アベノミクスの真実は単純である。日銀の異次元緩和はデフレ脱却にも、実体経済の回復にも失敗した。
延べ就業時間は微減か、横ばいである。就業者の増加は、短時間就業者が増加したことと、労働生産性上昇率がほぼゼロになった結果である。

円安は企業、特に輸出企業の利益を急増させた。しかし、企業、特に巨大企業は、巨額の利益を設備投資や賃上げに回さず、内部留保に回している。
今では政府・日銀の関係者ですら、それに対する不満を述べる。けれども、こうした状況は以前からの話である。

巨額の内部留保を蓄えている企業の利益を急増させても、内部留保がさらに増加するだけだということは予想されていたことである。

偽りの経済政策――格差と停滞のアベノミクス (岩波新書)

服部成幸