東京都議選は、都民ファーストの会の圧勝と自民党の惨敗に終わりました。思えば不思議な選挙でした。市場の問題や、待機児童の問題などの個別テーマはあっても、対立軸になるような政策的争点はない。曖昧戦略を仕掛けた小池知事の戦略勝ちなのですが、投票を通じて有権者のどんな意思が明らかになったのか、はっきりしないのです。小池知事への信任と、安倍政権の政権運営への不信ということではあるのでしょうが。

 都民ファーストについては、政治の素人の寄せ集めであるという批判があります。現時点でその批判は概(おおむ)ね当たっているでしょう。政策的には、自民党より右の方から、直近まで民進党の帽子をかぶっていた方まで。小池さん自身、環境保護以外の政策的立ち位置ははっきりしない方です。

 私は、そのことを指して、「小池さんの国家観が見えない」という趣旨のことをテレビや雑誌などで申し上げてきました。面白いのは、その都度、都民ファーストの関係者に、キョトンとした反応をされることです。通じないというか、同じ言語を話していないような感じなのです。

 都民ファーストの運動は、改憲か護憲かとか、成長重視か分配重視かなどという政策的な対立軸の上には存在しない党なのではないかと思うようになりました。彼らが大事にするのはスタイル。かつての新自由クラブや日本新党のような「スタイルの党」の系譜なのです。大事なのは、おじさん的でなく談合的でないこと、透明性や多様性などのキーワードなのです。

 小池知事が「改革」や「新しい議会」といった言葉を繰り返し使うのは偶然ではない。政策の中身よりも、意思決定の方法や、それを行うメンツが入れ替わっていれば、それで良いという発想なのだと思います。

 イメージ重視な分だけ、支持基盤が割れるような決定はむしろ徹底的に避ける傾向があります。豊洲か築地かではなく、どうしても両方ということにしたいわけです。国政に進出しても、そのスタイルを貫けるのか。私の頭が固いだけかもしれないですが、「9条改憲」はするかしないかだし、「規制改革」もするかしないかだと思うのですが。(国際政治学者)

スポーツ報知2017年7月9日12時00分
https://news.infoseek.co.jp/article/20170708hochi277/