かすみ「せつ菜先輩の差し入れ」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
ある日の放課後。その日は天気の良い日だった。
かすみ「あっ!おーい!しお子ーーー!」
栞子「あっ、かすみさん」
かすみ「部室行くの?」
栞子「はい。かすみさんも?」
かすみ「そうだよ」
栞子「じゃあ、一緒に行きましょうか」 かすみ「今日は天気良いね〜」
栞子「そうですね。練習日和ですね」
呑気に何気ない事を話しながら歩いていた。
かすみ「でね〜しず子が〜」
栞子「それは愉快ですね」
ガチャ
この後、二人が部室の扉を開けた際に事件は起こる。いや、起こっていた。
侑「………うぅ」
かすみ「………ゆ、侑先輩」
侑が倒れていた。 侑の元へ駆け寄る二人。
栞子「大丈夫ですか。何があったのですか?」
侑「うぅ…あれ…」
かすみ「あれって?」
侑が指を指す先にあったものは
かすみ「げっ…あれは…」
『皆さんで召し上がってください』の書き置きとバケットに入った謎の物体。 かすみ「これ…せつ菜先輩の字ですよね」
栞子「そうですね。せつ菜さんの……差し入れでしょうか?」
かすみ「差し入れ…」
栞子「侑さん。食べたのですね」
侑「……」
栞子「返事がない。肝心のせつ菜さんはどこに行ったのでしょうか」 侑「う…うぅ…」
栞子「侑さん…」
侑「し…」
栞子「し?」
侑「死兆星が見える…」ガクッ
かすみ「侑先輩ーーーーー!!!!」
栞子「ここ室内ですが」 かすみ「しお子…どうしよう」
栞子「取り敢えず侑さんは安静に」
かすみ「そうじゃくて。せつ菜先輩のアレ…人数あるよ」
栞子「人数分?」
かすみ「うん。侑先輩が一つ食べたとし…ピッタリ人数分ある…」
栞子「食べない訳にはいかないですね」
かすみ「でもかすみん今お腹痛いし…」
栞子「嘘吐かないで下さい」
かすみ「う、嘘なんか吐いてないよ」 栞子「腹痛を起こしている人特有の瞳孔の開きが見られません」
かすみ「え…そんなのあるの?違うんだよ」
栞子「嘘です」
かすみ「嘘とかじゃなくて。あの…」
栞子「私が言った事が嘘です」
かすみ「………なんでそんな嘘吐くの」
栞子「先に嘘吐いたのはかすみさんじゃないですか」 かすみ「それは…とにかくどうするの?」
栞子「どうするとは?」
かすみ「これ!食べるの?」
栞子「それは…せつ菜さんの気持ちを考えたら」
かすみ「でも…これ…なんだろう。パン…なのかな?」
栞子「パンでしょうね」
かすみ「こんな色のパン見た事ないけど」
栞子「何を使えばこの色を出せるのでしょう」 かすみ「しお子…食べなよ」
栞子「え?」
かすみ「せつ菜先輩がせっかく持ってきてくれたんだから」
栞子「ですが…先に侑さんをどうにかしないと」
ガチャ
璃奈「おつかれさま」 かすみ「りな子」
栞子「璃奈さん」
ミア「ボクも居るんだけど」
璃奈「二人ともどうしたの?」
かすみ「どうしたもこうしたもないよ。見てよ」
璃奈「あっ…侑さん…」
ミア「まさか…死んでるの?」
かすみ「そんな訳ないでしょ!生きてるよ!多分…」
栞子「多分って…」 璃奈「何があったの?」
かすみ「アレだよ」
ミア「…アレは何?」
かすみ「せつ菜先輩が作った何か」
ミア「何か?何かって何さ?」
かすみ「何かは何かだよ。分かってるのはせつ菜先輩が作ったって事とそれを食べて侑先輩が倒れたって事」
ミア「倒れたって…毒でも入ってるの?」 かすみ「まさか」
璃奈「救急車は呼ばなくていいの?」
栞子「息はあるし脈拍も安定はしていますから」
ミア「だからオッケーって事にはならないと思うけどね」
かすみ「取り敢えずミア子。食べる?」
