あって、大分選挙区で民進系候補が勝った。

 共産党は今回衆院選で、参院選の再現を目指した。党内の意見がまとまらない民進党を尻目に、共闘の主導権を握ろうとした。

 共産党は福岡9、10区など、全国15の選挙区を「必勝区」と決めた。他の選挙区で候補を取り下げる代わりに、必勝区では共産候補を「統一候補」にしようという戦術だった。

 ■比例候補として

 だが衆院解散直前、民進党が、希望の党との合流を決めた。

 希望の党は安保関連法などへの賛否を踏み絵にして、民進党内の左派勢力をふるいにかけた。共産党にとって、希望の党は組める相手ではない。共産党の小池氏は、民進党を「背信行為だ」となじるほかなかった。

 共産党は、立憲民主や社民両党との共闘を急いだ。そこに具体的な政策はなく、「安倍政権打倒」だけを旗印にした。

 九州・山口8県でみると、左派共闘の結果、共産党は11選挙区で候補を擁立しなかった。一方、候補のいる24選挙区では比例を視野にいれた票の掘り起こしを図る。

 左派協力について、共産党福岡県委員会の岡野隆委員長は「比例票の掘り起こしも期待できる状況になってきた。野党共闘で頑張っている姿をアピールできる」と強調した。

 共産党は九州・沖縄では沖縄1区の議席死守と、比例で現有2議席を上回るとの目標を立てた。

 ただ、左派勢力に限った共闘では、従来以上の支持拡大は困難が予想される。

 特に選挙区の戦いは厳しい。11日に小池氏と並んで演説した前職、田村貴昭氏(56)=福岡10区、比例重複=は「私も比例代表候補として頑張ります」と述べた。

 「一握りの政治家が、私たちがこの2年間、頑張ってきた市民と野党の共闘をリセットするのは許さない。もっと共闘を広げよう」。小池氏の言葉には、焦りもにじむ。

 志位和夫委員長は9日、日本テレビの番組で、衆院選後の首相指名選挙で、立憲民主党の枝野幸男代表に投票する可能性も示した。

 「枝野氏の名前を出したことで、世間的には共産には柔軟性があり、野党共闘でも頑張っている政党だと印象付けられた」。九州のある県委員会幹部は、こう語った。

 だが、共産党が首相指名選挙で他党候補に投票するのは、平成10年に旧民主党の菅直人氏に投票して以来だ。おきて破りの奇策が浮上するほど、追い込まれているのが実情だといえる。