鞠莉「もー!ダイヤったら乳首も性格も硬度100なんだからぁ!」
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果南「ほんっとそうだよねぇ~w柔らかいのは下の口だけなんだからw」
ダイヤ「んまぁ!!!よく言いますわ!!!
大体乳首が固くなるのは鞠莉さんがこねくり回すから、それに濡れているのは果南さんが執拗に手マンするからでしょう?!?!」
果南「いやいやwそれにしても濡れすぎだからwここまでトロトロになる人居ないからw」
鞠莉「そうよ!このド淫乱撫子!」
ダイヤ「んまぁ?!鞠莉さん?!それはワタクシに対しての悪口ですか?それとも海未さんに対してですか?後者なら許しませんわよ?!」 千歌「………」
曜「………」
梨子「……♡///…!」
善子「はぁ………」
花丸「………」
ルビィ「あのぉ……おねえちゃあ?…皆いるんだよ?…やめよ?…」 善子「大体何よ!こんな夜に呼び出したと思えばダイヤがイジメられてるんだけど?!(性的に)」
鞠莉「sorry、sorry!皆が来るの遅いからちょっと開発しようと思っただけよ~~」
ダイヤ「はぁ……まったく…危うく皆さんの前でイク所でしたわ…」
曜「あのぉ……それより私達なんで呼ばれたんですか?」 ダイヤ「あぁ……説明するので適当に座布団にでも座って下さいませ」
千歌「いやいやいや!座布団ダイヤさんが撒き散らした愛汁でびちょ濡れなんだけど?!千歌座りたくないよ?!」
梨子「もぉ~千歌ちゃんは我儘ね、仕方ないから私のと交換してあげるわ」
千歌「ありがとっ!……え?なんで梨子ちゃんの座布団も濡れてるの?…」
梨子「あー普段真面目で優等生なダイヤさんがイジメられてるのを見てちょっとイッちゃったの///」 千歌(もういや……)
花丸「それで?なんでマル達は呼ばれたずらか?」
鞠莉「あーそれはね……私達3人でちょっぴりホラーな話をしよう!って言ったら果南がゴネ始めてね……」
果南「ちょっと鞠莉?!」
鞠莉「それで、9人もいれば怖くないでしょ?って事で呼んでたのよ」
善子「なるほどね!!ホラーな話ならこの堕天使ヨハネに任せなさい!」 ダイヤさんの乳首ビッカース硬さ7000hv位ありそう ルビィ「うゅ…ルビィはあんまり得意じゃないけど…」
花丸「まるは話すと言うよりその意味を追求する方が好きずら~」
千歌「いいね!面白そうだし!千歌賛成!」
梨子「私もいいわよ?パンツは既に濡れているしね」
果南「なんで皆乗り気なの???」
曜「でも誰が話すの?私そんなすぐに出てこないよ?」 ダイヤ「はい、ですので順番としては
鞠莉さん→ワタクシ→果南さん→千歌さん→曜さん→梨子さん→ルビィ→善子さん→花丸さん
の順で回そうと考えていますの」
千歌「まぁそれなら考える時間あるしね~」
善子「まぁいいんじゃない?するならさっさと始めましょ!」
果南「え?本気でやるの?嘘でしょ?」 鞠莉「はいはい!もう逃げられないわよ!」
ダイヤ「それでは電気の方消しますわよ?」バチッ
千歌「おー!雰囲気でてきた!」
善子「闇もヨハネの一部……!」
鞠莉「それじゃあ一番最初だし怖い…と言うよりは不思議な話をするわね?」
第一夜
小原鞠莉 辻褄 ううん、心霊スポットじゃなかったの
私のパパって経営者じゃない?だからよく土地を探しに1日飛び回る事も珍しくなかったの。
その日は私も一日付き添いをしててね、パパとその仕事仲間の方々の計らいで夜はマリーが楽しめるようにキャンプ場に行こう!ってなったの。
BBQやら花火やら色々してもらったわそれで最後に何がしたい?って言われてね、マリーは「肝試しがしたい!」って言ったの。
だって子供の時ってそういうのが好きじゃない?まだまだ純粋で好奇心旺盛なのよ。
でもそんな肝試しできる場所ってそうそうないでしょ?
だから場所選びも適当だったの 少なくとも車で行けて、遠くはなくて、人家が少ない所……あったのよ。
キャンプ場だったからねちょっとした山があるのよ。舗装とか整備はされてるだけの。
さっき言った通り、心霊スポットとかではないのよ?何か事件があったとか、隔離されてる集落があったとか、当然だけどそういう曰く因縁は全く無くて。
パパ曰く昭和の景気が良かった時代に、その山を切り開いて集合住宅か何かを作る予定があったみたいなんだけど、結局その辺りの区画を造成地として或る程度きれいにした、っていう段階で放置されたのよね、だから現状ただの山道になるって言う…まぁよくある話だったみたいよ? 件の場所までだらだらと車を走らせて、到着するまでの時間が大体三十分。その移動中はベタに怪談話大会みたいなことをしてたわ。
それは誰が音頭を取る訳でもなく自然に始まったんだけど、まあいわゆる心霊スポットに行くわけではない分、せめてその前後には幽霊話で盛り上げて私を楽しませようって意図があったんでしょうね、
あと少しで目的地の山、集合住宅なんかを立てるために造成地にしたところで放置されてる、ひとけのない山の麓あたりに着くっていうところで、
私、気になって言ったのよ。
「ねぇ。そこって、家を建てようってところで何年も放置されてるのよね?」
「そこって、事件が起きたり、人が死んだりはしてないのよね?」
「じゃあなんで途中で建てるのやめたの?」 同乗していたパパ友達が、ぼつぼつと当てずっぽうの推論を並べ始めたわ。
別に、途中で工事が取りやめになるってことはあるんじゃないですか?
ね。家を建てようってなったのは何十年も前のことらしいし、土地だけ買ってさあ何建てようってしてるうちにバブルがはじけたとか。
今でも行くのにこんだけ時間かかるとこだし、だったら土地の値段はそんなしなさそうですからね。
そう。まるで”辻褄”を無理やり合わせるようにね。 と皆が適当に会話を流している中で、車は真っ暗な山道を進んでいったわ。
さっきの話がひと段落してから、車が二回か三回くらいカーブした頃だったかしら?