ミア「よくこの状況で人に勧めるね」 かすみ「だって誰も手につけないんじゃ、せつ菜先輩が可哀想じゃん」
ミア「日本のそう言う文化は本当によく分からないな。実害が出てるんだから食べるべきじゃないだろう」
栞子「確かに。その通りですが」
ミア「そもそもこれはなんて料理なの?何を使ったらこんな料理が出来るんだよ。化学調味料使わなきゃこんな色出せないよ」
璃奈「確かに。一番の謎かも」 ミア「で?作った張本人はどこ?」
かすみ「そう言えば」
栞子「私達が来た時には居なかったので」
ミア「まあ書き置きするくらいだから何か用事があって部室には来れないんだろうけどさ。電話くらいは出来るんじゃないの?」
かすみ「確かに電話してみようか」
栞子「そうですね。掛けてみます」
プルルル プルルル
栞子「……」
プルルル プルルル
栞子「でませんね」 ミア「って事は今電話に出れる状況にはないって事だね」
かすみ「もう…謎の物体を残して消息を断たないで欲しいよ」
栞子「そんな失踪したみたいに…」
かすみ「そもそも何を思って用意したんだろう」 ミア「さあね。本人のみぞ知るってヤツだね」
かすみ「どんな味がするんだろう…」
ミア「気になるなら食べてみればいいさ」
かすみ「いや…食べないけど。少し気になるじゃん」
璃奈「私…食べた事がある」
かすみ「これを?」
璃奈「これじゃないけど。せつ菜さんが作った料理を食べたよ」 意識なくなったなら侑ちゃんの口に詰め込めばいいよね 期待
ミアちどスレートで草
せつ菜には一度正面から不味いと言った方が良いと思うんだ… かすみ「食べたの!?」
璃奈「うん」
かすみ「大丈夫だった?」
ミア「大丈夫だから璃奈はここに居るんでしょ。璃奈が居なければボクもここには居ないだろうね」
璃奈「私が食べた時は倒れる程ではなかったよ」
かすみ「って事はせつ菜先輩の料理の殺傷能力が上がってるって事?」
栞子「殺傷能力と言う言葉は料理に使う物ではありませんよ」 ミア「そんな事言ったって現に被害者が居るだろう」
栞子「まるで事件みたいに」
ミア「事件でしょ。人が一人倒れてるんだからさ。それとも日本じゃこんな事は日常茶飯事な訳?だとしたらアガサ・クリスティもビックリだね」
かすみ「う〜そのアガサなんとかって人は知らないけど」
ミア「アガサ・クリスティね」
かすみ「…結局どうするの?この…せつ菜先輩が作った…ナニカ」
ミア「どうするって?食べないなら捨てるしかないでしょ」 かすみ「え〜捨てるの?」
ミア「だって食べないんでしょ?なら捨てる以外の選択肢ってある?それとも花と一緒に飾っておく?」
かすみ「それは…せつ菜先輩が心を込めて作ってくれたのに捨てるなんてさ」
ミア「なるほど。これが日本人の特有の忖度ってやつか」
かすみ「そん…たく?」
璃奈「ミアちゃんの方が日本詳しいんだ」
栞子「それは少し違いますよ。ミアさん」
ミア「何が違うの?」
栞子「忖度ではありません。気遣い、思いやる心です」
ミア「気遣い…思いやる心?」 栞子「そうです。忖度とは似てる様で全然違います」
ミア「思いやりか。だったらさ、せつ菜には事実をそのまま伝えるべきだね」
璃奈「事実を?」
ミア「ハッキリ言ってあげるんだよ。せつ菜の作ったナニカはとてもじゃないけど食べられるものじゃないって」
かすみ「そんな事言える訳ないでしょ!しお子が言った事全然分かってないよ」
ミア「全然分かってないのはそっちだよ。ハッキリ言ってやらないと彼女はいつまで経っても料理が下手なままなんだからさ」
かすみ「そうだけど。言い方ってものがあるでしょ」
ミア「じゃあ何て言うの?」 かすみ「えっと…」
ミア「自分が作った料理で人が死ぬ事の方がツライと思うけどね」
