安倍晋三政権を支えてきた、麻生太郎副総理兼財務相と、菅義偉官房長官との緊張関係が高まっている。麻生氏は自民党第2派閥となる「新麻生派」を立ち上げ、菅氏はこの動きに「反安倍」の臭いをかぎ取り、強く警戒しているのだ。東京都議選の大惨敗を受け、安倍首相は8月上旬にも内閣改造・党役員人事を断行して政権浮揚を狙うが、「政権の守護神」でありながら「犬猿の仲」とされる2人の対立は、永田町の力学に変化を及ぼしそうだ。

 「事態は極めて深刻な状況だ。警察、消防、自衛隊、海上保安庁等々が一丸となって人命救助に全力を挙げて取り組んでもらいたい」

 麻生氏は6日午前、九州北部での豪雨被害への対応を協議する関係閣僚会議で、こう指示した。安倍首相がドイツでのG20(20カ国・地域)首脳会議出席などで不在のため、麻生氏が臨時代理を務めているのだ。

 一方、菅氏は同日の記者会見で、「政府一体となって人命を第一に被災者の救命・救助、被害情報の把握に全力で取り組む」と強調した。内閣府の先遣チームを福岡、大分両県に派遣し、捜索・救助活動に当たる自衛隊、消防、警察などの増員も発表した。

 安倍首相が12日に帰国後、本格的に着手する内閣改造・党人事で、最も注目すべきは、麻生、菅両氏の処遇だ。

 2人は2012年12月の第2次安倍政権発足後から、文字通り「二人三脚」で内閣を支えてきた。

 ところが、麻生氏と菅氏は昨年春、消費税増税をめぐって「断行」と「先送り」で対立した。その後、麻生氏は「衆参ダブル選で国民の信を問うべきだ」と主張したが、菅氏は断固反対。同年夏の参院選では、菅氏の地元・神奈川選挙区で、麻生氏は党公認候補以外を支援するなど、激しい火花を散らした。

 永田町関係者は「2人はもともと、『水と油』。麻生氏は、吉田茂元首相の孫で、政界屈指の資産家として知られる。菅氏は秋田出身で、たたき上げの苦労人だ。麻生氏は酒と葉巻をこよなく愛するが、菅氏は酒もタバコもやらない。官房長官として着実に仕事をこなしてきた菅氏に対し、麻生氏は強い警戒感を持っていた」と解説する。

 これまで、麻生、菅両氏の不協和音を、高い内閣支持率とともに、2人と懇意な甘利明前経済再生担当相が間に入って収めてきた。

 かつて麻生氏は「麻生、菅、甘利がしっかりしていれば、この内閣は大丈夫だ」と語っていた。

 ところが、甘利氏は現金授受問題で昨年1月に閣外に去った。その後、前出のような麻生氏と菅氏の激しいバトルが続いた。最近、「森友・加計学園問題」や「豊田真由子衆院議員の暴言・暴行」「稲田朋美防衛相の失言」などが続出し、内閣支持率は10ポイント前後も急落した。一連の問題対応をめぐって、麻生、菅両氏の確執が改めて高まる兆しが出てきたのだ。

 一触即発の危機を、甘利氏は敏感に察知し、2日夜、安倍首相と麻生氏、菅氏を誘って、東京・四谷の超高級フランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」での会食をセットしたという。

 関係修復が目的だったが、都議選大惨敗の当日だったため、4人は「経済最優先で行こう」「一致結束して頑張ろう」と語り合った。ただ、この会食をめぐっては、自民党内から安倍首相に対して、「どうして、投開票日に…」という批判がわき上がっている。

2017年7月10日 17時12分 ZAKZAK(夕刊フジ)
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/13317817/