なだらかな斜面になった山道の先を進んでいくと、助手席側の窓の向こうから拍子抜けするほど簡単に、その場所が見えてきたの。
坂を上り切った先で一旦エンジンを付けたまま停車して、皆で車を降りてたわ、停めた車の助手席側、つまり山道を登って左を向くと、そこには立ち入り禁止を示す簡素な立て札があって、その先が大きく開けた広場みたいになっていたの。 雑に放置された原っぱ、と言った方が近いかもね。
ざわざわとゆれる草は太腿のあたりまで伸びていて、私たちが来た道以外の三方は林に囲われていたわ。
草がぼうぼうに伸びたそこを車の近くで眺めながら。
わざわざここに入るまでもないかな、って私はまずそう思ったの。
例えば実際に廃墟がその場所に残ってるとか、何かの祠が安置されてるとか、そういうスポットを選んでいるんなら話は別でしょうけど。私たちが選んだのはそういった曰くのない只の造成地よ?
この中に何かがある訳でもないし、そもそも立ち入り禁止って書いてあるし、一応最低限の虫除けなどはしてきましたけど、だからといって分け入って進むのもなあと思って。 結局、この立て札を肝試し用の目印にしよう、ということになったんです。
もっかい車に乗って少しだけ山道を降りて、そこを拠点にして、ひとりずつ車からこの広場までを往復する。で広場に着いたら、そこまで行った証拠として、立て札の写真を撮ってから戻ってこないといけない。
その場の思い付きで、そういう風に肝試しの流れが決まっていったの。
まあつまり、どっかに置いた目印を取ってくるとかそういう肝試しにありがちなルールを、そこにあった立て札を撮影するっていうやり方で代用したのね。 皆で車に戻って、来た道を迂回することになったわ。家を建てる予定があったような場所だから当然と言えば当然だけど、山道を登りきったところは道幅に少し余裕があったの。
どの辺まで降りようかとか話しながら、下り坂になった山道をゆっくり進んでいき、看板のあるとこから車が見えたら怖くないよねって話になって、結局二回くらい道を曲がった先で停車したのかな。さあここからひとりずつ行こうかって、でも女児1人は危ないしスマホも持ってないじゃない?だから私はパパと行く事になったんだけど。 私達は三番目、要は中間ぐらいのタイミングだったわ。懐中電灯とかスマホのライトはあるにしても、静かで真っ暗な山道をひとりで進んでいくんだから、結構不気味なのよ?
肝試し中は音がしないようにって車のエンジンを切ってたから、少し進むともう音も何もしない、しいんとした真っ暗な山道で。その日は風もそんなになかったから、ただ虫の声と、自分の歩いてる靴の音だけが聞こえてくるの。
たまに、さりって草が擦れる音が聞こえると、その度に少しだけびくっとしてしまって。パパに抱きついてたわ。
漸く目的地の看板の前に着いた時も、その向こうにぽっかり空いたみたいに広がってる真っ黒な草原が、ついさっき皆と一緒に見たときとはどこか違うような感じがして。
だからそこに着いた時ももう早く車に戻ろうと思って、だいぶぶれた状態の写真を一枚ぱしゃって撮ったらすぐ早歩きで坂を下って行ったわ、パパのどこか怯えていたしね。
私達も含めて皆だいたい七、八分くらいで戻ってくるんだけど、怖がったそぶりを見せていないような人でも車に乗り込むとやっぱ安心したような顔つきになってたわね。写真も私達みたいにぶれぶれのとか真っ暗なのを一枚だけって人が大半で。 「おい撮り直せよ!」「絶対やですよ!」笑いながら言い合いしてる人がいたり。そう、笑いながら言い合いしてる子がいたりして、怖いって言っても結局は身内での肝試しだから、何だかんだ楽しんでるような雰囲気はあったのよ。あったのに。 私の次に順番が回ってきたのは、あの人だったの。ここに向かってるときに、なんで途中で建てるのを止めたんだろうって聞いた時にに”辻褄”を合わせるように理由をつけた彼が次の順番で、私達が車に戻った後にじゃあ行ってくるって出ていって。
私は車に残ってる人と雑談というか、もう順番終わった人と一緒になって、まだ行ってない人を怖がらせようとしたりしてて。
さっきも言ったけど、その停車してるとこから広場前の看板までって、往復で大体七、八分くらいなのよ。
勿論びびって早足になるとか逆に立ち止まっちゃうとかはあるでしょうけど、別に何百メートルと歩かせるわけでもないから、大きく差が出ることはない筈で。 彼、十五分くらい戻ってこなかったのよ。
十分ちょっと経ったところであいつ遅いなって話はされてて、でもその程度だったら別に不思議には思わないじゃないというか、足でもくじいたのかなとか、そういう心配はあったんだけど。
でも更に五分経ったら、特に変わった様子とかもなく坂を下ってこっちに歩いてきてて、皆ちょっとだけ安心したような感じになって。
でも彼、怪我とかはしてないんですけど少し怪訝なというか、難しそうな顔をしてたの。 懐中電灯のスイッチを切って後部座席に乗り込んで、みんながお帰り遅かったねって声をかけても、返事はするんだけれど何処か上の空な様子で。
そしたら彼が独り言と話し声の中間みたいな声量で、
なあ、って言ったの。
「なあ、あそこにある立て札ってさ。
立ち入り禁止って書いてあるあれ、あれって。
あれって、仕方なく書いたんじゃないかな。」 疑問形の語尾で、誰かが相槌を打ちをしたわ。
いや。私も含めて、誰も彼が言ってることはよく分かんなかったんだけど。
急にそんな話を始めることも分からないしそもそも立ち入り禁止の表示は多かれ少なかれ、そこに入ってしまう人がいるから仕方なくつくられるものでしょ? 疑問形の語尾で、誰かが相槌を打ちをしたわ。
いや。私も含めて、誰も彼が言ってることはよく分かんなかったんだけど。
急にそんな話を始めることも分からないしそもそも立ち入り禁止の表示は多かれ少なかれ、そこに入ってしまう人がいるから仕方なくつくられるものでしょ?