栞子「誰も死んでません」
ミア「そうならない為にもハッキリ言ってあげるべきだ」
かすみ「でも…」
栞子「確かに。ミアさんの言う通りかもしれませんね」
かすみ「しお子…」
栞子「ですが、かすみさんの言いたい事も分かります。やはり伝え方は大事ですから」 ミア「じゃあそこら辺は任せるよ。そう言った機微はボクには分からないからね」
かすみ「……機微?」
ミア「かすみは本当に日本人なの?」
かすみ「どう言う事!!?」
璃奈「突っ込まないであげて、、、ミアちゃん」
栞子「この場合は忖度ですね」 ミア「それで?誰が伝えるの?」
かすみ「しお子でしょ?」
栞子「え?私ですか?私はちょっと…」
かすみ「かすみんだって嫌だよ。りな子〜」
璃奈「…………」
かすみ「りな子?」
璃奈「…………」
かすみ「ズルい」
ミア「思いやりは?」 ガチャ
果林「何やら賑やかね」
かすみ「あっ、果林先輩!」
果林「えっと…」
侑「うぅ…」
果林「へ〜………なるほどねぇ」
かすみ「何がなるほどなんですか!!?」
果林「ふふっ」 かすみ「笑われた!?」
果林「それで?何があったのかしら?」
かすみ「分かってなかったんですか?なるほどって言ってたのは何だったの?」
ミア「果林ってそれっぽく喋ってるだけの時あるよね」
果林「あらそう?」
ミア「それだよ。それ」 かすみ「侑先輩がせつ菜先輩が作った料理を食べて倒れちゃったんですよ」
果林「料理を食べて?」
璃奈「これだよ」
果林「何…これは?」
かすみ「せつ菜先輩が作ったナニカです」
果林「ナニカ?」
栞子「いつの間にかナニカが固有名詞みたいになってますね」 果林「これ…料理なの?」
かすみ「召し上がれって書いてありますからね〜」
果林「そう。なんか凄い色してるけど…。何を使ったらこんな色になるのかしら…」
ミア「ある意味才能だよね。作ろうと思って作れる物じゃないよ」
果林「それで…これを食べて倒れちゃったの?」
かすみ「と思われます」
果林「思われます?」
栞子「実際に見ていた訳ではないんですよ。部室に来たら倒れてて」 果林「そう言う事。じゃあこのナニカが原因かも怪しいって事ね」
かすみ「でも、それしかないですよ。侑先輩指差してましたもん」
果林「意識があったの?」
かすみ「うっすらですよ」 果林「じゃあハッキリ言った訳ではないのね?」
かすみ「まあ」
ミア「確かに。果林の言う事も一理あるかもしれない」
かすみ「決めつけるのは時期そうしょう…時期しょうしょう…時期そうそうって事ですか?」
栞子「涙そうそうみたいに」
果林「だって、もしアレが原因で倒れたのなら食べかけが落ちてるはずじゃない?」
かすみ「…確かに」
ミア「けど、食べ切ってから倒れた可能性もあるよ」 かすみ「ん〜侑先輩が起きてくれれば真相が明らかになるのに〜」
ミア「逆を言えば意識さえ戻れば真相は明らかになるんだ。謎でも何でもないよ」
果林「所でせつ菜はどこに居るの?」
ミア「さあ?消息不明」
璃奈「電話も出ないよ」
果林「へ〜そうなの。困ったものね」 かすみ「そうなんですよ〜」
果林「それにしても本当に不思議な物体ね」
栞子「物体って…」
ミア「どうやって作ったのか。興味すら湧いてくるよ」
果林「ん〜…ほんのりシナモンの香りがするのよね」
かすみ「…パン生地ではないですもんね」
ミア「本当に何を使えばこの色になるの?」
璃奈「青色って確か…食欲減退色だった気がする」 ミア「かすみ。やっぱり食べてみなよ」
かすみ「え?何で急に?さっきまで捨てようとか言ってたのに?」
ミア「どんな味がして、どんな食感なのか気になってきたんだよ」
かすみ「だったら自分で食べればいいじゃん。それかりな子に」
