稲田氏「グッドルッキング」に反発の声 メディア批判も
朝日新聞:2017年7月10日07時38分
http://www.asahi.com/articles/ASK766DD5K76UPQJ00T.html
(全文は掲載元でどうぞ)

朝日新聞デジタルのアンケート
http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20170707003530_commL.jpg

 国際会議で飛び出した稲田朋美防衛相の「グッドルッキング(美しい)」発言に反発するアンケート回答がありました。
発言について記事を書いた記者が、記事に寄せられた反響を含めて報告します。
メディアだって「美しすぎる」などと、その人の本来の活躍とは関係ないところを切り出すではないか、という批判も寄せられました。

■「古くさい男性のよう」

 シンガポールで6月に開かれたアジア安全保障会議で、稲田朋美防衛相が英語の講演中に放った言葉が波紋を呼びました。

 「私たち3人には共通点がある。みんな女性で、同世代。そして全員がグッドルッキング(美しい)!」

 講演の冒頭、共に壇上に上がったオーストラリアとフランスの国防相(当時)と自分の容姿についての突然の言及でした。
政府関係者らが並ぶ会場前方では笑いが起きましたが、私のいた会場後方では顔を見合わせる記者もおり、しんと静まりかえっていました。

 政治部の同僚記者の取材によると、もともとの原稿にこのフレーズはなく、稲田さん本人の発案で直前に入れたそうです。

 翌日、講演を聴いていた外国メディアの記者数人に「グッドルッキング発言について」と話しかけると、みんな苦い顔。
特に仏ルモンド紙の女性記者は「まるで古くさい男性のようだった。女性である大臣自身が、女性差別的な発言をしたのに驚いた」と痛烈でした。

 この時の違和感を6月14日朝刊のコラム「特派員メモ 『容姿』発言の波紋」で紹介したところ、ソーシャルメディアなどを通じて、多くの反響が寄せられました。
「恥ずかしい発言だ」「政治の仕事はタレントではない」といった声のほか、「残念ながら日本ではこういう振る舞いが受ける」との意見もありました。

 一方で、発言を批判しながらも、稲田さんの容姿についても話題にする反応がとても多く、「記事の真意が伝わっていないのでは」と心配になりました。

 著書「お笑いジェンダー論」で男性に対する「ちび・はげ」差別を考察した東京大大学院の瀬地山角(せちやまかく)教授(ジェンダー論)は、発言は二つの問題をはらんでいると指摘します。

 @職務と関係ない属性に不必要に言及すること
A「美しい」などと社会的に優位な特性を誇ったりたたえたりすることで、社会にある差別構造への無理解を示すこと。
特にAを高い立場にある人が発言した場合、放置すれば差別を助長することになりかねません。

 多くの先進国では、こうした発言を不適切だとする傾向が強まっています。
米国のオバマ大統領(当時)が2013年に女性司法長官を「飛び抜けてきれいだ」と紹介した際にはメディアから批判を浴び、発言は長官の「業績や能力をなんらおとしめるものではない」と釈明に追い込まれました。
今年3月、英国の大衆紙「デイリー・メール」がメイ首相とスコットランド民族党のスタージョン党首の会談をめぐる記事で2人の「脚線美」を比較した際にも、国内外から批判が殺到しました。

 「容姿で苦しむ人が社会にいるということを理解していれば『美人』発言はできない。男性政治家について言ったのであってもアウトです」と瀬地山さんは指摘します。

(以下省略)