そしたら彼は車の中の雰囲気を察しているのか否か。話を続けるの。
「いや、っていうのもさ、あそこに着いて立て札を撮ろうとして。
それをライトで照らしてズームしたり写真撮ったりしてて、
でも全然うまく撮れなくて何回ももたもたしてたんだけど。 そこで看板をふっと見たら、その上の方になんかあったんだよ。
あの立て札がこう、横長の長方形になってて、その四隅の右上と左上。持ってたライトの照らし方がそこだけちょっと違うっていうか、へんな感じに照り返すんだよな。
見たらそこ、テープが貼ってあんだよ透明なビニールの。それが看板のおもてっていうか、今見てる前面のとこだけじゃなくて、その裏側にも伸びてて。要はテープの切れ目が二枚とも、片側しか見えてないんだよ。
勿論いま見てる方の面になんか貼られてるものは無かったから、なんだろうって思って看板の裏側に回り込んで、そしたら。 裏側にはテープで貼り紙がしてあって。
たぶん油性ペンだと思うんだけど。
下手糞な字で、
”ここにいてくださいますか”
って書かれてたんだよ。
あれのこと立ち入り禁止の看板って呼んでたけど、
あれ多分、あっちがほんとうだと思うんだよな。 ほんとはあっちを伝えたくて、でもそれをそのまま看板にしちゃうと変に思われるから、仕方なく山道のほうにも立ち入り禁止って書いてんだよ。
あの紙さ。
そんなに汚れてなかったんだよ。
山道に放置されてる貼り紙なんだからもっと土とか付いてたり、
紙自体が剝がれてどっか行ったりしててもおかしくないと思うんだけど。
でもそんな汚れてなくて、あれ汚れてないなあって思って。
そのことを何かに結び付けよう、とした瞬間にうしろから
「あのね」 含み笑いでそんな声がして振り向いたら、
ひとみたいなのがまうしろにたってて、
「どうしてもつじつまをあわせたいんだって」
って笑いを堪えながら言ったんだよ。
そこで俺、ああ、ってやっとわかって。
だから何回写真撮っても顔しか映らないんだなあって」 なあ、とそこで叫ぶように言ったのは運転席にいたパパだったわ。
「肝試しは中止にして、もう帰ろう、な?
夜も遅いし、そんな話やめてさっさと帰った方がいいって。」
ひきつった作り笑いでそう言って、全員が車の中にいることを確認すると有無を言わさず山を降りて行ったの。
ああ…彼のその後?
その彼なら数日後その広場で自殺したわよ。 果南「あーあーあーあー!!!聞こえない!何も聞こえない!」
ルビィ「いや怖いよ!全然不思議な話じゃないよ!」
梨子「怪談ってより猥談だったわね。ほら、果南ちゃんだって濡れてるし」
千歌「梨子ちゃんは何を聞いてたの?頭がおかしいの?」
ダイヤ「まぁ…不思議…と言うより色々分からない事が多すぎますわね…鞠莉さんは何か知らないのですか?」
鞠莉「さぁ?正直私にはサッパリよ」
花丸「……」
善子「ズラ丸?どうかした?」
花丸「いや……何となくね、わかった気がするよ。そう言う事ね。確かに不思議な話かも」 曜「花丸ちゃん分かるの?」
花丸「うん。何となくだけどね。」
鞠莉「流石!templeの娘なだけあるわね~実は私もある程度仮説を立ててるのよ。」
果南「もう良くない?やめない?スマブラしようよスマブラ!」
ルビィ(すぐルビィのプロコンこわすからやだなぁ……)
ダイヤ「あの……教えて頂く事は可能ですか?モヤモヤするのですが……」
千歌「千歌も聞きたい!!」 第一夜
目明し 国木田花丸
彼が見たっていうなにかがどういう理由でそこに居るのかは、今も全く分からないんだ。
分からないんだけど。
何でそこに家を建てようとしてたのかは、何となく分かる気がしてて。
多分、辻褄を付けたかったんじゃないかなって思うずら。
そこに家を、いや家でも何でもいいんだけど、とにかく何かを建てて。
その建物に、こわいものがいるってことにしたかったんじゃないのかな。
だって、そうしたら理解ができるでしょ?
そこに誰かがいるのは何か、その家に恨みつらみを持ったまま死んじゃった人がいるからだとか。その家に住んでた人が化けて出てるんだとか。
多分そうしないと耐えられないと思うんずら、何の脈絡も因縁もなく、誰かもわかんないやつがただそこにいるなんてことって。
それこそ心霊スポットとか曰く付き物件なんて、その場所で前に何か怖いことがあったから、今でも霊が出たり怪奇現象が起こったりするって噂が広まるわけでしょ?
でも過去を遡ったときに何もなかったら、何の理由付けもできないんだよ。
それはいやだよ。
いやでしょ?
だから彼は広場自殺したんだよ。
”辻褄”を合わせるために。 眠いから今日はスペシャルダイヤちゃんハードオナニーして寝ますわ♡続きは起きたら書き込みますわ♡ このスレタイ詐欺パターンやりすぎてるし若干滑ったな 怪談ものって毎回みんなよく新しいお話を考えられるなって感心する 鉱物の硬さを示すモース硬度は最大が10なんだが、誰も突っ込まないのは何か決まりでもあるのか❓🤔
他にも測定方法の違いでビッカーズ硬度(最大7,000)、ヌープ硬度(最大8,500)があるけど、100じゃ手でいじくってたらモロモロと崩れる程度の硬さなんだが 鞠莉「うん…よね、彼多分辻褄が合わない出来事が怖いのよ。
だから理由を付けたがる」
花丸「物事は辻褄が会わないと怖いもんね、。」
善子「いや…辻褄合っても十分怖くない?」
千歌「まぁまぁ!夜も遅いし次行こうよ!」
ダイヤ「はい。私の話……ではないのですが、どちらかと言えばお母様から聞いた話になります。」
第二夜
口裂け女 黒澤ダイヤ 主に1970年代の後半から口頭、或いは雑誌メディアを通して語られ、
当時の小中学生を中心に爆発的な流行を見せた怪談話で、
大きな社会問題として取り上げられました。
地域や年代によって細かな差異はありますが、
話としての基本的な型は恐らく以下のようになるでしょう。
放課後、ひとりで日の暮れかけた通学路を歩いていると、
突然に大きなマスクを着用した女性が現れ、声をかけてくるそう。
「わたし、きれい?」
きれいです、などと答えると女性は「これでも」とマスクを外し、
耳の辺りまで大きく裂けた口元を見せる。
恐怖を感じた子供たちは彼女のもとから逃げ出すが、
彼女はどこまでも追いかけてくる── 「口裂け女は鎌を持っている」とか、
「べっこう飴を食べさせると逃げられる」といったディテールの違いはあるにせよ、
概して上述の内容が語られ、当時の子供たちは恐怖に慄いたそうです。
それこそお母様も当時その存在に恐怖していたとか。
さて、ここで注目したいのは、この怪談話に存在する「差」です。
先ほどから何度か触れているように、
口裂け女には様々なパターン、バリエーションがあるのです。
この怪談は主に小中学生の生活圏で口承・伝達されたため、
しばしば話型のローカライズが起こっているのです。
地域ごとの差異はもちろん、同じ地域でも学年によって口裂け女の特徴が異なっていることもざらで、コミュニティごとに「隣の学校の奴はこう言っていた」「妹のクラスでは」「怪談の漫画本では」といった数多くの体験談が混成していたそうで。 今回紹介するのは、九州某県にあった小学校とその周辺地域において、
十数年前に集められた「口裂け女」に関する見聞の資料です。
とある事情から黒澤家はこの資料を見られる立場にあり、
勿論事例の匿名化など様々な条件付きではありますが、今宵皆様にお話できればと思います。 1容姿
以下の表は、口裂け女の様子あるいは行動に言及した42件の目撃情報を、
年代別に分類したものですわ(重複があるため、総数は42以上になっています)。
事例/年代1981198219831984
追いかけてくる1226
刃物を持つ0223
話しかけてくる1336
ただ立っている45712
特筆すべきは、一般的な口裂け女の目撃談に付随される情報──「子供たちを追いかける」「刃物(鎌)を持っている」「話しかけてくる」といったものが古い事例になるほど少ない、ということでしょうか。
不思議なことに、この地域においては口裂け女の特徴として一定数、「特に何もせずただ立っている」という情報が得られたのです。「私きれい」と話しかけることも、子供たちに何かのアクションを起こすこともなく、ただそこにいる。 ごめんミスった
1容姿
以下の表は、口裂け女の様子あるいは行動に言及した42件の目撃情報を、
年代別に分類したものですわ(重複があるため、総数は42以上になっています)。
事例/年代1981 1982 1983 1984
追いかけてくる1 2 2 6
刃物を持つ0 2 2 3
話しかけてくる1 3 3 6
ただ立っている4 5 7 12
特筆すべきは、一般的な口裂け女の目撃談に付随される情報──「子供たちを追いかける」「刃物(鎌)を持っている」「話しかけてくる」といったものが古い事例になるほど少ない、ということでしょうか。
不思議なことに、この地域においては口裂け女の特徴として一定数、「特に何もせずただ立っている」という情報が得られたのです。「私きれい」と話しかけることも、子供たちに何かのアクションを起こすこともなく、ただそこにいる。 もちろん一般的な、「マスクを着用しており、それを外すと大きく裂けた口が見えた」「ポマードと三回唱えるとどこかへ逃げていった」といった体験談も複数得られていたのですが、
そのほとんどは比較的新しい年のものであり、1981年時点のそういった事例は皆無と言って差し支えありませんでした。
では、目撃者に話しかけもしないのにも関わらず、
当時、子供たちはどうやってそれを「口裂け女」であると解釈したのでしょうか? 夕方に○○ば出たとこで、
田んぼの道んとこに立っとった。笑っとるごと(見えた)。
顔の大きかったけん、そがんしとるとの分かった。
人じゃなか、(人の)顔はあがん横にならんけんが。
(女児、1981年時点で小学5年生)
これは、当時の児童に対する調査の書き起こしたものですが、その地域の「口裂け女」目撃事例としては比較的ポピュラーな部類のものになりますわ。
子供たちは放課後、多くは帰り道の途中で「口裂け女」に遭遇するようです。 彼女はただ立っているだけで、さらに普通であれば表情の視認が困難であるくらいに離れた場所に立っていることさえ珍しくなく、そのため直接的な被害を加えられることはありませんわ。
そんな状況で、なぜ「彼女の口が裂けている」と考えることができるのか。
曰く、その顔は非常に大きく、かつ横方向に伸びているのだそうですわ。
そのため離れていても顔は確認でき、口が裂けて──というよりも、
ぐにゃりと横に伸びていることが分かるのだと。
そのような体験談が多いからか、
当地域では口裂け女の背景情報に関連した情報もあまり見受けられませんでしたわ。
ここでいう背景情報とは、口裂け女の出自、バックボーンへの言及でして。 例えば、初期は口裂け女の目撃情報を主として怪異譚が流布していたとしても、
目撃例が増加し飽和していくにつれ、
子供たちの噂はしばしば怪異を「肉付け」する方向に向かうことがありまして。
つまり、「なぜ口裂け女がいるのか」に対する合理的な理由付けを行うことで、
彼らなりに口裂け女を分類・理解しようとしたんですわ。
口が裂けているのは生前に整形に失敗したからで、
当時の執刀医がポマードを大量につけていたからポマードが嫌いである。
口が裂けているのは交通事故に遭ったからで、
今もそれを恨めしく思っているために幽霊として出てくる。
そんな風に、彼らにとってできる限り理解・解釈が可能なかたちで設定を加えることによって、どうにか「何もわからない」状態から脱却しようとするのです。 しかし、その某小学校の児童らは、そういった合理化をほとんど行っていませんでした。
あるいは行えなかったのでしょうか。
何もせずにただ立っているだけの「口裂け女」に対し、
それ以上の背景情報を付与することが難しかったとも考えられますわね。
ただ、私は別の理由を考えています。 2 文脈の検討
まず前提として、この地域には2種類の「口裂け女」がいるように思えましたわ。
ひとつは、時代が下るごとに増えてきた、一般的な「口裂け女」。
刃物を持ち、或いは大きなマスクを着用して、「私きれい」と話しかける。
しばしばこれに追いかけられるという体験が語られることもあり、
そのため子供たちの明確な恐怖の対象になる。
そしてもうひとつは、時代が下るごとにその割合が減少した、「口が裂けた女」。
顔が横方向に大きく伸び(あるいは歪み)、それに応じて口も裂けている。裂けているように見えると言われていたアレです。
特に何かの行動をするでもなく、ただ笑って道端に立つ。
そのため子供たちにとって、ただ不気味な印象だけを残し続ける。
前者はともかく、後者に関してはあまり類例が思いつきませんわよね。
そのため、当時この資料を集めた人々は、
恐らくそのヒントになるものを求めたのでしょう。 彼らは当地域において特に目撃例が密集していた場所に赴き、周辺住民への聞き込みを含めた補足調査を行ったのです。
これは本調査の2年後、1986年のことでした。
その結果。
後者の、「顔が大きく歪んだ、ただ立っているだけの女」の目撃情報は、
1970年代前半にあの学校が建設される前──少なくとも1960年時点から、
ぽつぽつと存在していたらしいことが判明しました。
そしてその目撃場所は、学童施設だったのです。
しかし、これには複数の疑問点も存在します。
まず、なぜ学童施設に、
そのような話が流布されているのか、という点。
さらに言えば、なぜそれほど前から「口裂け女」がいるのか、という点も不可解です。
学校の怪談としての「口裂け女」が広く流行したのは、
先述したように1970年代の後半からと言われています。 新聞やメディアを通じて流布し、全国に広まったのは1979年のはじめごろとされており、
少なくとも1960年時点でそれが「口裂け女」と呼称される例などは見受けられません。
しかし一点目の疑問に関しては、比較的早期に氷解しましたわ。
そもそも、学童施設は、
小学校の新設に伴って作られたものでは無かったそうですわ。
そう。
学童施設はそれ以前からその場所に存在していました。
学童施設は現在、平時はM寺という寺院として利用されつつ、
いわゆる「児童クラブ」的な組織もその中に包括されているそうで。
しかし元々は山間部を切り開いて建設された寺院であり、
時代が下るごとに「寺子屋」的な用途として、
周囲の子供たちが交流する場所にもなっていったそうですの。 そして、まだ学童施設が単に「M寺」だったころから、
その女の目撃例はあったのだそうです。
また二点目の疑問、「なぜそれほど前から口裂け女がいるのか」という点に関しては──当時の調査者が、次のように推測しています。
曰く、それは元から口裂け女ではなかったのではないかと。
先程言いましたが時代が古いものほど「子供たちが口裂け女と解釈しているもの」の目撃情報は少なくなっていますわよね?
