今年最大の政治決戦とされた東京都議選は、都民ファーストの会が追加公認も含めて55議席を獲得し都議会第一党に踊り出て、自民党は過去最低の23議席という惨敗に終わりました。予想以上ともいえる都民ファーストの会の圧勝に、国政進出するか注目が集まります。一方、国政での“失点”で自滅したとの見方もある自民党にも、今後のどのような影響があるのか。政治学者の内山融・東京大学大学院教授に寄稿してもらいました。

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都議選圧勝で国政進出は? 小池氏に残された多くの“オプション”

[写真]開票直後、当確の報を受けボードにグリーンの花をつけ小さく拍手する小池百合子代表(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
健在だった「小池劇場」

 7月2日に実施された東京都議選では、全127議席中、小池百合子都知事が率いる都民ファーストの会が、追加公認を含めて55議席を取り圧勝した。同会と選挙協力し23議席を得た公明党と合わせ、小池知事支持勢力が都議会の過半数を占めることとなった。一方、自民党は23議席と大敗を喫する事態となった。

 都民ファースト勝利の要因は、何よりまず、小池都知事の劇場型の政治手法が有権者の関心を喚起し、特に無党派層の支持を引きつけたことにある。一人区と二人区に重点を置く選挙戦略と、公明党との選挙協力も奏功した。加えて、加計学園問題などで国政の不透明感が印象づけられていたことも、「都政の透明化」を掲げる都民ファーストに有利に働いたと考えられる。

 対する自民党は、小池知事に「ブラックボックスだ」などと批判されてきており、「小池劇場」での敵役と位置づけられていた。その上、国政での動向が都議選にも大きく影響した。加計学園問題やいわゆる「共謀罪」法(改正組織犯罪処罰法)の強引な採決などで安倍内閣支持率が低下していたことに加えて、選挙直前に豊田真由子議員の暴言問題、稲田防衛相の「防衛省、自衛隊としてもお願いしたい」発言などのアクシデントが重なった。

 こうした中、都民は小池知事の改革路線に期待を表明すると同時に、自民党に「お灸を据える」投票行動を取ったといえる。
水面下で「ポスト安倍」活発化か

 さて、この都議選結果は国政にどのような影響を与えるだろうか。

 まず、自民党大敗が安倍政権への一定の打撃となるのは間違いない。今回の23議席という結果は、都議会自民党始まって以来の最低の数字である。この敗北を受け、自民党東京都連では、下村博文会長や萩生田光一総務会長ら党5役が辞任する方針を固めたようである。下村氏も萩生田氏も安倍首相の側近であることを考えると、「安倍一強」にほころびが見えてきたのではないか。

 一方、安倍首相の責任を問う動きがどこまで出てくるかは微妙である。党内混乱を起こせば自民党の体力低下に追い打ちをかけてしまうことは、多くの議員が認識しているはずである。すぐに安倍首相に代われそうな人材も今の自民党には不足している。

 そのため、倒閣を目指すまでにはいかないが、ポスト安倍に向けての動きが水面下で活発化することになるだろう。特に、石破茂氏、岸田文雄氏、野田聖子氏らポスト安倍の有力候補とされる人たちがどのように動くかが注目される。安倍首相と距離を置く議員たちがポスト安倍のリーダーのもとに結集するようなことが起これば、新たな事態の展開があるかもしれない。