【SSコンペ】メイ「ったく…部室の掃除も楽じゃな…ん?なんだこの変な封筒」恋「懐かしいですね…お母様の秘密のメッセージです」
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ラブライブ!SSコンペを開催します!
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1685782999/
↑へのエントリー作品です
スパスタ1期放送〜2期放送の間で大筋だけ考えてお蔵入りした話です
コンペのお題が「秘密」と聞いた時にこの話のことを思い出し、せっかくだからエントリーを口実にちゃんと書いてみようかなと思いました
謎解き要素あり
2期最終回あたりの時期に1期の時点のエピソードを回想している設定で書いていくつもりです
長めの話になると思います
エントリー期間内に書ききれることを目標に書いていきます
あと、私独自の解釈も入ってくるのでこの子はこんなキャラじゃないといった意見もあるかもしれません
※スレタイにメイがいますが本編ほぼ出番なしです メイ「秘密のメッセージ…ってこれが?」
恋「あ、実はその中に」
メイ「んー、これ…フロッピーってやつか?」
恋「知っているのですか!メイさん!」
メイ「実物見るのは初めてだけど…この中に入ってるってことかよ」
千砂都「おやおや、なんだか懐かしいものが出てきたね」
メイ「千砂都先輩!?」 千砂都「お疲れ様。様子見にきたよ」
千砂都「なんかゲーム?とかやってサボってないかな〜って、部長として心配でさ」
メイ「私ら信用ねーんだな…」
メイ「なあ、恋先輩からもなんか」
恋「ご心配ありがとうございます。千砂都さん」
千砂都「ありゃー、感謝されちゃったか」
メイ「そうだ……こういう人だったな」 千砂都「ん?その封筒もしかして」
恋「はい、あの時のフロッピーです」
千砂都「大変だったよね。主に恋ちゃんが」
恋「あの時はご迷惑をおかけしました」
千砂都「ふふ、ご迷惑を…か」
恋「はい、ご迷惑です」
メイ「えっと」
千砂都「気になる?」 メイ「まあ…その、さっきから恋先輩と千砂都先輩の間に流れてる妙な雰囲気ももだけど」
メイ「…スクールアイドルの大先輩でこの学校の創立者の秘密のメッセージだろ?気にならないわけないというか」
メイ「ってか今時フロッピー…いや、恋先輩のお母様って神宮時代の卒業生だからその時のか」
メイ「なんだろう。くっ、見てみたいなぁ」
恋「そんなに大したものではないですよ」
メイ「いやいや謙遜はいいよ!恋先輩のお母様はスクールアイドルの黎明期を支えた功労者だろ」 メイ「どんな些細なものでも私には宝物だよ!」
恋「そうですか…とはいえフロッピーディスクですし」
恋「見せることは難しいので、わたくしが代わりにその中身について話す…ということでよろしいですか?」
メイ「うん、聞きたいっ!」
恋「では、コホン…」
恋「時は去年のラブライブ東京予選の終了後、年も明けたばかりの冬のある日にさかのぼります」 〜1年前・早朝・スクールアイドル部部室〜
恋「ふぅ…思ったより早く来られました」
恋「さて、取り掛かりましょう」
恋(なぜ、わたくしがこんな早くに部室にいるか…その前に)
恋(わたくしがこうしてスクールアイドルになるまでに犯してしまった数々の過ちについては、皆さん既にご存知かとは思います)
恋(ご存知ではない方はアニメ1期を見てくださいね)
恋(わたくしがお母様のノートをちゃんと見つけていれば、あのようなすれ違いは起こらなかったでしょう) 恋(そんなわたくしも紆余曲折を経てスクールアイドルとなり、Liella!としてラブライブに挑んだのですが…結果は東京予選敗退)
恋(夢がなかばに潰えたあの日にわたくしはある決意をしました)
恋(あのような思いをしないためにわたくしができることは全てやろう)
恋(あの時のノートのような取りこぼしなどせずに、結ヶ丘の全てを以て今度こそ優勝を成し遂げよう…と)
恋「そのために今のわたくしができること、それは…」
恋「この学校でスクールアイドルをしていたお母様たちの記録と想いを見つけて、繋いでいくことです!」 恋「見たところ、この部室にはかのんさんたちが手をつけていない箇所がまだあります」
恋「そういった箇所にこそ、何か重大な秘密があるのではないでしょうか?」
恋「では、いざ参ります」 〜1時間後〜
恋(む、うー…)
恋(何も…目ぼしいものがないです)
恋「もっと、過去の楽譜ですとか…ライブの記録ですとか…そういったものがあるかと…」
かのん「あー、うん、私たちも初めの頃そう思ったよ」
恋「……!?」 かのん「でも、そういうのは恋ちゃんのお母さんが理事長に預けてたんだよね」
かのん「あのノートの入ってた箱くらいじゃないかな、ここにある大事なものって」
恋「か、かのん…さん!?いつから?」
かのん「あ、なんとなく部室に寄ろうかなって、それで…近づいたら恋ちゃんが中でガサゴソしてたから…その…」 千砂都「恋ちゃん、探し物なら手伝うよ」
すみれ「私にかかれば何だろうとあっと言う間に見つかるったら見つかるわよ」
可可「すみれは深海でエサでも探せデス、グソクムシなので」
かのん「みんなを呼んじゃった」
恋「う…」
恋「見られていたのですか」 恋(あまりの恥ずかしさに後ずさった、それがいけませんでした)
ドンッ…
恋(わたくしの背後には、先ほど物色していた段ボールがありました)
恋(ぶつかったせいでそれらが崩れ…)
ドサアアアアア!
恋「ああっ!」
かのん「恋ちゃん!」 恋「わたくしは大丈夫です!ただ、段ボールが…崩れ…え?」
かのん「え?これ…」
恋(崩れた段ボールのうちひとつの裏に何かが貼り付けてありました)
千砂都「これ…封筒?」
可可「デスね」
すみれ「普通に積んだり下ろしたりしてたら気づかないわよこんなの」
恋「これは…!大発見です!!」
かのん「恋ちゃん?」 恋「恐らくお母様たちの知られざる活動記録が!」
千砂都「そう、なのかな…」
恋「このように隠されていたということは、いずれこの部屋を使うであろうスクールアイドルに直接渡したい特別なものに違いありません!」
すみれ「あー…理事長経由にしたくなかったのは間違いなさそうよね」
可可「隠したまま忘れてシマッタということかもしれマセンが」 恋「中を見てみましょう!さて…何が…」
恋「………?」
かのん「どうかした?何が入ってたの?」
恋「これは…」
恋(封筒の中に入っていたものを取り出して、もう一度よく見てみます)
恋(正方形の、おそらくプラスチック製の、平べったいなにか…一辺は多分10センチもない…) すみれ「それ、フロッピーディスク…?」
かのん「初めて見たかも…」
恋「ふろっぴぃ…でぃすく?」
可可「ほう、これが」
千砂都「まさか本物を見ることになるとはね」
恋「あの、これは何なのですか?」 かのん「うーん、私たちもそんなに詳しいわけじゃないんだけど、フロッピーディスクってのは…」
〜間〜
恋「なるほど、つまりこれはデータを持ち運ぶためのものであり、パソコンで読み書きが可能だと」
かのん「うん…そうなんだけど…」
恋「では、さっそく見てみましょう!」
恋「……」
恋「………?」 すみれ「えーっとね、フロッピーなんだけど…」
恋「すみません、その…」
恋「以前、"しーでぃーあーる"ですとか"ゆーえすびーめもり"の中を見たときは、どこかに入れたり挿したりしたと思うのですが…」
千砂都「あー、そうだったね」
恋「ふろっぴーでぃすくは…どこにも入りそうにないです…」
可可「無いデスからね…フロッピーディスクドライブが」 恋「無い、まさか…」
恋「このパソコンは不良品、なのですか?」
恋「そうだ!パソコン室に行けば!」ダッ!
千砂都「ストップ!ストップ!ストーーップ!」
恋「止めないでください!!!わたくしはやらねばならないのです!!」
すみれ「落ちつけえええ!」
かのん「無いから!パソコン室のもフロッピーのドライブ無いから」 ……
……………
恋「…取り乱しました」
恋(4人ががりで止められ、ようやくわたくしも冷静になってきました)
恋「それにしても…なぜですか!?なぜ無いのですか!?」
千砂都「えーっとね」 千砂都「さっきの説明では言ってなかったけど…」
千砂都「もう使われてないんだよ。フロッピーって」
かのん「お父さんが昔使ってたみたいな話は聞くんだけどね」
恋「ふろっぴーは…もう、いらないということですか?」
千砂都「そういうことだね」
恋「なんでですか!?」 千砂都「それより便利なものが出てきたからかな?」
恋「名前だってかわいいのに!」
かのん「そこ関係ある?」
可可「あー、たしかそんな名前のカエルがいマスね」
可可「けろけろ…」
すみれ「それ以上はやめなさい!」 千砂都「時代に適応できないものは消えていく、悲しいことだけどね」
千砂都「保存容量の不足、衝撃や磁力によるデータ消失の可能性…」
千砂都「なによりCDみたいにまるくないし」
千砂都「フロッピーは負けちゃったんだよCDの持つ"まるのパワー"にね」
恋「そんな…そんな…」
すみれ「フロッピーディスクの中にもまるいディスクが入ってるのは言わない方がいいかしら」 かのん「そんなに落ち込まないでよ。私たちもなんとか中を見られないか方法探すから」
恋「はい…ありがとうございます」
恋(それから外付けのどらいぶ?というものがもしかしたらあるかもしれないと手分けして部室を探しました)
恋(ですがそのようなものは見つからず) 〜放課後〜
恋「はあ…」
恋(授業はあまり集中できませんでした)
恋(この手の知識が皆無なわたくしはまったくもってなにが何やらわからない)
恋(ふろっぴー…その役目をろくに果たすこともできずに時代に置いていかれてしまった存在」
恋「まるで…わたくしのよう」
恋「いえ、一時代を支えたようですし、わたくしと一緒にするのは失礼ですね」 音楽科モブ「あの…葉月さん?」
恋「は、はい!なんでしょう!」
音楽科モブ「えっとさ…今日ずっと元気なかったけど、何かあったの?」
恋「え…」
恋(わたくしとしたことが、みなさんに心配をかけてしまうとは)
恋「…すみません、生徒会長ともあろうものがこんなことではいけませんね」
恋「心配ありませんよ。お気遣いありがとうございます」 音楽科モブ「それなら、まあ…いいけど」
音楽科モブ「はいこれ、申請書ってこれでいいんだよね」
恋「これは…部活動の設立申請書?」
恋「…流しそうめん、同好会…?」
音楽科モブ「あ、うん…音楽とは関係ないのはわかってるんだけど」
音楽科モブ「私のおねえちゃんがさ、別の学校で流しそうめんの同好会やってて…それで思いついたんだよね」 音楽科モブ「うちの学校さ…今は音楽科も普通科も仲良くやってるけど、途中までは揉めたりもしてたじゃん」
恋「そうですね…すみません」
音楽科モブ「あ、そうじゃなくて!選挙とか文化祭のこと蒸し返したいわけじゃなくて!」
音楽科モブ「むしろ葉月さんはあの後でLiella!入って音楽科と普通科の橋渡ししてくれてるし」
音楽科モブ「私も普通科の子と部活して、一緒にもやもやを水に流して、仲良くするきっかけにしたいな…って」 音楽科モブ「ほら、流しそうめんだけに?」
恋「…ふふっ」
音楽科モブ「笑わないでよ」
恋「失礼しました…」
音楽科「…できるかな?流しそうめん同好会」
恋「最終決定は理事長がしますが、わたくしとしてもあなたの要望が通るように尽力します」 恋「できるとよいですね。流しそうめん同好会」
音楽科モブ「うん!よろしくね。葉月さん」
音楽科モブ「じゃあ、帰るかな!」
恋「はい、お気をつけて」
音楽科モブ「あ、そうそう」
恋「??」
音楽科モブ「私たちになんかできることあったら言ってね。葉月さんは私たちの生徒会長なんだから!」
恋「…!!!」
恋「はい、ありがとうございます」 恋(思いもよらないところで、元気付けられてしまいましたね)
恋「さて、色々と気がかりはありますが、まずはこの申請書です」
恋「どれどれ…」
【設立理由】みんなでそうめん流して仲良くなりたいから!
【活動計画】あまり決めずに流れで活動していきたい…流しそうめんだけに!