ミア「璃奈にそんな事させられる訳ないだろ」
かすみ「なんでかすみんはいいのさ!!!」
ミア「なんか…かすみは大丈夫だから」
果林「確かにかすみちゃんは大丈夫そうね」 ミア「日本語が苦手なかすみに一つ教えてあげるよ」
かすみ「苦手だった事ないんだけど」
果林「自覚がないのね」
ミア「適材適所って言葉があるんだ」
かすみ「それくらい知ってるよ!って言うか今使う言葉じゃないよ!ミア子がたべなよ!」
ミア「ボクは……あまり胃が強くないんだ」
かすみ「かすみんだって別に強くなんかないよ!」 未登場は歩夢、せつ菜、愛、エマ、彼方、しずく、嵐殊か。 ミア「かすみ。もっと自信を持つんだ」
かすみ「余計なお世話だよ!!!自信なら…」
ガチャ
しずく「かすみさん。廊下まで声漏れてるよ」
かすみ「しず子…あっ!」
璃奈「何も知らない人に食べさせるのは良くないと思う」
ミア「流石にボクもそれはどうかと思うな」
かすみ「まだ何も言ってないんだけど!!!」 しずく「えっと…何があったの?」
栞子「せつ菜さんが差し入れを持ってきてくれたんですが」
しずく「差し入れ?」
かすみ「アレだよ」
しずく「………手作り?」
かすみ「うん。手作り」
しずく「そうなんだ」 かすみ「食べる?せつ菜先輩が心を込めて作った差し入れ」
しずく「あっ…えっと…皆んなは食べたの?」
かすみ「もちろん」
栞子「嘘はいけません」
果林「そうよ」
しずく「かすみさん?」
かすみ「あはは…冗談だよぉ」
果林「そこに倒れている子いるでしょ?」
しずく「え?あっ!どうしたんですか?」 ミア「おそらくソレを食べた結果」
しずく「え?アレを食べて倒れたって事?」
果林「あくまで推測よ」
しずく「救急車呼ばなくていいんですか?」
かすみ「このやり取りさっきもやったばかりだよ。はい、しお子」
栞子「息もあるし脈拍も安定しています」
しずく「じゃあ、ただマズイだけで気を失ったって事?」
かすみ「今ハッキリとマズイって言ったね」
ミア「しずくって意外と毒舌なんだね」
しずく「待って!そう言う話じゃないの?」 かすみ「あ〜…なんて言うか」
ミア「いわゆる、これが思いやりってやつかな」
しずく「え?」
栞子「あまり真に受けないで大丈夫ですよ」
ミア「しずくの言葉を借りればさ、味だけで人一人をこんな状態に出来るんだ。どんな味がするのか興味が湧かない?」
しずく「興味…それで私に食べさせようとしたの?」
かすみ「ミア子がだよ!かすみんは違うから」 ミア「だって不思議でしょ?何を使えばこんな色になるの?何をすればこんな見た目になるの?本当にこれは料理なの?錬金術なんじゃないの?」
しずく「本人に聞けば…」
かすみ「だから本人に連絡がつかないんだよ」
しずく「だからって言われても」 ミア「よし。ジャンケンをしよう」
かすみ「嫌だよ」
ミア「じゃあ、かすみが食べる?」
かすみ「ジャンケンだって嫌なんだよ!」
ミア「かすみは心配症だね。6人も居るんだよ?負ける確率の方が低いんだから」
かすみ「………確かに。ジャンケンする?」
栞子「えっと…皆さんは?」
しずく「皆んながするって言うなら」
果林「私はどっちでも良いわ」
璃奈「じゃあやろう!」
かすみ「りな子…意外と乗り気だね」 ミア「決まりだね」
かすみ「分かったよ」
ミア「恨みっこなしだよ。せーの」
かすみ「待って!何回勝負?」
ミア「一回に決まってるだろう。何回やったって敗者は一人で変わらないんだから」
かすみ「…分かった」
ミア「じゃあ行くよ。じゃん」
かすみ「けん」
6人「ぽん」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています