「天下分け目の戦」となった東京都議選は、安倍自民の自滅で、小池百合子都知事の見事な”勝ち戦”となった。

 7月日午後8時から投開票が始まると、下馬評とおり、小池氏率いる地域政党「都民ファーストの会」(以下は都ファ)が圧勝の勢いと報じられ、小池氏が会場入りしてすぐに、30人近い候補者の名前に緑色の花がついた。

「おかげさまで私どもが第1党を確保することができました。ありがとうございました」

 すでに大勝利を予見していたからか、小池氏は淡々とした表情で、興奮した様子は見られなかった。

 記者会見の会場には100人を越える報道陣が詰めかけ、すし詰め状態。都ファ側は小池都知事と幹事長の2人だけが出席した。

 こうなると次なる焦点は、小池氏が勝利の勢いに乗り、かねて噂されていたとおり国政に進出するかだ。

 2日夜の会見でメディアからは早くも国政進出の予定を聞く質問が続いたが、小池氏は「予定はございません。都政に取り組んできたからこそみなさんの支持を得た。知事として五輪・パラリンピック開催など課題が目白押しです。これから1年目で種をまいた都政の実績をつんでいく」などと語った。

 だが、水面下では「国政政党」をめぐる胎動が既に始まっている。

 6月23日には、4月に民進党を離党した長島昭久衆院議員が都民ファーストの会公認候補の応援演説に登場。小池氏や、自民党に離党届を提出した若狭勝衆院議員と共に選挙カーの上に立ち、こう演説した。

「私が左のガケから飛び降りて、右のガケから若狭さんが飛び降りて、真ん中で小池さんに出会いました」

 まるで結党宣言=B前日の22日には、日本維新の会副代表の渡辺喜美参院議員が小池氏との協力姿勢を示したことを問題視され、党を除名となっている。小池氏の周りに、続々と「ガケから飛び降りた」国会議員たちが集結しているのだ。果たして新党結成はあり得るのか。若狭氏を直撃すると、

「(長島氏とは)新党どうこうという話は現在していません。都議選で東京全域を回り、多くの方から『新しい国政政党をつくって』という声をいただいた。都議選の結果と、そうした声を踏まえ国政政党を考えることはあり得ます」

 と、新党の可能性を否定しなかった。都民ファーストならぬ、「国民ファーストの会」が誕生する日も近いのかもしれないのだ。

国政政党をつくる場合、人数がポイントになる。現職の国会議員が5人以上となると法的にも政党扱いとなり、政党交付金を受け取れたり、比例区に候補者を立てられたりするメリットがある。若狭氏、長島氏、渡辺氏にあと2人が加われば、「小池新党」は早くもこの条件をクリアする。事情を知る関係者がこう語る。

「渡辺氏はすでに、自身に近い旧みんなの党出身の複数の女性議員や、民進党の中の保守系議員らに声をかけ、数人から前向きな返事を得ていると聞く。5人を確保する算段はついているようです。渡辺氏自身も次期衆院選への出馬を視野に入れているはず。小池氏がかつて所属した『日本新党』のように、反自民勢力を束ねた野党連合で政権奪取を目指すつもりでしょう」

 ただ、国政で何を目指すのかという政策面はまだ不明で、新党結成の「大義名分」が見えてこない。長島氏は本誌の取材にこう答えた。

「安倍首相が持ちこたえられず年内解散となれば、一気にそういう(新党の)話になる可能性はあるが、大事なのは理念。アベノミクスに対抗する経済政策の軸を打ち出す必要があり、一朝一夕ではいかない。気の早い人もいるようですが、私はもう少しフリーでいます」

 若狭氏もこう語った。

「考え方が一致しない烏合の衆であってはならず、政党交付金目当てとのそしりを受けてもいけない。少なくとも、しっかりした視点で話を進めていくのが大事。都議選の結果を踏まえ、情報公開等を強く進め、いまの政治を変えたいという大きな流れが出てくれば、少なくとも5人は集まるのではないでしょうか」

 着々と進むかに見える国政進出の野望。だが、足元の都政を固めなければ、取らぬ狸の皮算用となるのでは? (本誌・小泉耕平)

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