組織犯罪を計画段階で処罰可能にするため、従来の「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設した改正組織犯罪処罰法は11日午前0時、施行された。対象犯罪は277に及び、犯罪実行後の処罰を原則としてきた日本の刑事法体系は大きく変わる。国会審議で政府・与党はテロ対策の側面を強調したが、民進党など野党は捜査機関による乱用の恐れがあるとなお反発している。【鈴木一生、秋山信一】

 同罪の適用対象はテロ集団や暴力団など「組織的犯罪集団」。犯罪を計画した2人以上のうち少なくとも1人が現場の下見などの「実行準備行為」をすれば全員を処罰できる。

 日本が2000年に署名した国際組織犯罪防止条約は「重大犯罪の合意(共謀)」などの犯罪化を義務付けている。そのため、政府は20年東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策として条約を締結する必要があると判断。先の通常国会に組織犯罪処罰法改正案を提出した。

 野党側は「一般市民が処罰される恐れがあり、社会が萎縮(いしゅく)する。対象犯罪も広すぎる」と廃案を訴えたが、自民、公明両党は国会最終盤で、参院法務委員会の採決を省略する異例の「中間報告」で参院本会議採決を強行。改正法は6月15日に成立した。

 施行を受けて、政府は11日にも条約締結の受諾書を国連事務総長に寄託する。寄託から30日後に発効し、外交ルートを介さずに司法当局間で直接、捜査共助ができる相手は現在の32カ国・地域から187カ国・地域に増える。

 一方、共産党の小池晃書記局長は10日の記者会見で「一刻も早く廃止する必要がある。野党で一致して取り組みたい」と重ねて懸念を表明。社民党の又市征治幹事長は「根本的な疑問が積み残されたままの見切り発車だ」と抗議する談話を発表した。

7/11(火) 0:36配信 毎日新聞
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