これは、その時代の口裂け女の目撃情報が無かったことを意味しているのではなく。
ただ単に、それまでは口裂け女だと思っていなかっただけなのではないか。 ずっと前から存在していた「口裂け女に似た何か」の目撃情報が、
1970年代後半以降の「口裂け女」ブームに伴って一種の習合を起こし。
時代が下るごとに「何か」の目撃情報も一緒くたに、
口裂け女の目撃情報として語られるようになったのではないか。
だとすれば。
某小学校の児童らが口裂け女の背景情報の設定を加えなかった理由にも、
ある程度の見当がつくようになりますわ。
子供たちは合理化を行っていなかったのではなく、とっくに行っていたのでしょうね。 しかしそれは、彼女は整形に失敗した、だから口が裂けているんだ、
などといったものではなく。
あそこに立っているのは今全国で噂されている口裂け女だ、
だから「何もわからない存在」ではないんだ、という形式の合理化だった。
ワタクシは暫定的に、そう結論付けています。 3類似の検討
当時この資料を集めた人々によって行われた学童施設(寺院)周辺の補足調査の結果、
「何か」の目撃情報は1960年代ごろから既にぽつぽつとあったらしいことが分かった、と書きました。
では、何に対するどのような調査から、これは判明したのでしょうか?
結論から言うと、それは古くから住んでいる周辺住民に対する聞き込みの結果として得られた幾つかの情報だったそうです。
現在は開発・舗装されている山の中で野菜を拵えたり、山菜採りをしたりしていた人々の中に数名ほど、それを目撃していた人もいたのだと。
しかし、それは昔から代々語り継がれている説話の類では無さそうでした。
現に、その地域の古くからの説話を集めた文献をいくら繰っても、
その「何か」に関連しそうな記述は見つかりませんでした。
つまり、それは古めかしい言い伝えや由来譚というよりは、
各個人がある時期からぽつぽつと体験するようになった怪奇現象のようなものであり。
それを見た彼らも、単なる幻覚や見間違いの類だと思って、
わざわざ誰かに話すことも無く今まで忘れていた、という人がほとんどでした。 ≪補足調査の時点で得られた複数の証言の抜粋≫
・顔だけが(極端に)大きかった
・顔は横に長く、笑っているように見えた
・山道の先に立っていた
・M寺の前の道に立っていた
・田圃の畦道に立っていた
・顔に気を取られていたため、服装は分からなかった
・ぼろぼろの服を着ていた
・女に見えた
・女ではなかった
・女のふりをしていた 以上の記述で語られているものと某小学校で子供たちが目撃した「口裂け女」は、
どこか似通った部分があるように感じられます。
顔だけが極端に大きくかつ歪んでおり、それは危害を加えるだけでもなくただ立っている。
その性別はどうやら女であるようだが、
同時にこの世のものではないこともほぼ直感的に認識している。
当時の調査者たちは、証言の乏しさ、そして文献資料の少なさから、
この段階での補足調査以上に「何か」に対する新たな情報を得ることは出来なかったようで、
その後に幾度か行われた質的調査においても「何か」の正体に迫る知見は特に見出せないままであることが伺えましたわ。
そして調査は(宣言こそされていないものの実質的に)打ち切られ、
様々な事情からその資料の一部が公開できる状態となり、今に至ります。
先述したように、1970年代以降には「何か」と口裂け女に関する情報は既にある程度の習合の兆候を見せていました。 それから時が経ち、2000年代後半にその学校が閉校してからは、もはやその道が通学路として利用されることすらほぼ無くなっており、2022年現在ではそもそも「口裂け女」という怪談それ自体が下火になっています。
そして、文献資料も満足に見つかっていない現状を鑑みると、
今となっては「あれ」が一体何であったのかを十分に検証する手段は、
恐らく無いに等しいのでしょうね。 善子「え?結局正体は分からなかったの??」
ダイヤ「ええ、これ以上は何も……」
梨子「口裂け女か~確かに今じゃ全然聞かないもんね、音ノ木坂じゃ下校中にまきちゃんかわいい?って相槌を求めてくる不審者がいたみたいだけど」
ダイヤ「んまぁ!!かきくけこですわ!!!」
ルビィ「……」
花丸「ルビィちゃん?どうかしたずらか?」
ルビィ「ピギッ?!いや?!なんにもないょ?」 ルビィ「実はおねえちゃあは資料を全部見てないんだ。
いやね?みる必要は無いの、見ても正体は分からないから。
だってね、初めから間違ってるの。
おねえちゃあも、みんなも。
なんでだろうね、だっておかしいでしょ?
資料にも書いてあるょ?口裂け女と合理化されただけって
そう、これはね、口裂け女を追う話じゃないの。
口裂け女とされた「何か」を追う話なの。
最後の資料はおかあさんの部屋にあった。
資料と言っても1枚だけどね笑
…………はなまるちゃあになら見せてあげてもいいょ?」 以下は、█████が別の記事執筆の一環で一年ほど前に取材し、
文章化の段階で諸事情により未発表のまま凍結されていた原稿です。
「幽霊とかお化けがどうこうっていうか──そもそも怪談なのかも、よく分かんないんですけどね」
T県で学校の理事長をしているMさん(仮名)は、困ったような顔で話を始めた。
Mさんが通っていた小学校は商業施設や住宅街から離れた山間部に在り、現在は少子化のあおりを受けて閉校を余儀なくされたものの、昭和の時代にはそれなりの人数が集まっていたのだという。
「まあ私がその学校行ってた時には、もうだいぶ終わりが近いなって感じでしたけど」
Mさんはそう言って少し笑った。
これは、彼女が成人を機に地元へ帰省し、当時通っていた小学校を訪問した時の話である。
訪問したといっても学校の敷地内まで入ったわけではなく、
そもそもその時点で閉校しており校内に立ち入ることは出来なかったため、
慣れ親しんだ地元の山道をひとりで散歩したついでに学校を遠巻きに眺める、程度のものだったらしい。
「さすがに、別の学校に行くための通学路として今も使ってる道路とかは、ある程度きれいになってましたけど。それでも元々人通りが多い場所じゃなかったし子供の数は当時よりも確実に減ってるので、かなり──寂れてた、んですよね。当時学校行くのに使ってた道とか、どこ歩いても。
新しくカラフルに舗装し直した歩道なんかはいくつもあって、でもそれが余計に空元気というか、そういうのを強調してる気がして」 夕方の五時ごろ。錆びた校門の外からその小学校を眺めても、
郷愁とも寂寥感とも違う、どこか物悲しいような気持ちしか感じられず。
結局、見物もそこそこに、Mさんは学校の坂道を下りていった。
そこでMさんは、折角だから当時のルートで「下校」していこう、と考えたそうだ。
小学生だったMさんは、何となく遠回りして家に帰りたい気分のときなど、
たまに普段の登下校には使わない道を通って下校することがあったという。
学校の坂道を下った後、途中の道を右に曲がって道なりに行けば家に着くのだが。
そこをまっすぐ進んでから、ぐるりと大きく右回りの円を描くように遠回りをして、
再びいつもの家路に合流する。
そのルートを歩くと、途中に一部のクラスメイトが放課後の児童クラブに利用していた寺院があったため、普段なら途中で帰り道が分かれてしまう友達とのお喋りを続けることも出来たのである。
夕暮刻、茜さんは自分以外殆ど誰も通らないその道をだらだらと歩いて、
件の寺院が見えるあたりに差し掛かった。
彼女は自分の視点で言うところの右側の歩道を歩いており、
その寺院は左側、つまり車道を挟んだ向かい側に見えるのだが。 その、自分とは反対側の歩道、寺院の前の電柱の陰に。
誰か、がいるのが見えた。
「最初は、ただの通行人というか、普通に地元の人だと思ったんですよ。で、ああ珍しいなこんなひとけのないとこにって思ってたんですけど。でも、その人との距離が近くなると、なんか色々とおかしいって気付いたんですよね」
Mさんは、小首を傾げながら、
言葉を選ぶようにぷつりぷつりと言葉を繋いだ。
まず、夕陽が逆光みたいになってて最初はシルエットしか分かんなかったんですよ。
で、私「耳でも塞いでるのかな」って思ったんですよね。
頭を抱えてるというか、とにかく頭の横に手を添えてるってことが分かって。
例えばほら、片方に携帯電話でも持ってたとしたら、
そっちの声に集中するために耳を塞ぐとかあるじゃないですか?
でも、道路挟んでその人の真横まで来たところで、
いや明らかにおかしいって思って。
まずその人、顔に──口とか目の辺りに両手の指を押し当てて、誰もいない歩道でですよ?
まるで睨めっこでもしてるみたいに、ぐにいって両側に顔を広げてたんです。
で、その人は三十歳半ばぐらいの男性だと思います。
髪とか顔の感じからして、そのくらいに見えました。
色白で骨ばってて、それほど運動してないんだろうなっていう瘦せ型の男性。
ただ、その人はすっごいぼろぼろの、
コットンドレスみたいなのを着てたんですよね。
いえ、顔立ちとか体つきとか、あと声も確かに男性の声でした。
その人、反対側の歩道を通ってる私を、ずっと目で追ってて。
いえ、顔はずっと指で無理矢理に引き伸ばされてますから、
視線の方向とかは分かんないんですけど、
顔の向きが明らかにこっちを向いてるんですよずっと。
それで、走って逃げだすのも逆に危ない気がして、
出来るだけ見ないように見ないようにってその歩道を通ってたんです。
そしたら、ちょうど私がその人とすれ違うくらいの時に。
無理矢理にそういう声を出してるみたいな、すごい甲高い声で、
「あのお、これはだれだとおもいますかあ」
ってその人が叫んだんです。
びくっとしてそっちを向いたら、やっぱりその男の人が、
ぼろきれみたいな白い女性用ドレスを着た男の人が、
両手で顔を横に引き伸ばして笑いながら、
こっちを向いてたんですけど。 彼の後ろにあるお寺の門のところに、
さっきまでいなかったはずの誰かが立ってて。
不思議なことに、どんな姿をしてたとかは全く思い出せないんですけど、
でも、ああこの男の人はこれを真似しようとしてるんだろうなってことは、何となく分かりました。
それから、特にそれ以上の何かが起きることも無く、私は家に帰っていて。
それ以降であの道を通ることは、一度もありませんでした。
そもそも、普段はそれこそ散歩とかで、
自分から行こうと思わないと通らないような道なんですけど。
「あとで親に聞いたら、その男の人、私の小学校時代の同級生でした」
○○くん、よく一緒に遊んだりしてたんだけどなあ。
Mさんはどこか寂しげに、そう結んだ。
ルビィはね、それは今もその道にいると思うんだぁ。 ………マルは黙るしかなかった。
なんでルビィちゃんがそう思ったのか、なんでこの資料は記事にならず一部の人のみが閲覧できる資料になったのか。
なんで黒澤家は知る権利があったのか、なんでルビィちゃんのお母んが最後の1枚を持っていたのか、
そもそもこの話はしてよかったのか。
疑問をあげると止まらなかった。
だから黙った、だって怖いよね?真実に迫ることって。 夜も更けてきた
それこそお互いの顔が判別できなくなるくらいの暗さになっておりだんだんと異質な空気があった気がする。
「ダイヤの話が長いからこんなに暗くなっちゃったじゃない!」
「んまぁ!!なんて事言うんですか?!一生懸命話したと言うのに!」
「でも実際怖かったよね~トイレ1人でいけるかな~」
「大丈夫曜ちゃん?オムツなら持ってるわよ?」
「はいはい!時間もない事だし!次は果南ちゃん!」
「はぁ……もう…仕方ないなぁ…じゃあ始めるよ?」
第三夜
おつかれさま 松浦果南 これは私の話じゃないんだけどさ
皆はさ、インターネットに2chってサイトがあるの知ってる?