恋「…さっきの良い話はどこに?」
恋(生徒会での許可は…まあ、実質一人なのでわたくしの匙加減ですよね。許可でよいでしょう…問題は)
恋(……理事長、ですよね) 〜理事長室〜
コンコンコン
理事長「どうぞー」
恋「失礼します」ガチャ
理事長「恋さん、何かしら?」
恋「部活動の設立申請がありましたので、持ってきました」
理事長「あら、そうなの」 理事長「見せてちょうだい、えっと……流しそうめん…同好会?」
理事長「そうね…一応、生徒会長の意見を聞こうかしら?」
恋「アイディアは突飛ですが、設立理由も行動計画もユニークでおもしろいとおもいます」
理事長「読んだのよねこれ」
恋「はい、その上で本人に聞き取りをして設立に足るものと思いました」
理事長「それで許可ね」 理事長「いつもの恋さんならこれを出されて許可はしないと思うんだけど」
恋「それは…」
恋(たしかに、いつものわたくしならば不備のある申請書をそのまま通すなどしない)
恋(これは職務の怠慢と言われてもしょうがない事態です)
理事長「なにか、理由があるのかしら?生徒会長としてのチェックを疎かにするくらい気になることが」
恋「気になること…」 理事長「…ひとまず申請書は預かっておきます」
理事長「まっ、実のところ設立段階でなんかあっても活動がちゃんとしてればいいし…許可する方向で進めるわよ」
恋「お願いします…」
恋(申請書を渡して帰る、何度もしてきた動作です)
恋(ですが、今回は少し違っていました)
恋(わたくしの視界に"それ"が入ってきたから) 理事長「どうかした?」
恋(わたくしを今これでもかと悩ませている、1辺10センチにも満たない前時代の遺物…)
恋「それ…ふろっぴー、ですか?」
理事長「ああ、これ?神宮音楽学校時代の記録よ。古いやつはフロッピーのも多くてね、中のデータを確認し、必要ならば順次ストレージへの移行を…」
恋「中を、中を見られるのですかっ!?」 理事長「な、なにいきなり…そうね。まあ、ギリギリまだ現役で使える外付けドライブを引っ張ってきてだけど」
恋「見られるのですねっ!!」
理事長「そうだけど。何かしら?いったい」
〜間〜
恋「……ということなのです」
理事長「ふーん、なるほどなるほど」 理事長「面白そうじゃない。あの子の残したかもしれないフロッピー…ねぇ」
理事長「おかしな話だけど、あの子だったらやりそうね…ふふっ」
恋(おばさまは椅子の背もたれに体重を預けて何やら昔を思い出しているようでした)
理事長「いいわ。こんなオンボロでよかったらいくらでも使ってちょうだい」
恋「ありがとうごさいます」 恋「では、さっそくかのんさんたちを集めて…」
理事長「待ちなさい!ここに居座るつもり?」
恋「え?」
恋(おばさまが机から何やら四角いもの、恐らくふろっぴーの中を見るための機械を取り出しました)
理事長「これ、部室に持ってっていいわよ。パソコンあるでしょ?それなら使えるだろうから部室でちゃっちゃと解いてきなさい」
恋(おばさまが腕をめいっぱい伸ばして差し出したその機械…机越しに受け取ったそれは思ったより軽いものでした) 理事長「何かわかったら教えてちょうだい」
恋「は、はい!ありがとうございます」
理事長「それから、あまり入れ込んで遅くならないように。時間がかかりそうなら切り上げて明日にしなさい」
恋「わかりました!」
恋(これでついに中を見ることができます…)
恋(お母様たちが残したかもしれないフロッピー、いったい何が入っているのでしょう) 〜部室〜
恋「…みなさん、準備はよろしいですか?」
恋(おばさまから借りた機械をパソコンに接続、これでフロッピーの中身が見られるようになるようです)
かのん「ついにわかるんだね」
すみれ「いざ見るってなるとドキドキするわ」
千砂都「中は、なんだろうね」
可可「レンレン、いきましょう…」
恋「ええ、いざ!」 恋(おばさまから預かった機械に、フロッピーを差し込みます!)
カシャカシャ…ヒューン
恋「動きました!」
千砂都「さてと、中身は…これは、テキストファイルだね」
恋「テキスト…文章ですか?」
千砂都「フロッピーって中のデータが消えちゃうこともあるらしいから心配だったんだけど、大丈夫そうだね」 可可「開いてみマスカ?」
すみれ「開くしかないでしょ…ま、ウィルスチェックくらいはするとして」
恋「えっと、それはどのくらいかかるのでしょう」
すみれ「たかだかフロッピー1枚の中身だし、一瞬で終わるわよ」
千砂都「ではチェック、チェックと」
恋(なにやら千砂都さんがカチャカチャと操作して、本当に一瞬でウィルスチェックは終了しました) 千砂都「まずは、順番通り『1.txt』ってのから見ようか」
すみれ「おー、出た出…へ?」
千砂都「あ、……えっとこれは?」
かのん「これは、なんとも…」
可可「ククはよくわかりませんが」
恋「あ、ああ…」 〜〜〜〜〜〜〜〜
『1.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第一楽章〜
知らない、こんな疼きは…
惰性で生きるだけの私が壊れていく
大いなる闇の一部へと矮小な自我は
Miglationしていく
パワーが、力が私の中に満ちていくのを感じる
夢のようだ、真の私が今始まったのだ
O vos omnes,迷える者は土に還り給え
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 かのん「………」
千砂都「………」
すみれ「………」
可可「ククにはよくわからないデスね」
恋「………」
可可「みなさんどうしマシタ?」 恋「い…」
可可「レンレン?」
恋「いやあああああああああああ!」
恋(ま、まさか…これは…?)
千砂都「…盛大にやらかしてるね」
恋「見ないで!見ないでください!」 かのん「恋ちゃん的にもこれはアウトなんだね」
かのん「と言われても、もう見ちゃったし」
すみれ「受け入れなさい、恋」
恋「そ、そうです!これがお母様の書いたものと断定するのは…」
可可「思いっきり"はなより"と書いてありマスが?」
恋「ああああああああああ!」 かのん「えっと…他に花さんがいたとか…」
千砂都「そうだよ!別に恋ちゃんのお母さんだって決まったわけじゃない!」
すみれ「そうよね、花って別に珍しくもないわ…多分」
恋「………」
かのん「でしょ?」
千砂都「まあ、まだ一個目だし、他のも見てみようよ」 〜〜〜〜〜〜〜〜
『2.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第二楽章〜
望まれぬ文など飾りに過ぎない
すべては陳腐、にもかかわらず
まだ人の子らは言の葉を紡ぐ
終わらないつぶやきに意味などない
ただ空しい空白を埋めるだけだ
論じたところで答えは見えない
悠久を回るのはウロボロスの問いかけ
欲深さでサタンを火炙りにしてしまえ
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 かのん「…おっふ」
恋「…う、うう…」
千砂都「覚悟していても、これは」
恋「…次を、よろしくお願いします」
千砂都「了解」 〜〜〜〜〜〜〜〜
『3.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
HANA
〜第三楽章〜
厄災が睦まじい交わり終わらせる
さあ、まじまじと決意を尖らせる
Lest in peaceする私のシャドウ
さあ、目覚めて進むは裁きの邪道
天秤に掛け足そう戦陣へのエンジン
さあ、駆け出そうまっさらの更に前
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 すみれ「これは何かの歌詞なのかしら?」
可可「レンレン!しっかりしてクダサイ!」
恋「あわわ…あわわわ…」
すみれ「ちんたらやってる余裕は無さそうね、次いきましょ!」 〜〜〜〜〜〜〜〜
『4.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第4楽章〜
C・ウィルソンは弥漫の生より死を尊んだ
情欲からの死を人は求めていると尊んだ
プロメテウスは凶鳥に身を貪られた
いかなる罪かは知らぬが貪られた
メデューサは首を刎ねられた
ペルセウスの叡智によって刎ねられた
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 かのん「はは、過激だね…」
恋「……」
千砂都「恋ちゃん?」
恋「おかあさま…おかあさま…おか…あさま?」
すみれ「ねえ、ファイルっていくつあるの?」
千砂都「あ!そうか…えっと、8つかな」
千砂都「5つ目いくよ!」 〜〜〜〜〜〜〜〜
『5.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第5楽章〜
HYAKUNはIKKENに如かず?
Ah、くだらない
たかだかSEKAIのすべてなど
恐れ多くもPerfectな私には
こんなにも手にとるようにわかる
おお、沈黙は金、私は貝になる
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 可可「かのん!…レ、レンレンがっ!」
恋「オカ、オカカカカカカカカ、オカ…アア」
かのん「恋ちゃん!しっかり!」
かのん「次っ!次だよ!」 〜〜〜〜〜〜〜〜
『6.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第6楽章〜
水…水が無い
パンが無い…渇きと飢えが
地面に倒れる私のそばを皆が通り過ぎる
楽園が崩れ去る
嘘だ終わりたくない!
せめて水を、水をください、ああ
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 恋「…うー、あうあー」
すみれ「恋!しっかりしなさい!恋!」
千砂都「もう、やめた方が…」
かのん「……ううん、続けよう」
千砂都「かのんちゃん!?」
かのん「見てよ、恋ちゃんは諦めてない」
恋「……ん!はーく、はーく!」 すみれ「早く、早く?」
可可「これは催促していマス…?」
かのん「そうだよね、うん」ダキシメッ
かのん「よしよし、私たちも一緒に戦うよ」
かのん「さあ、次だよ」
恋「ちー!はーくぅ!」 かのん「さあ、恋ちゃん!いくよ」
恋「おー!かの!」
かのん「ふふっ…ママって呼んでもいいんだよ?」
恋「んー……かの!」
かのん「ママでいいんだよー」
恋「かの!」 かのん「マ、マ」
恋「か、の!」
すみれ「何?あれ」
可可「ククたちは何を見せられてマスか」
千砂都「7番目のファイル、開くよ」 〜〜〜〜〜〜〜〜
『7.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第7楽章〜
乗り越えろ忘却を、さつきまで
抱いていたものを失つてはならない
どんなことがあつたとしても
恐れずに記憶に向き合うのだ
よしんば傷つくことになつたとしても
いつの日か癒える、恐れるな
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 恋「………!」
恋「…お母…様…」
かのん「恋ちゃん!」
恋「……はっ!わたくしは何を!」
かのん「戻ったかー、残念」
千砂都「じゃあ、次のを…」
『O.txt』
千砂都「ん?あれ?」 すみれ「いいから、ちゃっちゃと開きましょう」
恋「その必要はありません」
恋「……ここで終わりにしましょう」
かのん「え、でもこれは恋ちゃんのお母さんの残した…」
恋「いいんです。もうわたくしは満足しましたから」
恋「それに、これ以上触れるとわたくしの精神が持ちそうにありません」
恋「持ち直しているこのタイミングでやめるのが一番収まりが良いのではないかと」 すみれ「そ…そうね。恋がそういうなら」
可可「ヤバい代物というのはなんとなくわかりました…」
恋「…皆さん、ありがとうございます」
恋「これを書いたのは…十中八九、お母様でしょう」
恋「それは皆さんも薄々わかっていると思います」
恋(皆さん顔を見合わせて、それから絞り出すように話しはじめました) かのん「…そりゃ、スクールアイドル部の部室にこういう形で残っていたわけだし…」
千砂都「恋ちゃんのお母さんたち以外に神宮音楽学校でスクールアイドルをしてた人はいないっぽいし…」
すみれ「花という名前でこのスクールアイドル部の部室を使ってたのは一人だけよね…」
可可「部室の鍵はずっとレンレンの家にあったので、第三者が入ったわけでもないデス…」
恋「はい、しかもフロッピーが使われていたのはかなり昔」
恋「となると…その時期にこの部室を使っていたというところからも絞られます」
恋「………これはまぎれもなく、お母様の黒歴史です」 恋「これらの文章は他愛もない落書きのようなもの…こうしてみなさんと共に見るような価値はおそらく無い」
かのん「………」
恋「なので、ここまでにします」
千砂都「よく考えたら、ちゃんとした資料は学園長にあずけてるんだからここに残ってるわけないよね」
恋「付き合わせてしまい、すみませんでした」 千砂都「さてと、じゃあこれにて今日は解散だね」
恋「わたくしは理事長への報告も兼ねてふろっぴーどらいぶを返しに行きますので」
かのん「ねえ…でもさっき恋ちゃんは」
かのん「本当の恋ちゃんの気持ちは」
かのん「…ううん、またね恋ちゃん」
恋「ええ、また」 〜廊下〜
恋(結果はどうであれ、お母様の痕跡を見つけられた…それだけでも良かったです)
恋(あとは理事長にふろっぴーどらいぶを返して報告するだけ)
恋「それで終わりです」
恋(この小さなふろっぴーに入っていたのは、娘のわたくしから見ても落書きです)
恋(あと、1つファイルはありましたが恐らく同じ)
恋(このフロッピーに価値なんてない)
恋(そう…わかっているのに) 0じゃなくてO.txtなのと、
第三楽章だけHANAが最初に来てるのが気になる。深読みしすぎ? 理事長「その様子だと、何かわかったってわけでもないか」
恋「……え?」
恋「おばさま、どうしてここに」
理事長「私だっていつも理事長室にいるわけじゃないっての」
恋「それは…そうですが」
理事長「さっきは勢いこんで出ていったのに、また随分と気落ちしてるわね」 恋「そうですね…」
理事長「フロッピーの中身は見れた?」
恋「ええ、ですが…中にあったものを考えるとここまでする価値はあったのか」
理事長「ま、とりあえず報告はしてもらいましょうか」
理事長「立ち話もなんだし理事長室行きましょう」 〜理事長室〜
理事長「さてと、では洗いざらい話してもらうわよ」
恋「…あの、報告といいましても特に話すようなことも」
理事長「いーじゃん、いーじゃん、こういうのは形式的にでもやっとくもんよ」
恋「形式的にでも、ですか…では…」
恋(先程、部室で見たフロッピーの中身…あの奇怪な文章についておばさまに報告しました)
恋(そして、おばさまの反応は…) 理事長「ちょっ!あはは、あの子がまたそんなもの書いてたなんて…ぷっ、くく…だめ、耐えきれない…ひひっ!」バン!バン!
恋「…おもしろがるだろうとは思いましたが、机をばんばん叩きながら爆笑されるのは想定外でした」
理事長「でも、全部見たわけじゃないんでしょ?もしかしたら最後の一つはまともかもしれないじゃない?」
恋「そんなことは…」
理事長「見るのがこわい?」
恋「…わたくしは、母の残したものであればなんであれ価値があるとそう思っていました」
理事長「今は違うと」 恋「お母様の遺志を無駄にしない、わたくしはそれを指針にしてきました」
恋「今だって、お母様はわたくしにとって大事な存在です」
恋「ただ…それはわたくしにとってそうだというだけ」
恋「周りの方々にもその価値観を要求し、わたくしの目的のために周りの方々の時間や労力を要求する正当性は無いのでないかと」
恋「…そう思ったのです」
理事長「そう…それが恋ちゃんが花の残したフロッピーの中に見たものなのね」 理事長「…ちょうどいい機会だし、私から言わせてもらうわ」
理事長「…恋ちゃん、もう花のこと追うのはやめなさい」
恋「……え?」
恋(一瞬、すべてが止まりました)
恋(だって、おばさまがそんなことを言うはずがないんですから)
恋(わたくしにとってお母様がどれほど大切か、それをおばさまは理解してくれている、はずなんですから) 恋「…なぜ………」
恋「なぜ…そんなことを、言うのですか」
恋「知っていますよね、わたくしにとってお母様の意志を受け継ぐことは…」
理事長「必ず成し遂げる義務、でしょ?何度もきいたから知ってるわよ」
恋「ならば、どうしてそんなことを…」 恋「もしかして、今日みなさんを付き合わせてしまったからですか?」
恋「生徒会長としての職務がおろそかになってしまったからですか?」
恋「わたくしがお母様を追いかけることで今日のように迷惑がかかるというなら、以後はそのようなことがないように気をつけます!」
理事長「やっぱり、わかってないね」
理事長「それだよ、お母さんを追うのをやめたらって言った理由は」
理事長「…私も含めてみんな恋ちゃんを気遣って言わないようにしてた」
理事長「でもね、これは誰かが言わないといけないから…だったら私が言う」 理事長「恋ちゃんはさ、何をしたいの?」
理事長「この学校で…Liella!で何をしたいの?」
恋「ですから、結ヶ丘をお母様の願いに恥じぬような学校にしたい、Liella!をお母様の後を継ぐにふさわしいグループにしたいというのがわたくしの!」
理事長「そうだね、恋ちゃんはいつもそう言ってる」
理事長「それは立派だと思うよ。亡くなったあの子の想いを未来に繋げたい、うん、すごい立派だ」
理事長「だけどさ、それはこの学校とLiella!を恋ちゃんの思うようにしたいってことだよね」 恋「学校と、Liella!を…」
理事長「そうだよ。学校もLiella!も恋ちゃん一人のものではないのに恋ちゃんの理想に合わせたい、恋ちゃんはそう言ってる」
理事長「それを成し遂げたいなら、絶対に叶えたいなら、胸を張ってそのためにかける迷惑や生まれる犠牲に向かい合わないとなんだ」
理事長「少なくとも花はそれをやった」
恋「それは…」 理事長「周りを巻き込みたくない、迷惑に思われたくない、そんな中途半端な気持ちで何ができるの」
理事長「中途半端な気持ちならさっさと捨たほうがいい」
理事長「学校とLiella!のためにも、恋ちゃん自身のためにもね」
恋「…そんな」
………
………………… 恋(何も言えませんでした)
恋(わたくしはやはり間違っていたのでしょうか)
恋(お母様の意志を継ぎたい、皆さんに迷惑をかけたくない)
恋(どちらも捨てられないわたくしは…間違っていたの
でしょうか)
ドンッ!
千砂都「きゃっ!」
恋「へ?」
千砂都「あいたたた」 恋(考え事に没頭するあまり、前が見えていませんでした)
恋(いえ、それよりも)
恋「千砂都さんが、なぜここに?」
千砂都「なんでって…ここ私のバイト先の近くだよ」
恋「はい…?」
千砂都「そこの屋台、忘れたわけじゃないでしょ」
恋「あ」 千砂都「なーんか恋ちゃんがふらふらしてたから気になって出てきたんだけどね」
千砂都「恋ちゃん、私のこと見えてなくて私がどうしていいかテンパってるところに…ドンッ!」
恋「申し訳ありません…」
千砂都「多分さっきのアレのことだよね?話きこうか」
恋「千砂都さん」
千砂都「ま、私が力になれるかわかんないけどさ」
恋「…千砂都さんはやさしいですね」 千砂都「そ、そっかな」
恋「千砂都さんだけではありません。4人ともわたくしのわがままに時間を割いて、徒労に終わっても文句一つ言わずにいてくれた」
千砂都「…」
千砂都「徒労…か」
恋「はい」
千砂都「恋ちゃんは私たちが優しいから…恋ちゃんに迷惑をかけられても怒らなかったって、本気でそう思ってるの?」 恋「あの?千砂都…さん?」
千砂都「私たちはやりたいことをやっただけだよ?それは伝わってたと思うし、優しさとか言うのは違うと思うんだよね」
恋「そうだとしても、わたくしのわがままであんなことに付き合わせて、本来ならばもっと有意義に使えたはずの時間を」
千砂都「……」
恋「あの後、おばさまに言われたんです。私がお母様の意志を継いでいこうとするなら…自分の理想に周りを付き合わせ迷惑をかけることだってある」
恋「だから、それによってかける迷惑や生まれる犠牲と向き合う覚悟が必要なんだと」 恋「その覚悟がないなら、中途半端な気持ちなど捨てた方がいいと言われてしまいました」
千砂都「あー、なるほどね…うん、ようやく状況が把握できてきたよ」
千砂都「で、理想だか迷惑だか犠牲だかに私たちを巻き込む覚悟とやらが持てない恋ちゃんは…中途半端な気持ちを捨てちゃうの?」
恋「それができれば…きっと楽なんでしょう」
千砂都「……自分の理想のために周りに迷惑をかける覚悟かぁ」
千砂都「あのさ…私がなんで今普通科にいるか忘れたわけじゃないよね?」
恋「はい、忘れるわけがありません」 恋「はい、忘れるわけがありません」
千砂都「私はさ…恋ちゃんのその悩みにはまったくもってピンとこないんだ」
千砂都「だって、何をするにしても誰にも迷惑かからない選択肢なんてないよね」
千砂都「いきなり転科とか退学とかしたらそりゃ迷惑かかるよ?でも、あのままどっちつかずで音楽科にいたらかのんちゃんの力になれなくて迷惑がかかる」
千砂都「結局誰かの迷惑になるなら、私は一番大切な人を助けるために迷惑をかけたいんだ」 千砂都「恋ちゃんだってさ、全く同じじゃないにしろそうでしょ?私にとってのかのんちゃんが恋ちゃんのお母さん」
千砂都「だからさ…恋ちゃんだってやりたいことのために周りに迷惑とかかけちゃってもいいと思うんだ」
恋「そうですか…」
千砂都「ってことでさ…これからも何かあったら遠慮なく言ってよ」
恋「はい、ありが…」
恋(千砂都さんが差し出した手を取…) 千砂都「恋ちゃんだってさ、全く同じじゃないにしろそうでしょ?私にとってのかのんちゃんが恋ちゃんのお母さん」
千砂都「だからさ…恋ちゃんだってやりたいことのために周りに迷惑とかかけちゃってもいいと思うんだ」
恋「そうですか…」
千砂都「ってことでさ…これからも何かあったら遠慮なく言ってよ」
恋「はい、ありが…」
恋(千砂都さんが差し出した手を取…) 恋「…」
恋(取ろうとして、気づいてしまった)
恋「あ…れ?」
恋(わたくしの心がざわついていることに…)
恋「……」
恋(その手を取ることを許さない、大切な人の言葉に抵抗している、わたくしがいることに)
恋「……」
恋「……そういうことだったんですね」 恋「厄介なものです…願いというのは」
千砂都「どうしたの?」
恋「ありがとうございます。千砂都さん」
恋「これから何かあればまた力を貸してもらうことがあるかもしれません」
千砂都「そっか、うんなるほど」
恋「ええ…ですが!」
恋「わたくしにあなたたちを犠牲にしてでも夢を叶えてほしいと言うなら、断固拒否します!」 恋(そう…わたくしは確かに一つ大きな間違いをしていた)
恋(たった一人のためにその他大勢に迷惑をかけることすらいとわないと、万人の正しさを否定してでも胸を張る人を目の前にして気づいてしまった)
恋(『どちらが正しいのかどうかわからない』などという、とても都合の良かった逃げ道を塞がれて…ようやくわかった)
恋「そうやって手を差し出して、わたくしのために何かを犠牲にしようとする…そんな好意を受け入れるわけにはいかない」
恋「だってわたくしにはピンとこないんですから」
恋「犠牲をよしとしてまで叶えるべきものがあるなんて」 恋(そうです…お母様を追いかける夢も、迷惑をかけたくない意地もわたくしは捨てたくない)
恋(ならば、やることは一つ)
恋(どちらも捨てたくないわたくしに胸を張り、どちらもできる道を進むこと)
恋「何かを叶えるために誰かに負担を強いる、犠牲を出す、それらは避けられないのかもしれません」
恋「ですが、それが当たり前だとはわたくしは思いません」
千砂都「私を目の前にしてそれを言うんだね」 恋「はい、だって他ならぬあなたちが見せてくれたんです」
恋「犠牲を否定し続けなければ見れなかった結末を」
千砂都「あれはほぼかのんちゃんが一人でやったんだけどね」
千砂都「あんなうまくいくことなんてないよ?」
千砂都「たまたまあの時は私たちの誰も犠牲にならなかっただけ」
恋「いえ、迷惑も犠牲も無くせるはずです」 恋「迷惑をかけるが、それ以上のものがある…後悔などさせないから、わたくしのかける迷惑に付き合ってほしい」
恋「そう胸を張って言って、わたくしから手を差し出して、手を取らせてともに進む…そして」
恋「迷惑を承知で手を取ってくれた人を後悔させないものを見せる…そうすればいい」
千砂都「そっちはそっちでハードモードだよ」
恋「だとしても、不可能ではないと思います」
千砂都「ま、それは今話すことじゃないか…これからどうするの?恋ちゃん」 千砂都「具体的にはあのフロッピーの中身どうするの?ってことなんだけど」
恋「明日も本格的に迷惑をかけることにします」
恋「だって、わたくしはLiella!とお母様を繋ぎたいのだから」
千砂都「…もうやらないっていったのにやるんだ」
恋「はい、一度した決定を覆す迷惑をかけてでも、わたくしはお母様の痕跡を皆さんと追いたい」
千砂都「うん…予定とはちょっと違ったけどここまで言わせればいいよね」
千砂都「みんな!そういうことらしいから出てきていいよー!」
恋「みん…な?」 恋(千砂都さんが合図をするとともに物陰からあらわれたのは)
すみれ「千砂都だけかと思った?」
可可「ふふ…周囲の警戒は怠るなデスよレンレン」
かのん「いたんだよね…私たちも」
恋「なるほど、たしかにその可能性を考慮するべきでした」
千砂都「これでいいでしょ?かのんちゃん」
かのん「私は恋ちゃんが決めたのならそれを尊重しようって言ったのにちぃちゃんが…」 千砂都「かのんちゃんだって本心ではそう思ってなかったくせに」
可可「かのんがもやもやしてるの見てチサトが緊急会議をはじめると言い出したのデス」
可可「それでここに集まったらレンレンがフラフラーと来マシテ」
すみれ「いやー、びっくりしたわよ恋がここに現れた時は」
かのん「ちぃちゃんは私たちに隠れてって言って飛び出してっちゃったし」
千砂都「うまくいったからいいでしょ」
かのん「だとしても…なんか、ちぃちゃんばっかり活躍してずるい」 かのん「っていうか私は私で恋ちゃんに言いたいことがあるんだけど…?」
恋「かのんさんから言いたいこと?」
かのん「そもそも私たちはあれを迷惑とか思ってないんだよね!なんなら珍しい恋ちゃんの姿が見れてお得まであった!うん!」
かのん「だからさ、迷惑なんて初めからかかってないっていうか…私たちがどう思うかを勝手に想像して悩まないこと!いい?」
恋「は、はい…」
かのん「それに恋ちゃん一人でどうこうできるほど私たちは甘くないから!結ヶ丘とLiella!をなめんな!」
恋「わかりました…」
かのん「…うん!なんかいい感じのこと言えたぞっ!」 恋「たしかに、わたくし一人でどうこうできる相手ではなさそうです」
恋「では、そんなかのんさんたちに改めてわたくしからお願いです」
かのん「さあ、こい!なんでもきいてあげるよ」
恋「まずは…明日、最後の一つを私とともに見てください」
可可「それは迷惑でないと先ほどかのんが…」
恋「ええ、ですからその先も要求しましょう」 恋「一度は意味がないと言いましたが、わたくしは母がなんの意味も無しにあのような文を書いたとはどうしても思えないのです」
恋「だから、みなさんにはわたくしとともに母がなぜあのようなものを残したかをわたくしの納得いくまで共に悩んでほしい」
恋「答えが出るまで何時間でも何日も付き合っていただきます」
すみれ「答えがあるかどうかもわからないものを一緒に悩めか、なかなか酷い要求じゃないの」
恋「はい、ですが最後には誰にも迷惑とは思わせず犠牲を出さずに終わらせてみせます」
恋「この5人だけでなく、この件に関するあらゆる人に対してそれを全うすることがわたくしの必ず成し遂げる義務なので」 かのん「……」
可可「……」
千砂都「……」
すみれ「……」
恋(ぐっ…勢いで押し切れるかと思いましたが、いざやってみるとこれはきつい) かのん「恋ちゃんにしては頑張った方かな…いいね、乗ったよ」
可可「そこまで言われたらやらざるを得ないデスね」
千砂都「かのんちゃんがやるなら私も」
すみれ「ちゃんとやり遂げなさいったらやり遂げなさい」
恋「みなさん、ありがとうごさいます」
恋「では…」 恋(あの日、かのんさんが差し出した手がはじまりでした)
恋(ならば今度はわたくしからはじめたい)
恋(震える手を、みなさんに、4人に差し出します)
恋「……よろしくお願いします」
恋「この大いなる試練、わたくしだけでは超えられないかもしれません!ですから!」
恋「みなさんの力をわたくしに貸してください」
かのん「りょーかい!」ガシッ🤝
可可「合点承知デス」ガシッ🤝
千砂都「やろうよ私たちで」ガシッ🤝
すみれ「やってやろうじゃない」ガシッ🤝
恋「ありがとう、ありがとうごさいます!」 〜翌日・理事長〜
恋「…というわけで、再度フロッピーのドライブをお借りしたいのですが…」
理事長「昨日の今日で駆け込んできたかと思ったら…」
理事長「迷惑や犠牲を受け入れることはできないからチャラにするね…」
恋「はい、それが昨日のおばさまの問いへのわたくしの答えです」
恋「目的も捨てられず、迷惑や犠牲を払うことにためらい心を痛める、どちらも選ぼうともがき続ける」
恋「おばさまが中途半端と言ったわたくしのままで胸を張れる道を探します」 理事長「言いすぎたかなって思ったりもしたんだけど、妙な方向に振り切ったわね」
理事長「好きにやりなさい。そんな顔されたらもう何も言えないわよ」
恋「ありがとうございます」
理事長「止めても無駄だろうしね、親が親なら子も子か」
恋「何か言いました?」
理事長「なんでもない独り言!ほら、みんな待たせてるんでしょ?早く行ってあげなさい」 〜部室〜
恋「さあ!最後のファイルを見ましょう」
かのん「…なんか柄にもなく昨日は青春しちゃったけど」
千砂都「やることはこれなんだよね」
恋「はい!お願いします」
すみれ「たとえ恋が発狂しても、私たちが正気に戻すから安心なさい」
可可「引っ叩いてでも連れ戻しマス!」
恋「これが、困難に立ち向かうということなのですね」
恋「今、お母様の覚悟が、『言葉』でなく『心』で理解できましたっ!」ゴゴゴゴゴゴ かのん(な…なんなの、この恋ちゃんの目)
千砂都(まるで、十年も修羅場を切り抜けてきたかのような…)
すみれ(冷静さと凄みを感じる目っ)
可可(今のレンレンに小細工は通用シマセン!)
恋「読むと心に決めたときにはすでに行動は終わっているのですっ!」
千砂都「いくよ、最後の一つ」
…カチッ 〜〜〜〜〜〜〜〜
『O.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
☆始まりの章☆
HANAより後世へ
私は刻もう
「至上宝物(ブリリアントトレジャー)」
それへの導きをここに記そう
さあ、謎のはじまりだ
まずは私の名前を記した
ここからは楽章を正しく辿ろう
私ははじまりの地平を見た
そこにある古き月の序列を重んじた
言葉の定めは以下の通り
「楽章が始まったら頭を取るが良い」
「異人の頭は異人のままだ」
「やや左にずれたな、少し右に直せ」
「そうだな、異人の頭も直せ」
そうして真実のありかを見つけた
やや具体性に欠けたか、
導きの詳細をここから語ろう
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 すみません訂正
「やや左にずれたな、少し右に直せ」
↓
「やや右にずれたな、少し左に直せ」
左右逆でした
あと昨日からところどころ同じのが二回になってるみたいです
一連の文章はあとでこの後でまとめて出すタイミング作ります 何気にその下も違ってました…
「そうだな、異人の頭も直せ」
↓
「だが、異人の頭はそのままだ」
まとめて出す方は直します 恋「………?」
かのん「あれ?」
すみれ「はじまりの…しょう?」
可可「というより、これはゼロ番デスね。順番がおかしいのデハ?」
千砂都「ああ…そっか、言う前にやめたんだっけ」
千砂都「えっとね、ファイル名なんだけどよく見て」
すみれ「これがどうかしたの?」
千砂都「これね…0(ゼロ)じゃなくて、O(オー)になってるんだよ」 千砂都「よく間違われるんだよね。0とOじゃ全然違う丸なのに」
かのん「そっか、それがファイル名の順に並んで最後になったんだ」
恋「お母様…肝心なところで…」
すみれ「てか待ちなさい…よく見たら」
『作成日時:1900/01/01 0:00』
『更新日時:1900/01/01 0:00』
千砂都「うん、他のファイルもこうなんだよ」
かのん「こんなのできるの?」
千砂都「いじるのは可能なはず…」 恋「あの、わたくしは機械に明るくないのであくまでも書いてあることからの判断なのですが、ここまでの一連の文章はもしかして」
千砂都「うん、最初にこれを読んでいたらだいぶ違っていたね」
かのん「つまりこれは恋ちゃんのお母さんが残した謎解きだった」
可可「デスが、最初になるはずのファイルが最後になってしまった」
すみれ「せめてちゃんとファイル名を見るか並び順逆にしていればね」 恋「謎解きということは」
かのん「うん、やることは決まってるよね」
可可「解きマスか?この謎を」
千砂都「そうだね」
すみれ「三人寄れば文殊の知恵ってくらいだし、五人ならこんなのあっという間よ」
恋「では、謎解き開始です!」 さて、これで出題パートは終了です
ストーリーをこねくり回したためここまで時間がかかってしまいました
これよりLiella!5人が謎に挑む解答パートとなります
今夜あたりには解答パートを始めるつもりです
謎を解くために必要なピースは提示されていますので
後から読んで自力で解きたい方はここで一旦ストップです
解くのに必要な文はこの後にまとめておきます >>120に誤りがあったものを修正
こちらが正式版です
〜〜〜〜〜〜〜〜
『O.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
☆始まりの章☆
HANAより後世へ
私は刻もう
「至上宝物(ブリリアントトレジャー)」
それへの導きをここに記そう
さあ、謎のはじまりだ
まずは私の名前を記した
ここからは楽章を正しく辿ろう
私ははじまりの地平を見た
そこにある古き月の序列を重んじた
言葉の定めは以下の通り
「楽章が始まったら頭を取るが良い」
「異人の頭は異人のままだ」
「やや右にずれたな、少し左に直せ」
「そうだな、異人の頭も直せ」
そうして真実のありかを見つけた
やや具体性に欠けたか、
導きの詳細をここから語ろう
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜
『1.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第一楽章〜
知らない、こんな疼きは…
惰性で生きるだけの私が壊れていく
大いなる闇の一部へと矮小な自我は
Miglation(移行)していく
パワーが、力が私の中に満ちていくのを感じる
夢のようだ、真の私が今始まったのだ
O vos omnes,迷える者は土に還り給え
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜
『2.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第二楽章〜
望まれぬ文など飾りに過ぎない
すべては陳腐、にもかかわらず
まだ人の子らは言の葉を紡ぐ
終わらないつぶやきに意味などない
ただ空しい空白を埋めるだけだ
論じたところで答えは見えない
悠久を回るのはウロボロスの問いかけ
欲深さでサタンを火炙りにしてしまえ
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜
『3.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
HANA
〜第三楽章〜
厄災が睦まじい交わり終わらせる、
さあ、まじまじと決意を尖らせる
Lest in peaceする私のシャドウ
さあ、目覚めて進むは裁きの邪道
天秤に掛け足そう戦陣へのエンジン
さあ、駆け出そうまっさらの更に前
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
作者より
見直して気づいたのですが、この文の一箇所にルール通りに読むとおかしくなる箇所がありました
そこは「取った頭を指示よりも一つ左にずらす」ことで正しくなります 〜〜〜〜〜〜〜〜
『4.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第4楽章〜
C・ウィルソンは弥漫の生より死を尊んだ
情欲からの死を人は求めていると尊んだ
プロメテウスは凶鳥に身を貪られた
いかなる罪かは知らぬが貪られた
メデューサは首を刎ねられた
ペルセウスの叡智によって刎ねられた
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜
『5.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第5楽章〜
HYAKUNはIKKENに如かず?
Ah、くだらない
たかだかSEKAIのすべてなど
恐れ多くもPerfectな私には
こんなにも手にとるようにわかる
おお、沈黙は金、私は貝になる
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜
『6.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜第6楽章〜
水…水が無い
パンが無い…渇きと飢えが
地面に倒れる私のそばを皆が通り過ぎる
楽園が崩れ去る
嘘だ終わりたくない!
せめて水を、水をください、ああ
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜
『7.txt』の中身
〜〜〜〜〜〜〜
〜第7楽章〜
乗り越えろ忘却を、さつきまで
抱いていたものを失つてはならない
どんなことがあつたとしても
恐れずに記憶に向き合うのだ
よしんば傷つくことになつたとしても
いつの日か癒える、恐れるな
HANA
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ちなみに
三番目のに気づいてあらためて全体を見直したところもう1箇所ミスがありました
ここについては最後の答えに及ぼす影響はないと思われるので特に訂正とかはしません
解答編では物語外で補足いれつつLiella!はなぜか正しい文に辿り着きますがご了承ください >>128
「そうだな、異人の頭も直せ」
↓
「だが、異人の頭はそのままだ」
直してませんでした ちょっと考えてみてるけど難しいね。
何ヵ所か違和感ある箇所あるけど、謎に関わるところなのか誤植なのかの判断が難しい 【解答パート】
恋「これで準備はできました」
恋(準備、と言ってもこれまでの文章を全て印刷してホワイトボードへ貼ったくらいですが)
かのん「んー、解こうとは言ったもののどうしたものか」
千砂都「こういうのはひらめきが肝心なんだけど」
すみれ「ま、私にかかればこんなのは朝飯前ったら朝飯前よ」
恋「心強いです!すみれさん」
可可「すみれ、無理をしても恥をさらすだけデス」 可可「では遠慮なく解答ドウゾ、すみれ」
すみれ「まっかせない!」
すみれ「そうね、まずは…」
すみれ「まずは……」
かのん「うん!まずは…?」
すみれ「……えーっと」
すみれ「……ごめんなさい」
可可「そんなことだと思いマシタ」 解いてくれている人もいるようで嬉しいです
解答パートに入るまでにもう少し時間を置くことも考えたのですが、この先にある本当にやりたいことをSSコンペ期間内にやるためにはこのタイミングで解答始めないと間に合いそうにないため解答を進めていきます すみれ「そ、そうよ!最初の文!こういうのは最初の文にヒントが書いてあるものよ!」
恋「では、最初…ゼロ番の文ですね」
すみれ「そうそう、最初の方から順にいきましょう
〜〜〜〜〜〜〜〜
☆始まりの章☆
HANAより後世へ
私は刻もう
「至上宝物(ブリリアントトレジャー)」
それへの導きをここに記そう
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千砂都「うーん、ここは…」
千砂都「……なんかある?」 すみれ「ま、何かあったらまたここを考えるということにしましょう」
恋「次にいきますか」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
さあ、謎のはじまりだ
まずは私の名前を記した
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
かのん「私の名前……」
可可「"はな"…デスか?」 可可「たしかに『HANAより後世へ』と書いてマスガ、何といいマスか違和感がありマス」
恋「普通ならばここは相手の名前だけですからね」
恋「『後世へ』のみ書いて最後に『HANAより』と書くのが通例」
恋「それは当時のお母様も知っていたはず。現に他の文書は…」
千砂都「ん?あれ?」
すみれ「待って!…もしかしたら」 千砂都「うん、すみれちゃんも気づいた?」
恋「ああ、はい……わたくしも理解しました」
かのん「そっか、まずは私の名前を書く…」
かのん「花さんはまずは自分の名前を書いて始めようとした」
すみれ「1楽章から7楽章までで名前から始まるのが一つだけあったわ」 〜〜〜〜〜〜〜〜
HANA
〜第三楽章〜
厄災が睦まじい交わり終わらせる、
さあ、まじまじと決意を尖らせる
Lest in peaceする私のシャドウ
さあ、目覚めて進むは裁きの邪道
天秤に掛け足そう戦陣へのエンジン
さあ、駆け出そうまっさらの更に前
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 千砂都「花さんはまずはこの文を書いたんだ」
すみれ「これが本当の"1番目"だったわけね!」
かのん「でも楽章の順じゃなくていいの?」
恋「これは根拠のない擁護ですが、だからお母様は文章に統一間を出さなかったのだと思います」
恋「そもそもが別々の組曲なら楽章の番号など意味がないので」 千砂都「0番目のファイル名が Oになってたのもヒントだったんじゃないかな?…ファイル名は順番を表す数字とは限らないっていう」
かのん「恋ちゃんのお母さんは、ただ間違えたわけじゃなかったんだ」
すみれ「ファイルの作成日時と保存日時をいじったのはそこで順番に並べる設定で見られたら謎とか関係なく本来の順になるから、とかかしらね」
すみれ「よっしゃ!次よ」
ここからは楽章を正しく辿ろう
かのん「『ここからは楽章を"正しく"辿ろう』ってのは…まあそうことか」 恋「楽章の番号と本来の順は違うということですね」
千砂都「で、そこから…」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私ははじまりの地平を見た
そこにある古き月の序列を重んじた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
かのん「はじまりの地平…」
千砂都「古き月の序列…」
恋「ん?もしかしてですが…」
かのん「恋ちゃんわかったの!?」 恋「はい、わたくしには身近な言葉ですから」
すみれ「ああ…なるほどね。かくいう私も家が神社だし結構すぐわかったわよ」
かのん「んー、なんか二人だけずるい」
恋「そうですね…では一つクイズといきましょうか」
すみれ「あら?恋もなかなか洒落たこと考えるじゃない」
恋「まず、『はじまりの地平』とはそれぞれの1行目のことです」
かのん「それはまあ…なんとなくわかったけど…」 恋「ですからそれぞれの1行目を抜き出してみましょう」
恋「そうですね…3楽章が1番目ということなのでこう並べましょう」
3(1番目)→ とうに睦まじい交わりなど捨てた
1 →知らない、こんな疼きは…
2→ 望まれぬ文など飾りに過ぎない
4→ C・ウィルソンは弥漫の生より死を尊んだ
5→ HYAKUNはIKKENに如かず?
6→ 水…水が無い
7→ 乗り越えろ忘却を、さつきまで
恋「これらにはすべて"あるもの"が隠れています」
恋「そして、それらはある順序で並べることができます」
恋「さあ、わかりますか?」 かのん「"あるもの"って…ん?古き月の序列?」
かのん「あ…ああああ!!」
恋「気づいたようですね」
かのん「えーっと、確か順番は…」
千砂都「ふふっ、かのんちゃんは反応がいいね」
かのん「うん!私にもわかったよ!」
恋「では、解答をどうぞ」 かのん「昔の月の呼び方だね!睦月とか如月とか」
かのん「つまり、順番は…」
睦月→ 3.とうに『睦』まじい交わりなど捨てた
如月→5. HYAKUNはIKKENに『如』かず?
弥生→4. C・ウィルソンは『弥』漫の『生』より死を尊んだ
卯月→1.知らない、こんな『疼き』は…
皐月→7.忘却に負けるな、『さつき』まで
水無月→6. なんで、水が無い
文月→ 2.『文』章など飾りに過ぎない
かのん「3、5、4、1、7、6、2、だね!」
すみれ「さっきが皐月とか苦しいけどね」
恋「そこは同じ文のなかで『失つて』などの"っ"を"つ"にしている箇所がヒントということでお願いします」 あんまり気にしてなかったけど葉月って母親の姓なんだろうか
そうなると恋ちゃんパパは娘婿? 卯と皐で検索かけても見つからなかったのはそういうことか。第7楽章の「っ」が「つ」なのは意味があってスッキリした かのん「で、その後だね」
言葉の定めは以下の通り
「楽章が始まったら頭を取るが良い」
「異人の頭は異人のままだ」
「やや右にずれたな、少し左に直せ」
「だが、異人の頭はそのままだ」
そうして真実のありかを見つけた
恋「セリフが連続していますね」
すみれ「ま、ここらへんは楽勝よ」
恋「すみれさん、わかるのですか?」 可可「どーせ、いつもの根拠のない自信デスよ」
すみれ「あら?根拠がないのはどっちかしら?」
すみれ「『楽章が始まったら頭を取れ』って書いてあるじゃない?」
可可「だから何だと…」
すみれ「ふふ…こういう時に頭を取れってのはね、お決まりのフレーズなの」
すみれ「ずばり、頭文字よ!」
すみれ「楽章が始まったら、だから本来の最初の文…まあ、元々は3番目なんだけど…そこから頭文字を取っていけということじゃないかしら!?」 すみれ「ということで片っ端から頭文字を抜き出していきましょう!」
3.txt(1番目)
→ 厄さLさ天さ
5.txt(2番目)
→ HAた恐こお
4.txt(3番目)
→ C情プいメペ
1.txt(4番目)
→ 知惰大Mパ夢O
7.txt(5番目)
→ 乗抱ど恐よい
6.txt(6番目)
→ 水パ地楽嘘せ
2.txt(7番目)
→ 望すま終た論悠欲
すみれ「どうよ!」 かのん「どうよって言われても…」
千砂都「これは何と反応したものか」
恋「荒唐無稽な文字の羅列になってしまいました」
すみれ「ぬうううう…」
かのん「本当に最初の音だけを拾うとか?」
かのん「えっと、や、さ、え、さ、て、さ」
かのん「…これは無いね」
千砂都「逆から読むとかでも無さそう」
恋「色々試してみましょう」 〜1時間経過〜
すみれ「あー!もう、なんなのよったらなんなのよ!」
恋「わざわざ、セリフで強調していますし、頭の字を使うというのは合っていると思うのですが…」
すみれ「ま、まだよ!」
すみれ「そうよ!こういう時こそ基本に立ち返らないと」
「異人の頭は異人のままだ」
「やや右にずれたな、少し左に直せ」
「だが、異人の頭はそのままだ」
すみれ「この指示の意味を考えましょう」 かのん「……あ、そういえば一つ気になることが」
千砂都「お、かのんちゃんに秘策ありかな?」
かのん「うーん…だけどこれは合ってるのかな?」
すみれ「言ってみなさい、かのん」
かのん「えっと、さっきすみれちゃんが最初の文字を抜き出したよね?」
かのん「で、私は最初の音だけを読んだんだけど…その時に思ったんだよね」
3.txt(1番目)
→ 厄さLさ天さ
かのん「途中の"L"はどう読んだらいいのかな?って」 かのん「だってもともとはLestなんだし」
かのん「まあ、"れ"にしたところで大差ないし、それ以前に最初の音を読むのが違うのかもしれないし…」
千砂都「それだよ!さすが、かのんちゃん!」
かのん「え?」
すみれ「なるほど、"異人の頭は異人のままだ"は最初の文字がアルファベットのものはアルファベットのまま扱えってことかもね」
かのん「あ、あれ?」
恋「現時点では何をするときにそのままにするかはわかりませんが、覚えておきましょう」 千砂都「お手柄だよかのんちゃん!」
かのん「はは…いやー!やっぱり私って持ってるのかなー」
すみれ「じゃあ、後の二つ」
「やや右にずれたな、少し左に直せ」
「だが、異人の頭はそのままだ」
すみれ「これについても考えましょう」
千砂都「右にずれたから左に、ねえ…」
恋「異人の頭…多分アルファベットですね。それはそのままにする」
かのん「異人の頭がさっきので合ってるかはわからないよ」 すみれ「合ってるということにして、間違ってるようならまたそこから考えればいいでしょ」
千砂都「私は合ってると思うけどな」
恋「左…さっきかのんさんが最初の音だけを拾ってたのをずらすとかでしょうか?」
恋「なんというか、五十音表でずらしていくとか…」
すみれ「やってみましょう」
千砂都「だいたいの五十音表は縦に"あいうえお"でその左に"かきくけこ"だよね」
千砂都「えっと……ら、た、あれ?」 すみれ「こうなるとアルファベットが問題なのよね」
恋「それにワ行はガ行とかに飛ばすとして、パ行はどうするのでしょうか」
かのん「横にあいうえおの五十音表かも」
かのん「だから…い、……ん〜」
恋「今度はアの段がすべて行き場を無くしました」
すみれ「うーん、さすがの私も手詰まりかしら…」 恋(それからさまざまなアイディアを試しましたが、どれもうまく行かず…)
千砂都「何も、何も出てこない」
かのん「これ…曲作ってる時になるやつだ…r
すみれ「ああ、もう少しで何か出そうなのに!」
すみれ「ていうか、クゥクゥ!あんた頭いいんだからなんかないの?」
可可「………」
かのん「…クゥクゥちゃん?」
可可「…へ?」 すみれ「へ?じゃないわよ!ぼーっとしてんじゃないの!」
すみれ「こういう時こそ5人で協力しないとなのに気ぃ抜かないでよ…」
すみれ「せっかくこの私が全身全霊をかけて」
可可「…今日のすみれはなんか偉そうデス」
すみれ「へ?」
可可「すみれはうるさいデス!ククだって…」
可可「いえ、すみまセン。黙っていたのはククの落ち度デス」 かのん「えっと、クゥクゥちゃん?」
すみれ「クゥクゥ、あんた…なんかおかしいわよ?」
可可「そうデスかね…」
可可「ククはいつもどおりだと思いマスが?」
すみれ「何かと突っかかってくるのはいつものことだけど、なんていうか」
可可「……」
すみれ「ごめん、私の勘違いかもしれないんだけど」 可可「…なんデスか」
すみれ「クゥクゥ、あんた…随分と長い間しゃべってないわよね」
可可「……」
すみれ「もしかして、その…」
すみれ「話に、ついて来れてない…とか?」
可可「……」
可可「…………」コクリ
可可「みんなの話……ククあまりわ゛から゛ないデス」 かのん「クゥクゥちゃん…その」
可可「みんな…ごめんなさいデス…クク…バンガりました、なんとかしようって….でも…」
可可「でも、わから゛ない゛んデス…」
すみれ「ごめん、あんた普段日本語それなりにできるからてっきり」
可可「いつもの話くらいならできマス!ククは日本に来たかったノデ、お母さんに教えてもらいマシタ!」
可可「でも、これは、こういうのは…違いマス」 すみれ「いやその…わからなかったら、きくとか…」
可可「わからないククへの説明などで立ち止まるくらいなら、みなさんにはククなど気にせずに先に進んでほしいデス」
可可「ククは自らの力でみなさんに追いつくので」
可可「だって、ククは…ククは…」
可可「みな゛さん…の足、引っ張るのイヤな゛ん゛デス…」
可可「だけど、そう思ってマシタのに、悔しい気持ちどんどん大きくなって…さっきレンレンに偉そうにしマシタのに…」 かのん「落ち着こう!一旦落ち着こう!」
可可「對゛不゛起…沒能゛幫上任゛何力量、對゛不起ィ…!」
すみれ「私が悪かったわ!だから…」
可可「反゛正我什゛麼゛都做゛不了ァ…!」
ダッ!
恋「可可さん!」
恋(勢いよく部室を飛びだしてしまった可可さん)
恋(すかさず止めようとしたすみれさんでしたが)
ガシャーーーン
すみれ「きゃあああっ」 これはギャグパートなのか、謎解きのヒントなのか…中国語版の五十音表的なのがあるのかな 恋(勢い余ってテーブルに激突、テーブルの上にあったパソコンはもちろん、わたくしたちのノートや筆記具まで床に散乱してしまっていて…)
すみれ「ちょっと…待ちなさいよ!」
恋「…すみません」
すみれ「なんで恋が謝ってるのよ」
恋「手を取ってくれた人を後悔させない、そう大見得を切っておきながら…可可さんの異変に気づけなかった」
すみれ「それは私たち4人同じでしょ…なんなら下手に突っついた私のミス」
すみれ「ここは私に任せてよ。意地でもクゥクゥ連れ戻すからさ」 恋「ですが…」
すみれ「ああ!もう、面倒くさいったらありゃしない!」
すみれ「あのね、巻き込んだ人後悔させないとか、恋は言ってたけど」
すみれ「そこを恋が全部やる必要ないんじゃない?適材適所よ」
恋「適材適所?」
すみれ「そっ!できるやつができることやりゃいいの」
すみれ「恋と手を繋いだ私がクゥクゥを連れ戻す、それもまた間接的に恋の手柄ってことでいいでしょ」 すみれ「っか、クゥクゥもクゥクゥよ!馬鹿じゃないの?できないから置いて行っていいとか、自分で追いつくとか…」
すみれ「…いや、馬鹿だったのは私ね」
すみれ「なる早であのバカ捕まえてくるから、恋は散らばったもの片付けて可可が帰ってきた時に笑顔で出迎える練習でもしときなさい!」
すみれ「じゃあ、行ってくる!」 恋(そんなこんなですみれさんが飛び出して、残された3人で片付けを始めたものの)
恋「行かなくてよかったのでしょうか…」
かのん「恋ちゃん、悪い癖出てるよ」
恋「悪い癖…ですか!」
千砂都「ここで見せるのは責任感じゃなくて余裕だよ」
かのん「私も心配だけどさ、ここは可可ちゃんとすみれちゃんを信じて待つところかなって」
かのん「私たちの目があったら二人とも意地張っちゃうだろうし、当人どうしで話させないと解決しないよ」
恋「そういうものなのですか?」 千砂都「それに部室をこのままにしとくわけにもいかないしね」
かのん「私たちが今動かすべきは手だと思いまーす」
恋「はい…」
恋「パソコンは…これ、壊れてませんよね?」
かのん「うーん、一回電源入れてみる?」
恋「はい、えっと…ここを押して…」
恋(みなさんの筆記具を拾い集めるかのんさんと千砂都さんを横目にパソコンを起動させます)
恋「えっと、パスワードは……」 恋(やはりまだ、パソコンの操作には慣れません…パスワードを入力するのにもみなさんの何倍もかかります)
恋「えーっと、どこでしょう…」
かのん「!!……ちぃちゃん!恋ちゃん!これ見て!」
千砂都「なになにー?って…これ…」
すみれ
恋「それは、可可さんのノートですか?」
かのん「つい中身が見えちゃって」
恋(可可さんがとっていたノート、そこに書かれていたのは) 恋(わたくしが印刷してホワイトボードに貼った、本来ならば写す必要などない文の全文写し…さらに)
『読み方が大切?』
『昔の月の名前?←あとで調べる!』
『アルファベットはそのまま?』
『そのままでないかも、ダメなら戻す』
恋(他にもいくつもいくつも)
かのん「これ、さっきまで私たちが話してたことだよね」
恋「そう…ですね」
恋(すべてを聴き取ることはできなかったのでしょう。ですがそれでもわたくしたちがしたやり取りのほぼ全てが綴られていました)
恋(わたくしたちの話に何としてもついて行こうとする可可さんの執念がそこにありました) 恋「…え?」
かのん「どうしたの?」
恋「あの、ここなんですが…」
恋(その執念の成果ともいえる、ある箇所…)
恋(そして、ノートパソコンの操作に不慣れなわたくしがさきほど凝視していたあるもの…)
恋「これと組み合わせてみたら…」
恋「ずらす、というのはもしかしたら…」
恋(ずっと閉ざされていた扉が、やっと)
かのん「え…あ…そうか…」 恋「こうすれば、読めます…よね?」
かのん「うん…そうだ…そうだよ!」
恋「伝えましょう!可可さんと、すみれさんに!」
かのん「うん!善は急げだね!!」
千砂都「すみれちゃんに今どこにいるか聞いてみる」
千砂都「あ!すみれちゃん!…うん、見つかったんだ!さすが!」 千砂都「でさ…ちょっと今からそっち行きたんだけどいい?是非とも可可ちゃんに伝えたいことがあって」
千砂都「うん!じゃあそこで待ってて」
かのん「ちぃちゃん!」
千砂都「うん!バッチリ捕まえたって」
恋「では、行きましょう!まずは、可可さんに感謝と賞賛を伝えないと」
かのん「うん!もちろん、"これ"と"これ"を持っていってね!」 〜かのんたちの教室〜
千砂都「いた!!いたよ!!かのんちゃん!恋ちゃん!」
かのん「お待たせっ!」
恋「よかったです。本当に」
可可「ごめんなさい、レンレン」
恋「わたくしの方こそすみません…」
可可「……」
恋「……」
すみれ「そこ!妙な罪悪感で黙らない!」 千砂都「それにしてもよく一人で可可ちゃん捕まえられたね」
すみれ「こんなの楽勝よ。可可の行きそうなところなんてお見通しなんだから」
すみれ「それで見つけたらあとは…その…私のショウビズ力でちょちょいのちょいよ」
恋「ショウビズ力ですか?」
可可「たしかに、あのようなものを見せられたら止まらざるを得ないデス」
可可「本当に見事なド…」
すみれ「黙っててって言ったわよね?」
すみれ「…ってそんなことより!可可に伝えたいことって何?」 可可「話題をそらしマシたか…よほどあのドゲザが」
すみれ「なんなのかしらったら!なんなのかしら!!」
かのん「なるほど、(土下座を)できるやつが…」
千砂都「できること(土下座)をやったんだねぇ…」
恋「これが適材適所…勉強になります!」
すみれ「伏線回収みたいにするな!」
かのん「そうだね、すみれちゃんの見事な土下座の話は後でゆっくり聞くことにして話を進めないと」
すみれ「もう…好きにしなさい…」 恋「では、わたくしから」
恋「可可さん、ありがとうございます。可可さんがいてくれなかったら…この暗号は解けなかったかもしれない」
恋「これのおかげで最後のピースが埋まりました」
可可「それは、ククのノート?」
かのん「ごめん!その…はずみで中を見ちゃって」
かのん「あと、ついでになんだけど中をみんなに見せちゃってもいい?」
可可「それは構わないデスが…書いたあったのなんて皆さんが話していたことほぼそのままデスよ」 恋「はい、可可さんはそのまま書いてくれていました」
恋「わたくしたちがあの文をどう読んだかを聞いたそのままにです」
恋「…このように」
すみれ「なによ…これ…」
すみれ「クゥクゥ、あんたこんなことしてたの?」 恋(可可さんのノート、そこにあったのは…)
恋(わたくしがホワイトボードに貼った暗号の全文の写し…そして)
恋(その読み方を示すアルファベットが上下に所せましと書かれていた、いえ…おそらくこれは)
恋「海外の方々が日本で読み方の分からない言葉を見た時、その読み方をどうメモするか…」
恋「もちろん、ひらがなを使う人もいるでしよう…」
恋「ですが、"ひらがなで読み方を記す"という行動は幼少期からの繰り返しでひらがなと音がダイレクトに結びついているからできることなんです」 恋「可可さんだってひらがなの読み方はわかる、でも目まぐるしく変わっていく状況の中で即座に読み方をメモするには"音からひらがなへの変換"などという余計な手間は省きたかったのでしょう」
恋「だから、可可さんは別のものを使ったんです」
恋「アルファベットで日本語の読み方をストレートに記録できる…あるものを」
すみれ「そっか、ローマ字」
恋「はい」
恋「ピンインでしたっけ?中国語では読み方をアルファベットのようなもので表記するとききますし、可可さんにとって読み方をアルファベットで表すというのは馴染み深い方法なのでしょう」 すみれ「とはいえ…」
恋(すみれさんが可可さんのノートに書かれたローマ字の列を睨みながら顔をしかめる)
すみれ「頭を取るとかあったでしょ?ローマ字に直して最初の文字を見たところで読めなくない?」
すみれ「左にずらすにしてもアルファベット順でずらしなんかしたらそれこそよくわかんない文字列になるわよ」
恋「そこで、これの出番です」
恋「部室から持ってきたノートパソコン、これがあれば全てが解決するでしょう」
すみれ「どういうこと?」 恋「お母様はパソコンで文章を書いた、ならば…」
恋「その間、お母様の見える範囲にはずっとあったんです」
恋「パソコンのキーボードが」
恋「とりあえずですね…一つやっていきましょう」
恋「わかりやすいのはこれですかね」
1.txt(4番目)
→ 知惰大Mパ夢O
かのん「一番最初に見た文から『楽章が始まったら頭を取るが良い』をしたやつだね」 千砂都「漢字になってるのは最初の音だけにすると」
しだおMぱゆO
すみれ「これをローマ字の最初のアルファベットだけにするのよね」
SDOMPYO
すみれ「これでいいのかしら?」
恋「ここで部室から持ってきたノートパソコンの出番です」 恋「キーボードに照らし合わせてそれぞれを一つずつ左にずらしていくと」
SDOMPYO
↓
ASINIOTI
千砂都「ただし、ここで最後の指示…『いや、異人の頭はそのままだ』を忘れちゃいけない」
千砂都「もともとアルファベットだった4文字目のMと最後の Oはそのままにしないとだね」 千砂都「だから、正解は…」
ASIMOTO
かのん「これなら読めるよね」
可可「あしもと、デスか」
すみれ「なるほどね。意味不明だった右とか左とかもキーボードって考えたらむしろそのままの指示だったわけか」
恋「思い返せばヒントはありました」
恋「まずは名前から始めると書いた名前が"花"でも"はな"でも"ハナ"でもなく"HANA"」
恋「あの暗号ははじめからローマ字だったのです」 千砂都「だから、正解は…」
ASIMOTO
かのん「これなら読めるよね」
可可「あしもと、デスか」
すみれ「なるほどね。意味不明だった右とか左とかもキーボードって考えたらむしろそのままの指示だったわけか」
恋「思い返せばヒントはありました」
恋「まずは名前から始めると書いた名前が"花"でも"はな"でも"ハナ"でもなく"HANA"」
恋「あの暗号ははじめからローマ字だったのです」 千砂都「それに異人の頭とはいえ、頭だったら見た目はそう変わらないはず」
千砂都「アルファベットという同じ見た目で揃える方が文にはあってるか」
すみれ「可可…」
すみれ「すごいじゃない!アンタがやったのよ!私も他の誰も見つけられなかった」
すみれ「よかった!本当に、本当によかった!」
可可「な、なぜククよりもすみれが喜ぶデスか!?」
すみれ「ごめん私…クゥクゥのことちゃんと見れてなくて…」 すみれ「ごめんね…ごめえええん!」
可可「喜んだかと思えばいきなり謝らないでくだサイ!」
すみれ「あんたはちゃんと戦ってた。自分にできることを最大限やってた」
すみれ「今日だけじゃない、周りよりもできないことがあろうといつか追いつくって必死に追いかけて、あきらめなかった」
すみれ「忘れてたわ。クゥクゥ、あんたは頭がいい以上にあきらめが悪いやつだった」
すみれ「それを何もやってないとか、頭がいいんだからとか…」 可可「いえ、何もできていなかったのは事実デス。最後の最後で偶然たまたまうまく行っただけで」
かのん「それは違うとおもうよ」
可可「かのん…」
かのん「偶然なんかじゃないよ。全文書き写して、私たちの話から読み方をかかさずメモするなんて普通はやらない」
かのん「可可ちゃんがどれほど必死にくらいつこうとしたか、恋ちゃんの力になろうとしたかこのノートをみれば誰だってわかる」
かのん「その結果がこれ。可可ちゃんが諦めなかったから掴み取った成果だよ」
恋「はい、恐るべき執念と言えます」 可可「そこに意地になって余計に迷惑かけてしまうこともありマスがね」
すみれ「そうね、でもそれがクゥクゥのやり方なんでしょ?」
すみれ「私もなんで聞かなかったのかなんて聞いちゃったけどさ、そういうのは聞く努力も一人でやる努力も放棄してるとか…結果的に失敗したとかそういう奴にかける言葉よ」
すみれ「絶対に自力でやり抜く、頼らずに成功しますってやって本当にやり遂げたやつには何も言えないわ」
すみれ「好きにしなさいな。その代わりちゃんとやり遂げろ、本当にやばくなったらその時には意地はるなってだけ」 可可「はい、心得マス」
すみれ「だから…だからね…」
すみれ「ありがとおおおう…ごめえええええん!!!」
可可「あの!?そこからなんで泣くデス!?」
すみれ「だって…可可が…私が!ちゃんとやっててたのにわからなくて!!」
可可「日本語おかしくなってマスよ!」 ………
………………
すみれ「………」
かのん「落ちついた?」
すみれ「」コクン
かのん「そ…そっか」
可可「ま…まあ、ククが話してなかったという指摘はククのことちゃんと気にしてないと出ないと思いマスので」
可可「………ありがとデス…すみれ」 千砂都「まったく、可可ちゃんは恐ろしいよね。結果が出るかどうかなんてお構いなしにここまでやるなんて」
千砂都「って、転科ならまだしも退学まで持ち出した私が言うのはおかしいか」
可可「そこまで褒めてもらえるとなんだがムズムズしマス」
かのん「褒めてるのかな、これ」
可可「……ククはレンレンの役に立てたと、そう胸をはってもよいデスか?」
恋「はい、今日一番の功労者です」 可可「よかったデス…ククはちゃんとできることをできてたのデスね」
すみれ「とはいえ!!癇癪起こさずにいてくれたらもっとよかったけどね」
かのん「復活はやっ!」
千砂都「ジェットコースターみたいだね」
可可「む、ククはかんしゃくなど起こしてマセン!」
すみれ「さすがにそれは無理があるわね〜」 可可「だいたい元々はすみれが!」
可可「……というより、さっきの号泣はどこに消えたのデスか?」
すみれ「あれは気の迷いですけど〜?私が可可ごときのために泣くわけないでしょ」
千砂都「はいはい喧嘩しないの!」
恋「えっと、とりあえず残りのを解いてしまいますか」 恋(解き方さえわかればあとは簡単)
恋(やっとお母様の残した本当の言葉が見えました)
すみれ「これが…答え…」
千砂都「やっと…解けた」
可可「できマシた…」
かのん「あとは、この通りに最後の仕上げをするだけか」 恋「ですがその前に…」
かのん「うん、あれを確認しておこう」
可可「今さら見るまでもないデスがね」
恋「あ、あとその気になっていることが…」
恋「実は…」 …………
………………
恋「ということがありまして」
恋「その時は特に疑問に思わなかったのですが…」
千砂都「あー、うん…それはちょっとひっかかるよね」
恋「やはり」
千砂都「うん、だってさ…恋ちゃんが今まさにやってるでしょ?」 恋「知らなかったとは思えないんです」
恋「それに…知っていたらおかしいですし」
千砂都「聞いてみる価値はあるかもね」
かのん「んー、私もさ恋ちゃんの話きいてずっと気になってることあるんだよね」
…………
………………… 恋「……あれ?なんででしょう」
かのん「だよね!別々にしないよね」
かのん「よかったぁ!ようやく言えたよ」
恋「ならばもしかしたらこれも…」
すみれ「何かあるの?」
可可「聞きますよ」
…………
…………………… すみれ「なるほどねー」
恋「違和感というほどのものでもないのですが」
可可「それ単体ではおかしくないデスが、ついつい行動に出てしまったのデスね」
すみれ「総合したらクロってことかしら?」
恋「それを含めて確かめに行きましょう」
すみれ「あ、だったら…いいアイディアが」
すみれ「あのね…」 〜結ヶ丘女子高等学校某所〜
恋(お母様の残した暗号を見つけて始まった試練…いくつかの手順を経て浮かびあった文章は)
『TAKARA HARIJI CHOUNO ASIMOTO BUSITU NOHEYA BANIRETE』
恋(『宝は理事長の足元、部室の部屋番いれて』でした)
恋(何年もかけてわたくしたちに託された言葉の結末がどうなるのか、確かめに行くことにしましょう)
恋(おそらくは…いえ、やめておきましょう)
恋(最後の最後まで何が真実かはわからないですからね)
(注釈)
出題にミスがあったため
3.txtの3行目がL、2.txtの8行目がTになります
『TALARA HARIJI CHOUNO ASIMOTO BUSITU NOHEYA BANIRETT』になるはずなのですが、花さんの霊的な何が奇跡的にそこの変換を上手いことやってくれたことにしてください 〜翌日朝・理事長室〜
コンコンコン
理事長「はい、どうぞ」
恋「失礼します」
理事長「…恋ちゃんたちか」
理事長「で、なんの用?って聞くまでもないか」
恋「はい、わかりました。お母様からのメッセージが」 恋「昨日の時点では奇怪な文章だったのですが、どうやら中身は暗号だったらしく…」
理事長「それを解いたってわけね…で、花はなんて残したんだい?」
恋「『宝は理事長の足元、部室の部屋番いれて』…それがお母様からのメッセージでした」
理事長「理事長のあしもとって…ここ?」
かのん「そうらしいんですよね」
千砂都「何か心当たりあります」
理事長「いや、私の足元には確かにあるよ…こんな感じに」
理事長「ものをしまっておけるスペースが」 理事長「とはいえ、ここは私たちが通ってたころからあるし、私もなんだかんだでここは開けてないんだよね」
すみれ「そうなの?」
理事長「そうよ。せっかくだから開けてみる?」
可可「是非ともデス」
ガチャ
理事長「よし、開いたわよ」 理事長「ああ!でもすっきりしたわ。昨日じゃただの変な文章だったっていうじゃない」
理事長「やっぱり最後まで見てみないとわからないものね」
恋「…やはりそうでしたか」
恋「おばさま、芝居はやめてください」
理事長「いやいや芝居って」
恋「…おばさまはなぜ、最後の文を見たからわたくしたちが暗号に気づいたと思ったのですか?」 恋(そう…昨日わたくしはたしかにこのフロッピーの中身にお母様の奇怪な文章があったこと、そして最後の文だけはみ 見られなかったことを報告した)
恋(そして、今日になってあれが暗号と気づいたとも言った)
恋(その間を繋ぐ事実を意図的に伏せたままに)
恋「"昨日の時点では最後の文書を見ていない"と"今日になって暗号だと気づいた"、この両者を聞いたところで最後の文に暗号だと示唆するものがあったなんて断定できません」
恋「だって、暗号と示唆するものがすでに読んだ箇所にあったのかもしれないですから」
理事長「先ほどのはまるで、最後の文を読めば暗号と気づくと知っていたかのような話ぶりでしたよ」 理事長「たまたまよ。たまたま最後のファイルにこれは暗号ですって書いてあったのかなって思ったの」
理事長「もちろん最後のファイルなんか見たことないわよ?あくまでも推測」
恋「そうですか、ですが…最後のファイルにおばさまがこの中を知っていたという証拠があるんです」
理事長「何よ、それ…」
恋「一緒に見てみますか、最後のファイルを…千砂都さん」
千砂都「了解!」 恋(取り出したのはパソコンとフロッピーとドライブ、もちろんすでにフロッピーの中身を見られるようにしています)
恋「おばさま…この中から"最後のファイル"を開いてもらえますか?」
恋(千砂都さんがフロッピーのアイコンをクリックし、中のファイルが開かれる)
『0.txt』
『7.txt』
『6.txt』
『5.txt』
『4.txt』
『3.txt』
『2.txt』
『1.txt』 理事長「なによ…」
恋(おばさまの操作する矢印はまっすぐに一番上に向かい、ファイルを開いた)
恋(表示されたのは今日ようやく見ることになった最後にしてはじまりの文章)
恋「それが最後のファイル…ですか?」
理事長「なによ?何かおかしいの?」
恋「まっさきにそのファイルを開こうとした…それが何よりの証拠です」
恋「最後のファイルなら普通は『7.txt』か並び順で『1.txt』だと思いますよ」 理事長「いやいや、昨日恋ちゃんが話してくれたでしょ?その時にファイル名聞いた気がするわよ」
恋「そうですね。昨日わたくしはおばさまに見た中身を伝えました」
恋「ただし、最後のファイルの名前だけは伝えようがなかった。見ていないのだから当然です」
恋「わたくしが伝えられるファイル名は『1』から『7』まで、そして後一つ残っているならば…『8』と考えるはず」
理事長「あら、そう断定するのはなぜ?あれから時間も空いたし逆方向に『0』かもって…」
理事長「それにこんなの消去法でしょ?私、こういうのは早い方なのよ」
恋「ゼロ…ですか?」
理事長「まあ、これゼロじゃないわよね…O(オー)でしょ?」
恋「かかりましたね…おばさま」 恋「よく見てください」
理事長「なによ…あれ?これってまさか…あなたたち変えて……はっ!!」
恋(すみれさんの提案した罠におばさまは見事にかかってしまった)
恋(ごくごく単純で、少し手間がかかる程度の簡単な罠に)
恋「はい、それはオーではありません…ゼロです」
恋「あのファイル名がまさかこのように使えるとは思いませんでした」
恋「あのファイル名ゆえにこの仕掛けの成功率は上がっていたようなものですから」 恋「先ほどのは一般論ですが…ここからはおばさまの頭の中を想定してお話しします」
恋「おそらくおばさまの思い浮かべていた画面は2通り」
恋「一つはわたくしたちが目にした『1.txt』〜『7.txt』が並びその後に『O.txt』がある画面」
恋「もう一つはその逆、『O.txt』が一番上でその下に『7.txt』〜『1.txt』の順に並ぶ画面」
恋「今の画面の『ゼロ』が『オー』に置き換わった画面と言ってもよいでしょう」
恋「ですよね、すみれさん」 すみれ「そう、ファイル名の昇順と降順の表示ってやつよ」
すみれ「作成日時も保存日時も無い同然なんだし、サイズなんかで並び替えてどうするんだって話だし…まあ他に色々あるにしろこの2通りよね」
すみれ「だから最上に『ゼロ』がある画面を『オー』が降順で上に来てるだけと思ってしまったってところかしら?」
恋「おばさまがどうファイルを選ぶか、どのファイルを選ぶかなんてどうでもよかったんです」
恋「目的はおばさまに存在しないはずのオーを読ませること、ただ一点でした」
恋「ファイル名の変更まで一緒に言及してくださるのは予想外でしたが」
恋「………わたくしたちがファイル名を変えたことを指摘する…それは中身を知っていたと白状するも同然ですし、観念してください」 理事長「こうやってゼロが1番上にくるようにしたのは…」
すみれ「私よ、ちなみにこのファイルは正確には恋のお母さんの作ったファイルじゃないわ」
すみれ「データとは言え恋のお母さんの書いたものだもの、ちゃんと元のはそのまま保管してある」
すみれ「ファイルをコピーして、同じように作成日時と保存日時をいじってデータサイズをこういう順になるように調整して、サイズ順に並べ替えたってわけ」
すみれ「調べてみたら日時変えるのは思ったより簡単だし、もとのサイズはゼロが一番大きかったし、他のファイルはほぼ横並びだったからわずかな調整で済んでよかったわ」
理事長「その様子だと気づいてカマをかけたってところ?」
恋「はい、この暗号は少なくともお母様ひとりが考えたものではない」 理事長「いつ気づいたのかしら?」
恋「もしかしてと思ったのはここに来る直前です」
恋「ですが、根拠となる出来事があったのは昨日ですね」
恋「おばさまは3つミスをしていました」
理事長「あら?なにかしら」
恋「一つ目はわたくしがここでフロッピーを見つけた時」
恋「学校にかかわるフロッピーディスクをまるでわたくしが気づくように机の上に置いていました」
理事長「それがおかしかったの?私こう見えても結構いい加減なんだけど?使ったときにそのまま置いてたかもよ」 恋「はい、部活の申請を活動がちゃんとしていればいいなどどいうくらいにはいい加減です」
恋「なのでわたくしも疑問には思わなかったのですが…」
かのん「ここからは私に任せてよ」
かのん「フロッピーを机の上に放置していたのは、ずぼらだったからでわかるんだけどさ」
かのん「それを使うためのドライブは引き出しの中に入っていたんですよね?」
かのん「フロッピー単体だけ机の上に出して、なにをしていたんですか?」 かのん「あのフロッピーって結ヶ丘の資料なんですよね?で、その中身を移し替えようとしていた」
かのん「その作業のためにフロッピーを出してたらフロッピードライブも使ってるわけで、ドライブを机の中になんて入れてない」
かのん「逆に作業が終わってドライブを机の中にしまってるなら、一緒にフロッピーもしまうと思うんですよ」
かのん「ま、理事長がおっちょこちょいでドライブだけしまってフロッピーを机の上に…なんてのも無くはないけど、フロッピー単体が置いてあるのってそんなにないと思います」
かのん「もしかしたらフロッピーを机の上に置いて誰かに見せたかったのかなと思ったり?」 理事長「恋ちゃんがフロッピーがどうのこうのって言ってたって聞いてね…もしかしたらと思ったんだ」
理事長「理事長室に来るようだったし、ま…フロッピー見せれば食いついてくるかもって」
恋「なるほど、やはりあの人が…」
恋「いましたね…わたくしがフロッピーについて口にしたのをおばさまに話すかもしれない、なおかつ理事長室に来るきっかけに関わる人が」
恋「思い返せば、あの時のおばさまはあんな申請書を見せられたにも関わらず意外なほどに物分かりが良かった。いくらあまり物事に拘らない人だとしても…まるでその裏にある理念をすでに聞いていたかのように」 理事長「ははっ、流しそうめん同好会だっけ?『私のせいで恋ちゃんに迷惑かけたくない!文書くのは苦手だから直談判しにきた』って…昼休みに飛び込んできて」
理事長「まあ…言ってることはなかなか芯があったし、許可はするから形式上申請書は出しときなさいって言っといたの」
理事長「その時よ、朝からなんかずっとフロッピーがどうとか呟いてたって聞いたのは」
理事長「まさか本当に文章書くのが壊滅的であんなのが来るとは思わなかったけど…ちょうどいいから恋ちゃんにそれとなく悩みないか聞くのに利用させてもらったの」
恋「あの…すみません…」
理事長「ん?」
恋「わたくし、朝からずっと…フロッピーがどうとか言ってたんですか…」
理事長「そう聞いてるわよ?」
恋「ま、まあ!とにかく1つ目はその通り」 恋「2つ目はわたくしにフロッピードライブを手渡した時のことです」
恋「座ったまま、手を伸ばして…思い返せばまるでその場を動いたら都合の悪かったかのように渡していました」
可可「ここは可可の出番デスかね」
可可「とはいえ、これは他の要素のおまけみたいなものデス」
可可「たとえ席を立ったとこで、レンレンに足元が見えることはなかったはず」
可可「デスが、それでも立ち上がることにためらいが生まれてしまった…」 可可「どんなきっかけで何が知られてしまうかわからない、だから必要最低限の動きですませかったのデスね」
恋「その結果が不自然な姿勢での受け渡しだったのでしょう」
恋「とはいえ、初日の終わりにはわたくしを理事長室に誘ったりもしていましたし、あのタイミング限定で都合が悪い何かがあったくらいでしょう。これはあくまでも補足程度です」
恋「そして、3つ目…おばさまは昨日の時点であのフロッピーの中身を知っていることも暗号を解くべき場所も知っていることも口走っていたんです」
恋「たしかこのようなやりとりがありましたよね」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
恋「では、さっそくかのんさんたちを集めて…」
理事長「待ちなさい!ここに居座るつもり?」
恋「え?」
恋(おばさまが机から何やら四角い箱、恐らくふろっぴーの中を見るための機械を取り出しました)
理事長「これ、部室に持ってっていいわよ。パソコンあるでしょ?それなら使えるだろうから部室でちゃっちゃと解いてきなさい」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 千砂都「ここは私の出番かな?」
千砂都「あのフロッピーの中身を見るだけならさ、ドライブを借りる必要もなく一瞬で終わるんだよね」
千砂都「パソコンとフロッピーの方持ってきてドライブ繋いで見る…これで終わり」
恋「あの時のわたくしはフロッピーの中身を見るという行為にどのくらいの時間がかかるか知らなかったので疑問にも思いませんでしたが」
千砂都「理事長が知らないはずがないんだよね。フロッピーの中身見るのに時間がかからないことくらい」 千砂都「そしてこれは…知ってるはずがないことを知っていたという発言でもある」
千砂都「フロッピーの中身見たら居座ることになるかもしれないって知らなければこんなことは言わないよね」
恋「最後の目的地となる理事長室に長居されたくないという気持ちが出てしまったというところでしょうか」
千砂都「そしてこの会話にはもう一つおかしなところがある」
千砂都「『部室のパソコンを使うように』というのはわかるんだ。フロッピードライブだもんね」
千砂都「パソコンによっては使えない可能性もあるから部室のパソコンは対応しているって情報をくれたのはありがたい」 千砂都「だけど、見る場所についてなんで『部室で』と言及したのか?ノートパソコンだから持ち歩けるし、どこで見てもよかったはず」
千砂都「知っていたんですよね?あれには最後の最後に部室に関する情報が必要なことを」
理事長「…はあ」
理事長「まったく、我ながら穴だらけじゃない」
恋「ゴール地点から改めて見たらという話であり、そこまで穴を隠せていた時点でなかなかのものだと思います」
恋「お母様がおばさまを協力者としたのも納得ですよ」
理事長「でもさ、解かせておいてなんだけど暗号なんか解かなくても隠せる場所なんて限られてるのよね」
恋「はい…よく考えたら暗号を解かなくてもここ以外に隠しようがないんですよね」 千砂都「結ヶ丘ができた後、どこがどうなるかなんて未知数だもん。隠したものが暗号なんて関係なく誰かに見つかるなんて事態はいくらでもありえる」
かのん「恋ちゃんのお母さんが作る学校って言ってもさ、どの部屋がどう使われるかをコントロールなんてできないよね」
可可「ここに改めて学校を作るのがいつになるのかも不確定だったデショウし」
恋「それでも、お母様の意志を継いで暗号を解いたものしか見つけることができない方法があるとするなら」
恋「宝自体を"信頼できる人"が守る場所に置き、その宝を手に入れる鍵が"意志を継いだもの"に確実に渡るようにする…これでしょう」 すみれ「理事長室の場所なんてそうそう変わらないし、協力者を理事長にすれば見張りにもなる」
すみれ「部室の鍵は学校じゃなくて自分の家に置いておけば渡したい人に部室ごと渡せるわよね」
恋「残念ながらお母様は亡くなり自らの手で後継者に渡すことはかないませんでしたが…」
恋「わたくしの勘違いで危うくダメになりそうではあったものの、そこもクリアされた」
恋「……というのが、わたくしたちLiella!がお母様とおばさまの謎に対して出した解答です」
理事長「…満点以上の大満点よ。私たちの思惑も超えて文句のない答えを出してくれた」 理事長「そうね、想定してたのとは違う展開にはなったけど目的は達成したしまあいいわ」
理事長「あなたたちに謎を解かせて最後に宝を渡す、それができてよかった」
理事長「なんせ、この暗号は昔わたしが…」
理事長「…いや、これは今は関係ないわね」
理事長「じゃあ、見ましょうか。あの子が残してくれたものを」
恋「はい…」 恋(理事長室の理事長席の下、台所などにあるような床下収納の中には…)
恋「箱…ですね」
恋(一辺15センチほど、ほぼ立方体といっていい形の箱がありました)
千砂都「で、ダイヤル式の鍵付きと」
かのん「どう考えてもこれを外せってことだよね」
すみれ「まっ、ここの答えはわかりきってるわよ」
可可「はい、なにしろ毎日のように見てきたノデ」
恋「はい、"4"と" B"ですね」
ガチャ…
恋「開きました!」 かのん「さーて、中には何があるのかな〜?」
理事長「何を入れたのやらね」
恋「知らないんですか?おばさまも」
理事長「そこだけは教えてくれなかったのよ」
恋「……これは」
恋「……紙が一枚?」
かのん「それだけ?」
恋「読みますね」 後継者さんへ
ここまでよくぞ辿り着きました
私なりに何かご褒美を用意しようと思ったのですが
結局、このような文を残すこと以外に思いつきませんでした
宝があると書いていたのに、と文句もありますよね
でも、私は嘘を書いたつもりはありません
私の願いが叶っているなら、私の宝物はあなたたちの目の前に絶対に存在しているはずです
ここであなたちに一つの言葉を贈ります。
こんな暗号に向き合い、その意味を解き明かしたあなたたちには必要のない言葉かもしれませんが…
「胸を張って夢を語ってください」
これは私の宝物が私にくれた言葉です
この場所があなたたちにとっても宝物になることを祈っています
あなたたちの未来に幸あれ
"大先輩"より 恋「これが…お母様の…」
恋「やっとたどり着きました…お母様」
すみれ「なんとなく言いたいことはわかるわ」
可可「デスが、どういうことデショウ?レンレンのママの宝はなんなのです?」
恋「わかりませんか?」
恋「理事長の足元にあり、今わたくしたちの目の前にあるもの」 恋「この学校ですよ」
千砂都「あ」
かのん「そっか、物理的にも意味的にも理事長の足元には学校がある」
恋「学校という施設だけでなく、そこでの経験や人間関係も含めてお母様は宝物と称したのでしょう」
理事長「………」
恋「おばさま?」 理事長「あ、いや…なんでもないの」
千砂都「いやー、うん!なんか納得したよ」
可可「そうデスね。学校を救うためにスクールアイドルとして活動し、卒業後も学校の復活のために戦ったレンレンのママらしいです」
恋「あの…これは」
理事長「箱ごと持っていっていいわよ。もうここにあっても仕方ないでしょ」
理事長「ほらほら、いつまでも理事長室にいないの!解散」 〜部室〜
千砂都「お母さんからの手紙か〜、よかったね恋ちゃん」
恋「はい…これは何よりも貴重な宝物です」
可可「あれ?箱に何か書いてありマスよ?」
千砂都「本当だ!ほら、底に」
恋「あ…」
恋(手紙を出した時には気づきませんでしたが、箱の底の部分に文字がありました)
恋「えっと…」 〜〜〜〜〜〜〜
最後の暗号
〜〜〜〜〜〜〜
再演をしましょう
まずは楽章のうちの5つ
その最後のフレーズに隠れた
何度も何度も巡る子たちを見つけてあげよう
2人足りないけれど心配はないわ
そうしたらその子と同じ地面の最後
そこにいる子の頭をありのまま見てあげよう
並び順は巡る順番よ
この箱の上にいた人とこの箱の中の"私"
二人のはじまりで足りないものを埋めて進もう
古き月の並びはまだまだ続くはず
次に来るべきものを最後に結んであげて
それが私の伝えたい言葉
あなたに伝わると信じています かのん「これは…また」
すみれ「暗号解いてまた暗号なんて」
恋「……解きましょう!私たちで」
可可「ククたちに解けないものなど無しデス」
千砂都「やっちゃおうか!」
……
……………… 恋(お母様の最後の暗号、最後の仕上げに5人で解いたその答えは…)
恋「これは…」
すみれ「そっか、うん私にもわかるわ…この意味が」
かのん「なるほどね」
千砂都「そうなるとここまでの一連の文章は」
可可「まさかの真実、デスね」
恋「本当に、わたくしは幸せものです…」 恋(さて、暗号解読はこれにて一件落着…)
恋(わたくしの目の前にはお母様の残した結ヶ丘という宝物と)
恋(Liella!という宝物と)
恋(そして学年を一つあげ、2年生となっての新たな日々があります)
恋(道は険しいかもしれませんが、手を差し出して繋がりを作り、胸を張って歩いていきます)
恋(繋いだ手と手の強さがわたくしの理想への道を作ると信じて) 〜〜〜〜回想終了〜〜〜〜〜〜
恋「というわけです」
千砂都「いや…ははっ、思い返すと我ながら恥ずかしい…」
メイ「……」プルプル
恋「……あの」
メイ「うおおおおおおお!!すっげええええ!なんだよその神エピソード!!」 千砂都「ん、んん?」
メイ「おいおいおい…スクールアイドルのレジェンドともいえる恋先輩のお母様の残した暗号?それを解き明かすために奮闘する娘?でもって一度は挫折と迷いの中にありながら、自分のやりたいことに気づいて!理事長とLiella!との熱い舌戦で」
メイ「あああああああっ!言語化が言語化が追いつかねーーよ!なんだよこの気持ち!!」
恋「これは…満足していただけたんでしょうか」
メイ「満足なんてもんじゃねーよ!!そんなの超えた湧き上がるものをなんて言ったらいいかわかんねーー!」
メイ「そっかぁ!こういう試練を乗り越えた先に今の先輩方がいるんだな!うんうん」 恋「あの…ですが…」
恋「こう…話の中では一大決意して歩き出したみたいな風になってますが、そう簡単にわたくしも変われないといいますか」
恋「メイさんもご存知のようにわたくしは2年生になってまた不甲斐ない事態に陥って…」
メイ「え!?……ああ……」
恋「はい…ゲームに熱中してこのようなていたらくに…」
メイ「えっと…うーん…」 恋「なかなか人は変われないものです」
メイ「いや、それは…違うんじゃないかな」
メイ「だってさ…恋先輩はちゃんと自分から助けを求めただろ」
恋「?」
メイ「その、後輩の私に対してどうなのかってのは置いといてさ…私が恋先輩がゲームはまってるの知った時にしろ、その後にしろ」
メイ「助けてほしいって自分から言ってくれたじゃんか」
千砂都「まぁ、メイちゃん以外への助けてはかのんちゃんが動いたからな上にメイちゃんに発破かけられてようやくという説も…」 メイ「細かいことは置いといて!」
メイ「恋先輩はどう思ってるか知らないけど、私は…その…変わってないなんてことはないと思う」
メイ「私だってLiella!に入って変わったところあるって思うし…2年やってりゃ私たち以上に変わってるはずじゃないかと」
メイ「って、何偉そうに語ってんだ私はっ!?」
コンコンっ!
メイ「おっと!誰かきたなっ!」 音楽科モブ「あ!いたいた恋ちゃん!」
恋「あなたは流しそうめん同好会の」
メイ「別の意味のレジェンドがきた!?」
音楽科モブ「聞いてよお!理事長ったらひどいんだよ」
理事長「あのね…あんな計画通るわけないでしょ!」
千砂都「あんな計画?」
音楽科モブ「おっと、嵐さんは興味津々かな?その名も…」
音楽科モブ「結ヶ丘まるまる流しそうめん大会!!」
千砂都「まる…まるっ!!?」 理事長「学校を一周する流しそうめんレール作って、みんな集めて、流しそうめんパーティ!って…」
理事長「まったくいつもいつも…常識でものを言ってちょうだいな…頭痛い」
音楽科モブ「えーっ、だってお姉ちゃんのところはオッケー出てましたよ」
理事長「他の学校は他の学校!ここは結ヶ丘なの!」
理事長「こんなことならちゃんと設立の時に止めとくんだったわ…」
恋「うーん、わたくしも許可してあげたいところなのですが」
音楽科モブ「お、恋ちゃんはわかってるね!お姉ちゃんのところすごいんだよ!なんと…逆流流しそうめんってのがあって」 恋「流しそうめんが…逆流するのですか?」
音楽科モブ「そうそう!まあ逆流するのは水なんだけどね!その水流に乗せて流しそうめんとか、あとは船の模型なんかも流して…」
恋「それは、楽しそうですね」
音楽科モブ「でしょでしょー!もしかしたらその逆流流しそうめんだってできるかも…」
理事長「そうやって、その場の勢いとその場しのぎで作られた見通しゼロの計画書がこれというわけね」
音楽科モブ「理事長お願いしますよ〜。流したいんです、そうめんをみんなで」 理事長「だったら、まずはちゃんと周りを納得させるものを書きなさい!あなたもうすぐ3年生でしょ!」
音楽科モブ「わかりましたよ…」
理事長「そうだ、恋ちゃ…じゃなかった葉月さん、ちょうどいいから少し理事長室まできてもらえる?」
理事長「来年度の新入生について、話したいことがあるの」
メイ「来年度の…」
千砂都「そっか、メイちゃんたちにも後輩ができるんだね」
千砂都「そして、ついに私たちも3年生か」
千砂都「部室の掃除は私とメイちゃんがやっとくからさ行っておいでよ、生徒会長さん」 〜理事長室〜
理事長「いやー、明日渡そうと思ってたんだけどね」
理事長「生徒会長がいるなら今渡しちゃってもいいかなと」
恋「はあ…」
理事長「あ、そういえば!さっき持ってたあの封筒って」
恋「おばさ…すみません、理事長も覚えていたんですね」
理事長「忘れるわけないわよ」
理事長「どう?あの時と今を比べて」 恋「あの時は迷惑をかけたくないという気持ちが強かったのですが、今は逆の立場からも考えられるようになったと思います」
理事長「逆ね」
恋「はい、先輩という立場になってわたくしもわかりました」
恋「思いやりや意地…迷惑をかけるのをためらう理由はいくつもあるのでしょう…それは個人の流儀であり、譲れないものであり大事なもの」
恋「ですが…それはかける側の話」
恋「案外、迷惑をかけられる側というのはかける側ほど気にしていないのですね」
理事長「………今だから言うけど、あれはね…昔、まだ私と花が学生の時に花が私に出した謎解きなんだ」 理事長「最後の箱は私の時には無かったけどね」
理事長「あと、恋ちゃんたちはあれを学生時代の花が書いたと思ってたみたいだけど、実はちょっと違うのよね」
理事長「どう?衝撃の事実」
恋「えっと…大枠は当時のものの流用ですが、あの謎自体はずっと後にお母様とおばさまが作ったものですよね」
恋「当時のお母様があれを書くのは不可能でしょうから」
理事長「驚くと思ったのに、もう知ってたの?」 恋「はい…証拠もありますので」
理事長「あら、証拠って何かしら」
恋「それは…今は秘密ということにさせてください」
理事長「……そう、じゃあきかないであげましょう」
恋「はい、では失礼します」 恋「…ふぅ」
恋「さて、わたくしももう最高学年ですか」
恋「後進の育成、卒業後の進路に向けての研鑽、そして…」
恋「前人未到のラブライブ連覇、やるべきことは多いです」
恋「まだまだ未熟なわたくしですが、つないでいきましょう」
恋「迷惑なわたくしと共に夢を目指す人の輪を、この結ヶ丘で!」 〜エピローグ〜
理事長「秘密か…やっぱりあなたの子ね、花」
理事長「あーあ、年甲斐もなく思い出しちゃったわ」
理事長(あの頃の私はいつも焦ってた。花たちが学校のアイドルとして活躍して、私たちがそれを支えて…それでも廃校は止められなくて…)
理事長(そんなある日、花が私にあの謎ときを出した) ※理事長の名前がわからないので名前無しセリフ=学生時代の理事長のセリフとして書いています
〜◯◯年前〜
〜神宮音楽学園・理事長室〜
「謎は解いたけど…なんのつもり?」
「『タカラハアナタデス』って…こんな紙切れ、理事長の椅子の下に貼ってさ」
花「最近、元気ないなって」
「当たり前でしょ、だって…もう私たちにできることなんて」
花「何も無い…か」 「私たちにできることなんて最初から無かった」
「全部無駄だった…花たちがアイドルはじめたのも…私たちが学校全部で花たちの応援したのも」
花「……私はそうは思わない」
花「だって、私には夢ができた…私の人生をかけて成し遂げたいものが見つかったんだ」
「夢?」
花「ねえ、私と学校を作ってみない」 「学校を…作る?」
「なに…………ふざけてるの?」
花「私は真面目に言ってる」
「まだわからないの?」
「私も、花も、他のみんなも全力を出した!その結果がこれなんだよ!?」
花「うん」
「どんなにがんばっても届かなかった、どんなに声をあげても、どんなに時間をかけても、できないものはできないって知るだけだった」
「一生をかけて成し遂げたい夢?そんなの勝手にやってよ!私の人生なんだと思ってるの?」 花「そうだね…うん」
花「でもしょうがないよ、私…やりたいんだもん」
「……は?」
花「ここにまた学校を作って、私たちがこの学校でやったこともできたつながりも無駄じゃないんだって言いたいんだもん」
「…花のやりたいことのためにどれだけの人を巻き込んで、どれだけのことをやらないといけないか…わからないわけじゃないよね」
「夢って言ってるけどさ、それがダメになった時どうなるか考えた?」
「アイドル活動で学校を救うなんてのとは比べものにならないくらいたくさんの人の人生を巻き添えにして…迷惑かけちゃうんだよ」 花「考えたよ、それでも私は今こうやってあなたに話すことを選んだ」
花「絶対にここにまた学校を作るって、そう決めた」
「どうやって?学校のみんなで手を繋いだ、先生方も大人の人も協力してくれた、それでもダメだった私たちがどうやって」
花「もっともっとたくさんの人と手を繋ぐ!ここで繋いだよりももっとたくさんの人と!」
花「この学校で、アイドルをやって、手を繋いでそれでもダメだったとしても、世界にはもっとたくさんの人がいる!」
花「叶える力が足りないなら、足りるまで手を繋ぐ」
花「それしか思いつかないから、それを一生かかってやってみる」 花「だって私は…まだ終わらせたくない」
花「私と手が繋がった人たちと証明したい、私たちが結んだつながりは夢を叶えられるんだって」
「……あきれた」
「どんな大層な計画をしているのかと思ったら、そんなの今までやってきたことと同じじゃないの」
「ほんと、迷惑な人よあんた」
花「これがどんな迷惑なことか、私だってわかってる…」
「いつも花はそう」
「やりたいことがあったら私の事情なんて考えずに、一緒にやろうって言ってくる」
「そのせいで私がどれだけ迷惑かけられてきたか」 花「そうだね…今まで何度も迷惑かけた…」
花「でも、この手は絶対に引っ込めないよ」
花「だって!私はまずあなたと手を繋ぎたいの!私のそばでずっと手を繋ぎつづけてくれたあなたと、これからも手を繋いで夢を叶えたいの!」
「だったら…せめて胸を張ってそのくだらない夢を語ることね」
「私の隣でこれから先ずっとその夢を押し付けて、繋がりとやらを広げて行くんでしょ」
花「……いいの?」
「もともと私には他にやりたいこともなかったしね」 「だけど、私はやるからには成功したいし、私を巻き込むに足りる自信を持った人に巻き込まれたい」
「私に申し訳ないとか、そんなこと一言でも言おうもんなら花の夢には付き合わない、それでいい?」
花「それは…大丈夫」
花「私、あなたに迷惑かけるのは慣れてるから」
「慣れちゃいけないものもあるわよ…」
「あーあ、まさか暗号ちまちま解いたら人生が決まっちゃうなんて思わなかった」
「ん?『タカラハアナタデス』って」 花「あ、気づいちゃった?」
花「そうなのですよ。最終的にタカラを手に入れたのは私なのです」
花「私の夢の実現にはあなたが絶対に必要だから、どうしても手に入れたかったんだ」
「ったく、なんで私なのよ?そりゃ腐れ縁でずっと一緒にいたけどさ」
「そこまで私にこだわる理由がどうもわからないというか…」 花「えー、私はあなたからいっぱいもらってるんだけどな」
花「今日もものすごいものもらっちゃったし」
「何よそれ?私は花になんもあげてないわよ」
花「ま、話せたら話すからさ…今は秘密ってことにさせてよ」
…………
…………………… 理事長「まったく、なんだかねー」
理事長「『宝はあなたたちの目の前』とか『これは宝物が私にくれた言葉』とか」
理事長「そんで『宝は理事長の足元』ときた…あたし自身も、この学校も全部まとめてってわけか、花」
理事長「ま、私も胸を張りたいから…守らせてもらうよ花の残した宝物ってやつをさ」
END これにて終了です
長々とお付き合いいただきありがとうございました
多くの作品が読まれるであろうコンペの作品としてこんな長いの書いてどうするんだという気持ちが湧いてきてますが、書ききれてよかったです
ここで一つ出題
なぜ恋は一連の暗号は花が学生時代に作ったものでないとわかったのか?
まあ、ここまで読んでくれた人ならどこにヒントがあるかは悩むまでもないと思います
一応、確定とはならないけど補完程度になる要素も作中にあります
気が向いたら挑戦してください
最後に、本来であればこの話はこうして形になることもなくひっそりと消えていくはずでした
筋書きだけはなんとなく考えたものの書き切るモチベーションが湧かず、お蔵入りになるはずでした
書けるかどうかわからない、でもこの話で勝負をしてみたい、そんな衝動が無ければまた挫折していたかもしれません
きっかけをくれたSSコンペ企画者さんに感謝を申し上げてひとまずは筆を置きます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています