セクト、内ゲバ、アジビラ、オルグ……半世紀も前の学生運動の時代を、いまだに生きている活動家たちがいる。46年間逃げ続けた中核派メンバーの逮捕劇から、過激派新左翼の「現状」が浮かび上がってきた。

「渋谷暴動事件」──。おそらく60代以上でないと、ピンとこない事件であろう。1971年に沖縄返還協定を巡って、中核派を主とする学生らが渋谷で暴動を起こし、機動隊員の中村恒雄警部補(当時21)がガソリンをかけられて焼き殺された事件である。その実行犯とされた中核派メンバーの大坂正明容疑者(67)が、去る5月18日、広島市内のマンションで大阪府警によって逮捕された

 中核派や革マル派といった新左翼が誕生したのは、50年以上も前の話である。日本共産党の穏健路線などに疑問を抱いた若い共産主義者らが、あくまで武力闘争を主張し創設したのが革共同(革命的共産主義者同盟)だ。

 既存左翼を否定したので、新左翼と呼ばれるが、革共同から1963年までに3度の分裂を経て誕生したのが、中核派と革マル派である。1960〜70年代の全盛期には、両派の活動家は数万人いたと推定されている。
http://www.news-postseven.com/archives/20170624_565074.html
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 しかし、両派は運動の行き詰まりから内ゲバを繰り広げるようになり、数百人にものぼる犠牲者を出した。なかには、無関係な人が間違われて襲われて命を落としたケースもある。本来の目的から逸脱した闘争によって求心力を失い、運動は急速に萎んでいく。50年あまりの年月を経て、両派の現状はどうなっているのか。

「機関紙の発行部数などから推計すると、中核派と革マル派はシンパも含め、それぞれ約3000人。もうひとつの新左翼団体である革労協は100〜200人で、あと10年もすれば消滅すると囁かれている。中核派と革マル派も高齢化という問題を抱えているのは同じで、メンバーの中心は50代〜60代だが、革労協に比べるとまだ組織維持に成功している。

 革マル派のオルグの場は大学で、いまだに一部の大学に自治会やサークルなどの“拠点”がある。中核派もかつては法政大学の自治会を拠点にしていたが、大学側が自治会を解散させたため、近年はいくつかの大学構内や反原発集会でリクルートする手法にスライドしている」(公安関係者)

 最初は正体を明かさずに「戦争法案はおかしいと思わないか」「共謀罪には問題がある」などと声をかけ、興味を示したら集会やデモに誘う。メンバーになると確信できる段階になって初めて正体を明かす。オルグの手法は昔と全く同じだ。だが中核派は近年、武装闘争路線から“公然活動”にシフトしつつあるという。

「中核派は反原発を掲げる学生団体『NAZEN』を創設し、福島県内に拠点として診療所を設置するなど、反原発を前面に出し、反安保、改憲阻止、環境問題、貧富格差是正などを訴える市民団体にも浸透をはかっている。ただ、一昨年夏の安保法案反対の国会前デモでは、中核派の学生が参加しようとしたところ、学生団体のSEALDsから排除されるなど成果は乏しい」(前出・公安関係者)