安倍内閣のように首相との関係の中でひと握りの議員が重用されると、能力のない政治家がとんとん拍子に出世して重要ポストに就く。無能大臣の誕生である。

 その典型が稲田朋美・防衛相(福井1区)だろう。第2次安倍内閣の発足と同時に入閣して以来、政府と党の要職を重ねてきた。

 その出世魚ぶりから、一時はメディアに「ポスト安倍の有力候補」、「初の女性首相の最右翼」ともてはやされたが、防衛相になると暗転。無能ぶりと政治家としての欠陥を露呈した。

 森友学園との関係について国会で「顧問弁護士だったことはない。裁判を行なったこともない」と答弁したが、籠池泰典氏の訴訟代理人として法廷に立っていた事実が発覚。それでも「虚偽の答弁をしたことはない」と言を左右にした挙げ句、「記憶が間違っていたのは事実」と謝罪するまで国会を紛糾させた。

 そして東京都議選の応援演説では「自衛隊としてもお願いしたい」と発言し、選挙においては中立な自衛隊がその候補を応援しているかのように解釈できる、と問題視された。となれば、次の選挙戦では有権者の意思を示す「落選運動」という方法も考えられるが、しかし、選挙だけは滅法強い稲田氏だけに変化を付けた落選運動が必要だ。

 そこで注目したいのが、ネガティブキャンペーンだ。あの籠池氏が稲田氏の“応援”をすれば、有権者は稲田氏がついた嘘を思い出す。選挙制度論に詳しい上協博之・神戸学院大学教授が言う。

「政治団体が選挙期間中に落選運動を行なう場合、規制が入るが、一般人であれば制限はない。候補者の街宣中に批判をするのも合法。仮に籠池氏が稲田氏を選挙期間中に批判や応援をしても、当局にそれを止める法的根拠はありません」

 無能大臣といえば、共謀罪法案の審議で「ちょっと私の頭脳で対応できなくて申し訳ない」と、自ら無能であることを認めてしまった金田勝年・法相もいる。

 金田氏は大蔵省主計官を務めた元エリート官僚だが、通常国会では野党の質問に全く答弁できなかった。

「見通しを誤る」という特技を持つのが塩崎恭久・厚労相。第1次安倍政権では官房長官として課題を抱え込み、政策が進まず「官邸崩壊」の原因をつくったといわれる。今国会でも真骨頂を発揮した。

 塩崎氏は飲食店での喫煙を原則全面禁止する受動喫煙防止法案を「今国会で成立させる」と意気込んでいたが、自民党たばこ議連や商工業者と対立、会期末近くに自民党がまとめた妥協案を拒否し、ついに法案の国会提出もできなかった。年金改革では受給カットの一方、年金財源の株運用の拡大を認めて「国民の年金のリスクを高めた」と批判を浴びた。

※週刊ポスト2017年7月21・28日号
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