色々な板があってそれに沿った話題があるんだけど、
そうそう!善子はよく知ってるね
その中に怪談をする板があるみたいなんだよね。
え?私は見てないよ?だって怖いの苦手だしそういうのよく分からないもん。
でもね、その友達はそういうホラーなのが好きでさ~よく私を怖がらせてきてたんだ。
そんなある日ねその友達が焦った感じで
「私悪霊に取り憑かれちゃったかも!」
って私に言ってきてさ、どうしたの?って聞いたらどうやら罠?
みたいなの引っかかったって言うんだよね
その罠って言うのが
あなたを助けたいからお祓いしますなんて言って、さも本当にありそうな儀式をでっちあげて実際にそれを行わせる。
蓋開けてみたらそれが嘘っぱちで、しかも本当はこっちが被害を被るような、たちの悪いものらしいんだ。
それでその友達儀式をしちゃったみたいでさ
その日からお腹が痛いだ肩が重いだ騒いでて、
結局あるお寺の住職さんにお祓いを頼みに行ったんだ。 でもね、面白い事に実際は呪われてるとか悪霊に取り憑かれてるとかは全くなくて体調不良に思い込みを重ねて精神が不安定になっただけなんだって。
でもね、その方法は住職さん曰く完全に間違ってる物じゃないらしくて事実、かなり怖いものにあたるんだって。
その住職さん曰くあれを狙って作れるっていうのは、同じような仕事をしてるか、それと同じくらい勉強してる人じゃないと難しい、そのくらい危ないものみたいだよ?
と、言うのもねやっぱりあれは呪いっていうよりも、亡者のみたまを呼び出す降霊術に近いものらしいんだ。
ほら、あの怪談では標的になった人に呪文唱えさせて、水を飲ませますでしょ?
要は、呪文を唱えて周りにいる霊とかをぜーんぶ呼び出して、水と一緒に自分の身体に取り入れる、いわゆる憑依なんだって。
そこに居るのが低級霊、つまり動物霊とかだったら別にそこまで危険は無いらしいけど、もしそこに何かとんでもないものが居たら、もうそこで駄目。
つまり、逆にこっちが取り込まれちゃう。だから冗談でもあれを試すのは危険なんだって。 でも実はね、あそこで行わせてる儀式っていうのは、実は元々ちゃんとある魔除けの手順を、変な風にねじれさせてるやつなんだって。
ほら?その友達は怪談を集めてるって言ったでしょ?
だから住職さんが気をきかせて教えてくれたんだって、怪談を集めているとこの先何か嫌な事があるかもしれませんからねって。
その方法?覚えてるよ。私も怖いのは苦手だからいつか役に立つかな~って聞きたい?
ええっと、確かコップとかに水か日本酒を注いで、そのあと、特別な呪文を紙に書くかもしくは唱えるんだ。
唱えるっていうのは口にするでも良し、どうしても難しい場合は頭の中で思い浮かべるだけでも大丈夫なんだって。
実はわりとその辺って寛容らしいよ?まあ勿論、ちゃんとした紙に書いて燃やしてその灰をコップの中に入れてってやった方が良いらしいけど。
どういう呪文かって?本当はもっと長いらしいんだけど、この部分だけでも大丈夫っていうのがあるみたいで………えっと、確か
こいのむらんと さかほがい
われにまがれと のりたてまつる
これをね。いや、何回でもいいらしくて。一回でも十回でも。これをとにかく心を込めて唱えて、もしくは書いて、そのあと、コップに注いだ水かお酒を飲むんだ。 ここで気を付けないといけないのが、その飲み方らしいんだけど。説明が難しいんだけどさ、ええっと、三回に分けて飲むんだよ。飲むんだけど、三回目は口に含んだあと、飲まずに吐き出すの。流しとかに。
何でかっていうと、これって要はお釈迦様に、どうかわたしを守ってください、あなたのお力を貸してください、っていうやつみたいで、仏力って言うのかな?それを水と一緒に取り入れる。根本の部分は、さっきの怪談と同じなんだ、ただ対象が違うってだけで。
ほら、御仏前にあげたお菓子とか果物を降ろして、仏様のお力を賜りますって言って頂くでしょ?あれと同じ。
そのおまじないをかけたものを飲んで、仏力を自分の中に取り込むんだ。
ただ、最後、コップの底のほうには、どうしてもさっき言ったみたいな不浄な霊が溜まったりしちゃうみたいで。だから、最後の一口はそのまま飲まずに、吐き出さなきゃなんだって。
これが、まあ多分さっきの怪談のもとになったおまじないらしくてさ。それこそちょっと怖いことが起こりそうだとか、気分が悪くなったとか、そういう時には試してみると良いって言ってたよ?
そこそこ優秀な応急処置ぐらいにはなるみたいだから。
ん?あー友達も結構使ってたみたいだよ~不幸な事に4年前病気で亡くなっちゃったけどね。 第三夜
目明し 国木田花丸
怖くなった。
同時に胸糞が悪くなった。
マルは寺の娘だから、ある程度分かるの、その言葉が仏様に向けての言葉か、悪意のある呪いの言葉かなんて。
その住職さんの教えてくれたのは自分を呪う呪詛みたいなものなの。
それにあの儀式は所謂おつかれさまで行われた儀式の完成系のようなものなの。
特にマズイと感じたのは呪文
さが→逆
ほがい→祝う
われに→自分に
まがれ→禍れ(呪え)
のりたてまつる→祝詞を読む
こんなのダメに決まってる。。
本当に。
だから皆は間違ってもしちゃダメだよ?
……ここまで悪意を感じたのは、人の怖さを感じたのは初めてだった。
だってさ 怖いけどそれ以上に続きが気になる
是非とも最期まで書ききってほしい いや、なんでもない。言わない方がいいよね、それに皆も真実なんて知らない方が怖くないし。
だからマルはこの事は黙っておくことにしたんだ。
きっとそれが正解だから。 「……私その儀式しようとしたことあるわ……」
「ええ?!善子ちゃん危ないよ?!」
「だからヨハネよっ!」
「それにしても怖い話ね、いつの間にか罠にハマっているなんて」
「ね~私達はそうならないように気をつけなきゃ。」
「じゃあ次は千歌の番ね?」
「はーい!じゃあいくよ?」
第四夜
百物語 高海千歌 皆、百物語って知ってるよね?
そうそう!話す度に蝋燭を消して~ってやつ
今回はね、そんな百物語のお話。
お客さんにね大学の准教わ、やってる人がいてちょっと話を聞いてたんだ~確か怪談とか伝承みたいなのを集めて研究してたみたいなんだけど、でねその人がそういうのを研究している何人かに話を持ち掛けて、一個の論文集を作った事があるんだって『百物語考』
だったかな?あれ?『現代百物語紀要』だったかな?とにかくそんな感じの題だったと思う。
でね!その時にその人が調べて論文にしたのがいわゆる怪談百物語の「儀式性」に纏わる部分だったんだって。 百物語って聞いてイメージする大体の流れって
何人かで集まって百話の怪談をめいめいに語る。そして一話語るごとに蝋燭を消していって、最後の百話目を語り終えた時には本物の怪異が訪れる。
こんな感じだよね?
でもね実際はもっと入り組んでるんだって
まず、百物語に使う部屋。部屋は少なくとも襖を隔てて二つ。出来れば三つ必要らしいの。
何でかっていうと、怪談を語るたびに吹き消す蝋燭がある部屋と、語り手が集まって怪談を語り合う部屋は、離れてないといけなかったんだって。
それで怪談を語り終える度に、話した人は話の輪から離れて、独りで蝋燭を消しに行って、戻ってくる。
そしてまた怪談の輪に加わるんだ。
で、その蝋燭の部屋には、一枚の鏡が置かれてるんだ。蝋燭を吹き消すときには、必ずそれを見なければならなかったんだって。 由来などは判然としていないらしいけど、多分幽霊の類が居ないかどうかを確かめていたんじゃないんかな?
ん?肝試しみたいだって?流石曜ちゃん!中々勘が鋭いね!
百物語の起源は、武士が自分の胆力を示すための肝試しの一環ととして始めたって説が有力なんだって。
まあ、そりゃあ普通は怖いだろうしね。そんなことしてたら。
でもね。違うんだって、その人曰く怪談っていうのはね。降霊の儀式らしいんだ。
怪談を通して、そこにないものを語る。するとね、それを聞いたり読んだりした人は、それを否が応でも想像しちゃうでしょ?
想像の喚起っていうのはね、降霊や憑依の第一歩なんだって、
百話目を語り終えたら怪異が訪れる、だからそれを耐えるための肝試しをしましょうっていうよりも、その怪異を迎え入れるために皆で場を整えましょうっていう方が、自然だと思わない? そうやって怪異を歓迎する儀式として、怪談百物語が始まったと考えてるんだ。
だってそうでしょ?色んな人が色んな話をして、そこに存在しないものを何十回と想像していくわけなんだから。
そうしたら時にね、それがはっきりと像を結んでしまう時がある。これは別に怪異でもなんでもなくて、誰にでも起こりうる現象なんだよ。
私達も気を付けた方が良いかもしれないよ?想像されることを、像を結ばれることを待ってる何かが、すぐそばにいるかもしれないから。 「ひえっ……」
「私達がしているのは百物語ではないものの怪談をする際には気をつけた方が良いかもしれませんね……」
「あ、それじゃあ次の人お願い!」
「お任せヨーソロー!」
第五夜
夜道 渡辺曜 あれは確か2年前くらいの話なんだけどね、その日は飛び込みの練習が長引いて帰るのが夜になっちゃったんだ。
でも帰り道はね、夜は割と人の少ない通りにあるからさ、いつも家に帰るときなんかは基本的に私一人で、しかも真っ暗な一本道を歩くの。街灯はあるけど、いつも少しだけ怖いような気持ちだったのを覚えてるよ。
でね。その日もいつも通り自宅までの道を一人で歩いてたんだけど
そしたらね?道の先になんかの紙が落ちてるのが見えたんだ。
最初は、貼り紙が剥がれて落ちたのかなって思ったんだ。でもそんなところに貼り紙なんて貼られてるのを見たこと無いし、そういうのにしては紙が小さいんだよ。
近付いてみるとね、それは一枚の葉書だった。切手を貼ったり宛名を書いたりする面が上を向いた状態で落ちてたんだけど、その面には何も書いていない。
少し不思議に思って、葉書を拾い上げて、裏返してみたんだ。
するとそこには。ただ一行、ひらがなで、
『まがれ』
と書かれてたよ。 正直、意味が分かんなかったよ。曲がれったって、そこは一本道なんだよ?
方向転換が出来るような所なんて何処にもないし、それで不思議に、っていうかなんか気持ち悪いなって思って、それを元あった場所に戻して、で、また歩き出したんだよ。そしたら、後ろから
ふふふ、って。
声が聞こえたの。
もうびっくりして、すぐに後ろを振り返ったよ、でもそこには誰もいなくて、さっきまで通ってきた真っ暗な一本道がずうっと伸びてるだけ。
それで何だか余計に怖くなって、そこからは走って家まで帰ったよ。
その後、家に帰ってから何かが起きたということも無く、その後も飛び込みの帰り道には同じルートを使ってたけど、もう一度そういった不思議な経験をしたことは一度も無かったんだ。
あの日に聞いた笑い声、多分成人したくらいの女性だと思うんだけどね。理由もわからないけど、凄く嬉しそうな声だったのは、はっきりと覚えてるよ。
あの葉書も次の日には無くて結局あの夜の出来事が何だったのかは、未だに分からないんだけどね。 ………この時からだったと思う。
明らかに異質な空気を感じたのは。まる達以外の何かがいるような、そんな空気を感じたのは。
それに曜ちゃんの話を聞いて像が少し結ばれちゃったんだ
『成人女性』ただそれだけ。ただそれだけなんだよ?
それでも空想するには十分すぎた。
千歌ちゃんの話が本当ならそろそろ危機感を持つべきかもね。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています