曜「新選組だーー!!」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
Aqoursをメインとした新選組SSです
以前にμ'sメインで書いたのですが、新たにAqoursメインで書きます
落ちてしまったので再度スタートさせます、配役を少し変えました
注意
Aqours以外のメンバーも登場
メンバーの死亡描写などがあり
歴史事実に対しての創作多めにあり
これらに嫌悪感がある方は読まないでください 千歌「わわ、曜ちゃん、それ何!?」
曜「なんかね、古い日記みたいなものが出てきたんだよね」
千歌「日記……?」
曜「うん、でも昔の言葉遣いで全然読めなくて、梨子ちゃん読めない?」
梨子「私もこれはちょっと……」
果南「私もパス」
ルビィ「んー……花丸ちゃんどう?」
花丸「……んー……あ、これなら読めるかも」
善子「本当、あんた生まれる時代間違えてない?」
花丸「最初は……嘉永ずらね」
鞠莉「嘉永?っていつ?」
ダイヤ「150年以上前の江戸時代の後期ですわね」
千歌「おぉ、幕末!」
梨子「曜ちゃんの家のものなの?」
曜「んー、それがよくわからなくて、でもなんか気になって」
花丸「結構長いけど、読んでみる?」
曜「うん、お願い」
花丸「えーと、……日記というか、なんかメモ書きみたいずら……」 150年以上前、とある村で
曜「あれかー……私たちのお気に入りの場所荒らしてるのは……」
千歌「どうする?懲らしめる?」
果南「二人とも血の気が多いなー」
3人は草むらから木刀を握りしめている
視線の先には数人の悪ガキが我が物顔で遊んでいる
曜「やっちゃおうか、千歌ちゃん」
千歌「よーし、……果南ちゃんもだよ?」
果南「はいはい」 千歌「せーのっ!こらああああ!出ていけー!」
威勢よく飛び出し木刀を振り回す近藤
「な、なんだこいつら、ひっ……」
果南「ん?」
木刀下ろしたまま、無言の威圧をかける井上
曜「どりゃあああ!」
そして、真っ先に切り込み暴れる土方
のちに新選組の中核を担う者達である、そしてもう一人 ーーーーー
ーーー
ー
千歌「いやー、余裕だったねー」
曜「果南ちゃん、またサボってたでしょ」
果南「そんなことないけど?」
3人が試衛館の道場へと戻ってくる
千歌「ん?誰か道場の前にいる」
曜「誰だろ」
梨子「……ここの道場の人ですか?」
果南「お、もしかして入門希望かな」
千歌「あなた、名前は?」
梨子「沖田、総司です」 数年後
梨子「ふぅ……」
梨子は手合わせを終え、それを見ていた果南が話しかける
果南「いやー、相変わらず梨子は神業だね」
梨子「井上さんもたまには誰かと試合をしたらいいのに……」
果南「果南でいいって言ってるでしょ?私は、ほら気が向いたら?」
梨子「いつもそれ……、あの、曜ちゃんは見てませんか?」
果南「曜?また道場破りとかしてるんじゃないの?」
梨子「はあ……まともな人がいない……」 そんな会話をしていると道場の外から何者かが声をかける
ダイヤ「失礼します、天然理心流の道場、試衛館はこちらでしょうか」
果南「ん?そうだけど?」
ダイヤ「こちらに、土方歳三という方は?」
梨子「一応、うちの門下生ですけど……」
ダイヤ「……やはり、ここにいるのですね……手合わせさせていただきますわ!」
梨子「え、ええ……?」
果南「いや、今はいないんだけど、なんでまた?」
ダイヤ「私が留守の間に師範代を務めている道場に来て門下生をズタボロにした挙句、妙な薬を売りつけられたのです!」
果南「あー、そりゃ、曜だ……」
千歌「なになに?なんの騒ぎ?」 ダイヤ「……というわけです」
千歌「あー、うーん、そのご迷惑を……」
ダイヤ「とにかく手合わせを」
千歌「えーっと」
ダイヤ「失礼、私、永倉新八と申します、神道無念流免許です」
千歌「神道無念流!?あの有名な!?すごー……」
ダイヤ「私は別にまだまだ……」
曜「ただいまー!いやー、今日も売れた売れた」
千歌「げ」
ダイヤ「……なるほど、この方ですのね!」
ダイヤは木刀を持ち、声がした方へと向かう
曜「え、なに?新しく入門する人?」
ダイヤ「違います!土方歳三!尋常に勝負ですわ!」
曜「えー?なんかわかんないけど、いいよ?」
千歌「あちゃー……」 曜はすぐに木刀を拾い走り出すとダイヤに飛びかかる
ダイヤ「っ、卑怯ですわよ!」
曜「実戦で卑怯なんて言えないでしょ」
ダイヤ「っ!」
ダイヤもそれを受けて一度距離を取ろうとするが曜はすかさずダイヤの足元を蹴り飛ばす
ダイヤ「なっ!?」
バランスを崩したダイヤの首元に曜は木刀を突きつける
ダイヤ「っ……」
曜「はい、勝ち」
ダイヤ「なんですの!?この流派は!型も何もあったものでは……」
千歌「いや、あの、それは曜ちゃんだけで……」
梨子「い、一応ちゃんとした型もあって……」
曜「型が綺麗でも、最終的に相手を斬れるかどうかでしょ」
ダイヤ「……も、もう一度ですわ!」
ダイヤと曜は何度も手合わせをし、次第にダイヤは試衛館に食客として居座るようになった
千歌「……出来れば門下生としてお金払って欲しいんだけどなぁ……」 それから数日後
鞠莉「シャイニー☆天然理心流の道場ってここかしら?」
梨子「ま、また変な人が……」
道場の入り口に大きな槍を持った人物が立っている
鞠莉「私は、原田左之助、なんだかすごい剣術って聞いたから寄ってみたんだけど、誰か試合しましょうよ、私は槍だけど」
ダイヤ「全く、礼儀もない方ですわ……」
梨子(ええ……あなたがそれを言うの……?)
梨子「ど、どうしよう、今日は千歌ちゃんも曜ちゃんもいないし……」
果南「なら塾頭の梨子でしょ」
梨子「わ、私……?」
鞠莉「この子が塾頭?ちょっとちょっと、嘘でしょ?」
鞠莉は笑いながら梨子を見るもすぐに表情を強張らせる
梨子「私がやると、怪我をさせちゃうかな……」
鞠莉「ちょっと、やばそうね……」
鞠莉が槍を持ち身構える ダイヤ「仕方ありません、私がやりましょう」
果南「え?ダイヤがやるの?」
ダイヤ「どうせ、あなたもやる気はないのでしょう?」
果南「あ、バレた?」
ダイヤ「よろしいですね?一応私も食客として天然理心流を学んでますので」
鞠莉「ええ、いいわよ、勝負!」
*****
***
*
千歌「それで、なんでこうなってるの?」
千歌が帰ると鞠莉はダイヤ達と当然のように食事をしている
鞠莉「それがなんだかウマがあったというか?」
ダイヤ「なかなか見所がある方でしたわ」
果南「ってわけで意気投合して」
鞠莉「私もここで厄介になろうかなって」 梨子「あ、あの、私は止めたんだよ?」
果南「まあ楽しそうだし、いいんじゃない?」
鞠莉「ねー」
鞠莉、ダイヤ、果南は汁物を啜っている
曜「千歌ちゃん、これ以上はお金がやばいんじゃない?」
千歌「だから困ってるんじゃんー……」
千歌「どうしよう、ただでさえ貧乏道場なのに……」
梨子「あ、あの、もっと門下生増えるように頑張るね!」
曜(というか、梨子ちゃんにビビって辞めちゃう人多いんだよなぁ……) そして、また数日後
千歌たちの前に二人が礼儀正しく正座して座っている
千歌「あのー……、一体なんの御用で……」
聖良「試衛館という道場の噂を聞いて参りました」
理亞「各道場で噂になってた」
梨子「曜ちゃん、どれだけ道場破りしてるの……?」
曜「有名になれば、人が集まるかなーって、私の薬も売れるし」
ダイヤ「門下生ではなく、なんだかわからない方々ばかり増えるではないですか」
鞠莉「本当よー、意味ないわねー」
梨子(この人たちはどの立場で言ってるんだろ……)
聖良「申し遅れました、詳しくは言えませんが、とある藩を脱藩しました、山南敬助と申します」
理亞「藤堂平助、私は詳しくは言えないけど、とある藩主の落胤よ」
鞠莉「じゃあ私も殿様の子かしらー」
果南「私は、じゃあ徳川家?」
梨子「果南さんは同心の家の人じゃ……」
理亞「ば、馬鹿にしてるでしょ!?私はともかく姉様まで……!」
曜「あれ?姉様?」
聖良「同じ北辰一刀流ですので、この子が姉のように慕ってくれておりまして」 ダイヤ「それで、本日のご用件は?」
聖良「天然理心流の近藤先生とお手合わせを」
曜「んー、他の人じゃダメなの?」
聖良「はい、次期宗家である方とのお手合わせを」
鞠莉「そう言うなら仕方ないんじゃない?」
果南「そうだね、ほら、千歌準備」
千歌「なんで、皆で話を進めるかな……」
千歌はため息をついて立ち上がると木刀を準備する
曜「わざわざ指名するってことは相当腕は立つのかな?」
理亞「姉様は北辰一刀流の免許皆伝、一流よ」
梨子「そっか、じゃあ大丈夫だね」
理亞「……大丈夫?」
聖良「それではいざ……っ」
聖良が木刀を構え千歌を見ると先程までの様子との違いに顔を強張らせる
千歌「……」
聖良(すごい圧ですね……)
梨子「千歌ちゃん相手でもそんなに怪我はしないで済みそう」 聖良「……っ」
聖良が隙を窺い攻めあぐねていると千歌は真っ直ぐ距離を詰めて木刀を振り下ろす
聖良(受け切れないっ……!)
聖良が避けるも千歌は振り下ろした木刀をすぐさま切り上げ聖良の手を弾く
聖良「っ!」
聖良はそのまま向き合うも攻めることができない
聖良(なんでしょう、隙がないとかではないのに、この気迫……)
聖良「……っ、参りました……」
聖良は木刀を床に落とし頭を下げる
理亞「そんな、姉様が……」
千歌「はー……疲れたー……」
千歌は息を大きく吐くとだらしなく横になる
梨子「あー、もう、千歌ちゃん、だらしない……」
ダイヤ「あれがなければ、非の打ち所がないのですが……」
聖良「一瞬の気迫、まるで……」
曜「化け物みたいだったでしょ?」
聖良「え、ええ……」
曜「武士になるには、まずは気迫からって言っててさー」
聖良「武士?武士に、なりたいのですか?」
曜「そうだよ?千歌ちゃんは武士になるために強くなろうとしてるんだから」
千歌「まあそれは夢であって、私はこの道場を大きくできればいいかなって」
聖良「……」 理亞「姉様!私、しばらくここで鍛錬する、このままじゃ悔しいもの!」
聖良「ええ、私もそのつもりです、天然理心流、奥が深そうです」
果南「いや、単なる田舎剣法だよ?」
千歌「あ、あのー、それは正式に門下に入るとか……」
聖良「脱藩浪人の身ですので、食客としてお世話になります」
理亞「同じく」
千歌「お金が……お金が……」
こうして、試衛館には数人の腕ある食客が集ったのであった そんな光景が当たり前になるほどの時が過ぎた頃
千歌「え、曜ちゃん、そんな遠くまで行くの?」
曜「うん、この辺りの道場は売り込んじゃったし」
理亞「殴り込みの間違いでしょ」
曜「理亞ちゃん?久々に手合わせするかな?」
理亞「……嫌よ、蹴られたり、めちゃくちゃされるし……」
梨子「どこまで今回は行くの?」
曜「ちょっとそうだなー、浦賀とか、その辺りまで行ってくるよ」
果南「お土産よろしくねー」
曜「それじゃ、行ってくるねー」
曜は大きな荷物を抱えて出て行った 鞠莉「ねえ、気になってたんだけど、曜は何を売ってるの?石田散薬とか聞いたけど」
千歌「曜ちゃんの家で伝わってる、薬を曜ちゃんが改良した万能薬だよ」
果南「打ち身、切り傷、骨折、なんでも効くんだよね」
鞠莉「すごいじゃない!」
理亞「絶対嘘よ、それ」
千歌「本当だよ!なんかね、河童に昔教えてもらったらしいよ?」
梨子「千歌ちゃん、それはもっと胡散臭くなりそう……」
わいわいと話している中、聖良だけ難しい顔で考え事をしている
ダイヤ「どうしましたか?聖良さん」
聖良「いえ、浦賀……、噂では今頃……」 *****
***
*
曜「海だー!」
海に着くと曜は荷物を下ろして声を上げる
曜「やっぱり海はいいなー、広いし、大きいし」
曜「……ん?なに、あれ、怪物!?」
曜は沖に大きな黒い物体が浮いているのに気付く
慌てて荷物を持って崖の近くへと駆け出す
曜「……なんだろ、まさか、船……」
侑「うわー!ときめくなー!!」
突然背後から大きな声が聞こえてくる
曜「う、うわあ!?」
侑「あ、ごめんごめん、驚かせちゃった」
曜「あ、あなたもあれを見に?」
侑「うん!黒船、大きいよねー!」
曜「黒船……?」 侑「そうだよ、アメリカって異国から来た船だよ」
曜「や、やっぱり、船……、異国……?アメリカ……?」
侑「そう、この国の何倍、ううん、もっとかもしれない、大きな国だよ」
曜「ま、まさか、そんな……」
侑「私たちの国はすごい小さくて、知らないことばかりなんだよ」
曜「は、はあ……すごいなー……、あれが海を進むんだ……」
侑「あれに乗って、どこまでも遠くに行くのが私の夢なんだー」
曜「どこまでも、遠くに……」
侑「ときめくよねー、きっと知らないものや知らないことばかりなんだよ!」
曜「私も、行けたりするかな……」
侑「もちろん!そのうち誰もが外国に行ける世の中になるよ!」
曜「なんで、そんなにいろんなことを知ってるの?」
侑「ちょっと、ある人のところで教え、あ、まずい!約束してるんだった!!」
侑は急に慌て出し、立ち去ろうとする
曜「あ、ま、待って、名前はー!?」
侑「私!?土佐の、坂本龍馬ぜよ!」 曜「坂本、龍馬……」
侑「またねー!」
曜は一人残されると黒船をじっと見つめている
曜「海の向こうに……」
*****
***
*
曜「それでね、船がね!とんでもなく大きくて!!」
ダイヤ「突然帰ってきたと思ったらなんの騒ぎですか……」
鞠莉「曜が異国の船を見たらしいわよ?」
千歌「お、落ち着いて、曜ちゃん」
曜「アメリアってところから来たらしいよ!」
千歌「え、えーっと、聖良さーん……」
聖良「……ええ、確かに今、欧米と言われる国々が日本へ接触してきています」
曜「すごいね、すごいことだね!」
聖良「しかし、このままでは我が国は異国の食い物になり、異人に好き勝手されてしまうかもしれません」
曜「え……?」
聖良「異国からの敵を打ち払わなければならない、これを攘夷と言いまして……」
千歌「は、はあ」
理亞「姉様は尊王攘夷について詳しいのよ」
曜(敵、なのかな……?) 道場内で議論をしているのを傍目に梨子は一人、外で木刀を振っている
梨子(難しい話はわからない……)
梨子「はっ!はっ!……ん?」
善子「やばっ」
梨子「誰、出てきて!」
梨子は視線に気付き声をかける
善子「……くっくっく、よくぞ気付いたわね」
善子は不思議なポーズで物陰から現れる
梨子「……不審者ね」
善子「ま、待った!違うのよ!」
梨子「じゃあ、何?」
善子「あなたの剣に宿った鬼に、私の剣が反応したのよ」
梨子「よくわからないけど、手合わせしたいってこと?」
善子「やめておいた方がいいわ、私が剣を抜いたらこの世は調和を乱し、っとわ!?」
梨子は善子の話を聞かずに木刀を振り抜く
慌てて善子はそれを木刀で受け止める
善子「危ないわね!」
梨子「……私の一振りを止めた……すごい……」
梨子は楽しそうに突きを繰り出す
善子「ひぐ!?このっ!っ!」 梨子と善子はしばらく打ち合い、善子が先に木刀を落とす
善子「はあはあ……」
梨子「こんなに打ち合えたのは久しぶり……、ねえ、あなたも道場に来ない?」
善子「勝手なこと言わないでよ、道場って、そこのでしょ?そんな名も知れぬ道場には行けないわ」
梨子「そうなの?強い人たくさんいるよ?」
善子「ダメなのものはダメなの、ま、まあ、あんたは強いからたまに手合わせしてあげてもいいわよ?」
梨子「本当?怖がって手合わせしてくれる人少なくて……」
善子(あれだけ強ければそうでしょうね……)
梨子「じゃあ、約束だね、名前は?」
善子「名前?え、えーっと……」 *****
***
*
梨子「それで、善子ちゃんって言うんだけど、すごい強かったの」
果南「んー、そっちの名前言われてもなー……」
ダイヤ「しかし、梨子さんの相手を出来るのは相当ですわね」
聖良「千歌さん」
聖良が千歌に小さな声で尋ねる
聖良「梨子さんはかなりの腕ですが、その、どういう経緯でこちらに?」
千歌「あー、うん、うちの道場の前で一人で立っててね」
千歌「子供たちに化け物だって怖がられて一人ぼっちだって言うから」
聖良「化け物?」
千歌「うん、梨子ちゃんは天才の類で、単なる棒切れ持たせてもすごい強くてね」
聖良「それで……」
千歌「それで、曜ちゃんが梨子ちゃん相手にボコボコにして」
聖良「は!?」 曜『化け物なのに、私より弱いね』
千歌「って」
聖良「なんというか、曜さんらしいですね……」
千歌「今じゃ多分梨子ちゃんの方が強いけどね、剣術をしっかり習ったから」
聖良「つまり剣術など知らぬ前から強かったと」
千歌「うん、でも本能的に剣の使い方を知っているというか、天才って言うんだろうね」
聖良「なるほど……」
千歌「今じゃすっかり楽しそうにしてて安心してるよ、来た時は笑いもしなかったから」
聖良「そうですね」 しばらくして、千歌は天然理心流の宗家に正式に就任した
聖良「おめでとうございます、近藤勇先生」
千歌「や、やめてよー、いつも通りでいいから」
果南「これからは道場の資金繰りもしないとねー」
梨子「食客ばかりで門下生少ないもんね……」
理亞「な、なんで私だけ見るのよ」
ダイヤ「それには私と聖良さんでいい考えがあります」
千歌「考え?」
聖良「はい、講武所はご存知ですよね?」
梨子「講武所?」
鞠莉「幕府が作った旗本御家人に武芸を学ばせるための場所でしょ?」
ダイヤ「そこの指南役に千歌さんになってもらうのです」 千歌「わ、私が!?」
聖良「正式に道場主になったわけですし、実力も十分だと思っていますよ」
千歌「私が、講武所の指南役……」
曜「千歌ちゃんが妄想してる」
果南「確かに、講武所の指南役になればそれだけですごい宣伝になって、門下生もたくさん……」
ダイヤ「はい、ですから、曜さん?」
曜「ん?何?」
ダイヤ「道場破りはほどほどに、悪い噂が流れたら元も子もありませんので」
曜「わ、わかってます……」
梨子(それだけ有名になったら、あの子も試衛館に来てくれるかな)
鞠莉「でも大丈夫なの?そういうところって身分だとかにうるさいんじゃ?」
聖良「講武所は身分問わずと聞きますよ、完全な実力主義とか」
千歌「よ、よーし、頑張るよ!」
千歌は気合を入れて指南役になるべく活動していくことになる それからしばらくして
梨子「千歌ちゃん、大丈夫かな……」
曜「んー、大丈夫だよ、天然理心流ほど強い流派がこのあたりにあるとは思えないし」
梨子「そうなんだけど……」
曜、梨子、果南の3人が江戸の街を歩いている
果南「そろそろ帰ろうか、遅くなるよ?」
曜「うん、そうだね、あれ?」
梨子「あれって、千歌ちゃん……?」
3人は少し離れたところで千歌を見つける
千歌「よろしくお願いします!」
千歌はきっちりした身なりの人物に頭を下げている 曜「千歌ちゃんと、相手は……」
果南「あれは、……老中の……」
梨子「老中って……えーっと、偉い人?」
果南「まあそうだね、多分講武所の件をお願いしてるんじゃないかな?」
曜「なるほど……」
千歌は頭を深く下げていたが、そのうち土下座をし始める
梨子「え、ちょっと……」
曜「何もそんなことしなくても……っ!」
曜はすぐにでも飛び出そうとするも果南に止められる
果南「ダメだよ、我慢しないと……、千歌があそこまでしたのに無駄になる……」
曜を掴む果南の手も震えていた
千歌はなお頭を下げ続けている
果南「……行こう、ダメだよ、見たこと言ったら」
曜「わかってる……」
梨子「……はい」
三人は来た道を引き返して去っていく 数ヶ月後
千歌「……っ」
鞠莉「千歌?ちょっと、どうしたの!?」
千歌は道場へと戻ると奥に引きこもってしまう
聖良「講武所の話が、なくなったようです……」
理亞「どうして?講武所にあれほどの剣客なんていないはずじゃ」
ダイヤ「実力第一主義、あれは嘘だったと言うことですわね」
聖良「当初は、そのはずだったのです、しかし、今は……」
鞠莉「千歌は武士じゃなくて、農民の子だからってわけね、くっだらない」
梨子「そんな、あんな、あんなことまでして……っ」
曜「……」
曜は立ち上がると千歌のいる奥へと向かった 曜「千歌ちゃん」
千歌「……」
千歌は曜の方を見ようとしない
曜「そうやってても何も変わらないよ」
千歌「……わかってるよ……、やっと道場を立て直して、お父さんにも皆にも楽をさせてあげられると思ったのに……」
曜「……」
千歌「武士でもない私は、結局何もできない……、どんなに腕を磨いても、刀を差しても……」
曜「……やめるの?」
千歌「え……」
曜「武士になるって、言ってたのに、夢だって言ってたのに、やめる?」
千歌「……やめないっ、でも、でも……」
千歌「武士になんてなれるわけないっ」
曜「なるんだよ!武士よりも武士らしくっ、私が絶対に千歌ちゃんを武士にする、近藤勇を日本一の武士にする!」
千歌「どうやってさ!」
曜「考え中!!」 奥から聞こえてくる怒鳴り合いを試衛館の面々は心配そうに聞いている
梨子「ふ、二人とも……」
理亞「止めなくていいの……?」
果南「大丈夫大丈夫、あの二人はあれで」
ダイヤ「何かいい手を考えないといけませんわね……」
鞠莉「そうねぇ、曜が講武所の指南役を全員闇討ちする前に」
聖良「い、いくらなんでもそれは……」
果南「いやー、曜はやると思うよ?」 しかし、その後も特に策が思いつくこともなく、月日が過ぎていく
曜「んー、やっぱり私が講武所の指南役を全員倒し回るのがいいと思うんだけど」
ダイヤ「却下」
理亞「ダメでしょ」
曜「えー……」
鞠莉「んー、私は曜に賛成かな」
ダイヤ「鞠莉さんは単に暴れたいだけでしょう……」
理亞「というか、ただでさえ試衛館にいい噂がないのに悪名だけ上がるだけじゃないの」
曜「悪名も上がればいいかなって」
梨子「それで怖い人ばかり来るのは嫌かな……」
ダイヤ(その中でも腕前的にはあなたが一番怖いのですが……、まあそれは言わないでおきましょう) 議論をしていると聖良が慌てて試衛館にやってきます
聖良「ち、千歌さんは!」
曜「奥にいると思うけど」
梨子「千歌ちゃーん、聖良さんが呼んでるよー」
千歌「なーに?」
聖良「千歌さん、吉報です!」
千歌「え、え!?」
*****
***
*
ダイヤ「浪士組、ですか……」
聖良「ええ、目的は上洛される家茂公の護衛」
鞠莉「上洛するからって、そんなのを結成するなんて随分ね?」
理亞「知らないの?今の京は……」
曜「尊王攘夷の過激派浪士がたくさんいて、最悪の治安、なんでしょ」
果南「よく知ってるね?」
曜「外で商売してると噂は色々と入ってくるんだよね」 聖良「そうです、そのために結成されるのが浪士組」
鞠莉「んー、なるほど、適当な浪士なら京で捨て駒にしても特に痛くも痒くもないもんねー」
ダイヤ「言い方はあれですが、そういうことですわね」
千歌「でも、そこで上手く活躍できれば……」
聖良「また、講武所の話も……」
千歌「武士に、なれるかな!?」
聖良「えっ、それは……」
千歌の視線に聖良は目を逸らしてしまう
曜「……なれるよ、きっと」
曜は真っ直ぐに千歌を見る
曜「行こう、千歌ちゃん」
千歌「……うん、行こう!京に!」 *****
***
*
海未「浪士組ですか、行くのですか?」
穂乃果「うん、行くよ、せっかくきた話だし、楽しそうだもん」
ことり「いい話が来て良かったねー」
海未「それでは準備をしなくてはいけませんね、穂乃果」
穂乃果「芹沢鴨」
海未「はい?」
穂乃果「これからそう名乗ることにするよ、よろしくね」 試衛館の面々が京へ向けての準備をしている
ダイヤ「そういえば、私たちはいいとして、お二人は刀は大丈夫ですか?」
千歌「刀?」
曜「んー、これじゃダメかな?」
曜は年季の入ったボロボロの刀を見せる
理亞「な、何それ、斬れるの?」
曜「斬れるよー、ちょっと何度も斬らないといけないけど」
鞠莉「斬られる相手が可哀想ね……」
ダイヤ「千歌さんは?」
千歌「んー、私はこれだけど、ダメかな?」
明らかに安物の刀を手に千歌が首傾げる
聖良「支度金も出ましたし、せっかくですから刀を新しくするのはどうでしょうか」
千歌「え、でも支度金は道場に……」
ダイヤ「……まったく水臭いですわよ」
ダイヤ達は大量の金が入った袋を千歌に渡す
千歌「え、これって……」
理亞「私たちの支度金、ここにはその、世話になったしね」
聖良「ええ、ですので千歌さんと曜さんは新しい刀を」
千歌「み、みんな……ありがとう……!早速買ってくるよ!」
千歌は自分の支度金を持って出かけていく
鞠莉「大丈夫かしら……」
曜「仕方ない、私も刀でも買ってくるよ」 *****
***
*
千歌「これが有名な虎徹!!」
千歌は刀を手にして目を輝かせている
「ええ、たまたま手に入りまして」
商人は笑顔で千歌に刀を勧めている
千歌「確かにこれならなんでも斬れそう……」
「ええ、もう鉄だろうがなんだろうが簡単に斬れ、そして刀に傷などつきませんよ」
千歌「虎徹、すごいなー、でもお高いんでしょう?」
「それが運がいい、お侍様のご予算ぴったり!」
千歌「嘘!?これって奇跡だよ!買う!買います!!」
千歌は即答すると代金を支払う
千歌「これで皆に自慢出来るのだ!」
千歌は嬉しそうに刀を抱えて戻っていく 商人はそんな千歌を見て悪い笑みを浮かべて見送っていると背後から声をかけられる
曜「あれが虎徹ねー」
「ひぃ!?」
曜「流石に悪どい商売しすぎじゃない?」
「いや、あれはその……」
曜「私も商売人だから気持ちはわかるけど、あの人は私の大事な友人なんだよね」
「す、すみませんっ、すぐにお返しを……!」
曜「それだと千歌ちゃん傷ついちゃうしなー、ねえ、私も実は刀探してるんだよね、出来れば名刀」
曜は商人に対して笑顔でそれだけ言うと商人も察したのか奥へ慌てて駆けていき刀を持って戻ってくる
「こ、これを……うちで一番の名刀の兼定ですが……」
曜「……それ、知らない人はまた騙されるでしょ」
曜は刀を受け取って品定めする
曜「会津の刀……、うん、少なくともさっきの虎徹に比べれば全然いいかもね」
曜は刀をそのまま腰に差して店を出ようとする
「あ、あのお代は……」
曜「さっき千歌ちゃんが払ったでしょ?」 *****
***
*
試衛館ではすでに千歌が虎徹を見せびらかせている
千歌「これが、虎徹だー!」
鞠莉「初めて見たわ、すごいじゃない!」
理亞「こんな名刀手に入れるなんてやるわね」
少し離れたところでダイヤと聖良がその様子を見ている
ダイヤ「どう思いますか?」
聖良「……どう見ても虎徹とは思えませんが……」
曜「虎徹だよ」
急に二人の背後から声をかける曜
ダイヤ「で、ですが、あれは……」
曜「虎徹じゃなくても虎徹ってことにすればいいんだよ、千歌ちゃんと私たちで」
聖良「……千歌さんの腕であればある程度の刀であれば問題なく斬れるとは思いますが……」
ダイヤ「偽物を差していては恥をかくのでは……」
曜「言わせないようにすればいい、偽物でも本物以上になれば誰も何も言わないよ」
聖良「……それは刀についての話ですよね?」
曜「……もちろん、そうだよ?」 各々が京へ行く準備をする中でこっそりと準備をしているものが一人
梨子「……これを持って、あとは……」
果南「梨子、何してんのかな?」
梨子「っ!え、えっと、これは……」
果南「旅支度、だね」
梨子「その……」
果南「千歌と曜に残るよう言われてたよね?試衛館を守れって」
梨子「私だけ置いてけぼりは嫌!私は……」
果南「京は危険がいっぱいなんだよ、梨子を無駄に散らせたくないってわかるでしょ?」
梨子「千歌ちゃんに会うまで私はずっと一人だった……」
梨子「また、一人になるなら皆と行って死んだ方がいい!」 果南「梨子」
梨子「……」
果南「……行くなら約束しよう」
梨子「約束?」
果南「敵と戦ったら絶対に勝つこと」
梨子「絶対に……」
果南「相手が誰であっても、それが敵であるなら、斬る」
梨子「誰であっても……」
果南「そう、梨子の腕ならそれが出来るはず、いいね?」
梨子「……うん、わかった、誰であっても敵なら……斬る」
果南「よし、それなら私からも頼んであげるよ」
梨子「果南さん……、ありがとう」
果南(千歌はいいとして、曜は怒るかなー……) *****
***
*
千歌「んー……」
果南「梨子も力になりたいんだよ、行かせてあげようよ」
千歌「でも、梨子ちゃんにはこの道場を出来れば継いで欲しいし……」
梨子「え、私、それは嫌だよ?」
千歌「えぇー……」
梨子「お願い、私は皆と行きたい!」
曜「……」
千歌「曜ちゃん、どうしよう」
曜「……梨子ちゃん、いいんだよね?」
梨子「え?もちろん!」 曜「……はあ……千歌ちゃんがいいならいいよ」
千歌「え、結局私!?んー……わかったよ、一緒に行こう」
梨子「ありがとう千歌ちゃん!」
果南「……曜、いいの?」
果南が小さな声で曜に聞く
曜「梨子ちゃんが試衛館を継いだら、多分人並みの幸せは手に入ると思うんだよね」
果南「え、まあ、そう……か」
曜「だから本当にいいのか聞いたけど……、はあ、仕方ないね」
果南「曜にしては聞き方がずるい気もするけど?」
曜「……梨子ちゃんに幸せになって欲しいのと同じくらい、沖田総司をという武器が欲しいって気持ちがあってね」
果南「なるほどね」
曜「ずるいなー……私は……」
曜は苦笑いして千歌に抱きつく梨子を見ている そして、浪士組出発の当日
鞠莉「すごい人数ね」
聖良「これは予想以上ですね……」
理亞「でも姉様、腕があるとは思えないのもたくさんいる、見た目は物騒なのだらけだけど……」
梨子「なんだか怖い……」
ダイヤ「……気のせいでしょうか、曜さんを見て怯えている人もいるような」
曜「ん?んー、何人かはなんとなく見た顔がいるかも?」
果南「周りからしたら私たちが一番物騒かもね、……あれ?千歌は?」
ダイヤ「先ほどまでそこに……」
ダイヤが辺りを見渡すと千歌が目を輝かせて騒いでいる
千歌「わー、この刀見たことない!」
穂乃果「これはねー、実はとんでもない刀でねー」
果南「いたね」
曜「あー、もう何やってるのかな……、千歌ちゃーん 穂乃果「ん?呼んでるみたいだよ?」
千歌「え?あ、曜ちゃん、すごいよ、この人の刀!」
曜「迷惑だからやめとこうよ、すみません……」
穂乃果「いいよいいよ、気にしないで」
海未「こんなところにいましたか、穂乃果……」
ことり「探したよー」
穂乃果「先に行くよって言ったじゃん」
海未「まったく……、誰かに迷惑かけてませんね?」
穂乃果「もう失礼だなー」
曜(なんだろ、千歌ちゃんと似たような感じなのかな……)
曜「それじゃ私たちこれで……」
穂乃果「うん、またね」
曜は千歌を連れて戻っていく
海未「……あれは、なかなかの腕ですかね」
穂乃果「うん、良かった、面白そうな子がたくさんいて」
ことり「話を持ってきてくれた花陽ちゃんに感謝しないとね」 総勢数百人も集まった浪士組は江戸を出発し、京へと向かう
ダイヤ「しかし、この人数を大して試験を行うことなく全員登用するというのは……」
鞠莉「今の幕府ってそんなにお金あったかしら?」
聖良「いえ、そんなことは……」
理亞「そこまでしてこの人数を集めるって、いくら将軍警護とはいえ……」
花陽「怪しいですよね……」
理亞「っ!?」
ダイヤ「あの、あなたは……」
花陽「浪士組の取締出役の佐々木只三郎です、一応、ご挨拶を最初にしたんですけど……」 鞠莉「周りがうるさくてほとんど聞こえなかったわ」
花陽「そ、そうですよね……」
聖良「佐々木……、もしや、講武所指南役の……!」
花陽「は、はい、一応」
鞠莉「講武所!?」
理亞「か、隠れた方がいいんじゃない?」
ダイヤ「確かに、曜さんが聞いたら斬りかかってくるかもしれませんわ……」
花陽「そ、そんな物騒な方がいるんですか……!?」
聖良「ま、まあそれはともかくとして、この大所帯はあなたでも想定外なのでしょうか?」
花陽「一応この浪士組は清河さんという方の発案で、仕切りも任せているのですが、この人数は……」
ダイヤ「何か裏があると?」
花陽「い、いえ、その、……でも、これは話せないですし、うーん……」
聖良「?」 その夜、宿場にて
穂乃果「お酒ー、お酒どこー!」
穂乃果は徳利を片手に大声で暴れている
梨子「う、うるさくて眠れない……」
ダイヤ「もう夜中ですのに、なんなのですか、あの方は……」
ことり「ごめんねー、穂乃果ちゃんはお酒入るといつもあんな感じで」
果南「あなたは?」
ことり「新見錦です、穂乃果ちゃん、えーっと、芹沢さんの同志というか……」
果南「知り合いなら止めてくれると助かるんだけど?」
ことり「うーん、ああなると私の言うことは聞いてくれないし、諫めてくれる海未ちゃんはこの時間は熟睡して起きないし……」
梨子「は、はあ……」
ダイヤ「つまり、どうすることも出来ないと?」
ことり「満足するまで待つしかないかなー……」
理亞「冗談じゃないわ、一言言わないと」
理亞は怒って穂乃果の方へ向かう 理亞「ちょっと、もう夜中なんだから静かにして欲しいんだけど」
穂乃果「えー……、まだそんなに遅くないよ?」
理亞「どう考えても迷惑っ……だって……」
理亞が言葉を続けようとしたが穂乃果からの殺気に言葉が詰まる
穂乃果「……」
理亞(な、何、この人……)
梨子「理亞ちゃんっ!」
ことり「はーい、そこまでだよー」
いつの間にか二人の間に入ったことりが穂乃果を止める
穂乃果「ん、いけないいけない、つい……」
ことり「ダメだよ、穂乃果ちゃん、酔ってるからって斬ろうとしたら」
穂乃果「あはは……」
ことり「あなたもごめんね?大丈夫?」
理亞「っ……!」
理亞は心配そうにすることりから逃げるように後退りする
果南(完全に斬る気だったのもやばいんだけど……)
ダイヤ(それを子供が悪戯したかのように叱るのも……) その様子を少し離れたところで曜と聖良が見ている
曜「……どう考えても浪士組で一番やばそうなのあの人だね」
聖良「ええ、腕が立つというより恐らく実戦経験が相当あるみたいですね」
曜「聖良さん、お願いが……」
聖良「芹沢鴨、新見錦、平山五郎、三人とも神道無念流の免許皆伝かそれに近い実力、名前は恐らく全員偽名でしょうね」
曜「あれ、いつの間に……」
聖良「もう付き合いも長いのですから、恐らく調べるよう頼まれると思ってましたよ」
曜「流石ー、山南先生」
聖良「やめてください……、ただ、詳しくはわかりません、誰に聞いても過去何をしていたかまでは……」
曜「なるほどね」
聖良「出来ればあまり深い付き合いはしたくないところですね」
曜「どうだろ、千歌ちゃんはなんか気になってみたいだけど」
聖良「そういえば千歌さんは?」
曜「爆睡中、ついでに鞠莉ちゃんも」
聖良「うちはそれで、大丈夫でしょうか……」
それぞれ不安や思惑を抱えながら一行は京へと到着する 京に着いた千歌たちは八木家を間借りすることになった
千歌「綺麗な家だねー」
理亞「ねえ、私たちは一緒として、なんであの人たちも一緒なの?」
理亞は奥の座敷にいる穂乃果達を見ながら言う
曜「仕方ないよ、そういう割り振りだし」
千歌「芹沢さーん」
穂乃果「ん?穂乃果でいいよー」
千歌「穂乃果さん、私たちはこっちを使わせてもらっていいかな?」
穂乃果「いいんじゃないかな?」
海未「ええ、私たちは奥を使いますので」
穂乃果「おっと、その前に……」 穂乃果達は腰を下ろす前に身なりを整え、八木家の当主の元へ向かう
穂乃果「しばらくの間、厄介になります、多々迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願い致します」
穂乃果、海未、ことりは頭を深く下げる
聖良「っ、み、皆さんも、早く集まってください」
聖良は慌てて試衛館の面子を集めて、習うように頭を下げる
穂乃果「それじゃ、堅苦しいのはここまでにして、よろしくね」
穂乃果が笑いながら言うと八木家の当主も頭を下げて奥へと引っ込んでいく
千歌「すみません、挨拶を忘れてて……」
穂乃果「ん?いいよ、いいよー」
海未「礼は武士の基本です」
穂乃果「あはは、海未ちゃんに忘れると私は怒られちゃうからさ」
千歌「武士の、基本……」 ことり「みんなー、浪士組は集まるようにって」
鞠莉「着いたばかりなのに?」
浪士組は寺に集められると清河から浪士組は将軍警護ではなく尊王攘夷を目的として活動すると言う話をされる
「よって、私たちはこれより江戸へと戻り、真の目的のために活動する」
ざわつく一同だが、ほとんどは同意を示していく
梨子「ど、どうするの?戻るの?」
曜「今の話ってつまり幕府に逆らうってことだから……」
千歌「う、うーん……」
穂乃果「んー、私たちは行かないよ?」
穂乃果は周囲の声を気にせずに切り出す
穂乃果「私たちはそのために来たわけじゃないし、それに面白くなさそう」
曜「千歌ちゃん、千歌ちゃんも」
曜は千歌を急かすように声をかける
千歌「あ、あの、私たちも何もせずに帰るのは違うかなって……」
穂乃果、そして千歌達は清河の話には乗らずに京へ残ることになった ダイヤ「残るのは良いのですが、これからどうしますか?」
鞠莉「このままだと単なる居候の浪人よねー」
穂乃果「とりあえず、清河さんは斬らないといけないと思うんだよねー」
聖良「なっ……、しかし、それは……」
海未「あの方がやろうとしているのは簡単にいえば幕府を転覆させようとしています」
穂乃果「悪いことする前になんとかしないといけないと思うんだけど」
ことり「一応まだ京にいるうちに、だね」
理亞「斬るって言っても……どうやって……」
曜「……夜のうちに、暗殺するしかないと」
海未「ええ、そうですね」
千歌「そ、それは私たちに任せてもらえますか」 海未「どなたに実行させるつもりですか?」
千歌「それは……わた」
曜「私がやるよ」
穂乃果「んー、でも相当な腕だし、失敗できないよ?」
聖良「曜さんは実戦ではかなりの腕ですよ、問題はないかと……」
穂乃果「あー、そういうことじゃなくてさ」
海未「人を斬るというのは木刀で叩きのめすのとは違いますよ」
曜「人を斬ったことくらい、……ある」
ことり「それなら、この件は試衛館の人たちに任せてみたらどうかな?」
穂乃果「んー……、いいけど……」
千歌「心配なら、私と曜ちゃんでやる」 穂乃果「そこにいる、梨子ちゃんは?」
梨子「え、私……?」
聖良「彼女はまだ経験が……」
穂乃果「でもこの中で一番腕が立つの、多分あなただよね?」
千歌「だ、大丈夫、私と曜ちゃんで出来るっ!」
海未「それなら任せましょう、穂乃果、私たちは別で考えないといけないことも」
穂乃果「んー、そうだね、じゃあ任せたよ?」
穂乃果達はそう言って下がっていく
ダイヤ「大丈夫なのですか、あんなこと言って」
曜「やるしか、ないよ」
千歌「うん……」
千歌と曜は立ち上がると刀を持って八木邸を出ていく
梨子「大丈夫かな……」
果南「ま、やられることはないよ、少なくともね」 *****
***
*
曜「……清河は多分ここを通るはず」
千歌「間違いない?」
曜「う、うん、さっきここを通ったのは見たし、帰りにも同じ道を通るはず」
千歌「よ、よーし……」
千歌と曜は息を殺して物陰に隠れる
曜「……」
千歌「……ねえ、本当に斬ったことあるの……?」
曜「……あるけど、殺したことはないよ」
千歌「な、なんだ……」
曜「……でも大丈夫、どうすればいいかはわかってるから」
千歌「私も、大丈夫だよ……」
二人はお互いの顔を見ないまま暗がりで待ち構える しばらくすると話し声と足音が聞こえる
千歌(きた……)
曜(よし……)
耳を澄ませて近づいてくるのを待ち刀を構える
二人が飛び出そうとした、その瞬間肩を掴まれ戻される
曜(え!?)
二人が振り向くと果南が両手で二人の肩を掴んでいる
近づいていた足音は次第に遠ざかる
千歌「果南ちゃんっ、なんで邪魔を!」
果南「そんな震えた手で斬れるわけないでしょ、それに良く見なよ、別人だよ」
曜は言われて後ろの姿を見ると清河とは着物が明らかに違うことに気付く
曜「……っ」 果南「斬り損ね、人違い、それは許されないよ」
曜「……このままじゃ……」
果南「……私が声かけてバレたってことにしよう、それで納得するかは知らないけどさ」
千歌「でも果南ちゃん、それじゃ……」
果南「私は無能でいい、曜、わかるよね」
曜「それは……」
果南「私たちを束ねるのは千歌だ、ここぞで千歌を貶めることは絶対にさせない」
千歌「わ、私はそんな……」
曜「果南ちゃん、ごめん……」
果南「いいんだよ、ほら、戻ろう」 *****
***
*
海未「逃した?」
果南「いやー、二人が見えて声をかけたらバレちゃったみたいでさ」
千歌「……向こうも警戒していたみたいで声に敏感になってたみたいで」
曜「姿は見られてないけどね」
ダイヤ「……全く何をしているのですか、果南さんは」
果南「いやー、ごめんごめん」
穂乃果「仕方ないよ、でももう京で暗殺は無理かな……」
ことり「警戒強めるよね」
海未「仕方ありません、清河暗殺はあきらめましょう」
果南「申し訳ないね」
穂乃果「とりあえず、上様もそろそろ上洛だし、まずは警護でも考えようか」
海未「実際に出来るのかわかりませんが……」
穂乃果と海未は部屋を出て奥へと戻る
曜「……ふぅ」 ことり「緊張してたかな?」
ことりが息をつく曜の顔を覗き込む
曜「うわぁ!?」
ことり「安心して、最初から難しいと思ってたし、誰がやっても結果は同じだったと思うから」
千歌「え、それはどういう」
ことり「んー……穂乃果ちゃんはわからないけど海未ちゃんは試したんじゃないかなー」
千歌「無理だと思うことをやらされて試されてもなー……」
ことり「あ、それは違うよー?試したかったのは、近藤勇という人間とその周りの人たちの動き方」
曜「……!」
ことり「多分ね、合格だと思うから安心してね?」
ことりは笑いながら部屋を出ていく 果南「……なるほどね、相当厄介だ」
千歌「え、あの……」
曜「つまり、千歌ちゃんが率先して行動するか、失敗した時に周りが責任を被れるか、それを試された……」
ダイヤ「なるほど、そういうことでしたか」
聖良「……気を引き締めなくてはなりませんね」
千歌「……警護なんだけど、これ」
曜「いいよ、私が鞠莉ちゃんと理亞ちゃんあたり連れて適当に歩いてくるから」
ダイヤ「大した成果がある仕事にならないでしょうしね」
聖良「私や千歌さんは今後のことを考えましょう」
千歌「うん」
*****
***
*
穂乃果「というわけで、ごめんねー、失敗しちゃったよ」
花陽「し、仕方ないよ、その、京では流石に警戒してるでしょうし」
穂乃果「だよねー」
花陽「清河さんは江戸に戻り次第、私が、斬るから」
穂乃果「うん、よろしくね」
花陽「うん、そうだ、それと例の件も話は通したよ」
穂乃果「ありがとね、花陽ちゃん」 数日後、京の町は人で溢れかえっている
鞠莉「ちょっとーこれじゃ警護も何もできないじゃない!」
理亞「ねえ、本当にやらないといけないの?」
曜「一応、それが目的で来たんだし」
理亞「それはそうだけど……」
鞠莉「いいじゃないー、将軍が見れるなんてあんまりない機会よ?」
理亞「その言い方はちょっと無礼じゃ……」
しばらくすると多くの従者を引き連れた行列がやってくる
曜「すごいね、これは……」
鞠莉「こんな中で何かしようとする馬鹿な人もいないんじゃない?」
??「よっ!征夷大将軍!!」
理亞「な!?」
「おい、誰だ、今のは!」
「無礼な!」
突如人混みから発せられた声に護衛達が騒ぎ出す 曜「今のって、野次?」
理亞「向こうの方向から聞こえたわ」
鞠莉「せっかくだから私たちで捕まえちゃおうか」
理亞と鞠莉は声がした方へ走っていく
曜「ちょっと、ちょっと……」
曜も後を追うように走るも二人とは道を逸れる
曜(こっちの裏道使った方がいいんじゃないかな)
裏道を進んでいくと話し声が聞こえ曜は身を隠す
栞子「な、何を考えているんですか!?」
愛「だってさー、初めて見たわけだし、声も出ちゃうよねー」
曜(この声、さっきの野次の)
栞子「あれじゃ将軍を馬鹿にされたと思って捕まりますよ……」
愛「でもほら、護衛も距離が遠いから誰だかわかってないみたいだし」
栞子「まったく、何かあったら久坂さんに怒られるのは私なんですから、大人しくしてください、高杉さん」
愛「もう、こういう場では愛でいいって」
栞子「そういうわけには……」
愛「そうじゃなくてさ、誰かいるっぽいよ?」
愛が曜がいる方向を見て言うと栞子がすぐに反応して駆け出す
栞子「……逃げられましたか」 曜(やっば……、あれ気付かれるって……)
曜はせつ菜がこちらを見るのと同時に逃げ出し難を逃れる
鞠莉「曜ー、ダメだわ、見つからない」
理亞「京は道がよくわからない……」
曜(……京で活動するなら、この町をまずは知り尽くさないといけないね)
曜(それから情報をたくさん手に入れないと……)
鞠莉「曜?どうしたの?」
曜「ううん、とりあえず帰ろうか」
曜達は家茂上洛に何もできずに帰っていく 数日後
穂乃果「待て待てー」
穂乃果は八木家の子供達と家中を走り回り遊んでいる
千歌「……」
曜「千歌ちゃん、混ざろうとしないで」
千歌「な、なんでバレたの?」
曜「さっきから楽しそうだなーって顔で見てるから」
理亞「さっきからバタバタと……、そろそろ怒られるんじゃないの」
ダイヤ「怒る相手がいませんからね」
果南「そういえば、海未も、ことりもいないね」
鞠莉「二人なら朝早く出かけてたわよー?」
理亞「通りで伸び伸び遊んでるわけね」
ダイヤ「それが子供と追いかけっこというのもどうかと思いますが……」 海未「ただいま戻りました、……おや?穂乃果は?」
穂乃果「よーし!次は穂乃果が逃げるよ!せーの……あ」
海未「……何をしてるのですか!」
穂乃果「い、いや、子供達が退屈してるから……」
海未「だからといって、子供相手にバタバタと本気で走ってどうするのですか!」
穂乃果「うわああああん」
梨子「……私、未だに穂乃果さんのことよくわからないんだけど……」
鞠莉「それで言えば海未もよくわからないわよ、穂乃果の好き勝手を許す時もあるのに、ああやって注意する時もあるし」
ことり「海未ちゃんは武士らしくあるかどうかで怒る基準があるんだよー」
梨子「に、新見さん……」
ことり「畏まらなくてもことりでいいよ?」
曜「武士らしくって、どういう……」
ことり「んー、そこは海未ちゃん基準だからねー、見てればそのうちわかると思うよ」
梨子「……子供と追いかけっこするのは確かに武士らしくはないかもしれないけど……」
千歌「……多分、そこじゃないのかも」
梨子「え?」 海未「まったく……、それはそうと、皆さん、揃ってますか?」
果南「ん?何か話?」
海未「ええ、穂乃果、例の件、正式に決まりましたよ」
穂乃果「お、やったね、それじゃ……海未ちゃん話していいよ」
海未「会津藩が京に残った浪士組をお預かりしてくれるとのことです」
梨子「会津?」
鞠莉「会津ってー……え?ここ京よね?」
ダイヤ「会津といえば、……京都守護職の」
聖良「松平容保公ですね、まさか容保公から……?」
穂乃果「うん、ちょっと繋がりがあってね、話をしておいたんだよ」
海未「近いうちに直々にお会いして、そこで正式に会津藩お預かりとなります」
千歌「すごーい……」
曜「……相談なしに話を進めすぎな気もするけど」
海未「……では、他にいい手が?」
曜「それはないけど、同じ浪士組の同志と考えるなら事前に話をするのが筋じゃないのかな?」
海未「……」
曜「……」 穂乃果「うん、それもそうだよね、少なくとも千歌ちゃんには伝えるべきだったよ」
千歌「え、いや、私は別に……」
穂乃果「海未ちゃんも今後はちゃんと、千歌ちゃん、ううん、近藤先生に話を通してね」
海未「……了解しました」
穂乃果「それでいいかな?土方君?」
曜「……はい」
笑う穂乃果とは対照的に厳しい表情のまま頷く曜
聖良(曜さんにはいつも損な役割を……)
ダイヤ(しかし、ここではっきりと言うことは意味があるはず) ことり「それでね、一応正式に決まる前に、もう少し人を増やそうと思ってるんだよね」
鞠莉「確かに、京都守護職お預かりにしては心許ない人数よね」
穂乃果「隊士募集をしようかなって」
千歌「それなら何か手つ」
果南「あー、隊士募集であれば、聖良さん中心にすでに準備しようかと思っていたからちょうどいいよ」
海未「そうなのですか?」
聖良「……ええ、千歌さんに相談されて準備を、採用の有無は曜さんにお願いする予定です」
穂乃果「それなら任せていいんじゃないかな?」
海未「そうですね、では隊士募集の件は任せますよ」
聖良「はい、もちろんです」
穂乃果「じゃあよろしくね?」
穂乃果達はそう言って立ち上がり出かけていく 聖良「……果南さん、無茶なことを急に言わないでください」
果南「でも、ああするしかないでしょ?」
梨子「え?今の話はじゃあ……」
曜「初耳だよ、急いで準備しないと」
千歌「そうだよねぇ、私そんな話したっけって考えちゃったよ」
ダイヤ「少しでも穂乃果さんと対等の位置に千歌さんを置くにはああ言うしかありませんからね」
聖良「正直期待する人材が来るとは思えませんが、仕方ありません」
千歌「ごめんね、私が頭回らないから苦労させて」
曜「それは言いっこなし、よし、聖良さん募集の案内はすぐ作れる?」
聖良「ええ、大丈夫です」
曜「それじゃ、鞠莉ちゃんと理亞ちゃんは隊士募集の話を町で広めてきて」
理亞「なんで私が……」
鞠莉「了解っ、いくわよ、理亞!」
曜「梨子ちゃんは、……あの三人に会津からどれくらいお金貰えるか聞いてきてもらえる?」
梨子「え、お金?」
曜「まさかいくら貰えるか不明で募集はできないし、私から聞くのはあれだし……」
果南「梨子はなんか気に入られているみたいだしね」
梨子「いいけど……、教えてくれるかな」
曜「よし、時間ないけど頑張るよ!」 こうして最初の隊士募集が始まり、会場となる八木邸の隣の壬生寺には噂を聞きつけた者達が集った
「えーと、なるべく楽して稼げたらなって」
曜「却下、次」
「尊王攘夷のために!私は!」
曜「次……」
聖良「やはり急だとダメですね」
曜「向こうは?」
ダイヤ「梨子さんと理亞さんが次々に倒しまくってますわ」
曜「あの二人、試験の意味わかってる?」
曜が頭を抱えていると弱々しい声で話しかけられる
ルビィ「あのぉ……、こちらに永倉さんは……」
ダイヤ「ルビィ!?」
ルビィ「お姉ちゃん!」
曜「お姉ちゃん……?」 ダイヤ「なぜ、こちらに」
ルビィ「噂を聞いて京まで来たの、そしたら浪士組が隊士を募集してるっていうから、もしかしてって」
曜「ダイヤさん、この子は?」
ダイヤ「私が江戸で師範代を務めていた時に知り合った子ですわ、名前は島田魁、私を姉のように慕ってくれてます」
ルビィ「よ、よろしくお願いします」
聖良「ここに来たということは、浪士組に?」
ルビィ「は、はい、お願いします」
曜「えーと……」
曜は明らかに小さな体格のルビィを見て戸惑う
ダイヤ「実力はありますわ、それとルビィ」
ルビィ「う、うんっ……うゅ……!!」
ルビィは寺にある石柱を抱えると思い切り持ち上げる
曜「は、はああああ!?」
ルビィ「ふぅ……」
ダイヤ「見かけによらず、力がすごいのです」 曜「な、なるほど……、採用で」
花丸「一芸持ちも採用、単純に剣が強い人を集めてるわけではないということずらね」
曜「そうだね、いろいろと役割はあるだろうし……、って、誰!?」
自然と曜の隣に座って話に入ってくる人物に気付き曜は思わず刀を手に取る
花丸「怪しいものじゃないよ」
曜「怪しいよ!」
花丸「単なる入隊希望者ずら」
曜「入隊希望……、見たところ刀も持ってなさそうだけど」
花丸「この辺りのことは詳しいよ、それと本をたくさん読んでるからそっちでも役に立てるし……」
曜「気配を消すのは?」
花丸「今見せた通りずら、それに誰もマルが浪士組とは思わないと思うよ」
曜「……なるほど、そういうのもいるか……名前は?採用するよ」
花丸「山崎丞ずら、ちなみにお金はどれくらい?」
聖良「それは要相談ということで」
ダイヤ「いいのですか?戦力にはならなそうですが」
曜「いや、隠密みたいな役割は必要だよ、特に入り組んだ京の町に詳しい人は欲しいと思ってたし」
ダイヤ「なるほど」
曜「でも、単純に腕の立つ人も欲しいけど……」
聖良「それは、ちょうど良い方がいそうですよ」 聖良の視線の先にいる人物が入隊希望者を次々に倒していく
善子「……何よ、全然強いのがいないじゃない」
梨子「っ、善子ちゃん!!」
梨子は善子に気付くと嬉しそうに木刀で飛びかかる
善子「ひっ!?だから、なんでいつも襲いかかるのよ!」
梨子と善子は木刀で打ち合いを始める
曜「あれって、梨子ちゃんが話していた……」
ダイヤ「相当な腕ですわね……」
曜「ダイヤさんとどっちが上?」
ダイヤ「……」
曜「なるほど、これは強いね、ねえ!善子ちゃんだっけ?採用だよ!」
善子「善子じゃないっ!私は、えーっと……斎藤一よ!」
理亞(絶対偽名ね)
聖良(偽名ですね)
曜「よろしくね、善子ちゃん」
善子「善子じゃない!!」
こうして、斎藤一、島田魁、山崎丞を含めた隊士が入隊することになった 梨子「でも、なんで善子ちゃんが京に?」
善子「だって、試衛館に行ったらあんたがいないんじゃない」
梨子「あ、言うの忘れてた」
善子「話を聞いたら京に行ったって言うからわざわざ来たのよ」
梨子「でも、京って広いのによくわかったね?」
善子「なんかすごい噂広まってたわよ、手当もすごいもらえて、凄腕が集まるって」
ダイヤ「鞠莉さん、あなたはどういう勧誘をしてたんですか……」
鞠莉「な、なんで私なのよ」
ダイヤ「他に誰がいると……」 聖良「戻りました」
ダイヤ「どうでしたか?」
聖良「ええ、周辺の家もお借りできることになりましたよ、私たち試衛館組はそちらにいこうかと」
梨子「確かにここだけじゃ足りないくらい人も増えたもんね」
善子「何?ここじゃないの?荷物置いちゃったわよ?」
ことり「んー、ここでもいいんじゃないかな?」
いつの間にかことりが輪の中に加わっている
ダイヤ(また突然現れますね……)
ことり「穂乃果ちゃんが梨子ちゃんは八木邸でいいんじゃないって言ってたよ?」
梨子「え、でも……、千歌ちゃん達が移動するなら……」
ことり「梨子ちゃんは強いから気に入ってるんじゃないかなー」
善子「それなら私も強いわよ」
ことり「うん、善子ちゃんもこっちでいいって」
善子「え?」
鞠莉「それなら私は?」
ことり「他の人たちは別にいらないんじゃないかなー?」 ダイヤ「随分ですわね」
ことり「だって、他のみんなはどうあっても私たちのことは好きにならないでしょ?」
聖良「……まさか、そんなことありませんよ」
ことり「んー、あ、確かに」
ことり「千歌ちゃんはもしかしたらこっちに来るかもね」
ことりはそれだけ言うと笑って部屋を出ていく
鞠莉「ことりはなんだかよくわからないわね」
ダイヤ「読めない方です、それを言ったら穂乃果さんもですけど」
梨子「わ、私、千歌ちゃん達と一緒がいいよ?」
善子「それなら私もそっちがいいわ」
聖良「ええ、大丈夫ですよ」 数日後
穂乃果「それじゃ、入るよ」
千歌「は、はい……!」
穂乃果「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」
浪士組の面々は会津藩邸の前へとやってきた
曜「ここが会津藩邸……、損な役割を押し付けられた藩の本拠地ってことだね」
梨子「損?」
曜「京都守護職をやりたくもないけど無理やり受けざるを得なかったとか、あんまりいい話は聞かないよ」
聖良「曜さん、流石に控えてください……」
梨子「すごい、曜ちゃん物知りだね」
曜「町の噂だけどね、京の人たちはそう言ってたってだけ」
海未「あまり噂を信じない方が良いですよ」
曜「え?」
海未「その目で見ていないことというのは、不確かなものということです、まあ会えばわかりますか……」 会津藩邸の中へと入ると浪士組の面々は謁見の間へと通される
花丸「すごい広いずらー」
理亞「花丸!?ルビィ!?なんでいるのよ!?」
ルビィ「花丸ちゃんがついていこうって……」
花丸「理亞ちゃんもいるからいいかなって」
理亞「私は試衛館からの付き合いよ、なんで私がいればいいってことになるのよ!」
海未「静かに、お見えになりますよ」
理亞「納得いかない……」
奥から数人の人の気配がすると全員が頭を下げる
「……」
着物の擦れた音が止まり正面に人が座った気配がする
にこ「いいわよ、頭下げなくて」
その声に千歌は頭を上げようとするも聖良や曜に止められる
にこ「だからいいっての、二回言うの面倒なのよ……」
ようやく全員が頭を上げて正面に座る人物の姿を見る
にこ「よく来たわね、私が面倒な京都守護職を無理やり押し付けられた松平容保よ」 曜「えっ」
にこ「外だからって気を抜かないことね」
曜(聞いていたのとなんか違う……)
にこ「間違いじゃないけどね、そしてあんた達はそんな運の悪い藩のお預かりになったのよ、良かったわね」
穂乃果「もう、にこちゃんは意地悪な言い方するなー」
にこ「いきなり馴れ馴れしいっての!花陽からの話がなかったらわざわざ雇うつもりなんてないんだからね?」
千歌「……誰?」
海未「そこは、その、気にせずに」
にこ「ただ、こっちも利点がないのに藩預かりにするつもりはないわ」
千歌「え!?」
にこ「京都の治安維持、どれだけのものかわかってるわね?」
にこ「暗殺が至るところで起きている、正直中途半端な浪人ならいらないのよね」
穂乃果「私たち結構強いよ?」
にこ「それじゃ、ちょっと見させてもらうわ、この中から誰か試合をしなさい」 曜「聖良さん、これってよく言われる上覧試合ってやつ?」
曜が聖良に小声で尋ねる
聖良「ええ、おそらく、曜さん、これはおそらく」
曜「好機ってやつだ」
聖良「はい、上手くお願いしますよ」
穂乃果「今からここで?」
にこ「そうよ、出来るわよね?」
千歌「は、はい、大丈夫です」
千歌は曜にせっつかれて慌てて口にする
海未「では組み合わせは……」
曜「なら、まずは私と藤堂君で」
理亞「えっ、は、はいっ」
曜「もうひと試合なら、永倉君と斎藤君」
聖良(なるほど、いい組み合わせですね)
海未(あからさまに近藤派ですか、……まあいいでしょう) にこ「あー、そういうのいいわ」
曜「え?」
にこ「私が見たいのはそういうのじゃないのよねー、もっと真剣な興奮するような試合が見たいのよ」
千歌「あ、あの、その四人は実力もかなりのもので……」
にこ「仲良しこよしの試合でしょ、それ面白くないから」
曜(な……なんなのこの人……)
にこ「ちなみに?この浪士組の頭は誰?」
海未「芹沢です」曜「それは近藤です!」
同時に発言した海未と曜がお互いを見る
にこ「ふーん、なるほどなるほど、いいわ、芹沢派、近藤派お互い一番強いのを出しなさい」
にこ「勝った方が浪士組の局長、これ、面白いでしょ」
ニヤニヤとにこは笑いながら提案すると、側近達は頭を抱えている 曜(嘘でしょ……、何この殿様、噂とは違う方向でやばい人だ……)
にこ「ほら、誰が出るの」
千歌「よ、曜ちゃん、私は別に局長なんて……」
曜「いいから、聖良さん、どうする?」
聖良「……剣の腕なら、梨子さんでしょうね……」
梨子「わ、私出来るよ」
千歌「……梨子ちゃんにそんな責任を負わせるのはちょっと」
にこ「ほら、どうするのよ」
千歌「わ、私が!」
曜「ちょっとっ!」
にこ「そっちは」
ことり「それはもちろん」
穂乃果「私がやるよ」
聖良「な……」
にこ「いいわね、面白いじゃない」 *****
***
*
藩邸の庭で簡易的な試合場が作られる
穂乃果と千歌はそれぞれ木刀を持ち相対している
ダイヤ「この二人が試合ですか……」
鞠莉「……」
理亞「どうしたの、いつになく真剣な顔で」
鞠莉「……多分、この二人の試合なんて二度と見られないと思って」
花丸「穂乃果ちゃんって強いずら?」
聖良「ええ、強いですよ、剣術として素晴らしいものを持ってます」
ルビィ「その、芹沢先生は……?」
曜「実際の腕は見たことない、神道無念流の免許ってことくらいで」
善子「……あの立ち姿を見ればわかるでしょ、あれは……化け物よ」 千歌は穂乃果に対して木刀を構えるも手が出せずに穂乃果の周りを間合いをとりながら動く
穂乃果「……やっぱり千歌ちゃんはいいね」
千歌「……え?」
穂乃果「千歌ちゃんほどの腕なら実力差はわかるはずだよね、私には勝てないことくらい」
千歌「やってみないとそれはわからないよ」
穂乃果「うん、そう、そう言って戦う千歌ちゃんが、私は好きだよ」
穂乃果は千歌に即座に近づき木刀を振り下ろす
千歌「っ」
千歌はなんとかそれを受けて反撃しようとするも穂乃果は構わずに攻め続ける
穂乃果「……まだ、あなたじゃ私に勝てない、でもその気持ちの強さは大好き、強いよ、千歌ちゃんは」
穂乃果の左右からの振られる木刀を千歌はなんとか受け切る
穂乃果「でもね、上に立つ人の行動としては失格かな」
千歌はとうとう木刀を受けきれずに肩で受けてしまい、崩れ落ちてしまう
千歌「ぐっ……」
穂乃果「……」
穂乃果が木刀を千歌に突き立てる
千歌「……まだまだ……」
千歌は跪きながらも穂乃果を見て木刀を向ける
穂乃果が目が死んでいない千歌に止めを刺そうとする
穂乃果「どういうつもりなのかな?」
穂乃果の木刀の動きが止まる
飛び出した曜が木刀を手で握り締めている
曜「……」 曜は穂乃果をじっと睨む、木刀は完全に動きを止めている
千歌「曜ちゃん……」
穂乃果が木刀を離すと振り返り戻っていく
穂乃果「勝ちでいいんだよね?」
にこ「ええ、いいわよ、実力もよくわかった、十分ね」
にこ「あんた達はこれから壬生浪士組と名乗りなさい、以上よ」
満足そうに笑うとにこは屋敷内へ戻っていく
ことり「流石穂乃果ちゃんだねぇ」
海未「ええ」
穂乃果「……んー、間違えたかな」
海未「どうしましたか?」
穂乃果「千歌ちゃんじゃなくて、曜ちゃんの方だったかな」
海未「……?」 千歌「痛たた……」
梨子「大丈夫?千歌ちゃん」
千歌「うん、ごめんね、負けちゃった」
聖良「いえ、判断を間違えました、千歌さんを出すべきではなかったです」
ダイヤ「ええ、私が即答すべきでした」
梨子「違うよ、私が一番強いからっ……」
曜「……今言っても意味がないよ」
果南「曜……?」
曜「私たちは千歌ちゃんに行かせた、これが戦なら大将を行かせて首を取られたようなものだよ」
鞠莉「それはちょっと大袈裟じゃ……」
曜(向こうは確信を持って必ず勝てると思って穂乃果さんを出した、私たちは違う、不安があるのに千歌ちゃんを行かせた……)
千歌「曜ちゃん……」
こうして浪士組は壬生浪士組として正式に京の治安のために動き始めたのであった 近藤勇:高海千歌
土方歳三:渡辺曜
沖田総司:桜内梨子
井上源三郎;松浦果南
山南敬助:鹿角聖良
永倉新八:黒澤ダイヤ
藤堂平助:鹿角理亞
原田左之助:小原鞠莉
斎藤一:津島善子
島田魁:黒澤ルビィ
山崎丞:国木田花丸
芹沢鴨:高坂穂乃果
新見錦:南ことり
平山五郎:園田海未
佐々木只三郎:小泉花陽
坂本龍馬:高咲侑
高杉晋作:宮下愛
吉田稔麿:三船栞子
松平容保:矢澤にこ 江戸にて、花陽は血がついた刀を手に佇んでいる
花陽「……」
花陽の足元には清河と思われる人物の死体が横たわっていた
花陽「ふぅ……」
花陽「穂乃果ちゃん達は上手くにこちゃんと会ったかな……」
花陽「これから色々と大変そう……」
そして、京でも同じ頃
梨子「はあはあ……」
千歌「……」
千歌と梨子の前に死体が転がっている 千歌「殿内さん……」
梨子「姿が見えないから探してたら、まさか死んでるなんて……」
千歌「……この服装見る限り、京から逃げようとしてたのかな」
千歌と梨子は殿内を見ながら話していたが、お互い何かに気付き即座に刀を抜く
千歌「梨子ちゃん!」
梨子「うん!」
二人に襲いかかってきた者達を千歌は振り抜き、梨子は一突きで仕留める
「ひ、ひぃいい……!?」
千歌「……もう一人いた、あなた達が殿内さんを?」
「くっ……!ぐはっ!?」
逃げようと背を向ける相手を梨子は躊躇うことなく後ろから刀で突き刺す
「あ……が……」 梨子「……」
梨子は刀を抜くとまた刀を急所へと突き刺して止めを刺す
千歌「っ、梨子ちゃん!!」
止めを刺した後も刀を突き刺そうとする梨子を千歌が止める
梨子「あ……、あ……」
我に帰った梨子は刀を持ったまま震えている
千歌「梨子ちゃんっ、大丈夫!?」
梨子「私、殺し……人を殺した……」
千歌「……じゃなきゃ、殺されてたよ」
梨子「人ってこんなに簡単に……あ、あはは……」
千歌「……行こうか」
梨子「殿内さんは、どうするの……?」
千歌「私が斬ったことにする」
梨子「え……?」
千歌「……多分曜ちゃんなら、そうするはず」 *****
***
*
穂乃果「そっかー、殿内さん裏切り者だったんだ」
千歌「……不逞浪士と一緒に何か企んでたから、私と梨子ちゃんで斬ったよ」
ことり「可哀想だけど、仕方ないね……」
穂乃果「うん、ありがとね二人とも、汚れ仕事をしてもらって」
千歌「……斬らないと逃げられるかなって思っただけだから」
梨子「……それでは、失礼します」
千歌は穂乃果に報告すると部屋を出ていく
海未「……どう思いますか?」
ことり「うん、嘘だと思うよー?殿内さんがそんな大それたこと出来ると思えないし」
穂乃果「でも千歌ちゃんも梨子ちゃんも人は斬ったと思うな、目が違うもん」
海未「穂乃果、いいのですか?」
穂乃果「仕方ないよ、んー、あとは曜ちゃんにもう少し頑張って欲しいんだけどねー」 千歌「これが壬生浪士組で初めての仕事ってことなのかなー……」
梨子「……」
千歌「梨子ちゃん」
梨子「な、なに」
千歌「多分梨子ちゃんはこれからたくさん人を斬ることになると思う」
梨子「う、うん、わかってる、怖いけど、そのうち慣れて……」
千歌「ずっとそのまま怖がっていてね」
梨子「え?」
千歌「人を斬ることを怖がって、人が死ぬということを怖がって」
梨子「でも、それじゃ……」
千歌「ダメだからね、梨子ちゃんは人斬りなんかになっちゃ」
梨子「……うん」 壬生浪士組が出来て一月ほど、少しずつ京の治安維持に向けて活動していく
理亞「この辺りの見回りはこんなものね」
ルビィ「理亞ちゃん、どこかで休んでこうよ」
理亞「ダメよ、帰って報告するまでが仕事よ」
ルビィ「でも鞠莉ちゃんはいつもそのまま遊びに行ってるよ?」
理亞「だからダイヤにいつも叱られてるじゃない……」
ルビィ「そうだけど……」
理亞「……わかったわよ、そこでおはぎでも買う?」
ルビィ「買う!」
ルビィは一目散に店へと駆けていく
理亞「元気じゃないの……」 理亞とルビィが店で座って待っていると話し声が聞こえてくる
「最近長州の奴らがまた店にいてよ」
「それだけじゃねーって、土佐訛りの奴らも一緒にいたぞ」
理亞(長州に土佐か……、土佐といえば……)
花丸「人斬り以蔵が有名ずらね」
理亞「ひっ!?い、いつの間に……」
花丸「情報収集中ずら、最近人斬りが多いらしいから気をつけないと」
理亞「人斬りなんて、私が返り討ちにしてやるわ」
花丸「でも相当な腕らしいよ……中でも人斬り半次郎」
理亞「人斬り半次郎?」
花丸「薩摩の相当な剣客らしいずら」
理亞「薩摩はこっち側でしょ?なら心配しなくていいんじゃない?」
花丸「だといいんだけど……」 理亞「それより、おはぎ……あれ?」
ルビィ「……んむ、あむ」
理亞の皿にあったおはぎは消え、ルビィは小さな口を一杯にしている
理亞「ちょっと、ルビィ……」
ルビィ「……つ、つい……」
*****
***
*
理亞「ねえ!信じらんない!ルビィが私のおはぎ勝手に食べたんだけど!」
ルビィ「謝ったのにぃ……」
理亞とルビィは屯所に戻るなり稽古中の果南に大声で不満を口にする
果南「ば、馬鹿、今は……」
ダイヤ「あなた達は見回り中に何をしていたのですか!!」
理亞「ひいいいい!?」
ルビィ「お、お姉ちゃ……」
ダイヤ「……罰として夜の見回りも行きなさい!!」
ダイヤは理亞とルビィを引っ張りどこかへ連れていく 果南「あちゃー……」
聖良「果南さん、曜さんを見ていませんか?」
果南「曜なら、鞠莉を連れて資金調達」
聖良「曜さんはわかりますが、なぜ鞠莉さんを?」
果南「知らないの?あの二人、最近町で人気があってさ」
*****
***
*
曜「京の治安維持のために働いてるので、出来れば少し援助してもらえないかな?」
鞠莉「ね?お願いよ、いいでしょ?」
曜と鞠莉は商人を挟むようにして座って交渉をしている
「で、でも、うちも厳しくて……」
曜「……」
曜が鞠莉に目で合図する
鞠莉「おねがーい、少しだけでいいから」
鞠莉は商人に抱きつき始める
「え、いや、は、はいぃぃ……」 交渉を終えて二人は店から出てくる
曜「よし、順調順調」
鞠莉「もうっ、私のことなんだと思ってるのよ」
曜「いいじゃない、鞠莉さんは最近町で人気あるし」
「素敵……」「こっち向いてー」
通りすぎる人たちが鞠莉と曜を見て色めき立つ
鞠莉「曜だって、人気みたいよ?って、そうじゃなくて、こんな方法で資金集めしなくても……」
曜「しょうがないよ、まだまだ会津からの支援は少ないし、それに」
鞠莉「それに?」
曜「ことりちゃんとか、もっとえげつなく資金調達してるって噂だよ」 鞠莉「それで最近羽振りがいいのね」
曜「そうなの?」
鞠莉「毎晩遊んでるわよ、穂乃果たち」
曜「まったく……」
鞠莉「ちゃんと言ったほうがいいんじゃない?副長さん」
曜「副長って言ってもその上に筆頭局長と、局長二人もいるんだからさー……」
鞠莉「難儀よねー……」
曜「鞠莉ちゃんは、穂乃果さんのことどう思ってる?」
鞠莉「え、私は別に嫌いではないわよ?強い人好きだし」
曜「まあ、そっか」
鞠莉「ただ、居心地がいいのは千歌達といる時よ、命を張るなら私は千歌のために張るわね」
曜「……」
鞠莉「どうしたのよ、そんな顔して」
曜「い、いや、なんかはっきりそう言われると……」
鞠莉「私は頭を使ったりするのは苦手だから、曜、私のことを上手く使ってね?」
曜「……私は使うなんて、そんな……」 二人が屯所へと戻ると何やら騒いでる声が聞こえてくる
曜「皆、どうしたの?」
聖良「曜さん、えーっとですね……」
穂乃果「お、来た来た」
千歌「そ、その、隊服なんだけどね」
曜「隊服、えっと、まだ資金が集まらないから発注は……」
ことり「大丈夫だよ、私たちが上手くやって作ってもらったから」
曜「え、そんなお金……」
穂乃果「ことりちゃんがね、大丸さんに直接頼んで作ってもらったんだって」
曜「ま、また勝手な……」
鞠莉「まあまあ、いいじゃない、うちもお金はないんだし」
曜「確かに……」
ことり「はい、これ曜ちゃんのね」
曜「え……?」 曜は浅葱色のだんだら羽織を受け取り言葉を失う
曜「何これ……」
鞠莉「派手ねー」
曜「わ、私の案だと黒くて夜目立たないような格好いい服をっ」
ことり「んー、でもね、千歌ちゃんが赤穂浪士に憧れてるって話を聞いて」
千歌「う、うん、穂乃果さんと盛り上がって……」
ことり「せっかくだからそれに似せて作ろうかなって」
曜「赤穂浪士も黒だったような……」
ことり「それだと一緒になっちゃうし、この色の方が可愛いかなって」
曜「かわ……」
海未「それにしてもこれは……まるで切腹の時の死装束ですね」
善子「笑えない冗談ね……」
曜「わ、私の、案が……」
千歌「よ、曜ちゃん、私は別に隊服の話と思って赤穂浪士の話をしたんじゃないんだよ!?」
曜「い、いいよ、わかってるから……」
曜は羽織を抱えてフラフラと部屋へと戻っていく
善子「よっぽど自分で作りたかったのね」
浅葱色の羽織は京の町で目立ち、隊服を着た壬生浪士組による見回りで噂は広まっていった 聖良「大阪の奉行所から依頼が来ております、反幕府浪士を捕らえてほしいと」
穂乃果「大阪かー、私行きたいなー」
海未「筆頭局長はあまり遠出をするべきでは……」
穂乃果「行きたい!」
海未「……わかりました、私も同行しましょう」
穂乃果「あとねー、千歌ちゃんと梨子ちゃん、善子ちゃんもおいでよ」
梨子「え?」
善子「私も?」
曜「待った、千歌ちゃんも行ってしまうと、こっちの指揮が……」
穂乃果「局長のことりちゃんがいるでしょ?」
聖良「私も同行します、数もかなり多いというので、ダイヤさんルビィさんもいいですか?」
ダイヤ「ええ、もちろんですわ」
ルビィ「うん、大丈夫だよ」
果南「まあこっちは私と鞠莉が残れば大丈夫でしょ」
曜「う、うーん……」
こうして壬生浪士組は大阪へと向かうことなった 数日後、大阪にて
聖良「……ダイヤさん、そちらからルビィさんと追い込んでください」
ダイヤ「わかりましたわ」
聖良「海未さんは善子さんと反対から、梨子さん、正面から行きますよ」
梨子「はい!」
聖良の指揮に合わせて各々が動き不逞浪士を追い込んでいく
善子「覚悟しなさい」
ダイヤ「逃げ場はありませんわ」
刀を向けて包囲すると浪士達は刀を捨てて投降する
穂乃果「うんうん、お見事だね」
千歌「いいのかな、私たち見てるだけで」
穂乃果「これもね、えーっと、上に立つ者の役目ってことだよ」
千歌「なるほど……」 大阪での仕事はあっさりと終わり、その夜全員で舟に乗って遊びに出かけた
梨子「お仕事あっという間だったね」
ダイヤ「ええ、奉行所の方々があまりに情けないと言いますか……」
聖良「ええ、しかし、曜さんの考える戦法かなり使えますね」
ルビィ「どんなに強くても囲んじゃえばいいもんね」
海未「卑怯と言えば卑怯と言われそうですが」
穂乃果「いいのいいの、ちゃんと成功させることが大事だよ」
梨子「あれ?善子ちゃん、さっきから静かな気が……」
梨子が振り向くと善子が苦しそうにうずくまっている
梨子「善子ちゃん!?どうしたの!?」
善子「うぅ……」
聖良「腹痛でしょうか、暑さもあって具合が悪くなったのかも」
穂乃果「舟を止めて、どこかで休ませないとだね」 舟を降りると善子をダイヤと梨子が支えながら歩き出す
ルビィ「橋を渡った先に休めそうなお店が!」
千歌「わかった、善子ちゃん、もう少し我慢してね」
橋を渡ろうとしていると反対側から力士の集団が道を塞ぐように歩いてくる
海未「なんて邪魔な……」
千歌「もう……、退いて退いて!邪魔だよ!」
力士達を千歌が払い除けようとすると力士達が突っかかってくる
「無礼な奴らだ」「お前らが退けばいいだろ」
千歌「え、ちょっと」
聖良「病人がいるのです、道を……」
「そんなこと知るか」
梨子「ちょっと早くしないと……ひっ……」
梨子は明らかに殺気に気付く、梨子だけでなくその場の全員が穂乃果を見る
穂乃果「うちの子が具合悪いから、早く休ませたいんだよ……」
穂乃果「退かないなら斬る」
穂乃果の殺気に力士達はたじろぎ、ある者は足をもつれさせ転び出す
穂乃果「さ、急ごう」
穂乃果に先導されて橋を渡り休める店へと急ぐ *****
***
*
善子「うぅ……」
梨子「少し楽になった?」
善子「……ええ、闇の飲まれかけたわ」
海未「どういう意味ですか?」
梨子「あ、気にせずに」
千歌「すごいな、穂乃果さんのさっきの気迫……」
ダイヤ「というより殺気ですわね」
そんなことを話していると外から騒ぎが聞こえる
ルビィ「た、大変っ、さっきの人たちが仲間を連れて……」
海未が表を見ると力士達が武器を持って店の前で騒いでいる 聖良「仕返し、というわけですか」
穂乃果「向こうが悪いのにねー、はあ……」
穂乃果は刀を持つと表へと向かう
聖良「ま、待ってください、私たちがやったら余計に騒ぎに……」
穂乃果「んー、わかるんだけどさ、ちょっと許せないよね」
海未「あのままでは関係ない人も巻き込まれそうですね」
千歌「……聖良さん、私も行くべきだと思うよ」
聖良「……なるべく殺さないようにしてくださいね」
聖良も諦めたように刀を持つ
ダイヤ「数が多いですね、梨子さん、ルビィもいけますか?」
梨子「はい!」
ルビィ「う、うん」 穂乃果達は倍以上の数の力士達を半分ほど斬ると残りは怯えて逃げていった
千歌「ふぅ……」
ダイヤ「数の割にはでしたね」
穂乃果「んー……梨子ちゃん」
梨子「……っ」
穂乃果「一人だけ深く斬ったでしょ」
梨子「お、思わず……」
穂乃果「んー、一人くらいは死んじゃうかな、仕方ないけど」
一人の死亡者を出したこの事件は後日、千歌と曜で話をつけて収めることになった 千歌「ごめんね、面倒なことになって」
曜「まあ、事情はわかったけどね」
千歌「ねえ、曜ちゃん」
曜「ん?何?」
千歌「私たちの中で一番武士なのは、もしかして穂乃果さんじゃないのかな」
曜「……」
千歌「私は羨ましい……あんなふうになりたい……」
曜「確かに、穂乃果さんはすごいよ、何か持ってる人なんだと思う」
曜「でも、千歌ちゃんが目指すべき場所はそこじゃない」
千歌「なら、私はどこを目指せば……」
曜「千歌ちゃんだけが目指せる場所がきっとあるよ」
千歌「……そんなのないよ」 数日後、とある夜
海未「……来ましたよ」
曜「うん」
海未と曜が物陰に隠れて刀を構えている
曜「……覚悟っ!」
海未と曜の間を何者かが通り過ぎようとすると一緒に飛び出して刀を突き刺す
「な……」
刺された相手はそのまま地面に横たわる
曜「ふぅ……」
曜は刀を引き抜くと血を払い鞘に納める
海未「……」
海未も同じような動作をするも再度刀を突き刺す
曜「えっ!?」
海未「まだ生きてましたよ」
刀を鞘に納めながら海未が淡々と言う
曜「……ごめん、甘かった」
海未「私の刀が甘かったせいかと、ただ……」 曜「ただ?」
海未「暗殺なのですから、声をかけるのはどうかと」
曜「……つい」
海未「……そもそも、副長自ら暗殺任務などする必要が?」
曜「暗殺なんて、他の人には頼めないし」
海未「信頼してないということですか?」
曜「そ、そういうわけじゃ」
海未「……梨子、善子あたりであれば一人でも暗殺は出来る実力があると私は思っています」
曜「あ、あの子たちは、まだ若いというか……」
曜「……甘いのかな、私は」
海未「……甘い、とは違いますね、あなたは……」
海未「嫌われることが怖いのでは?」
曜「……!」
海未「……そろそろ戻りましょう」
海未の言葉に曜はしばらくその場を動くことが出来なかった 壬生浪士組の活動が本格的になっていくが、資金問題が常に付き纏っていた
鞠莉「暑い……、遊びに行きたいわ……」
ダイヤ「そんなお金ありませんわ……」
果南「世知辛いねー……」
聖良(この方々は大丈夫ですが、最近入った隊士にはそろそろ士気に関わるかもしれませんね……)
聖良(会津藩がもう少し支援をしてくれると助かるのですが……)
ことり「みんなー、お金配ってあげるよー」
ことりが隊士に大金を運ばせて帰ってくる
鞠莉「すごーい!こんなの見たことない!」
ダイヤ「な、なんですの、このお金は……」
聖良「ことりさん、これは……」
ことり「んー、お願いして、貸してもらったんだよ?」
果南「いやいや、貸すって言ってもこんな……」
聖良「このような金策は反感を買います、あまりにもこれでは……」
ことり「でも、みんな喜んでくれるよ?」 聖良「しかし、武士として考えるなら……」
ことり「苦しくても我慢する?それは、違うんじゃないかなー?」
聖良「違う……?」
ことり「私たちはみんなを食べさせないといけない責任はあると思うよ?」
聖良「それは……」
ことり「それに命の危険があることを毎日させてるんだもん、遊べるだけのお金は渡すべきじゃないかな?」
聖良「……」
ことり「例え無理矢理でもお金を調達する、それが組織として上に立つものの責任だと私は思うなー」
聖良「しかし……!」
果南「まあまあ、聖良、その辺でさ」
果南が聖良を無理矢理ことりから遠ざける
果南「落ち着きなって、声を荒げるなんてらしくないよ」
聖良「……悔しいのです、反論できない自分が、間違いではないと思ってしまう自分が」
果南「まあ、お金の問題は仕方ないよ、確かに厳しいままじゃね」
聖良「……はい」
ことり「さてと、穂乃果ちゃんにも報告しないと」 ことりが穂乃果のいる奥の部屋へと向かうと千歌と曜が一緒に待ってる
ことり「あれ?どうしたの?」
曜「……苦情がきてる、お金を脅し取られたとか、桁を誤魔化されたとか」
ことり「そんなつもりないんだけどなぁ……」
千歌「金策はありがたいけど、このままだと評判が……」
曜「ただでさえ、壬生狼とか言われて、怖がられてるのに」
ことり「でも、お金は大事だよ?」
曜「そうだけど、やりすぎは!」
穂乃果「んー、私達って町の人に好かれないといけないのかな?」
千歌「え?」
穂乃果「私たちがやってることって、正しいことだと思ってるの?」
曜「そりゃ、京の治安を守って、不逞浪士を捕まえて……」
穂乃果「……そっか、それが間違いなんだと思うよ」 曜「穂乃果さんは、正しくないことを私たちがしているって言いたいの?」
穂乃果「正しいとか正しくないとかじゃないよ、ただ、怖がられてることはしてるんじゃないかな」
穂乃果「町中で人を斬ったり、仲間の裏切り者を斬ったり、私たちが好かれようなんて思っちゃいけないと思うな」
千歌「でも……、私たちは会津の人達も認めてくれてるし……」
穂乃果「人を斬ることを認められてる、ただ、それだけだよ」
穂乃果「嫌われてもやるべきことはやらないといけないんじゃないかな」
曜「そ、それは……」
穂乃果「少なくとも私は嫌われる覚悟は出来ているよ?曜ちゃんは出来てないのかな?」
穂乃果「そんな覚悟もないのに、人を斬ってるの?」
曜「……私は……」
千歌「穂乃果さんっ!」
千歌「……もう、その辺で」
千歌が涙目になりながら穂乃果を睨みつける
穂乃果「……じゃあ話は終わりね?」
千歌は曜を引きずるように部屋を出ていく ことり「……穂乃果ちゃん、やりすぎじゃないかなー」
穂乃果「まだだよ、もっと……、海未ちゃんは準備できてるかな」
ことり「……うん、出来てるはず、本当にやるの?」
穂乃果「もちろんやるよ、ことりちゃん、ついてきてくれるよね?」
ことり「……うん、もちろんだよ」
穂乃果「ありがとう」
そして、穂乃果はこの数日後、計画を実行に移す 千歌「夜なのに暑いねー……」
曜「ねー……」
千歌と曜が暑さにだれていると突然慌ただしい足音が聞こえてくる
花丸「た、大変、大変っ……!!」
曜「どうしたの、そんなに慌てて……」
花丸「その、芹沢局長が……」
千歌「穂乃果さんが……?」
花丸「大和屋に焼き討ちを……」
曜「……!?」 千歌は花丸に案内されて、曜と果南を連れて現場へと向かう
千歌「な、何これ……」
千歌の目の前には燃え盛る商家とそれを見物する野次馬、そして穂乃果、海未、ことりがそれを見届けている
果南「ちょっと、これはさ……」
曜「何してるの!!」
穂乃果「ああ、みんなも来たんだ?」
千歌「これ、穂乃果さんが……?」
穂乃果「……そうだよ?」
果南「一体何が……」
ことり「大和屋さんがね、お金を私達には出さないって言うから」
海未「燃やしました」
曜「え……、それだけで……?」
穂乃果「京の治安を守ってる私達にそんな態度、よくないよねー」
曜「ふざけないで!こんな……、これが武士のやること!?」
海未「これだけすれば、今後私達に融資を断る者はいなくなると思います、良い見せしめになりますよ」
千歌「ダメだよ……、こんなの!すぐに!すぐ消して!!」
穂乃果「邪魔しないでよ」
穂乃果は千歌に冷たい目を向ける 穂乃果「それとも、ここで私を斬って止める?」
千歌「……っ」
果南「……曜、たまには私がやろうか?」
果南は刀の柄に手を触れる
曜「……戻ろう」
果南「え?」
曜「……ほどほどにしてください、芹沢局長」
穂乃果「うん、わかってるよー」
曜はそのまま振り返り来た道を戻っていく、千歌と果南もそれに続く
果南「いいの、このままで?」
曜「……やるなら、今じゃないよ」
千歌「……なんでこんなことしたんだろう……」
曜「考えたくもない」 *****
***
*
会津藩邸
にこ「随分派手にやったわね」
穂乃果「やりすぎかな?」
にこ「まあいいわ、一応これで過激攘夷派の資金源を断てた、でしょ?」
穂乃果「うん、かなり援助をしてたみたいだったからね、それに……」
にこ「生糸の独占ね、民衆も大和屋が焼き討ちにあって結構喜んでるらしいじゃない」
穂乃果「みたいだねー」
にこ「悪いわね、いろいろと」
穂乃果「ううん、尽忠報国のためってやつだよ」
にこ「……それよりいいのね、本当に」
穂乃果「ここでやめたら意味がないよ」
にこ「わかったわ、こっちが片付いたら、曜を呼び出す」
穂乃果「それでいいと思うよ」
にこ「最後まであんたの尽忠報国見せてもらうわ」
穂乃果「うん、任せておいてよ」
にこ「……ここまでやってもらったんだから、私も仕事をしないとね」
にこ「長州を京から追い出すわ」 その数日後、会津と薩摩により過激攘夷派の公家、長州藩を京から排除する政変が起きる
壬生浪士組も要請により参加することになった
鞠莉「……」
理亞「……」
ルビィ「ねえ、お姉ちゃん」
ダイヤ「なんですか?」
ルビィ「私達、なんでここでずっと立ってるの?」
ダイヤ「えーっと、それは……」
鞠莉「いきなり出陣って言われたけど、理由わからないわよねー」
善子「特に何も起きないし、暇ねー……」
梨子「眠い……」
曜「予想以上に全員なんだかわかってない……」
千歌「仕方ないよ、私達もよくわかってないし」
聖良「説明するとややこしいんですが、つまりは長州を京から追い出そう作戦です」
鞠莉「わかりやすいじゃないー」
理亞「さすが姉様ね」
聖良「こんな説明でいいのでしょうか……」
果南「まあ、いいんじゃないかな……」 善子「ねえ、それはわかったけど、いいの?ここにいるだけで」
海未「いいのですよ、ここを守るのが今回の役目なのですから」
ルビィ「でもずっと立ってるだけだと……」
理亞「そうね、少し様子を見に行くとか」
梨子「私も行きたいかも」
果南「ちょっとちょっと……」
穂乃果「持ち場は離れない」
千歌「穂乃果さん……?」
穂乃果「与えられたのはこの門を守ることだよ、会津からの指示があるまで全員一歩も動かないこと」
善子「一歩もって……」
穂乃果「私たちがやることは我慢比べ、それが任務、任務に反したら斬る」
穂乃果の一言で引き締まったのか壬生浪士組は隊列を崩すことなく門の警護にあたった
八月十八日の政変を呼ばれたこの騒動により、過激攘夷派の公家、長州藩は京から追い出されてしまった 愛「やられたねー、まさか追い出されるとはね」
栞子「……また機会を伺うしかありませんね」
愛「やるなー、会津と薩摩」
璃奈「敵を褒めてどうするの?」
愛「お、りなりー!」
栞子「大村先生……」
璃奈「璃奈でいい、それより……桂さんは?」
栞子「そういえば……」
せつ菜「それなら、まだ潜入を続けるとのことですよ!!」
栞子「久坂さん……!?」
愛「なんだ、せっつーも大人しく追い出されたんだね」
栞子「それより桂さんの話は聞いてませんが!?」
せつ菜「直前に言われたので、もちろん、私もすぐに戻るつもりですよ!!」
愛「ダメだって、今は待たないと」
璃奈「でも大丈夫かな、あんまり長く潜伏は……」
せつ菜「ですので、そろそろ今の役は降りると言ってましたよ!」 八月十八日の政変での壬生浪士組の活躍が認められ、曜と聖良は会津藩邸へと呼び出される
にこ「ご苦労様ね」
聖良「いえ、大したことはしてませんので……」
にこ「何事もなく事が進んで助かってるのよ、さてと、呼び出した理由なんだけど」
にこ「壬生浪士組、名をあらためて新選組と名乗りなさい、私がつけてあげたわ」
曜「新選組……」
にこ「本当は日本超武士集団容保隊って思ったんだけど、家臣に止められたわ」
曜「家臣の方にお礼を言いたいな」
にこ「そして、曜、これを渡したいと思ってるの」
曜はにこから一振りの刀を受け取る
曜「……兼定」
にこ「兼定を気に入ってるみたいだからね、今持ってるのよりいい出来よ、ありがたいと思いなさい」
曜「受け取れない、です……」
にこ「なんでよ」
曜「私は、まだ武士になりきれてない、千歌ちゃんを支えることもできない……」
にこ「それは……穂乃果のせいかしら」
聖良「あの方の評価は別れています、乱暴で無茶苦茶をする暴君、しかし、強く何か信念を持った武士でもある」
曜「あの人がいる限り、私達は、本物になれない……」 にこ「……まあそうね、いいわ、もう一つの話をしましょう」
曜「もう一つ……?」
にこ「芹沢一派を斬りなさい」
曜「なっ……!?」
にこ「流石にやりすぎね、これ以上はうちの藩にとっても迷惑なのよ」
聖良「し、しかし、斬るといっても……」
にこ「やり方は任せる、ただ、向こうも、さっさとやられるわけはない」
にこ「もし失敗したら……、あんたたちはそこで終わり、わかるわね?」
曜「……失敗は許されない」
にこ「そうよ、特にあんたと千歌は、殺るか、殺られるか」
聖良「……私もそれは一緒です」
にこ「どうかしらね、あんたは穂乃果の下でもやっていけるんじゃないの?」
曜「……」
にこ「どうする?別に聞かなかったことにするのもありよ」
曜「……このままじゃ、私はごっこ遊びなんだ……」
曜「千歌ちゃんを武士にする、そのために、芹沢を斬る」
にこ「ええ、おそらくそれが出来たら、本当の武士の集団になれるかもね」
曜「やります、必ず」
にこ「わかったわ、それじゃ、それまで兼定は預かっておいてあげる、終わったら取りにきなさい」 *****
***
*
聖良「……本気、ですか」
曜「やるよ、絶対に……」
聖良「しかし、仲間内でそんな……」
曜「聖良さん、私は千歌ちゃんについて行きたい、あなたはどうなの?」
聖良「もちろん、私もです、千歌さんに魅かれてついてきているのですから」
曜「覚悟を決める、私は……嫌われたっていい、必ずやる」 翌日、新選組は全員八木邸へ集められた
千歌「新選組、いい響きだね」
穂乃果「いいねー、言いやすいし、壬生浪士組って噛みそうで」
曜「そこで、新選組結成にあたり、隊の法度を作ったよ」
曜は法度が書かれた紙を広げてみせる
ダイヤ「隊を脱すること、勝手な金策……勝手な訴訟、私闘、なるほど、これら禁止……」
梨子「あのー」
曜「はい、梨子ちゃん」
梨子「その辺りはわかるんだけど、士道に背くなって、どういうこと?」
花丸「曖昧で困るずら……」
聖良「つまりは武士らしい行動をしなさいということです」
鞠莉「やっぱり曖昧よねー」
理亞「例えば敵に背を向けて逃げたりとか、そういうことじゃないの?」
ルビィ「なるほどー……」 海未「……局長たちはこれで良いのですか?」
ことり「……私は穂乃果ちゃんがよければ」
千歌「私も大丈夫だよ」
穂乃果「んー……、そうだなー……」
穂乃果は曜が広げた紙を覗き込む
曜(反対するかな、理由はないはずだけど……)
穂乃果「……わかった、これに違反したらどうするかが書いてないじゃん!」
聖良「罰するということで良いかと……」
穂乃果「それこそ曖昧じゃない?この五つに反したら……」
穂乃果「切腹、でいいじゃないかな」
曜「えっ!?」
梨子「せ、切腹!?」
千歌「そ、それは厳しいんじゃないかな……、切腹なんて」
穂乃果「それくらいしないと、ね、ことりちゃん」
ことり「う、うん、そうだねー」
海未「……」 *****
***
*
聖良「まさか向こうからそんなことを言い出すなんて」
曜「……まあ、手間は省けたけど……」
千歌「……話は聞いたけど、本当にやるの?」
曜「やるよ、果南ちゃん」
果南「花丸に調べさせた、ことりが金策した記録、報告されてないのがあるね」
千歌「……勝手な金策」
曜「そう、新見錦は切腹に」
聖良「法度に従い、切腹であれば……」
曜「もちろん、筆頭局長様に報告しないとね」
千歌「だ、大丈夫かな……」 *****
***
*
穂乃果「ことりちゃんが勝手な金策をねー……」
曜「明らかに新選組に報告してないものもある、……これは見過ごせない」
穂乃果「そっかー……」
海未「……」
穂乃果「千歌ちゃんも、ことりちゃんには切腹させるってことでいいの?」
千歌「ヒャ、はいっ!」
穂乃果「……まあ仕方ないか、いいよ、それで」
曜「え、は、はい、それでは私たちで……」
聖良(おかしい、なぜこんなあっさりと……)
穂乃果「……今のことりちゃんは多分違うから別にいいや」
曜「……違う?」
海未「ことりはこの時間ならこの店にいるかと、急いだ方がいいですよ」
曜「……はい」
曜たちは立ち上がり、海未に教えられた店へと急ぐ 海未「……いつからでしょうか」
穂乃果「多分、最初からかなー、新見錦って人物自体がいなかったんだよ、きっと」
穂乃果「急にしばらくいなくなったり、現れたり、不思議なところはあったもん」
海未「……残念ですね」
穂乃果「うん、この前の出陣の時も姿がないからおかしいなって思ったんだけどね」
海未「……ことり」
穂乃果「ことりちゃんが誰であっても、私たちと一緒についてきてくれたし、それは変わらないんじゃないかな」
海未「ええ、しかし、神道無念流のことりの腕はかなりのものでしたが、一体……」 *****
***
*
果南「この店だ……」
千歌「……行くよ!」
千歌たちが乗り込むもそこにことりの姿がない
曜「……ここにいた客は?」
曜が周りに聞くと震えながら手紙を差し出してくる
「こ、これを、渡してくれって……」
曜「手紙……?」
『私は死んだことにしてくれていいよ、またね ことり』
聖良「……逃げた……?」
曜「探そう、まだ近くにいるかも」
千歌「ことりさん……」 曜は周辺を捜索するもことりの姿はついに見つからなかった
果南「どうするのさ、これ」
聖良「もう戻れるとは思いませんが……」
曜「新見錦は最初からいなかったってことにしよう……」
果南「そんな無茶な……」
曜「すぐにじゃない、しばらくしたら名前を消していく、いたことを消す」
聖良「しかし、周りにはなんと報告するのですか?」
曜「とりあえず死んだことにする、ここに構ってられない、早く、穂乃果さんを……」
果南「わかったよ、曜がそう言うなら」
局長であった新見錦は結成時には確かに名前があったが、その後の資料からは突然名前が消えていたという 数日後、曜と聖良は隊士たちの稽古を見ている
聖良「……穂乃果さんはなんと?」
曜「ふーん、わかったよ、だってさ」
聖良「……おそらくですが」
曜「次は自分達だと気づいてるよね」
聖良「それで、その穂乃果さんは今は?」
曜「八木家の子供たちとお絵描き中」
聖良「……読めませんね、あの人は……、優しいのやら怖いのやら……」
曜「やめる?」
聖良「その聞き方は私にはしないでください」 曜「……あとは誰を使うか」
聖良「私はやりますよ、あなただけ罪を背負わせるつもりはありません」
曜「……あの二人さ、相当な腕だよね」
聖良「ええ、かなりです」
曜「だよねぇ……」
二人が話をしているとダイヤが声をかけてくる
ダイヤ「穂乃果さんと海未さんの話を?」
聖良「え、ええ」
曜「そういえば、ダイヤさんは二人と同じ神道無念流だよね、ダイヤさんから見てどうなの?」
ダイヤ「素晴らしい腕ですわ、何より実戦経験が豊富なのか、単純に強いです」
曜「ダイヤさんより?」
ダイヤ「……海未さんとはある程度は、穂乃果さんとは立ち合ったことはないですが、おそらく負けますね」
曜「随分はっきり言うね」
ダイヤ「それだけすごいということです、無茶苦茶をしますが、考え方なども私は素晴らしい武士だと」
曜「そっか」
ダイヤ「それでは稽古に戻りますわ、ルビィ!サボらない!!」 聖良「……ダイヤさんは外しますか」
曜「だね、あの人は暗殺なんてしたがらないよ」
聖良「理亞、ルビィさんは少し心許ないですし……」
曜「鞠莉ちゃんは使う」
聖良「ええ、良いかと」
曜「あとは、善子ちゃんか……」
善子「斎藤一って言ってるでしょ!」
曜「急に出てこないでよ、びっくりするなー……」
善子「さっきから悪い顔で何か話してるから気になったのよ」
聖良「悪い顔……」
善子「私の凄腕殺人剣術に取り憑かれたような顔ね」
曜「確かに、善子ちゃんの剣も実戦向きだよね」
善子「ええ、ま、まあ色々とあったのよ……」
曜「……」 善子「……ちなみに私はやらないわよ」
聖良「なんのことですか?」
善子「私はここでそこまで千歌さん達と付き合いが長いわけじゃない、私の剣が振るえればそれでいいの」
曜「よく聞いてたねー……」
善子「でも反対もしない、今の状況は面倒だもの」
曜「なるほど、善子ちゃんはそういう考えか」
善子「今回のことは別だけど、私の腕が必要なら言ってもらえれば私はなんでもやるわよ、ただ……」
聖良「ただ?」
善子「……梨子はダメよ」
曜「それはどうして?」
善子「梨子はすごいわ、天才よ、天才の私が言うんだから間違いない」
善子「でも、人斬りと紙一重のところにいるの」
曜「……」
善子「人を斬らせないでって言ってるわけじゃない、でもあの子には真っ当な剣の道を進ませてほしいわ」
曜「……わかってる、私も千歌ちゃんも梨子ちゃんには幸せになってほしいからね」
善子「ならいいわ、……死なないでよね」
善子はそう言って稽古に戻る 聖良「曜さん、私は誰が言おうと梨子さんを使うべきだと思ってますよ」
曜「……」
聖良「気持ちはわかります、でも、梨子さんの腕は必要です、情は捨てるべきです」
曜「そんなのはとっくに捨ててるつもりだよ」
*****
***
*
果南「ここだね」
梨子「……よし、行くよ」
梨子は戸の前に立つとゆっくりと息を吸う
果南「……」
果南は他の隊士に手で指示をする
梨子「……新選組です!これより宿を調べます!」 梨子が戸を開けると同時に声を響かせる
果南「全員壁に手をついて、抵抗しなければ斬らない!」
果南の声に後ろで控えていた隊士が中へと入っていく
梨子「……静か」
果南「だね、なんか違和感あるけど……」
「沖田さん!こちらに!」
梨子「……今行きます!」
二階からの声に梨子が刀を抜いて進み奥への部屋へと向かう
梨子「……」
梨子が襖を開けると無抵抗を示すように壁に手をついた者達がいる
梨子「この人たちかな」
「はい、おそらく、捕縛します」
梨子「あ、慎重に」
平隊士達が捕縛しようとすると部屋の隅から光るものが見える
梨子「危ないっ!!」
梨子は仲間へ振り下ろされる刀を咄嗟に受ける 梨子「……闇討ちなんて……」
果南「梨子!大丈夫!?」
騒ぎに気付き果南が部屋へと入ってくる
梨子「大丈夫です!……これ以上やるなら、斬りますよ」
相手は梨子の声に耳を貸さずに襲いかかってくる
「うおおおおお!!」
梨子「……」
梨子は相手が振り下ろすより先に急所を刀で貫く
「が……」
一瞬の出来事に周りも言葉が出ず、ただ人が倒れる音が聞こえる
果南「流石、やるねぇ……」
梨子「決めたから、守るためには人を斬る……、でも少しでも痛くなければいいな……」
果南(それが急所への一突きか、梨子……、強いけど優しいね)
果南は他の者を隊士達に指示して捕縛させ、二人は屯所へ戻っていく そして、次の日
千歌「……」
曜「いいね、今日決起集会ということで席を設けたから」
聖良「そこで酔わせるというわけですね」
千歌「……ねえ、やっぱり卑怯じゃないかな」
曜「確実にやるなら、これしかない」
千歌「う、うーん……」
曜「千歌ちゃん、迷わないで」
千歌「迷ってるわけじゃないよ、でも、それであの人を超えたことになるのかなって……」
曜「……どちらにせよ、千歌ちゃんは今回は何もしないでね」 聖良「ええ、最悪は私たちだけの犠牲で」
千歌「……嫌だよ、私だけ生きてるなんて」
曜「千歌ちゃん、だったら少しでも成功するように策を練らないと」
千歌「……わかった、四人とも、頼んだよ」
曜「うん、任せて」
千歌「……局長命令です」
四人は千歌の言葉を黙って聞く
千歌「全員、生きて帰ること」
*****
***
*
その夜
穂乃果「海未ちゃーん、お酒ー!」
海未「飲み過ぎですよ、いい加減に……」
曜「まあまあいいじゃない、お酒追加ー」 理亞「今日は一段と騒がしいわね」
梨子「全員任務お休みで宴会なんて初めてだし、いいんじゃないかな」
鞠莉「そうよ、盛り上がらないとね!」
果南「鞠莉は酔いすぎると暴れるから程々にね」
千歌「……」
ダイヤ「千歌さん?静かですが、どうかしましたか?」
千歌「え、い、いや、なんでも、ないよ?」
ダイヤ「……?」
ルビィ「これ美味しいねぇ」
善子「ちょっと、それ私のじゃない!?」
新選組の一同が笑い合いながら酒を楽しんでいる ルビィ「ん?あれー、雨だー……」
ルビィが雨音に気付き外を覗き込む
鞠莉「しばらく降り続きそうね……」
海未「雨ですか……、穂乃果、そろそろ帰りますよ」
穂乃果「えー、まだいいじゃんー」
海未「私はそろそろ眠いのです、ほら、帰りますよ」
曜「それじゃ、私も一緒に送るよ」
海未「ええ、お願いします、ほら、行きますよ」
穂乃果「はーい」
穂乃果は海未と曜に連れられて店を後にする 穂乃果「もう、まだ飲めるのにー」
海未「ほら、行きますよ、雨なんですから足元気をつけて」
曜「私が先導するから安心してよ」
穂乃果「曜ちゃーん」
曜「はい?」
穂乃果「私はね、新選組を日本一の強い隊にしたいんだー」
曜「……うん、私もその気持ち」
穂乃果「これから多分、この国は大変なことが起きると思うんだよ」
曜「大変な……こと」
穂乃果「そう、でもね、そんな中でこの国のために出来ることを実行できる、そうなりたいよねー」
海未「随分と語りますね」
曜「うーん、私にはちょっと難しいな……」 穂乃果「んー、じゃあー……曜ちゃんには、誠を尽くしてほしいな」
曜「誠を……?」
穂乃果「そうだよ、誠を尽くして、この新選組を率いてほしいんだよ」
曜「新選組の局長は、穂乃果さんと、千歌ちゃんで……」
穂乃果「それは単に上にいるだけ、多分、新選組を実際に率いるのは曜ちゃんだと思うんだー」
曜「……私にはそんな」
穂乃果「大丈夫だよ、曜ちゃんなら」
海未「……穂乃果、着きましたよ」
穂乃果「それじゃ、お休みー」
海未「おやすみなさい」
曜「……」 曜は雨が降る中、二人が八木邸に入るのを見届け、佇んでいる
花丸「曜ちゃん」
曜「……どう?準備は」
花丸「八木家の人たちには全員上に上がってもらったよ、下にいるのは二人だけ」
曜「そっか、それじゃ……」
花丸「このまま宴会に潜って上手くみんなを誘導するずら、ここにはしばらく近づけさせないよ」
曜「よろしくね」
花丸「了解ずら」
曜「……やるんだ、やるんだ土方歳三……」 *****
***
*
千歌「……」
ダイヤ「千歌さん、やはり顔色があまりよくないような……」
千歌「だ、大丈夫だって」
ダイヤ「そうですか……?では私は先に戻ろうかと」
花丸「えー、まだまだこれからだよ?もっと飲もうずらー」
ダイヤ「明日は朝から見回りがありますので、ルビィは潰れてるので花丸さん、お願いしますね」
花丸「え、それはいいけど……」
善子「ダイヤ、あなたの腕があるとは言え、一人は危険よ、送るわ」
ダイヤ「助かります、まだ京の道は慣れてなくて」
善子「それじゃ失礼するわ」
善子とダイヤは席を立ち、屯所へと戻っていく ダイヤ「すっかり飲んでしまいましたわ」
善子「そうね、たまにはいいわね」
ダイヤ「ええ、ことりさんがいないのは残念ですが……」
善子「誰も口にしないようにしてるのに、わざわざ言う?」
ダイヤ「そう、ですわね……、でも良かったですわ」
善子「何が?」
ダイヤ「穂乃果さん達と曜さん、あまり上手くいってなかったようですが、仲良く帰られたみたいで」
善子「……そうね」
ダイヤ「穂乃果さんは才能のある人ですから、まだまだ学ぶべきところはありますわ」
善子「まあわかるけどね」
ダイヤ「しかし、いずれは千歌さんと曜さんに新選組を率いてほしいという想いもあるのです」
善子「なんで?」
ダイヤ「千歌さんは純粋でついて行きたいと私は思ってます、それだけ人として魅かれてますから」 善子「ふーん、じゃあ曜は?」
ダイヤ「曜さんは、私たちの中で一番才を秘めてるかと」
善子「剣の腕ってこと?」
ダイヤ「それだけではなく、軍略、もしかしたら政など様々なことに向いていると思ってますわ」
善子「随分と大きく出たわね」
ダイヤ「ええ、そういえば、善子さん、ここは……、見慣れない景色なのですが……」
善子「悪いわね、今日は私と夜の散歩をしばらくしてもらわないといけないの」
ダイヤ「……ああ……、そうなのですね……、そう、してしまったのですか……」
ダイヤは傘を下ろして空を見上げる
善子「……」
ダイヤ「……私は、仲間はずれですのね」 雨が降り続く中、曜を含めた四人が八木邸前で落ち合う
曜「……狙うのは、奥の座敷で寝ている芹沢と平山」
聖良「私と曜さんで平山を……残りは芹沢局長を」
曜「……いいね、いくよ」
四人は連なって八木邸の中へと潜入する
曜「……」
雨により足音は消えるが慎重に奥へと進んでいく
曜(……怖い、怖い……怖い……怖い……)
襖を開けて布団の膨らみを確認し、それぞれが刀を抜き位置につく
曜「……覚悟!!」
曜の掛け声で一斉に布団に向かい刀を何度も突き刺す
曜(当たれ!当たれ!!) 聖良「……曜さん、おかしいです、これは……」
曜も刀から伝わる感触で理解した様子で恐る恐る周りを見渡す
海未「……暗殺で声をかけるなと、教えたはずですよ」
曜「……っ、そんな……」
穂乃果「まあ、やるなら今日だよね、そりゃ」
鞠莉「こっちもバレてるわよ!?」
部屋の両隅にそれぞれ穂乃果と海未が立っている
曜「……挟んで必ず斬れ!」
曜の言葉にそれぞれ刀を向けて動き出す 海未「いい判断の早さです」
聖良が海未に向かって距離を測るように刀を向ける
曜「おりゃあ!!」
曜は部屋にあるものを海未に投げつけ始める
海未「っ」
海未の怯んだ声を聞き、海未が眼帯をしている方向から刀を振り抜く
曜(いけるっ)
海未「流石、実戦ではやはり強い……」
海未は死角のはずの向きからの刀を弾き返す
曜「……見えてるの、それ」
海未「いえ、見えてませんよ、しかし、刀はこちら側の方が視えます」
海未は聖良に対して牽制しながら曜に刀を向ける
聖良「……っ」
曜「たあああ!!」
曜が姿勢を下げて海未の足元を斬ろうとするも海未はそれを飛んでかわす
海未「いいですよ、弱点は狙うべきです、綺麗な型など関係ない、斬るためになんでもする、それがあなたの強さですから」
曜(向こうは……大丈夫かな……) 鞠莉が穂乃果に向けて刀を向ける
穂乃果「その声は鞠莉ちゃんか、槍じゃないんだね?」
鞠莉「こんな室内で槍なんて使わないわ、一応覚えたのよ、天然理心流」
穂乃果「そう、でもそれで私を斬れるかな……」
穂乃果が言い切る前に鋭い突きが穂乃果を襲う
穂乃果「やっぱり梨子ちゃんを連れて……、ん?」
穂乃果が刀で受けると違和感を感じ、相手の姿を目を凝らして確認する
穂乃果「違う……、これは……梨子ちゃんじゃない……?」
果南「悪いね、梨子じゃなくて」
穂乃果「果南ちゃん……?」 *****
千歌『一つだけ、いいかな』
曜『何?』
千歌『梨子ちゃんは……使わない』
聖良『千歌さん、それは……』
千歌『甘いのはわかってる、一番強いのは梨子ちゃん、使うべきなのもわかる』
千歌『穂乃果さんなら、多分使う』
曜『そこまでわかってて、使うなって?』
千歌『私はあの人を超えたい、でも、あの人の背中を追っても、それは違うと思うんだ』
千歌『私は、私だけの景色を探したい……』
曜『……わかった』
聖良『しかし、それでは……』
果南『私がやるよ、私が沖田総司になる』
***** 穂乃果「梨子ちゃんを使わずに、果南ちゃんかー……」
果南「これが千歌が決めた道なら、私はその道を進ませるためにやるだけだよ」
果南「私が裏の沖田総司になる、そう決めた」
穂乃果「汚い仕事は果南ちゃんが代わりにやるってことなんだね、……出来るのかな、それが」
果南「……天然理心流免許皆伝、生半可な腕で取れるもんじゃないんだよ」
果南は刀の先を水平に穂乃果に向けて構える
穂乃果「……ちょっと楽しみかもね」 海未「……なるほど、梨子を使わないとは、やはり甘いですね」
曜「これは千歌ちゃんの判断だから、私はそれに従っただけだよ」
曜は即座に間合いを詰めて刀を振り下ろす
海未「……ぐっ」
海未はそれをしっかりと刀で受け、金属のぶつかる音が響く
曜「どりゃあああ!」
すかさず曜は海未の着物を掴み投げ飛ばそうとする
海未「こ、の……!」
聖良「はあああ!!」
投げ切ることはできないが体勢を崩した海未に聖良が斬り込む
海未「くっ……」
完全にかわすことは出来ずに腕を斬られた海未に対して曜は首元に刀を突き立てる
曜「はあはあ……、これで、終わりだよ」
海未「そのようですね」 曜「……何か言い残すことは」
海未「あなたの目標はなんですか?新選組を強くすることですか?」
曜「千歌ちゃんの夢を支えることだよ、それが武士になることなら、千歌ちゃんを武士にしてみせる」
海未「なるほど、曜、あなたはそのために鬼となる覚悟ができていますか……?」
曜「鬼……」
海未「千歌のために生きるというなら、あなたは自分を捨てて鬼になるしかないのですよ」
曜「なるよ、鬼に、必ず」
海未「先に待ってますよ、地獄で」
海未が満足そうに笑うと曜は刀で海未の首を貫いた 果南「っ、このっ!!」
穂乃果「驚いたなー、果南ちゃん強いね!」
果南「嫌味に聞こえるけど!?」
果南の猛攻を穂乃果は受け流す
果南「や、ばっ」
少しでも攻めるのが遅れるとすかさず穂乃果は刀を返し斬りかかる
鞠莉(待ってよ……、これじゃ手が出せない……)
暗闇で激しく動く二人に鞠莉は斬りかかることが出来ずに躊躇っている
穂乃果「梨子ちゃんよりももしかしたら強いかもよ?」
果南「……それはないね、梨子は天才だよ」
穂乃果「それでも斬る自信があるってことだよね」
果南「……あるっ!!」 果南は鋭く刀を向けて一歩踏み込む
穂乃果「遅いっ!」
踏み込みと同時に穂乃果は果南の腕へ刀を振り下ろす
穂乃果(え、避けないっ……!?)
穂乃果は果南が避けることを想定するも果南は構わずに穂乃果の首元を目掛けて斬りかかる
穂乃果「っ……が……」
果南の刀が先に穂乃果を斬り裂く
鞠莉「たああああ!!」
その瞬間を見逃さずに鞠莉は穂乃果を後ろから突き刺す
穂乃果「……まさか、避けないなんてね……」
果南「天然理心流は相討ち覚悟、知らなかったかな」
穂乃果「は、はは……、私が先に相討ちを嫌がったかな……」
穂乃果が鞠莉の刀を自ら掴んでより深く突き刺す
鞠莉「っ、な、なんで……」
穂乃果「……良かった、皆に会えたおかげで、最後は楽しかった……」
果南「はあ……はあ……穂乃果、なんで、私たちに斬られる道を選んだの……」
穂乃果「……教えないよ……」
穂乃果「あ、ああ……千歌ちゃんと曜ちゃんに伝えて……」
穂乃果「この国を、頼んだよ……」
穂乃果は海未がいたであろう方向に目をやり、そのまま崩れ落ちていった
穂乃果「海未、ちゃ……」 果南「っ、あああああ!!」
感情を吐き出すように果南は刀を振ると家の柱に当たり鈍い音が響く
聖良「……そちらも終わりましたか……」
果南「終わったよ……」
曜「……鞠莉ちゃん」
鞠莉「……長州よ!長州が襲ってきたわ!!」
鞠莉は家中に響くように声を上げる
果南「戻ろう……」
聖良「曜さん、私たちも」
曜「……こんなのはもう最後にしてほしいな……」
聖良「……」
梨子「……千歌ちゃん?なんで泣いてるの?お腹痛い?」
千歌「う、ううん、なんでもないよ……」
千歌「もう泣いちゃいけないのにね……」 数日後、芹沢鴨と平山五郎の葬儀が執り行われた
参列者の声が聞こえてくる
「暗殺されたって話だろ?」「派閥争いで殺すなんて、新選組は恐ろしい……」
曜「……」
ダイヤ「芹沢局長は長州の残党に闇討ちされました、不用意な発言はお控えください」
「……し、失礼……」
曜「ダイヤさん……」
ダイヤ「私は納得はまだしてません、しかし、理解はしているつもりですわ」
曜「……」
ダイヤ「今後、隠れて何かしないでいただけますか」
曜「……もちろんだよ、ダイヤさん」
千歌「……」
千歌(穂乃果さん、私はあなたの背中は追いません、私だけの、私だけの道を全力で進みます……)
千歌(だから、待っててください、私たちがそこに行くまで……) にこ「穂乃果達は散ったのね」
花陽「……うん、みたいだね」
にこ「あの子達が選んだ道だから、仕方ないけどね」
花陽「……これで新選組は単なる浪士集団じゃなくなるね」
にこ「ええ、穂乃果と海未の想定ではね、それより、あんたの方は?」
花陽「うん、私も今後は京都見廻組として、こっちに」
にこ「そう、頼むわね、桂小五郎が京都に潜伏してるって話だから徹底的に……」
花陽「……あのね、それなんだけど」
にこ「何よ」
花陽「もしかしたら新選組にいたのかもしれないの……」
にこ「は……?」
*****
***
*
ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃんは死んじゃったかー……」
ことり「二人のことは大好きだったんだけど、残念だなー……」
ことりは京の町を一人歩き、とある店に入っていく
ことり「……まあ、でも仕方ないですね」 せつ菜「来てくれましたか!」
ことり「久坂さん、やっぱり京に戻ってきちゃったんだ」
せつ菜「もちろんです!じっとなんてしてられません!」
ことり「そうですね、私たちはここで出来る限り……」
せつ菜「それより、もうその姿は意味がないのでは?」
ことり「……そういえば、もうこの姿は変装に向いてませんね」
ことりの姿の人物は変装を解いていく
せつ菜「流石の変装ですね、誰も桂小五郎とは気付いてないのでしょう?」
しずく「……どうでしょうか、あの人は気付いて泳がせていたような…… 」
せつ菜「それでは、ここからは討幕に向けて本格的に動きましょう、新しい国を作るのです!!」
しずく「あまり過激なことは控えてくださいね」
せつ菜「わかってますよ!」 ここで二部が終了です
次から三部を新規入れつついきます
近藤勇:高海千歌
土方歳三:渡辺曜
沖田総司:桜内梨子
山南敬助:鹿角聖良
永倉新八:黒澤ダイヤ
井上源三郎:松浦果南
藤堂平助:鹿角理亞
原田左之助:小原鞠莉
斎藤一:津島善子
島田魁:黒澤ルビィ
山崎丞:国木田花丸
芹沢鴨:高坂穂乃果
新見錦:南ことり
平山五郎:園田海未
佐々木只三郎:小泉花陽
坂本龍馬:高咲侑
桂小五郎:桜坂しずく
高杉晋作:宮下愛
久坂玄瑞:優木せつ菜
吉田稔麿:三船栞子
大村益次郎:天王寺璃奈
松平容保:矢澤にこ 芹沢一派の粛清後、新選組が新たな体制で動き出した
理亞「え、隊服新しくなるの?」
梨子「うん、これだって」
梨子は真新しい黒い羽織を着ている
理亞「また、今回は地味ね」
梨子「理亞ちゃんっ……!」
理亞「何?」
曜「この隊服はね……」
理亞の背後から曜が現れる
理亞「ひいいい!?」 曜「袴もすべて黒に統一することで格好良さを追求し、夜の任務も闇に紛れることが出来る優れものなんだよ!」
曜「汚れる心配もない、しかも黒は最近の流行り!」
曜「そもそも西洋の軍隊は黒い服を着ているらしいし、何か利点が多いんだと思うんだよね」
曜は理亞に詰め寄るように語り出している
善子「今度の犠牲者は理亞なのね……」
梨子「曜ちゃんの自信作らしいから……」
鞠莉「でも格好いいわよね、この服」
聖良「ええ、もっとも曜さんはこれでも満足はしてないみたいですが」
鞠莉「そうなの?」
曜「それでね、なんと言ってもこの裏地がね!」
理亞「も、もう許してええ!」 *****
***
*
千歌「というわけで、私が局長、曜ちゃんが副長なのは変わりはなくて、聖良さんを」
曜「新たに総長に就いてもらおうかなって思ってるよ」
聖良「総長、ですか」
ルビィ「総長って、副長とどっちが偉いの?」
梨子「う、うーん……」
理亞「それって姉様を格下げしたってこと!?」
聖良「理亞」
曜「副長がそれぞれ副長助勤に指示を出す、総長は局長や副長に対しての助言をしてもらう」
ダイヤ「なるほど、指示系統を単純にするのですね」
曜「そういうこと、指示の伝達は一本化した方が効率がいいと思ってね」
聖良(確かに効率がいい、しかもこれは西洋諸国に倣っている……曜さんは独自でこれを考えついたと……?) 曜「そして、局長に何かあったときの代理は総長が行う」
聖良「えっ、し、しかしそれは……」
千歌「何かあった時だよ、ないように出来ればしたいけどね?」
聖良「そういう意味ではなく、その時は副長の曜さんでは」
曜「私はそういうのはちょっと向いてないし、聖良さんの方が向いてると思ってるよ」
聖良「……そ、そうですか……」
ダイヤ「あの二人は似てないようで、私たちが思っている以上に信頼しているようですわね」
果南「そりゃね、曜も聖良には一目置いてるみたいだし」
理亞「あ、当たり前よ、姉様だもの」
善子「格下げしたってこと!?って騒いでたのはどこの誰よ」 そして、新選組は新たに隊士募集を行い、隊の人数を大幅に増やすことになる
曜「うーん……」
千歌「どう?人はたくさん来た?」
曜「思ったよりは……」
千歌「来たの!?」
曜「いや、逆、思ったより少ないかなって」
千歌「なんだー……」
曜「それと、そこまで優秀な人はって感じかな」
善子「そりゃ、私ほどの逸材はゴロゴロ落ちてないわ」
曜「どこから出てきたのさ……、でも確かに善子ちゃんみたいな手練れはいないね」
善子「そ、そ、そうなのね」
千歌「褒められて動揺してる……」
曜「松原君、尾形君あたりは真面目だし、しっかりしてるけどね」
千歌「うーん、まあ後は稽古で能力向上!」
善子「ちなみに、その稽古で新人隊士はぶっ倒れてるわよ」
千歌「え゛っ!?」 *****
***
*
ダイヤ「情けないですわよ!ほら立って!」
梨子「これじゃ、稽古にならないよ……」
梨子とダイヤ以外ほとんどの隊士が呻きながら倒れている
果南「ああー……派手にやったねー……」
ダイヤ「これでは長州の不逞浪士に斬られてしまいますわよ!」
梨子「斬られても必ず相手を斬ること、それが天然理心流だよ」
千歌「う、うわぁ……」
善子「ね?ぶっ倒れてるでしょ?」
千歌「流石にやりすぎだよ、止めないと……」
曜「いいの、あの二人は厳しくするように言ったんだよ」
千歌「でも、あれじゃやめちゃう人が……」 曜「脱走は切腹」
千歌「……曜ちゃん、あれはあの時だけの……」
曜「厳しくしないとまた中で崩壊するよ、穂乃果さんの法度に反したら切腹、これは引き継ぐべきだよ」
千歌「……うん」
曜「それに入隊の時に法度については説明した、嫌ならその時点で帰るようにも言ってある」
千歌「わかってるよ、その辺りは曜ちゃんと聖良さんに任せてるし……」
曜「なら、わかるでしょ?」
千歌「う、うん……」
聖良「お話中、すみません、……早速脱走者が」
曜「……まったく」
聖良「理亞とルビィさんに追わせています」
曜「うん、わかった」 *****
***
*
ルビィ「理亞ちゃん、急がないと逃げた人見失うよ?」
理亞「いいのよ、見失うの前提で私たちは頼まれてるんだから」
ルビィ「え、え?」
理亞「誰だって切腹させたいわけじゃないでしょ、ただ規律が乱れることはまずいけど」
ルビィ「見失ったってことにすればとりあえず良いってこと?」
理亞「そういうこと、全部切腹させてたらキリがないもの」
ルビィ「そ、そっか……」
理亞「まあ、もちろん、見過ごせるのと、見過ごせないのがあるんだとは思うけど……」
ルビィ「見過ごせない……」
理亞「その辺は、副長さんが上手く捌くんだと思うけど、っと、見失うより良い言い訳を見つけたわ」
ルビィ「え?あ……」
理亞が立ち止まった方向を見ると明らかに周囲を警戒している不逞浪士らしき人物がいる
ルビィ「……あの顔、確か……」
理亞「とりあえず捕まえるわよ!」
理亞は意気揚々と突っ込んでいく
ルビィ「え、えええ、危ないよー!!」 *****
***
*
理亞「というわけで、捜索中に手配されてた不逞浪士らしき人物を発見、捕縛を優先したので脱走した隊士は見失った」
曜「そっか、仕方ないね」
理亞が淡々と報告をすると曜も追求することなく頷く
「い、嫌だー!許して!!助けて!!」
部屋の外から叫び声が聞こえる
理亞「あれ、は……?」
曜「……逃げるにも怖気付いて戻ってきたんだよ」
理亞「は、はあ!?」
曜「……法度に従い切腹」
理亞(何してんのよ、馬鹿じゃないの……)
「む、無理です、無理っ……!嫌だっ、嫌だ!!」
曜と理亞は外から聞こえてくる声を苦々しい表情で聞いている
「助けて!嫌だ!!嫌っ……」
突然声は聞こえなくなり、何か重いものが落ちた音する しばらくして、障子が開かれると返り血を浴びた善子が顔を覗かせる
善子「ちょっと、これ介錯というより斬首なんだけど……」
曜「ごめんね、無理させた分は払うからさ」
善子「まったく……」
曜「……千歌ちゃんは?」
善子「真っ青な顔で固まってるわよ、一見難しそうに考え込んでるようにも見えるけど」
曜「わかった、ありがとう」
理亞「……はあ、気分転換に見回りしてくる」
曜「私もたまには外でも出ようかな……」
理亞「それなら梨子でも連れて町でも行ったら?非番なんでしょ?最近稽古ばかりだし」
曜「んー……そう、だね」 曜と梨子は京の町を二人で歩いている
梨子「曜ちゃんの出かけるって久しぶりだね」
曜「そうだったかな」
梨子「うん、最近難しそうな顔ばかりしてたから」
曜「気を遣われたのは私の方かな……」
梨子「え?」
曜「なんでもないよ」
梨子「ねえ、曜ちゃん、……色々と隠し事してる?」
曜「してても、してるとは言わないでしょ」
梨子「……してないって言えば私は信じるよ、千歌ちゃんと曜ちゃんのことは全部信じる」
曜「……してないよ」
梨子「うん」 曜と梨子が話しながら歩いていると突然梨子が立ち止まる
梨子「……」
曜「どうしたの?」
梨子「……なんだか、強い人の気配……」
曜「……?」
侑「いやー、こんな良いものもらって良いのかなー」
愛「もちろん、似合うよ、きっと!」
曜「あ!」
侑「ん?あ!いつぞやの!」
愛「ん?ゆうゆの知り合い?」
侑「前にね、黒船見てた時に出会ったの」
曜「坂本龍馬さんだったよね、まさか京で会うなんて」
侑「びっくりだね、えーっと」
曜「あ、名乗ってなかったっけ、土方歳三だよ」
愛(ん?土方……、歳三……?)
梨子(坂本龍馬……?) 侑「偶然だね、少し話さない?あ、こちらは高杉……」
愛「愛さんでいいよ、よろしく!」
曜「あ、こっちは」
梨子「曜ちゃんの友人の梨子です」
四人は微妙な距離感を保ちながら店へと入る
曜「それで、龍馬さんはなんで京に?」
侑「色々とね、今度大きなことも任されそうだし、毎日がときめいてるんだよ!」
愛「そっちの二人は?京にはなんで?」
曜「私たちは」
梨子「仕事、ですね」
侑「まあお互い言いたくないこともあるだろうしさ、それよりほら、これ見てよ」
侑は懐に手を入れると短銃を取り出して見せる
愛「っと、それ出しちゃう?」 侑「さっき愛ちゃんにもらったんだー」
梨子「それは何……?」
曜「……もしかして、鉄砲なの!?」
侑「そうだよ、西洋の最新式、ピストールって言うんだよ」
曜「こんな小さいのが銃……、こんなのどうやって……」
愛「んー……、上海でちょっと手に入れてね……」
梨子「シャンハイ?」
侑「清国の地名だよ」
曜「すごい……」
侑「これからは刀の時代じゃなくて、銃の時代になると思うんだよ」
梨子「か、刀はなくなりません、鉄砲なんて弾込めとか、距離を詰められたりしたら……」
侑が梨子に銃をさっと向ける
梨子「え」
侑「この瞬間、撃たれて終わりだよ?」 梨子「な……っ!」
侑「もちろん刀の利点もある、でもこれから確実に銃はどんどん改良されて主流になる」
梨子「そんな……」
曜「……確かに」
梨子「曜ちゃん?」
曜「でも乱戦になれば、同士討ちの可能性もある……、距離を詰められたら……、いや、距離を詰められないほどに無駄なく撃っていければ……」
曜は周りを気にせずにブツブツと呟いている
曜「そうなると、訓練で必要なのは全員が同じ動きを出来るような……、あ、ごめん」
侑「ううん、なかなか面白そうな話だったよ、これから西洋のものが次々に入ってくると思う、それに対応しないといけなくなるよ」
愛「脅威なんだよね、それが、なんとかしないとこの国も西洋にやられちゃう、その前になんとかしないと」
曜「んー、攘夷ってやつだよね」
侑「私はその辺りちょっとあれなんだけどねー」
梨子「私はよくわからないや……」
愛「今の幕府じゃ、あっという間に、バーンってやられちゃうよ」
侑「確かに今の幕府のやり方は長くは続かないのかもね」
梨子「え、え……?」
曜「んー、そっかー」 愛「……あれ?あんまり動揺してないね?」
曜「私は、幕府とか徳川とか、別に忠義があるわけでもないからなー」
梨子「あの、幕府がなくなるってこと……?」
侑「んー、そこはねー、でも上に立つ人を決めるのは変わるかもよ、西洋ではみんなで上に立つ人を決めるんだから」
梨子「みんなで……?」
侑「一人が一つずつ札を入れて、上に立って欲しい人に入れるんだよ、それで決めるの」
梨子「……?」
曜「それは、家柄や身分は関係ないのかな……」
侑「そういうのを重視してしまうこともあるけど、うん、誰でも将軍になれる時代が来るかもしれない」
梨子「しょ、将軍……!?」
曜「……それはいいね!楽しそう!」
侑「でしょ!ときめくよねー!」
愛「楽しそうか、いいねー!変わることにもそんなに動揺してないし!」
曜「だってさ、変わるっていうなら変わるんだし、あとは……」
侑「あとは?」
曜「大事なの変わるのが私が納得できるものか、どうかってことかな」
愛「……」 侑「なるほどなるほど、ね、それじゃ、西洋のものが色々入ってくるのはどう思う?」
曜「んー、苦手な人はいるんだろうけど、私は……」
曜「利用できるものは利用して私のものにしたいかな」
愛「……!」
侑「いいね!それ!」
曜「使えるものなら使いたい、そうじゃないと戦えないもんね」
愛「……面白い!貪欲に吸収しちゃうわけだ!」
曜「うん、ちょっと勉強したけど西洋の軍隊の指揮系統、あれはすごいよく出来てる、指揮系統を一本化するのはすごいいい」
せつ菜「愛さんも同じ考えだよ、西洋みたいに武士だけじゃなくて実力あれば農民でもなんでも部隊に入れるのとかどうかなって」
曜「おお!それいいね!」
せつ菜「どんな身分でも才能のある人は幅広く登用すれば良いんだよ、東洋なんだからさ!日本は!」
曜「そう!それいい!」
梨子「なんか意気投合してる……」 侑「私はさ、そうやって、この国は一度変わらないといけないと思ってるんだ、あり方、考え方、色々とね」
愛「……」
侑「そのためには何が出来るのか、どういう方法が良いのか、それを考えてる」
曜「……なるほどね」
侑「ね、良かったら変えるために手伝ってくれないかな、曜さんの考え方ならきっと」
愛「ゆうゆ、それは……」
曜「私はさ、多分、その中で変わらないもの、変えちゃいけないもののために動いてるんだよね」
侑「……」
曜「それにそういう難しいのは私は向いてないよ」
曜は言いながら席を立ち、梨子も後に続く
曜「ありがとう、楽しかったよ」
侑「うん、こちらこそ」 梨子「曜ちゃん、あの……」
曜「今日は仕事する気分じゃなかったからさ、もう会わないといいね」
曜の言葉に梨子の足が止まる
梨子「……曜ちゃん、まさか気づいてたの」
曜「まあ一応ね、土佐の坂本龍馬、そして、あれが長州の高杉晋作かー……」
曜「なるほどね、単なる不逞浪士とは全然違うや……」
曜と梨子の背中が遠くなり、愛が口を開く
愛「なるほど、あれが新選組か」
侑「いやー、びっくりだね、まさかこんな形で会うとは」
愛「……ちょっと幕府の犬には惜しいんじゃないかな、特に曜は」
侑「だからこそ、幕府をただ潰すべきじゃないとは思うんだよ」
愛「潰した後にまた生まれ変わるならそれもよし、ただ一度壊すべきだよ、その方が面白い!」
侑「壊した後のこと考えてないよね?」
愛「それはその時考えようよ、まずは革命だよ、革命、その後はさ、ゆうゆと愛さんなら上手くやれるんじゃないかな」
侑「もう……、一応頭には入れておくね」
愛「さて、そろそろ愛さんは動くかな」
侑「何かあるの?」
愛「ちょっとね暴走しそうな優秀の子がいるからさ、……止めないと」 聖良「土佐の坂本に、長州の高杉……ですか……?」
鞠莉「だれ?」
果南「それぞれ攘夷派の大物だよ、土佐勤王党だったっけ?」
花丸「坂本は土佐勤王党からはとっくに抜けてるずら、そもそも幕府の仕事もしてて、なんだかわからない人だよ」
ダイヤ「それでも長州の高杉が完全に攘夷過激派ではないですか!」
曜「いや、まあそう言う話なんだけど、なんか違うような気がして」
ダイヤ「そこで捕らえていれば……」
梨子「あの二人、相当な腕だよ、お互い斬る気だったらどうなってたか……」
聖良「過ぎたことは仕方ありませんね、わかったことは長州の大物ですら京に潜伏しているということです」
善子「仕方ないんじゃない、うちに間者もいるくらいだし」
曜「間者……?」
聖良「……ええ、先日の隊士募集の際に紛れ込んでましたよ」
曜「まったく……、それで斬ったんだよね?」
善子「斬ったわよ、大したことなかったわ」
梨子「それ、私知らないよ……?」 ダイヤ「……長州の動きがやはり気になりますわね」
聖良「そんなに大掛かりなことは出来ないとは思いますが、藩内でも揉めているようですし」
曜「……花丸ちゃんとルビィちゃんで徹底的に怪しいところを調べさせる、他の監察方も二人が指示して動かして」
花丸「了解ずら」
聖良「しかし、曜さんの話から倒幕に向けて動いてるのは明らかみたいですね」
ダイヤ「随分と大胆な話ですわね」
鞠莉「長州だけじゃ無理でしょ?数が違うもの」
曜「どうなんだろう、もし西洋の最新の武器とかがあって、もう一つ強力な藩が動いたら……」
千歌「……」
曜「どうしたの、千歌ちゃん」
千歌「刀、武士、いらなくなるの……?」
曜「……」 *****
***
*
京のとある料亭
しずく「結局、あなたまで京に来ちゃったんですね、せつ菜さん……」
せつ菜「当たり前です!こんな時にじっとはしてられませんよ!」
栞子「一応、私も璃奈さんも止めたんですが……」
愛「まあせっつーを止められるのは愛さんくらいでしょ」
しずく「……それで、本当にやる気なんですか?」
せつ菜「もちろんです、御所に火を放ち、帝を奪い去ります!」
栞子「……そんな畏れ多いことを……」
せつ菜「そして、同時に各地で火の手をあげます!各藩も一斉に挙兵!そして……」」
せつ菜「新しい国を作ります!!」
しずく「……成功すると思いますか?そんな大掛かりな……」
せつ菜「させるのです!必ず!」
栞子「失敗すれば、それこそ完全に悪になりかねないのでは……」
せつ菜「私は悪党だろうが、なんと呼ばれても構いません」
せつ菜「すべてはこの次の世代に託せる国を作る、それだけでいいんですよ!」 しずく「松陰先生のようなことを……」
栞子「ダメですよ、せつ菜さんはその後も国を動かす、その適性があるのですから」
せつ菜「それではこの計画を……!」
愛「ダメだよ、愛さん、それは黙って見てられないな」
せつ菜「……なぜですか」
愛「今の京で秘密裏に計画を成功させる、そのために障害があるからだよ」
せつ菜「……新選組、ですか」
栞子「新選組……、それほどの脅威でしょうか」
愛「それはさ、しずくがよくわかってるでしょ」
しずく「……単なる浪人集団、最初はそうでした、しかし、穂乃果ちゃ……、いえ、芹沢鴨が変えてしまった」
しずく「本物の武士の集団に」
せつ菜「なるほど、潜入してたしずくさんが言うならそうなのでしょうね」
しずく「あの人は自分が斬られることで新選組を本物にしようとした、すべて会津と繋がった上での計画」
しずく「その前に見限ると思ったのですが、予想以上でした……」
愛「愛さんもさ、副長さんに会ったよ」
栞子「いつの間に……」
愛「あの子は危険だよ、一筋縄じゃいかない」 せつ菜「そうですか、それでも……この国を変えることが出来るなら私は動きます!!」
しずく「せつ菜さん……」
栞子「こうなると、困りましたね……」
愛「……仕方ないなあ」
せつ菜「愛さん?」
愛「私がなんとか藩を動かしてみるよ、どっちにしろ数が足りなすぎるでしょ」
せつ菜「……それでは……!」
愛「ただし、愛さんが戻るまで計画は実行しないこと、しずく、しおってぃー、しっかり押さえつけておいてよ?」
しずく「わかりました」
栞子「はい!」
愛「せっつー」
せつ菜「はい?」
愛「私が作りたい面白い国にはさ、せっつーが必要なんだからね、忘れないでよ」
せつ菜「はい!!」 不穏な空気を感じる中、新選組は長州の動きを探るために動く
鞠莉「ダメ、全然いないわよ」
ダイヤ「こちらも情報は何も」
見回りから帰り曜に報告をするダイヤと鞠莉
曜「まあそんな簡単に見つからないよね、そりゃ」
聖良「あまり時間はかけられませんが……」
曜「花丸ちゃんとルビィちゃんを信用するしかないかな」
鞠莉「さっき見回りの時に花丸を見かけたけど、じっと店で座って本を読んでたわよ?」
曜「それでいいんだよ、それで」 *****
***
*
花丸「……」
花丸の視線の先の商家に荷物を運び込む業者が出入りしている
花丸(今日はこれで3回目、昨日も4回、一昨日も……)
花丸(人の出入りが激しいわけじゃないのに、仕入れが多い……)
「ん……?」
花丸はこちらに視線を向けられると自然と本に視線を落として誤魔化している
花丸「……」
花丸は離れたところで控えているルビィに指で合図を出す
ルビィ「……」
ルビィは黙って頷くと商家を離れる業者らしき人物の後を追い始める
花丸(歩き方がやっぱり商人じゃないずら……、入った人数と出てくる人数も違う……)
花丸(桝屋……、多分当たりずらね) しばらくするとルビィが戻り花丸と背中合わせになるように店に座る
ルビィ「すみませーん、お団子くださいー」
ルビィが大きな声で注文をすると花丸が本を読みながら声をかける
花丸「どうだった?」
ルビィ「……当たりかな、警戒してたから途中で追うのやめたけど」
ルビィ「途中で人と会ってたけど、多分、訛りから肥後……」
「はい、お団子だよ」
ルビィ「わーい、それじゃしばらくゆっくりしようかなー」
ルビィがそう言うと花丸は立ち上がって店を後にする
花丸(……んー、踏み込むなら今かな) 花丸は周辺に待機している数名の隊士と合流する
花丸「多分、当たりずら、行くなら今」
*****
***
*
花丸と数名の隊士は桝屋へと向かい途中でルビィと合流する
ルビィ「今ならいける、桝屋の主人も中にいるよ」
花丸「それじゃ、ルビィちゃん、頼んだずら」
花丸はルビィの刀と羽織を手渡す
ルビィ「うん!」
隊服を羽織り刀を手にしてルビィが気合を入れて桝屋へと隊士達と乗り込む
ルビィ「新選組です!えーっと……」
花丸「中を調べるずら!」
花丸の声で隊士達は一斉に桝屋へと入り店の中を調べ始める
ルビィ「ルビィが言いたかったのに……」 新選組は桝屋の奥へと向かい次々に部屋を開けていく
「いました!桝屋の主人です!」
その声にルビィと花丸が反応して声がした方へと向かう
花丸「間違いないずら、桝屋喜右衛門」
ルビィ「捕まえてください、殺しちゃダメだよ?」
ルビィが隊士に指示をして抵抗しない桝屋を捕まえる
花丸「……となると、この部屋が怪しいずらね」
ルビィ「うん、これで何も見つからないと私たち強盗か何かだよ……」 二人は部屋の中を調べ始める
ルビィ「んー……、特には何も……」
花丸「……」
花丸は部屋の壁を触りながら首を傾げる
花丸「この部屋って確か一番隅だったよね?」
ルビィ「うん」
花丸「それにしては廊下、おかしくなかった?」
ルビィが部屋を出て廊下を覗くと今いる部屋の奥に明らかにもう一つ部屋があるほどの余裕がある
ルビィ「……」
コンコンと壁を叩いていくルビィ
ルビィ「……ここ、音が変だよ」 花丸「隠し部屋かもしれないずら、今桝屋を……」
ルビィ「あれ持ってきてください、……うゅ!!」
ルビィは花丸の言葉を待たずに隊士に大槌を持ってこさせると、それを使い無理やり薄い壁を壊し始める
ルビィ「うゅ!うゅ!!」
花丸「……ル、ルビィちゃんっ、店ごと壊れるずらー!」
店中が揺れる中、壁を壊したルビィは中を覗く
ルビィ「……花丸ちゃん!これ!!」
花丸「……戦でもする気ずらか、この武器の数、しかも火薬も……」
ルビィと花丸は大量の刀や槍、銃が置かれた隠し部屋の中に入り、中を調べていく
花丸「これだけでも言い逃れは……、あった」
花丸は部屋の中から帳簿らしきものを見つける
ルビィ「それは?」
花丸「攘夷派の浪士の名前が書かれてるずら」
ルビィ「じゃあ」
花丸「武器押収と桝屋喜右衛門を屯所へ運ばないと……、誰か屯所に行って応援の人を頼んでください」 *****
***
*
曜「お手柄だね、二人とも」
花丸「それほどでもないずらー」
ルビィ「えへへ」
千歌「戦でもする気なのかな、こんなに武器を……」
聖良「ごほごほっ……、桝屋は何か話しましたか?」
果南「ダメ、うちの隊で口を割らせようとしているけど、何も答えない」
善子「じっくりやるしかないのかしらねー」
曜(武器はともかく、この火薬の量……もしかしたら何かすごい計画を……)
曜「ゆっくりやっていたら奉行所に渡さないといけなくなる……」
曜「なんとしてでも口を割らせないと……」
ダイヤ「それは難しいのでは……」
曜「今のうちに監察方を中心に攘夷浪士がいそうな場所を探しておいてね、果南ちゃん、桝屋を土蔵に」
千歌「曜ちゃん……?」
曜「この機会を逃すもんか……」 曜は土蔵に向かうと吊るされている桝屋を見上げる
曜「……」
千歌「曜ちゃん……」
千歌も後から追いかけて土蔵に入る
曜「千歌ちゃんは来なくてもいいのに」
千歌「ダメだよ、そんなの」
曜「……嫌だなー、千歌ちゃんに見られるのは……」
千歌「ねえ、何も食べてないんでしょ?自白してくれたら、えーっと、ミカン、ミカンをあげるよー?」
吊るされている桝屋は千歌の言葉を無視する
曜「多分、単なる商人じゃないからそれじゃ無理だよ」 曜は吊るしている縄を思い切り引く
「ぐ……っ」
曜「口を割る気ないのかな」
「何も知らない……」
曜「……一度降ろしてから、逆さに吊るして」
千歌「よ、曜ちゃん……?」
曜が隊士に指示をすると隊士が桝屋を逆さ吊りにする
「う……っ」
苦しむ桝屋を見ながら曜は上にあがる
千歌「曜ちゃん何を……」
曜「……海未さん、これが私の覚悟だよ」
曜は五寸釘を金槌を手に取り桝屋の足の裏に打ちつけ始める
「ぎゃあああ!!〜〜っ!!!」
千歌「ひっ……、っ、く……」
曜「はあはあ……こっちも……」 「があああああ!!!」」
ダイヤ「声が、微かに聞こえてきますわね……」
理亞「どんな拷問してんのよ……」
善子「チラッと見てきたけど、まさに煉獄の鬼のような拷問ね」
聖良「足の裏に五寸釘を打ち付け、そこに蝋燭を立てて火をつけてました……」
鞠莉「すごい光景ね、私も見てこようかな?」
ダイヤ「鞠莉さん、悪趣味ですわ」
理亞「身内も斬って、敵には非道な拷問、曜は本当に人の心でも失くしたんじゃないの?」
果南「ちょっ……」
梨子「取り消して」
梨子は理亞を睨みつける
理亞「な、何よ……」
梨子「今度曜ちゃんをそんなふうに言ったら、許さない……」
理亞「……わかったわ」 *****
***
*
千歌「曜ちゃん……、も、もうやめて……っ」
曜「早く言わないと、ずっとこのままだよ」
曜は苦しむ桝屋に表情を変えることなく問いただす
「助けて……、こ、これじゃ……は、話せない……」
曜「喋れてるでしょ?」
「は、話すから、話すからっ……!!」
千歌「曜ちゃんっ、降ろそうよ……、も、もうっ……」
曜「ダメだよ、嘘をつくかも」
「つかないっ、つかないからっ、熱い痛い……苦しい……」
曜「……それじゃ、一つだけ、名前は」
「古高……俊太郎……」
曜はそれを聞くと隊士に指示を出して古高を床に下ろす
曜「全部話したら、釘も外してあげるよ」
古高は苦しみながら計画を自白していく 曜「……御所に火をつけて、天子様を攫う……?」
千歌「そんな……」
曜「……確かに新しく国を作るためならそれはわかるけど」
曜「そんな大掛かりな計画を……」
千歌「……ないでよ……」
曜「千歌ちゃん?」
千歌「倒幕とか、攘夷とかどうでもいいよ!火をつけるなんて、京に住んでる人たちはどうなるのさ!」
千歌は古高の首を力任せに掴み顔を向けさせる
千歌「そんなことしたら関係ない人たちがどれだけ死んじゃうか、考えてないの!?」
曜「千歌ちゃん、もうその人に喋る気力はないよ」
千歌「……曜ちゃん、止めるよ」
曜「もちろんだよ」
千歌「長州がそこまでするなら、こっちも徹底的にやる……」 *****
***
*
聖良「それでは……ゴホッ……古高の話では計画に向けての会合が開かれるはずです、そこを……ゴホッ……」
曜「聖良さん、無理しないで」
聖良「すみません、こんな時に風邪なんて……」
果南「仕方ないよ、なんか流行ってるみたいだし、私もちょっと咳出てるしさ」
曜「会津にも話してるから増援は来るはずだけど、先に動く」
ルビィ「ある程度は絞ったけど、どこで会合があるかまでは……、花丸ちゃんはまだ潜入中」
曜「可能性ある場所は全部探るしかないか……」
千歌「曜ちゃん、聖良さんは出れないんだから、私も行くよ」
曜「……わかったよ、それじゃ、千歌ちゃん、梨子ちゃん、ダイヤさん、それに理亞ちゃんで」
鞠莉「随分手練れだらけね」
善子「私がいる方が実質主力だから関係ないわ」 曜「その代わり、千歌ちゃんの方は平隊士はあまりつけない、逆に私たちは隊士を多くつける」
ダイヤ「わかりましたわ、梨子さん、頑張りましょう」
理亞「私もいるんだけど?」
梨子「うん、ケホッ……っ、頑張るよ」
ダイヤ「梨子さんも風邪ですか?」
梨子「う、ううん、ちょっと咳が……」
善子「本当流行ってるわね、風邪」
曜「果南ちゃんは、何人か隊士を連れてちょうど中間あたりで探って」
果南「何かあったらどっちの加勢も出来るようにだね」
曜「そういうこと」
千歌「それじゃ、皆、行くよ!」 このせつ菜からいやいやいや待った待った待ったstopstopstop
される爺ぃって誰やるんだよ その頃、旅籠の池田屋では古高が捕まったことによる計画の遂行に関して話し合いが行われていた
「まずは助け出してから、実行するべきだ」
「このまま待たずに実行するべきだ」
しずく(中止という考えになる人はいませんね……、全く……)
栞子「遅くなりました、せつ菜さんはまだこちらには来れないようで……」
美咲「それじゃあ、あなたが代わりということでいいのね?」
栞子「私に適正があるかわかりませんが、そのつもりで問題ありません、宮部先生」
美咲「肥後藩はこのまま実行すれば長州に加勢できる、このまま進むべきだと考えてるわ」
しずく「先ほども言いましたが、新選組を甘く見過ぎです、計画がバレている可能性もあるなら考え直すべきです」
美咲「逃げの小五郎さんは、気持ちでも逃げてるみたいね」
しずく「……」 美咲「久坂さんは、何か言ってるの?」」
栞子「あの人は……、ただ信じて待っていると」
美咲「それは高杉先生のことですか、あの人は藩内で捕まったとか」
しずく「ええ、謹慎中です」
美咲「私たちには発案した、久坂さんがいれば十分、このまま突き進むべきです!」
「そうだ!」
しずく(私では止められないか……、愛さん、せつ菜さん、やはりお二人がいないと……)
花丸「……当たりずら」
襖の裏で話を聞いた花丸が裏口から池田屋を抜け出す *****
***
*
ダイヤ「こちらが当たりましたか」
花丸「数は二十、三十ほど、肥後の宮部、それに長州の桂も」
理亞「大物揃ってるじゃない」
梨子「千歌ちゃん、どうする?」
千歌「私たちでやるよ、花丸ちゃんはまず果南ちゃんを探して応援に、その後は果南ちゃんの指示に従って」
花丸「了解ずら」
千歌の指示に花丸が走り去る
ダイヤ「この人数であれば、中に踏み込むのは……」
千歌「入るのは私とダイヤさん、梨子ちゃん、理亞ちゃんで行く」
ダイヤ「千歌さんは外で待つべきでは、危険ですわ」
千歌「人手が足りないよ、大丈夫足手纏いにならないからさ」
ダイヤ(そういう意味ではないのですが……、曜さんに後で怒られそうですわ……)
理亞「残りは外を囲んで、裏口も」
理亞が他の隊士に指示を出して動き始める
梨子「……」
理亞「大丈夫?」
梨子「う、うん、やっぱりちょっと風邪気味みたいだけど、大丈夫」
千歌「行くよ」 千歌たちは刀を抜いて池田屋へと踏み込む
千歌「ごめんください」
「はい、いらっしゃ……ひっ!?」
千歌「ふー……、新選組です!これより御用改めです!」
千歌「抵抗する者、逃げる者は容赦なく斬る!全員、壁に手をついて立膝で待つこと!!」
千歌「沖田君、永倉君たちで二階を!残りは私たちで一階を!!全員逃さない!!」
千歌の号令に梨子たちが動き出す 栞子「新選組……!?」
しずく「……」
美咲「まさか気付かれるとは……」
栞子「全員、一斉に裏から逃げてください!一点突破で脱出を!!」
栞子はすぐにその場にいる者たちへ指示を出す
栞子(なんとか一人でも多く逃さないと……) 梨子とダイヤが池田屋の二階へと階段を使って登っていく
「新選組覚悟ぉ!!」
梨子「……」
梨子は登り切ったところで襲いかかる浪士をすれ違い様に斬り伏せる
「が……」
斬られた浪士は階段を転がり落ちていく
ダイヤ(ますます速くなってますわね……)
梨子「奥でしょうか……」
ダイヤ「大抵、悪いことをするときは奥の部屋と相場は決まってますわ」
「くそっ、もう二階に」
梨子「……斬ります」
梨子は踏み込むと高速で三度相手を突き刺す
ダイヤ「……速い」
ダイヤは梨子の剣速に見惚れながら自身に襲いかかる者を一振りで斬り伏せる 梨子「……なんだか、ことりさんの気配がします」
ダイヤ「え?」
梨子「……多分いる」
ダイヤ「なぜ、あの人が……」
梨子「……ダイヤさんは、ケホっ、一階をこちらは大丈夫です」
ダイヤ「しかし……」
梨子「足音から別の階段でかなりの数が一階に降りてる……、お願いします」
ダイヤ「わかりましたわ」
ダイヤは梨子に従い一階へと戻っていく
梨子「……」 しずく「……ふふ、梨子ちゃん、それにダイヤちゃんもいるなー……」
栞子「しずくさん?」
しずく「失礼しました、少し懐かしい感じがして、つい……、こうなったら仕方ありませんね、私も」
栞子「らしくないことを言わないでください、逃げますよ」
しずく「ここで逃げるなんて……」
美咲「桂さん、これは新選組を甘く見てた私たちの落ち度です、あなたをこんなところで散らせるわけにはいきません」
しずく「しかし……!」
栞子「さ、行きますよ、長州藩邸は近いですから」
栞子はしずくの手を引き部屋から出ていく
美咲「……さて、私は少しでも時間を」 一階では千歌と理亞が死闘を繰り広げていた
千歌「たりゃ!!っ……、このっ!!」
千歌は一階に降り襲ってきた浪士の腕を斬り落とす
千歌「……大人しくしてくれないかな、斬られるだけだよ?」
「新選組の近藤だ……ここでっ!」
理亞「実力差も分からないなんて、残念すぎ」
理亞が千歌の背後を狙う敵を斬るとそのまま裏手へと向かう
理亞「私は裏に、かなり逃げようとしている」
千歌「うん、こっちは問題ないよ」
理亞はその言葉を聞き裏口から逃げようとする者を斬っていく 理亞「逃げるな!」
「ぐわあっ!」
理亞「まったく……」
理亞が息をつき、ずれた鉢金を結び直そうとした時
理亞「えっ、……きゃああ、くっ!」
一人が理亞に飛びかかり刀は理亞の額に傷をつける
理亞「っ、やられた……」
「止めだ!!っ……え……」
理亞にとどめを刺そうと刀を振り上げた男は両腕をなくしていた
ダイヤ「大丈夫ですか!理亞さん!!」
理亞「ごめん……、斬られた」
ダイヤ「……そこまでの深手ではないです、とにかくそこに、くっ!!」
ダイヤ(そろそろ増援が来てもいいですわよ……) 千歌(みんなは大丈夫かな……)
千歌(今どれくらい斬った……?)
千歌は囲まれながら状況を把握しようとする
千歌(……少し深手を負うくらいなら上出来、最悪でも相討ちには出来るはず)
千歌が覚悟を決めて刀を振りかざした時
果南「増援部隊、局長を守れ!!」
果南の声が響き新選組の隊士が次々入ってくる
千歌「果南ちゃん……、二階を!!」
果南「……承知したよ」
果南は千歌の簡単な指示を聞いて二階へと駆け上がっていく
千歌(これで梨子ちゃんは大丈夫……) *****
***
*
曜「池田屋!?」
曜は伝令の隊士の報告を聞き数秒頭を抱え、すぐに顔を上げる
曜「数名は警戒しつつ池田屋へ、残りは急いで私に続いて!」
善子「勘が外れたわね」
鞠莉「曜は博打はしないほうがいいかもね」
曜「うるさいなー……」
善子「まあ大丈夫でしょ、果南も先に向かってるだろうし」
曜「そりゃ、そうだけど何人か逃してるかもなー……」
鞠莉「どうする?このまま全員正面にでもいく?」
曜「……鞠莉ちゃんはそのまま裏手、長州藩邸近くまで行って」
鞠莉「そう来ないとっ!」
鞠莉は隊列を離れて裏道へと駆け出す
曜「善子ちゃんは突入後に中を抜けて裏手に」
善子「二階は?」
曜「千歌ちゃんのことだから、果南ちゃんを二階に向かわせてるはず、私は正面に」
善子「わかったわ」 *****
***
*
しずく「なんとか抜け出せましたね……」
栞子「流石の逃げ足です」
しずく「褒められた気がしません……」
栞子「さて……」
栞子は槍を持ち池田屋の方向へと戻ろうとする
しずく「栞子さん?どうしたんですか、こっちに」
栞子「まだ何人か同志を助けられるかも」
しずく「ダメですっ!今いけば増援の会津藩や新選組に!」
栞子「……それでも少しでも助けられるなら……」
しずく「っ、命令ですっ、戻りなさい……!」
栞子「……愛さんとせつ菜さん、二人に私は任されてるんです、この計画を少しでも成功に」
しずく「次の世にあなたの力は必要です、だからっ」
栞子「すみません、私、融通がきかなくて……、行きますっ!」
栞子はしずくの静止を振り切り池田屋へ向かって駆けて行く 果南は池田屋の二階へ駆け上がると息を切らせている梨子を見つける
果南「梨子っ、大丈夫!?」
梨子「やっぱり、風邪みたい……はあはあ……」
果南(というかこの数を一人で斬ったの……?)
梨子の周りには斬られて絶命している者、息はあるも動けない者が複数倒れている
梨子「奥に……」
果南「わかってる」
梨子と果南は奥の部屋へと向かう
美咲「……来ましたか」
果南「……その顔、肥後藩の宮部だね」
美咲「……新選組、沖田総司ですか」
梨子「……」
美咲「残念ですが、あなたたちのような幕府の犬に私は斬らせませんっ」
美咲は手にしていた太刀を捨てて脇差を素早く自身の腹に突き刺す
果南「……計画もここまでだね」
美咲「どうでしょうか、あの人の熱を甘くみない方がいいですよっ……ぐ……」
美咲はそのまま床に倒れ込む
果南「梨子、行こう」
梨子「はい……っ」
咳き込みながら二人は部屋を後にする 栞子「ふーっ……ふーっ……」
栞子は池田屋へと向かう途中に出会った会津兵を槍で貫いている
栞子「流石会津……ですね」
そのまま槍を引き抜き目的地へ進もうとする
栞子「……また、化物みたいな方が……」
鞠莉「あら、失礼じゃない?」
鞠莉は栞子の足元に倒れる亡骸を見る
鞠莉「その人、会津の人よね?」
栞子「そうですね」
鞠莉「なら……、あなたは敵ね」
鞠莉が持っていた槍を躊躇なく構える
栞子「通してもらえませんか、同志を助けないといけないので」
鞠莉「それは無理じゃない?あなたを通したら私の仲間がやられそうだもの」 お互い槍を構えてジリジリと間合いを詰める
鞠莉「せやっ!」
鞠莉の突きを栞子が槍で弾き、すぐに槍先を鞠莉へと伸ばす
栞子「っ」
栞子が何かに気付き槍を引っ込めて後ろへと飛ぶ
先ほどまで栞子がいた場所に振り降ろされた鞠莉の槍が突き刺さる
鞠莉「惜しいっ……」
栞子「いきなり相討ち狙いですか」
鞠莉「そうでもしないと、あなたは倒せそうもないもの」
栞子(話の通り、だいぶ壊れてますね新選組……)
栞子「はっ!」
鞠莉「こ、のっ!!」
お互いの槍がぶつかり金属音が響く
鞠莉「ふふ、最高ねっ……!」
栞子「何を笑って……」
鞠莉「久しぶりに死ぬかもしれない相手とやり合えてるんだもの、こんなに輝ける瞬間なかなか来ないわよ?」
鞠莉「西洋の言葉を使うならー……、エキサイティングね」
栞子「……殺し合いを楽しむなんて理解できませんっ」 お互いが決め手をかけ、しばらく膠着する
栞子(この人をここで止めることが、少しでも意味があれば……)
鞠莉「考え事しちゃダメじゃないっ!」
鞠莉は一瞬の隙を逃さず槍を持ち変え思い切り栞子に向けて槍を投げる
栞子「なっ!?」
栞子(槍を投げるっ!?一体何をっ)
栞子は投げつけられた槍を避けて向き直そうとするもその瞬間腹部の痛みに気付く
栞子「え……」
鞠莉「残念っ……」
栞子が視線を落とすと鞠莉が刀で栞子を突き刺している
栞子「そんな、滅茶苦茶な槍の使い方を……」
鞠莉「副長さんに似ちゃったのよ、なりふり構わず勝てってね」
栞子「っ……」
鞠莉「……新選組、原田左之助よ、名乗りなさい」
栞子「長州藩……っ、吉田松陰門下……吉田稔麿っ」
鞠莉「一生忘れないであげるわ」
鞠莉は刀を抜くとそのまま上から振り下ろしてとどめを刺す
栞子(せつ菜さん……、私も一緒に最後まであなたと……)
栞子は地面へと倒れ息耐える
鞠莉「……」 池田屋では曜たちが合流して死闘が終了していた
曜「千歌ちゃん、大丈夫!?」
千歌「いやー……結構危なかったのだ」
千歌は笑いながら返り血を浴びた隊服を見せている
曜「まだ元気そうでよかったよ……」
善子「裏で何人か隊士がやられてたわ……」
裏口を見てきた善子が戻ってくる
曜「……そっか」
善子「それと、ダイヤが軽傷、理亞がちょっとやばい」
千歌「理亞ちゃんっ!?」
ダイヤ「額を斬られてます、すでに運びましたわ……」
曜「ダイヤさん……、ありがとう頑張ってくれたね……」
ダイヤ「二階は……」
千歌と曜が二階へと続く階段を見ると梨子と果南が降りてくる
千歌「よかった、二人とも、無事……えっ!?」 果南が梨子を支えながら降りてくる、二人の隊服には鮮やかな色の血がついている
曜「な、何が……」
果南「あ、ああ……、梨子はちょっと、風邪が悪化したみたいで……」
千歌「とりあえず運ばないと……」
果南「大丈夫、私が運ぶから」
果南は梨子をそのまま池田屋の外へと運んでいく
二階から捕縛された浪士が隊士に連れられて降りてくる
「あれが沖田なんだろ?あいつ血を吐いてたぞ、へへ、ざまあみろ……」
曜「……!?」
曜は捕まっている浪士に掴みかかる
曜「どういうこと!」
「突然血を吐いてたんだよ……っ、多分病気なんだろ、人斬りなんだから自業自得……がはっ」
曜は話している途中に相手の顔を殴り隊士に連れて行かせる
千歌「曜ちゃん……」
曜「すぐに医者を呼ばないと……」
こうして、新選組にも被害が出た池田屋事件は終結する 池田屋事件の後、新選組の屯所にて
千歌「戦……?」
聖良「はい、どうやら長州が動いたと……」
ダイヤ「計画も何もない、単なる突撃ですわね」
曜「……そんなことする人たちじゃないと思うんだけどなー……」
善子「ま、色々あるんでしょ、それよりうちは大丈夫なの?」
ルビィ「理亞ちゃんは命に別状ないけど、しばらくお休みかなー」
理亞「い、行けるわよ、これくらい……」
ルビィ「ダメだよ、傷開いちゃうよ?」
理亞「……」
曜「とりあえず千歌ちゃん、容保公に指示を仰がないと、流石に勝手には動けないし」
千歌「う、うん」
聖良「すみません、今回も私は……」
曜「仕方ないよ、しっかり治して」
善子「でも加えて理亞、それに梨子と果南もダメそうなんでしょ?」
ダイヤ「相当悪い風邪でも流行ってるようですわね」
曜「……」 その頃長州では
愛「……そっか、せっつー行っちゃったかー……」
璃奈「好戦派の人たちを止められなかった、それにせつ菜さんは計画の発案だから」
愛「それだけじゃないでしょ」
璃奈「栞子さんの意志を継ぐって」
愛「……こんな時に私は何をしてるんだろ」
璃奈「……仕方ない、愛さんはこれからに必要で」
愛「これからは愛さんにはないんだよ」
璃奈「……愛さん?」
愛「りなりー、ちょっと愛さんの身体診てもらっていいかな、予想はついてるんだけどね」
璃奈「……まさか……」 せつ菜「私の行動は後の世に愚かと言われそうですね……」
せつ菜「それでも、私は必ず成し遂げます!」
せつ菜「長州の力を見せつけましょう!」
「うおおおおおお!!」
せつ菜の演説に長州の好戦派は盛り上がる
せつ菜(あなたたちにはしっかりと暴れて囮になってもらいます……)
せつ菜(目的は帝を奪い去る、それだけ)
せつ菜(栞子さんのために、私は必ず……!) 千歌「というわけで私たちはこの伏見から長州勢を止めることになったよ」
千歌たち新選組は会津からの指示に従い準備を進める
善子「今回は暴れるわよ、ダイヤも休んでたら?」
ダイヤ「これくらいの怪我で休んでられませんわ」
曜「……」
ダイヤ「曜さん?なんだか浮かない顔ですわね?」
曜「普通に考えればここは確かに主戦場になりそうなんだけどね」
曜「……多分来ないよねーって」
鞠莉「でも、いるわよ?長州?」
曜「あれは囮じゃないかな、私なら数で不利なのにこんな所を進まない」
善子「それなら、どう進むのよ」
曜「主力は御所からある程度手薄になったあたりで一気にどこかの門に集中させる」
ダイヤ「それでも数で負けますわ」
曜「そのドタバタの隙に逆側から御所へ私が入って帝を奪う」
善子「なるほどね、じゃあここに私たちいていいの?」
曜「あんまり良くないね」 *****
***
*
にこ「長州が蛤御門に集まってきてるわよ、会津兵死ぬ気で守るのよ!」
花陽「大変そうだね、にこちゃん」
にこ「そう思うなら手伝いなさいよ」
花陽「私はにこちゃんを守れって言われてて……」
にこ「誰によ、ここでは私の命令が……」
真姫「京都守護職の命令を上回るんだから、私くらいしかいないでしょ」
にこ「……なんで戦場に来てんのよ、立場わかってるの?」
真姫「今は将軍後見職じゃないもの、御所の守護は私の役目」
にこ「大人しく、将軍後見してなさいよね……、しかも馬にも乗らずに……」
真姫「たまには私も自ら戦わないと、それに嫌よ、徳川将軍なんて泥舟に乗るのなんて」
にこ「あんたね……、そういうこと平然と言うから嫌われるのよ」 真姫「でもにこちゃんはそうじゃないでしょ」
にこ「まあそうだけど……」
花陽「あ、あの、慶喜様……」
真姫「真姫でいいわよ」
花陽「そういうわけにはいかないような……、え、えっと、蛤御門結構危なくて……」
真姫「わかってるわよ」
にこ「だから邪魔しないでよ、私もそっちに」
真姫「大丈夫よ、手は打ったから、すっごい不本意だけど」
にこ「真姫ちゃんが不本意って……」
真姫「……」 *****
***
*
せつ菜「火の手もだいぶ回ってきましたね、この炎を味方につけますよ!」
せつ菜は燃え盛る京の町を見ながら進軍していく
「く、久坂さん!」
せつ菜「どうしましたか?」
せつ菜「来島隊全滅……!?」
せつ菜は味方からの報告に愕然とする
せつ菜「あ、あの人は長州最強のような方ですよ!?いくら数で会津がいたとしても……」
せつ菜「……とにかく私たちは急いで御所に……!」
せつ菜(一体何が……)
せつ菜は当初の予定通りに御所へと侵入しようとする
せつ菜(こちらも無策でありませんっ、公家の中にも味方が)
果林「無駄よ、あなたたちの仲間はもういないわ」
せつ菜「……なるほど、あなたがそちらについたのですか……」
せつ菜「薩摩の、西郷……」 果林は薩摩の軍勢を率いてせつ菜たち長州勢を追い詰める形になる
果林「流石の長州ね、結構苦戦したわ」
「かかれえええええええ!!」
せつ菜「ダメです!無策で突撃しては!!」
長州勢は薩摩軍に向かって突撃する
果林「まだよ、引きつけて、……撃て」
果林の合図で薩摩の鉄砲部隊が一斉に発砲し、突撃した部隊を蹴散らす
果林「抜刀隊、準備いいわね」
姫乃「もちろんです」
姫乃に率いられた抜刀部隊が前に出る
せつ菜「あれは……、人斬り半次郎ですか……」
姫乃「果林さんのためにすべて斬ります……!」
姫乃に率いられた抜刀部隊は長州の残りの軍勢も斬り伏せていく 果林「あなたほどの人が、こんな無謀なことをするなんて正直残念よ」
せつ菜「無謀でも愚かでも、気持ちに応えて、貫かないといけない時があるのです!!」
果林「そう、でも、その熱もここまでよ」
せつ菜「ええ!わかっています!」
せつ菜は太刀を自らの腹に突き刺す
姫乃「切腹などさせないっ!」
姫乃がせつ菜を斬ろうとするも果林に止められる
果林「いいわ、もう間に合わない」
せつ菜「長州藩……、久坂玄瑞……」
せつ菜「この愚かな……革命の首謀者として……責任をすべて負い、切腹いたしますっ……!!」
せつ菜「……あなたが証人です、西郷さん……」
果林「……しっかり見届けるわ」
せつ菜はそのまま太刀を引き抜き首に突き立てる
せつ菜(愛さん、しずくさん、後は任せました……、必ず新しい世を……)
果林はせつ菜の切腹を見届けた ダイヤ「……どうやら、終わったようですわね」
善子「ちょっと、全然目立ってないわよ、私たち!」
曜「ある程度役には立っただろうけど、間に合わなかったね」
ダイヤ「……あれは、薩摩ですわ」
新選組の横を薩摩の軍勢が通り過ぎる
果林「……」
曜「……」
果林「あれが新選組ね」
姫乃「……」 ダイヤ「薩摩の力が随分と役に立ったようですわね」
曜「でも長州もすごいよ、数の圧倒的不利をここまで……」
ダイヤ「それだけの信念があったということでしょうか、狂気と言いますか……」
曜「これで数さえあれば……、この策を考えたのは相当天才だよ」
千歌「……」
千歌は京の光景を見て両膝をついてしまう
曜「千歌ちゃん?」
千歌「曜ちゃん達は、何を見ているの……?」
曜「え?」 千歌「信念とか、戦の仕方とか、そんなことじゃないよ、……ここで焼けた人たちは、なんで焼かれなきゃいけなかったの!?」
千歌「どれだけの理由があったかは私は頭が悪いからわからないよ!すごい策だったかなんか知らないよ!」
千歌「それでも、町の人たちが焼かれ死ぬ必要はあったの!?」
ダイヤ「……そう、ですわね……」
千歌「……どんな理由があっても私は許せない、こんなことをした長州を許せないっ」
曜「千歌ちゃん……」
この後、長州は朝敵となり幕府による征討が行われることになる 果林「戻ったわ」
彼方「お帰り、果林ちゃん」
果林「これで朝廷には恩を売れたはずよ、私たちもそろそろ考えないとね、色々と」
彼方「そうだねー、あ、そういえば果林ちゃんに歩夢ちゃんが会わせたい人がいるみたいだよー」
果林「歩夢が?」
歩夢「あ、良かった、無事に戻ってきたみたいで」
果林「歩夢、どうしたのよ、会わせたい人って……」
侑「おー!薩摩の西郷さん、それに大久保さん!」
歩夢「ゆ、侑ちゃん、落ち着いて」
侑「格好いいなー、噂には聞いてた通り!」
彼方「元気だねー」
果林「誰?この人は?」
歩夢「えっと、幕府の勝様から面倒みてやってって言われて……」
侑「土佐脱藩の坂本龍馬です、よろしくお願いします!」 果林「あのね、歩夢、何度も言うけど、あなたは薩摩の家老で小松帯刀なんだから、いちいち私の許可なく好きにすればいいのに……」
歩夢「でも実際に色々と動くには果林さんの力が必要だったりするかなって……」
果林「それはいいとして、いいのかしら、こんな得体の知れない人を」
侑「あ、怪しくないですよ!?」
歩夢「勝様の紹介だし、ある程度信用はできるかなって」
彼方「果林ちゃん、面倒みてあげようよー」
果林「そんな捨て犬を拾った子供みたいなこと言われても……」
歩夢「ま、まあ一応面倒というか、援助をしてあげるみたいな感じなんだけどね?」
果林「援助って、あなた、何かしたいことがあるの?」
侑「とりあえずねー、海軍作るのは途中で失敗しちゃったから……」
彼方「海軍……」
侑「今は、カンパニーを作ろうと思ってるんだ!」
果林「……かんぱに?」
新選組の知らないところで、少しずつ何かが変わろうとしている 第三部完
近藤勇:高海千歌
土方歳三:渡辺曜
沖田総司:桜内梨子
山南敬助:鹿角聖良
永倉新八:黒澤ダイヤ
井上源三郎:松浦果南
藤堂平助:鹿角理亞
原田左之助:小原鞠莉
斎藤一:津島善子
島田魁:黒澤ルビィ
山崎丞:国木田花丸
芹沢鴨:高坂穂乃果
新見錦:南ことり
平山五郎:園田海未
佐々木只三郎:小泉花陽
坂本龍馬:高咲侑
宮部鼎蔵:紫藤美咲
桂小五郎:桜坂しずく
高杉晋作:宮下愛
久坂玄瑞:優木せつ菜
吉田稔麿:三船栞子
大村益次郎:天王寺璃奈
西郷隆盛:朝香果林
大久保利通:近江彼方
小松帯刀:上原歩夢
中村半次郎:綾小路姫乃
松平容保:矢澤にこ
一橋慶喜:西木野真姫 池田屋事件、禁門の変を経て、新選組の名は広く知れ渡ることになった
曜「うん、ここで人増やすべきだよ」
聖良「これ以上の新選組の増員、どうでしょうか……」
千歌「なんで?たくさんの人がいた方がいいんじゃないの?」
聖良「組織が大きくなると中から崩れることがありますから……」
曜「わかるけどさ、今回みたいに人手が必要な時も出てくると思う」
聖良「大きな戦があると考えてますか」
曜「ある」
千歌「戦……」
曜「新選組が大きくなっていれば部隊を分けてもっと被害が小さくできたかもしれない」
聖良「……わかりました、今回は私も何も出来ずにいたので反論できません」
曜「いや、そういうわけで言ったんじゃ……」
聖良「冗談です、少し拗ねてみただけですよ」
千歌「……」
曜「行くなら……、江戸かな、江戸でもそろそろ新選組の名前が知れ渡ってるはず」 *****
***
*
千歌「というわけで、私と江戸に行きたい人ー」
善子「天才剣士の凱旋、悪くないわね」
梨子「私も行きたいな」
鞠莉「いいじゃない、江戸」
ルビィ「ルビィも行きたい!」
曜「あのね、遊びに行くんじゃないんだから」
聖良「隊士募集なので、なるべく顔が広い人や詳しい人の方が……」
千歌「鞠莉ちゃんとか、絶対違うよね、あと善子ちゃんも」
善子「なんでよ!」
鞠莉「合ってるけど!」
千歌「梨子ちゃんはまだ身体のことがあるからダメ」
曜「そうなると……」
理亞「なら私が行くわよ、江戸の道場ならかなり詳しいわよ」
ダイヤ「私も同じくです、千歌さんの護衛も必要ですし」
曜「まあ、適任だね」
ルビィ(私は自然に外されてる……) 千歌「それじゃ、私とダイヤさん、それに理亞ちゃんで行こうか」
梨子「私は身体なんともないのに……」
聖良「曜さん」
聖良が小声で曜に尋ねる
曜「何?」
聖良「……噂ですが、梨子さんが労咳というのは……」
曜「……噂だよ、風邪が長引いてるから」
聖良「医者には」
曜「診せたけど……、千歌ちゃんにはこっそり江戸でいい医者を探すのもお願いしてる」
聖良「やはり……」
曜「念の為、医術の心得がある花丸ちゃんも梨子ちゃんは大したことないって言ってる」
聖良「……わかりました」
曜「聖良さんは心配しすぎ」
聖良「血を吐いたというのも聞いて、心配で……」
曜「……それも大丈夫だから」
こうして千歌達は江戸へと向かい、隊士を募集することになった 千歌「江戸だー、久しぶりだなー」
ダイヤ「とは言ってもまだ2年は経ってませんけど」
千歌「もう随分と京にいた気がして」
ダイヤ「まあ……、色々とありましたからね」
千歌「さてと、ちょっと私寄りたいところがあって……」
ダイヤ「それなら、私も同行しますわ」
千歌「い、いや、大丈夫だよ、大丈夫」
ダイヤ「一応、局長の護衛も兼ねているのですから、そういうわけには」
千歌「でも、ほら、江戸は安全だし?私、強いし!」
ダイヤ「それはそうですが……」
千歌「ちょっとだけ、ちょっとだけだからさ、ほら一人で寄りたいところもあるでしょ?」
ダイヤ「……なるほど、それはそうですわね、わかりました」
ダイヤ「でも、千歌さん、あんまり羽目は外さないようにお願いします」
千歌「なんか勘違いされてない?」 千歌はダイヤと別れると江戸にある医学所を訪れる
千歌(医学所に確か、緒方洪庵っていうすごい有名な先生が……!)
千歌「え?亡くなった!?」
千歌は医学所にいる者に尋ねたが返ってきた返答にがっかりする
千歌「え、それじゃあ、どなたかちょっと話というか、今ここで偉い人は!?」
「えっと、その、頭取は松本良順先生で……」
千歌「ちょっと会わせてください!」
千歌はそのまま医学所の中へと入っていく
「え、あの、ちょっと!?」
千歌「すみませーん、松本良順先生!!」
すみれ「うるさいわねー、何なのよったら何なのよ!」 千歌「ん?」
すみれ「いや、あんたが呼んだんでしょ!」
千歌「じゃあ、あなたが……」
すみれ「私が天才カリスマ医師の松本良順よ」
千歌「かりすま……?」
すみれ「とりあえず入りなさいよ」
千歌「はあ」
*****
***
*
すみれ「なるほど、あの新選組の局長」
千歌「おぉ、やっぱり有名!?」
すみれ「幕府の犬で人斬り集団って」
千歌「それは違くないけど、違うような……」 すみれ「あれでしょ、どうせ攘夷とか言ってるんでしょ?」
千歌「攘夷ってダメなの?」
すみれ「ダメに決まってるでしょ、いい、日本はね、西洋と比べたらめちゃくちゃ遅れるんだから」
千歌「そ、そうなの……?」
すみれ「そうよ、さっさと開国して西洋の知識を自分達のものにするのが最優先」
千歌「なるほど、なるほど……」
すみれ「……なるほどって、それで受け入れちゃうの?」
千歌「ん?だって、私、攘夷とかそんなに詳しいわけじゃないし、国のために一番いい方法ならそれがいいんじゃないの?」
すみれ「そりゃ、そうなんだけど……、まあいいわ、それで、用があって来たんじゃないの?」
千歌「そうだ、えっと……」 *****
***
*
すみれ「なるほど……」
千歌「……心配で、その……」
すみれ「仮に労咳なら、今の日本、違うわね、西洋にも治療法はまだないわ」
千歌「そんな……」
すみれ「とりあえず、清潔を保つこと、あと栄養のあるものを食べること、それに限るわ」
すみれ「正直、できることは少ない」
千歌「……」
すみれ「ま、まあ、今はまだ江戸を離れられないけど……、京に行く用事でもあったらついでに寄ってあげてもいいわ」
千歌「本当に!?」
すみれ「え、ええ、というより、軍に医者が常にいた方がいいのよ、本当は……」
千歌「じゃあ約束!」
すみれ「わ、わかったわよ、とにかく無理をさせないことよ、寿命縮めたくないならね」
千歌「うん!」
千歌とすみれの話は思いのほか盛り上がり再開を約束して医学所を後にした うまい言い方か分からないけど
ここの近藤勇は感性が普通の事に笑って泣いて怒る「普通怪獣」だから
狂の時代に歴史に残る凶暴化すると言う描き方がいい 保健所で働いてて少しずつしか更新できないのですが、頑張るので保守等お願い出来ればと思います。 保健所とか今修羅場じゃないですか
色々といつもありがとう とりあえず作者さん超がんばれと同時に可能な限り無理はなさらずに 千歌はその後、ダイヤたちと合流する
千歌「ダイヤさんー、理亞ちゃんー」
ダイヤ「ようやく来ましたか……」
理亞「どこまで行ってたのよ……」
千歌「どう?新しい人集まった?」
ダイヤ「ええ、上々ですわ」
千歌「やっぱり有名になったんだねー!新選組!」
ダイヤ「そうですわね」
ダイヤ(悪名の方が強いですが、それは黙っておきましょう……)
ダイヤ「それよりも、理亞さんが良い仕事をしてくれましたわ」
千歌「理亞ちゃんが?」
理亞「北辰一刀流の道場で、伊東道場って知ってるわよね?」
千歌「もちろんだよ!江戸じゃ有名な……」
理亞「前は私もそこに出入りしてたんだけど、なんと、そこの道場主」
千歌「それって……」 絵里「もう、そんなに勿体ぶって紹介しなくてもいいわよ」
理亞「紹介するわ、伊東先生よ」
絵里「伊東甲子太郎よ、よろしくね、試衛館の近藤先生」
千歌「わ、わ……、こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
理亞「声をかけたら快く応じてくれて」
絵里「他にも何人か連れて是非新選組に」
千歌「い、いいんですか?その……」
絵里「ええ、活躍は聞いてるわ、一緒に真の尊王攘夷を目指しましょう」
千歌「は、はあ……」
絵里「一応紹介するわね、こっちが妹の」
亜里沙「鈴木三樹三郎です!よろしくお願いします!」
千歌「よろしくねー」
絵里「あとは……」
ダイヤ「千歌さん、良かったですわね、これで新選組はますます強くなりますわ」
千歌「うんっ!……!」
千歌は絵里が紹介する同志の中に強い気配を察知する 千歌「ダイヤさん、あの人……」
ダイヤ「……ええ、いますわね、かなりの手練れ……」
絵里「こちらが服部武雄君よ」
雪穂「別に私はわざわざ紹介するほどのものじゃ……」
絵里「謙遜しないの、あなたは強いんだから」
雪穂「は、はあ……」
千歌(うちの中に入ってもかなりの腕かも……、んー、善子ちゃんと同じくらいかな……)
絵里「というわけで、新選組にまとめて厄介になるわ、改めてよろしくね」
千歌「は、はい、よろしくお願いします」
こうして江戸での隊士募集で伊東甲子太郎をはじめ、かなりの隊士が新たに加入した 新たな隊士を引き連れて千歌達は京へと戻ってくる
千歌「ただいまー」
果南「千歌、おかえり」
千歌「果南ちゃん!元気になったの!?」
果南「当たり前じゃん、もう任務も出てるよ」
千歌「良かったー……」
曜「おかえり、随分連れてきたね」
千歌「うん、たくさん集めたよ!特に……」
絵里「初めまして、伊東甲子太郎よ」
聖良「伊東さん!?まさかあなたが……」
絵里「少し興味があったから参加させてもらおうかと思ってね」 曜「千歌ちゃん、千歌ちゃん」
曜が小声で千歌に尋ねる
千歌「どうしたの、曜ちゃん」
曜「そんなすごい人なの、あの人」
千歌「北辰一刀流の伊東道場だよ、知ってるでしょ」
曜「あー……」
聖良「剣の腕ももちろんですが、大変知識もある方ですよ」
曜「聖良さんより?」
聖良「私など、足元にも……」
曜「ふーん……」
絵里「剣術だけでなく、尊王攘夷の考えを新選組に伝えられると思うわ、よろしくね」
曜「……んー、困ったなー……」
千歌「?」 *****
***
*
千歌「組織編成?」
曜「これだけ集まったし、隊の編成もしようかなって」
聖良「そうですね、伊東先生が来たのであれば、総長はあの方が……」
曜「総長は聖良さん、それは変えない」
聖良「しかし……、助言などであればあの人ほど適任は……」
千歌「私も総長が聖良さんがいい!」
曜「私たち三人は隊の中心、つまり屋台骨だよ、そこは変えたくない」
聖良「しかし、絵里さんを副長助勤というのは……」
千歌「え?ダメ?」
聖良「少し失礼になるかと……」
曜「まあ、わかるけどねー……、あ、いい考えが!」 *****
***
*
絵里「参謀?」
曜「うん、絵里さんには参謀をやってもらおうかなって」
梨子「参謀って何?」
ダイヤ「何と言えばいいのでしょう……、軍師のような……」
善子「それって総長と被らない?」
果南「違うんじゃないの?名前が違うし」
理亞「どんな理由よ……」
花丸「参謀なら、副長よりは下ずらね」
ルビィ「そうだよね、千歌さんの右腕は曜さん以外考えられないし」
曜「あー、もう周りうるさいよ」
絵里「参謀、いいわ、謹んでお受けするわ」
亜里沙「すごーい、お姉ちゃん、参謀!」
雪穂「意味わかってる?」
曜「それから、他も色々と変えたから順番に読み上げるね」 *****
***
*
曜「以上、他は役職のない平隊士とする」
ルビィ「ルビィ、また副長助勤になれなかった……」
花丸「ルビィちゃんはマルと一緒に監察方で頑張るずら」
曜「それじゃ、それぞれ隊に分かれて今後は任務を」
善子「ちょっと待った!」
曜「善子ちゃん、どうしたの?」
善子「なんで私が三番隊なのよ!一じゃないの!?」
ダイヤ「善子さん、そんな数字はどうでも……」
善子「納得いかない!どう考えても私が一番強いでしょ!」
理亞「それなら私の八も異議を申し立てるわよ」
鞠莉「そうよ!私もなんで十なの!?」
果南「また鞠莉はややこしくする……」 曜「隊の数字は別に強い弱いとかで序列をつけてる訳じゃないんだけどなー……」
花丸「でも実際一から三は新選組の最強の三人ずらね」
梨子「私はそんな一じゃなくても……」
善子「梨子と一、二を争うのはわかるわよ!?でもダイヤよりは私の方が上でしょ!」
ダイヤ「それは捨て置けない台詞ですわ、剣術という意味では善子さんと私はほぼ同格ですわ!」
善子「なら決着でもつける?」
ダイヤ「いいでしょう……、構えなさい!」
善子とダイヤは勝手に試合を始める 果南「まあ、あの二人は同格だよね、いい意味でも悪い意味でも」
曜「ダイヤさんも案外喧嘩っ早いからなー……」
果南「曜には言われたくないと思うよ?」
鞠莉「ねー、私は?」
曜「十番隊についてはちゃんと意味があるんだよ」
鞠莉「どんな?」
曜「十番隊、最後列、つまり殿だよ」
理亞「なるほど……」
曜「背中を預けて敵を食い止める、それは鞠莉ちゃんにしか頼めない」
果南「確かに、うってつけだね」
鞠莉「も、もう何よー、曜ったら、そんなに信頼してくれてるのねっ」
鞠莉は曜に思わず抱きつく
曜「だ、だから理由はあんまり言いたくないのにっ……!ま、鞠莉ちゃん、苦しいっ……!」 ダイヤ「今日は、こ、この辺にしといてあげますわ……」
善子「は、はあはあ……、それはこっちの台詞よ……」
果南「終わったんだ」
ルビィ「どっちが勝ったの?」
ダイヤ「今日のところは引き分けですわ」
善子「今日のところはね」
ルビィ「……」
善子「それより、一番の本題なんだけど」
曜「えー……、まだあるの?」
善子「明らかに、わけわからないのが隊長なのはなんでよ」 曜「あー……」
ダイヤ「そうですわ、身内鼻息はしたくありませんが、これならルビィが隊長でも」
善子「武田に谷、これ器じゃないのでしょ」
曜「色々とあるんだよ、そこは……」
善子「口が上手いだけの雑魚と同列は私の刀が妖刀と化すわ」
梨子「それは別にいいとして……」
善子「ちょっと!」
梨子「確かに、腕は全然だし、もっと強い人はいるよ?」
曜「剣の腕前で隊長を選んでるわけじゃないんだってば」
ダイヤ「なるほど、九番もそういうわけですのね」
曜「……絵里さんのところから一人も隊長選ばないのはまずいんだよ」
梨子「でもそれなら、雪穂さんが……」
理亞「確かに剣の腕というか、あの人、武術全般すごい腕のはず」
善子「よりによって、亜里沙って、なんでよ」
果南「なるほど、曜も悪いこと考えるねー」
曜「……想像はお任せするよ」
曜はそう言うと奥へと下がっていく ルビィ「どういうことだろ?」
花丸「つまり……、本当に優秀な人に権力を与えないってことだと思うずら」
ダイヤ「偏りを出すと反発がある、置くならなるべく利用しやすい方を選んだ、と」
理亞「随分と色々考えることね」
果南「そうじゃないと、これだけの組織をまとめるのは難しいってことだよ」
ダイヤ「というわけみたいですわ、善子さんもいい加減納得を」
善子「理屈はわかるわよ、でも気に入らないことは気に入らないの!」
鞠莉「それじゃー……、いっそ斬っちゃうとか」
鞠莉の言葉に全員が黙ってしまう
鞠莉「じょ、冗談よ、冗談」 谷や松原を差し置いて隊長の中で一番空気な鈴木が演者ありで登場という 絵里「別に、私に気を遣わなくてもいいのよ?」
曜「ん?なんの話?」
絵里「亜里沙のことよ、私が言うのも変だけど、副長助勤と並べられるのは……」
曜「……そうは言っても、ある程度政治が入るのは仕方ないんだよ」
絵里「気を遣ったことは否定しないのね」
曜「誰が見てもわかるでしょ、それは」
絵里「あなたがそういうことをするとは思わなかったわ」
曜「私は新選組をより強くしたいだけ、それしか興味はないよ」
絵里「それはそれで、わかりやすくていいけど……」 新選組が新たな編成になってから各隊は順調に任務をこなしていく
梨子「ただいま、お仕事終わったよ」
聖良「ご苦労様でした、かなり早かったですね」
梨子「うん、すぐに終わっちゃって」
聖良「まだ早いですが、ゆっくり休んでください」
梨子「え、でも夜の見回りが……」
聖良「それは六番隊が」
梨子「果南ちゃんの隊……?」 明日ようやく休みなので少し長く更新したいと思ってます *****
***
*
夜、仕事から帰ってきた果南が静かに屯所の中に入る
絵里「ご苦労様」
果南「ん?あぁ、どうしたのこんな遅くに」
絵里「そっちこそ、見回りというより、……人を斬った後かしら?」
果南「斬るのが仕事なんだから、仕方ないでしょ?」
絵里「暗殺はあなたか、善子、この二人が主にやってるのね」
果南「……さあ、どうかなー」
絵里「ねえ、ひとつ聞いてもいい?」
果南「ん?何?」
絵里「なんで、あなたは沖田総司のふりをして人を斬っているの?」
果南「……」
絵里「おかしいのよね、沖田はたくさん人を斬っているっていう噂が流れているけど……」
絵里「私が来てからそんな様子はない、旅客改めも捕縛がほとんど」
果南「噂は噂ってことでしょ、ちょっと疲れてるからもう休むよ」
絵里「……人のふりをすると、その人の運命に飲み込まれるわよ?」
絵里の言葉に果南は何も言わずに奥へと向かう 善子「もうやってられない!」
花丸「善子ちゃん、落ち着いて」
ルビィ「そ、そうだよ……」
ダイヤ「なんの騒ぎですか?」
善子「九番隊のせい!」
ダイヤ「……お二人、説明を」
ルビィ「不逞浪士がいるってことで九番隊が今日は動いたんだけど」
花丸「途中で新人が怖くなって逃げ出したずら」
ダイヤ「それは切腹案件では……」
善子「そうよ、それなのに、亜里沙が」
亜里沙『そんなのかわいそうだよー』
善子「って何もせず」
花丸「でもそういうわけにもいかないから監察方でその人を探して……」
善子「なぜか三番隊が捕まえるってことになったの!捕まえるというより、斬ったけど」 ダイヤ「問題の九番隊は?」
ルビィ「それが……任務で疲れてるからって」
善子「もう嫌!千歌もこんなの許すのおかしくない!?」
ダイヤ「それは、……まあ最近そういう話は多いですわね」
善子「贔屓よ、贔屓!」
雪穂「あの……」
ダイヤ「雪穂さん?」
雪穂「すみません、亜里沙が色々と……」
善子「本当よ!」
雪穂「元々、優しい子というか、人を斬るとかそういうのは……」
花丸「それなら、なんで新選組に」
雪穂「絵里さんの影響ですね、憧れが強いというか」
ダイヤ「確かに絵里さんはすごい方ですか」
雪穂「自分に向いてるとかじゃなくて、とにかく絵里さんの後を追っている感じで」
善子「それ、すごい迷惑なんだけど……」
雪穂「何かあれば私が、代わりには動きますから」
雪穂はそう言って頭を下げるとダイヤ達から立ち去る 善子「実力はあるのに、贔屓されてるから恵まれないってかわいそうよねー」
ダイヤ「善子さん、いい加減に……」
曜「善子ちゃん、ごめん、頼みたい」
遠くから曜が善子を呼ぶ
ルビィ「また、お仕事?」
善子「どうせ、今度は切腹の介錯でしょ」
善子は笑って曜の元への歩き出す
ダイヤ「人が増えたことで切腹の数も増えましたわね」
ルビィ「う、うん……、でも最初に説明してるはずだし……」
花丸「マル達も、法度に違反したら切腹なのかな?」
ダイヤ「……花丸さん、そういうことは思っても口にしないものですわ」
ルビィ「そ、そうだよ、それに私たちは法度違反なんてそもそもしないし……」
花丸「それもそうずらね」
聖良「……」 *****
***
*
千歌「え、雰囲気が悪い?」
聖良「はい……、ここ最近、新選組全体の不満が」
曜「まあ、……わかるけどさ」
千歌「な、なんで?なるべく偏らないような隊の編成にもしたし……」
曜「贔屓だと思われたんじゃない?」
千歌「でも、あんまり試衛館の人たちや、古参の人たちを優遇しちゃうのはまずいかなって……」
曜「なかなかそれもねー」
聖良「それと、任務に隊によって偏りがあることも」
千歌「うーん……」
曜「そこは信用問題、確実に何かしてほしい時は一番から三番に任せたい」
千歌「うん……、梨子ちゃん、ダイヤさん、善子ちゃんにはつい甘えちゃうよね、どうしても」
曜「動きの速い理亞ちゃんや鞠莉ちゃんもね」 聖良「果南さんは、暗殺専門ですか」
曜「……あれは果南ちゃんが志願してるのもあるんだよ、その代わりに少し任務の数減らしてるけど」
千歌「あんまり体調戻ってないみたいだもんね」
聖良「お二人の意図がどうも伝わってないところがあるみたいですね……」
千歌「難しいなー……」
曜「人が増えるとどうしてもね」
聖良「それから最後に法度に違反する者がこのところ増えているのが……」
曜「わかってるよ、それは」
聖良「そのうち幹部に法度違反者が出た場合、どうするんだという噂も」
千歌「え?それってダイヤさんとかが違反したらってこと?ないよー、そんなことするはず……」
曜「斬るよ」
千歌「曜ちゃん……?」
曜「法度に違反したら切腹、誰だろうと変わらない」
聖良「……私が違反してもですね?」
曜「……もちろん、切腹させる」
千歌「よ、曜ちゃん、聖良さん……」 聖良「……」
曜「聖良さん、たまに私のこと試すのやめない?」
聖良「すみません、定期的にやらないといけないかなと」
曜「いまいち冗談なのか何なのかわからないんだよなー……」
千歌「え、え?」
聖良「ちょっとした確認作業ですよ、安心してください、千歌さん」
曜「そうそう」
千歌「もうー……」
曜「ま、これから長州討伐もあるし、新選組も挙兵!ってなったら士気も上がるでしょ」
聖良「ええ、しばらく落ち着いてましたがまた大きな仕事ですね」 *****
***
*
千歌「え!?挙兵なし!?」
にこ「そうよ」
千歌「な、何でっ、これから長州を攻めるんじゃ……」
にこ「長州の謝罪、後はこちらの要求を飲ませて、それで決着」
千歌「そっか……」
にこ「ということで、新選組の挙兵はなし!引き続き京の治安維持!」
千歌「……」
にこ「どうしたの、そんなに残念そうじゃないのね?」
千歌「え!?ざ、残念です!とっても……」
にこ「本音は」
千歌「え、えーっと……戦にならなくて良かったなぁ……って」
にこ「……もちろん、無駄な人死にが出ないのはいいことだけどね」
千歌「わ、忘れてください!そ、それじゃ!」
千歌は逃げるようと会津藩邸を後にする
にこ「……今いいけど、ここで叩かないことで今後どうなるか……」
にこ「本当、やってくれたわね、薩摩……」 *****
***
*
果林「ふぅ……、これでいいのね、歩夢?」
歩夢「うん、ありがとう、助かったよ」
果林「無茶させないでよね、完全に挙兵で動いてたのに……」
歩夢「でも侑ちゃんが……」
果林「長州と薩摩で手を組めって話なら、無理よ、というより向こうが嫌がるでしょ」
歩夢「私も難しいとは言ったんだけど……」
果林「まあ今回はこっちの思惑もあるから動いたけどね、それで肝心の侑は?」
歩夢「色々と動いてるよ?カンパニーを作るっていうから」
果林「何するか知らないけど、大丈夫なの?」
歩夢「うん、多分……、ひとつ頼まれたことがあって」
果林「頼まれたこと?」
歩夢「えーっと、なんて名前だったっけ、交渉の手伝いを頼まれて……、そうだ、グラバーって人」
果林「グラバー……?」 その頃、長州藩では
璃奈「愛さん、動くの?」
愛「もちろんだよ、流石の愛さんもちょっと頭に来てるからね」
しずく「でも、出来るでしょうか……」
愛「……やらないと、せっつーとしおってぃーにあの世で会わす顔がない」
しずく「あの世って……」
愛「残りの人生、全部燃やし尽くしても必ず成功させるんだ!革命を!」
璃奈「愛さん……」
愛「まずは弱腰の長州を……壊すよ」
愛は楽しそうな笑みを浮かべて挙兵へと動き出す 千歌から挙兵がなくなったことを知らされ新選組内は気迫がなくなっていた
鞠莉「せっかくパーッと派手に暴れられると思ったのにね」
果南「仕方ないよ、こればっかりは」
ルビィ「新選組の旗を持って進軍したかったなぁ……」
花丸「ルビィちゃん、隊旗持つの好きだもんねー」
曜「……あーあ、すっかりやる気なくなってる」
聖良「気持ちはわかりますが……」
曜「もう……、ほら、仕事!仕事するか、訓練して!!」
曜は消沈している隊士たちを鼓舞して動かす
絵里「参ったわね」
聖良「絵里さん……、ええ、しかし幕府の決定ですから、仕方ないですよ」
絵里「そうじゃなくて、新選組、組織としてあまりに幼すぎるじゃないかしら」 聖良「それは……」
絵里「強い幹部がいるから形にはなっているけど、少しでも揺らいだら一気に崩壊するわよ?」
聖良「そうならないように、一層引き締めていくしかありませんよ」
絵里「それでも今後どうかしら、今までは流れが良かったけど、今回の挙兵中止みたいに目的がなくなったら?」
聖良「絵里さんは一体どうすればいいと?」
絵里「わかるでしょ、今の流れを、幕府はそのうちに潰れる、おそらく薩摩が中心となって」
聖良「……」
絵里「新選組には優秀な人材がいる、それを腐らせるのは勿体無いわ」
聖良「もったいない……ですか」
絵里「今ならまだ間に合うはずよ、会津じゃなくて薩摩につけば」
聖良「……それは、武士としてどうなのでしょうか」 絵里「武士?武士じゃないわ、新選組は」
聖良「……千歌さんは武士になりたがっているのですよ」
絵里「武士は身分よ、千歌は武士にはなれない、どれだけ強くても武士になれるわけがない」
聖良「千歌さんは武士よりも武士に近い人です、きっと」
絵里「それでも武士じゃない、そんなことにこだわらずに新選組を残すことを考えるべきよ」
聖良「……」
絵里「私はこのまま多くの隊士を無駄に散らせたくない」
聖良「そんなことはさせません」
絵里「……いいわ、でも覚えておいて、このままいけば新選組は崩壊する」
絵里はそう言い残して去っていく
曜「聖良さん?絵里さんと何話してたの?」
聖良「いえ、なんでも……、少し新選組が緩んでいるのではないかという話ですよ」 曜「え?ま、まあ、今はちょっとそうかもしれないけど……」
聖良「今はとのんびりしていると新選組は時代に取り残されますよ」
曜「わかってるよ、でも今は……」
聖良「新選組を強くしなければいけないのに、副長のあなたが先を見えていないでどうするんですか」
曜「強くはしてるよ!人も増えて、それで……」
聖良「あなたがしっかりしないと、いけないんですよ、曜さん」
曜「……聖良さん?」
その数日後、聖良は新選組の屯所から姿を消した 火曜水曜が久々に休みなのでそこで更新できればと思ってます μ'sメンバーの残り二人が誰に配役されるか気になる >>362
絵里は榎本だと思ってたんだけどな
希が勝なのは同意 千歌「……え、ちょっと、よくわからないよ、もう一回……」
曜「だからっ……、聖良さんが脱走した……」
千歌「脱走……?」
曜「しっかり、書き置きまで残してたよ……」
曜は握りしめていた手紙を千歌に渡す
千歌「……新選組を抜け、真の尊皇攘夷のために江戸へ行く……」
絵里「尊王攘夷への思い、そこまで強かったのね」
理亞「なんで……、姉様……、そんな……」
ダイヤ「千歌さんっ、何かの間違いですわ、聖良さんは!新選組のことを一番に……!」
鞠莉「そうよ、新選組を抜けるなんてそんなことは……」
善子「でも、現にいなくなってるじゃない……」
果南「聖良が新選組のことを一番考えてたのは間違いないよ、それは、間違いない……」
千歌「新選組のことを、一番に……」
曜「……」 梨子「曜ちゃん、どうするの……、聖良さん……」
絵里「法度のことはわかるけど、例外はあるべきじゃないかしら」
ダイヤ「千歌さん!曜さん!」
千歌「う、うん……、今回は……」
曜「脱走は、切腹だよ」
理亞「え……」
曜「新選組、総長山南敬助は脱走したとみなす、捕まえて、切腹させる」
千歌「曜ちゃん……」
理亞「そんな……」
曜の言葉に理亞がふらつきルビィが理亞を支える
ルビィ「理亞ちゃん、しっかりっ!」 絵里「そう……、そうなのね……」
曜「誰であろうと例外なんてない、わかってるよね、千歌ちゃん」
千歌「……う、うん……」
ダイヤ「そんな……」
花丸「聖良さんを、追うの?」
千歌「……花丸ちゃん、江戸に向かったとしたら、どこまでに追えば間に合うかな」
花丸「え、それは、大津ずらね……、大津を過ぎたらもう……」
千歌「梨子ちゃん、聖良さんを追って、大津までに必ず」
梨子「え、わ、私……」
絵里「なんで梨子に?追うなら監察方を……」
千歌「聖良さんはかなりの手練れだよ、抵抗されて捕まえられるのは梨子ちゃんくらい、梨子ちゃん、お願い」
梨子「……う、うん」
梨子は千歌の言葉を聞いて慌てて飛び出していく
善子「……大津なんて、追いつけないんじゃ……」
ダイヤ「……おそらく、それを見越してでしょう、梨子さんに行かせたのも……」
善子「……なるほどね」
鞠莉「どっちにしても、お別れなのね……」
曜「……」 千歌が梨子に聖良を追わせてからしばらくして曜は大きな寺へと一人向かう
曜「……」
聖良「西本願寺、いいところに目をつけましたね」
曜「……やっぱりここなんだ、聖良さん」
聖良「流石曜さんですね」
曜「新選組の次の屯所として選んでた場所、なんでか、ここにいる気がしたよ」
聖良「……そうですか、私への追手は?」
曜「梨子ちゃんが大津まで向かってる」
聖良「千歌さんの指示ですね、本当に、優しすぎるあの人は……」 曜「聖良さん、どうしてこんなことを」
聖良「新選組はおそらく今後行き場を失います、幕府はより力を失い、最悪は……」
曜「滅ぶ」
聖良「ええ、そうです」
曜「でもだからって、なんで……」
聖良「私は新選組が好きです、最高と言える武士の集団ができたと思ってます」
聖良「これで幹部の私が切腹となれば新選組はより強く最強になれる、法度が完全なものになる」
曜「……そのために、そのために犠牲になんて!」
聖良「わかっているでしょう、最近はまともに剣も振れていない、そんな私の最後の仕事です」 曜「千歌ちゃんや、理亞ちゃんがどれだけ悲しむか……」
聖良「……悪いことをしました、でも私もわがままを言うと」
聖良「新選組の最後を見たくないんです、今の最高の状態のまま」
聖良はそこまで言うと刀を抜く
曜「聖良さん……?」
聖良「武士として、最後にあなたと戦いたい」
曜「……いいよ、武士でもない私なんかでいいなら」
曜も刀を抜き立ち合う
聖良「千歌さんと曜さんは武士です、私は二人と出会えて良かった」 *****
***
*
新選組の屯所では捜索から梨子が戻ってくる
梨子「聖良さんは、見つからなかったよ」
千歌「……そっか、うん、ありがとうね」
理亞「……良かった」
報告を受けた全員が安堵の表情を浮かべる
鞠莉「逃げられたら仕方ないわね、今度会うことがあったら……、え?」
ダイヤ「どうしました、鞠莉さ……、な……」
曜「……脱走者、山南敬助、連れ帰ったよ」
曜は血だらけの聖良を引き連れて屯所へと戻ってきた
理亞「姉様、なんで……なんで……」
曜「抵抗したから斬り合った、息はあるから切腹させる」
絵里「……残酷なことを……」 果南「……曜」
千歌「曜ちゃん……」
曜「……」
千歌「……」
千歌「……ご苦労様、これからすぐに切腹を」
ダイヤ「千歌さん………、なぜですの、もう……」
善子「もうこのままいても死ぬだけよ、私が介錯するから、さっさと」
聖良「介錯は、……梨子さんに……」
梨子「……え?」
千歌「……梨子ちゃん、お願いできるかな」
梨子「っ、う、うん……」
理亞「姉様、嫌だっ!そんなのっ、なんでっ、なんで!!」
理亞は聖良に泣きながらしがみつく
聖良「ごめんなさい、理亞……、でもわかってください……」
理亞「姉様……っ」 *****
***
*
聖良は死装束へと着替えてよろよろと座敷に座る
聖良「はあはあ……」
梨子「……聖良さん……」
聖良「……最強のあなたに最後に斬られるのは本望です」
梨子「私は、最強なんかじゃ……」
聖良「ええ、甘えがまだある、だから……、私を斬って最強になってください……」
梨子「……っ」
千歌と曜、絵里も切腹を見届けるために同席している
聖良「……千歌さん」
千歌「……」
聖良「ありがとう」 *****
***
*
梨子「……っ、く……」
梨子は泣きながら一礼し、部屋を出る
絵里「……仲間内でこんなことを続けて、何か意味があるの?」
曜「……これで新選組の法度に例外はないとわかってもらえる」
絵里「……」
曜「隊士の気も引き締まるよ」
絵里「……曜のやり方には私は同意出来ないわ、これじゃ本当の鬼よ」
曜「鬼の副長……、名誉なことだよ」
千歌「絵里さん」
絵里「……」
千歌「これは強い新選組にするために必要なことです」
絵里「……そう」
絵里は立ち上がると部屋を後にする 千歌「……」
曜「……」
千歌「…っ、聖良さんっ、……うわああああああああんっ」
曜「千歌ちゃんっ、ごめんっ、ごめんねっ、……聖良さんっ……ごめんなさい……っ」
千歌「嫌だっ、嫌だよぉ……っ」
千歌と曜は声を上げて泣き崩れた ダイヤ「……」
鞠莉「……」
ダイヤ「鞠莉さん」
鞠莉「なに……?」
ダイヤ「私はこの先、何があっても最後まであの二人と共に行くつもりですわ」
鞠莉「あら、ダイヤはとっくにそのつもりだと思ってたけど」
ダイヤ「どこかで迷いはありました、穂乃果さんの件もありましたし」
鞠莉「私はそういうの気にしてないんだよねー」
ダイヤ「鞠莉さんは、まあ、最初からそうでしたわね」
鞠莉「私は梨子やダイヤ、善子ほどの腕はないけど、何か役に立てればそれでいいかなって」
ダイヤ「最後まで、鞠莉さんは千歌さんや曜さんの傍にいるのでしょうね」
鞠莉「んー、そうしたいけどー……、最後まで一緒にいるのはダイヤの方がいいと思うな」
ダイヤ「私ですか……?」
鞠莉「あの二人は色々と危なっかしいから、ダイヤがいた方がいいんじゃない?」
ダイヤ「最後まで、いれたらいいのですが……」
鞠莉「ダメよ?」
ダイヤ「え?」
鞠莉「ダイヤは私より先に死んじゃ、ダメだからね?」
山南敬助の切腹の噂がすぐに隊内、隊外に広まり、新選組はより恐れられた 新選組が揺れる中、各地でも大きな動きが起きる
しずく「ようやく、ここまで来ましたか」
愛「まったく、頭の固い人たちを排除するのに時間かかっちゃったよ」
しずく「でも、これで長州の実権は愛さんが握ったも同じですね」
愛「愛さんの趣味じゃないんだけどねー……」
しずく「それで、これからどうするんですか、おそらく幕府はまた……」
愛「愛さんちょっと派手にやり過ぎたからなー」
しずく「おそらく次は本格的に戦に……」
璃奈「大丈夫、勝てるよ」
しずく「璃奈さんっ?」
愛「あ、忘れてた、これからりなりーには奇兵隊の指導を任せたから」
しずく「上の人たちが絶対怒りますよ……」
愛「その辺はさ、しずくに任せたよ」 しずく「まずはそれなりの地位を与えないと……、それより勝てるというのは……」
璃奈「軍備の強化、とりあえず最新式の銃と軍艦が欲しい」
愛「だってさ」
しずく「そ、そんな簡単に言われても、長州にそれを用意するのは……」
愛「まあだよねー、そこで愛さん思いついたんだけど、やっぱりこれしかないかなって」
しずく「これ?」
愛「薩摩と同盟、ってどうめい?」
しずく「……そ、それは洒落なのですが、本気なのですか……?」
愛「本気だよ、もうこれしかない」
しずく「薩摩がそんなことをするわけないです、それに私は……絶対に嫌です」
愛「……ってわけだから、苦労するよ、ゆうゆ」
しずく「ゆうゆ……?」 その頃長崎では
侑「はろー!はろー!」
ミア「……歩夢、この人なの?」
歩夢「う、うん、是非って」
侑「あー、ないす、とう、みーちゅうー」
ミア「……」
侑「あれ?万次郎さんに習ったけど間違ってるかな」
ミア「いいよ日本語で、ボクは話せるから」
侑「あ、そうなの!?」
歩夢「改めて紹介するね、トーマス・グラバーさん」
ミア「よろしく」
侑「土佐の坂本龍馬です!よろしくね!」 ミア「なんか軽いな……、それで、なんでボクに会いに?」
侑「えっと、とりあえずね、イギリスの武器を大量に欲しいんだけど」
ミア「なっ!?」
歩夢「ゆ、侑ちゃん、完全に危ない人だよ、それじゃ……」
ミア「ボクは一応ただの商人で」
侑「あ、話は聞いてるから、そこは隠さなくて大丈夫だよ?」
ミア「歩夢……」
歩夢「侑ちゃんがどうしてもって……」
ミア「それで、武器を買ってどうするのさ……」
侑「んー、とりあえずうちの亀山社中で買受けて、あ、私が作ったカンパニーなんだけどね?」
ミア「それで?戦争でもする気かい?」
侑「それを長州に売ろうかなって」
ミア「……長州?キミが薩摩に厄介になってるんじゃ……」
歩夢「私は、えーっと、聞かなかったことにしようかな……」 侑「このままだと長州が幕府にやられちゃうからね」
ミア「つまり、武器の仲介販売業……」
侑「名義は薩摩藩でね」
歩夢「果林さんにバレたら怒られるかなー……」
ミア「まあボクとしても武器を買ってくれるのはありがたいよ、これから本格的な戦になると思って準備は……」
侑「ん?んー……、んー……」
ミア「?」
歩夢「あ、そうだ、侑ちゃんにもう一人紹介したい人がいて呼んでるんだけど」
侑「誰?」
歩夢「同郷の人だし、知ってるんじゃないかな?」
侑「同郷?」
ランジュ「ねえ!もう入っていいかしら?」
侑「あなたは……!!……誰?」 ランジュ「えっ!?嘘でしょ!?ランジュのこと知らないの!?」
侑「ご、ごめんなさい……」
ランジュ「こっちは武市のところに行く時に一度会ってるわよ!?」
侑「え、じゃあ土佐勤王党の人……?」
ランジュ「こっちは自由に動くあなたを見て、脱藩までしたのに!どういうこと!?」
歩夢「ま、まあまあ……、えーっと、こちら土佐の中岡さん」
ランジュ「中岡慎太郎よ、よろしくね、龍馬!」
侑「は、はあ……」
歩夢「話が合うんじゃないかなって、ランジュちゃんの目的も……」
ランジュ「薩摩と長州の同盟!ランジュの渾身の策よ!」
侑「え!?ランジュちゃんも同じことを!?」
ランジュ「え?」
ミア「ねえ、ボクの家で盛り上がるのはやめて欲しいんだけど……」 そして、京の都から少し離れた場所で
果林「本当に信用できるの?」
彼方「んー、会って損はないと思うなー」
果林「そうかしら、場合によっては敵に回すところが増えるんじゃない?」
姫乃「誰であろうと果林さんの敵なら斬ります」
果林「だめよ、まだ斬っちゃ」
彼方「大丈夫、斬れないと思うよー?」
姫乃「え?」
果林達は人里離れた場所に立つ屋敷へと入る
果林「……話に聞いてたけどすごいところにいるわね」
彼方「あれ?いないなー……」
姫乃「……庭に誰かいますね」
庭の方を見ると動物達を手懐けて遊んでいる人物の姿が目に入る
果林「……あれが異端の公家……」
彼方「そう、怪人、岩倉具視」
エマ「あ、彼方ちゃん、いらっしゃい」
彼方達に気付いたエマは動物達の元を離れて近付いてくる 姫乃「……殺気がまったくない……」
果林「警戒も何もしてないわね……」
エマ「警戒?だって、友達になりきたんだよね?警戒なんてしないよー」
彼方「紹介するよ、エマちゃん、こちらが噂の薩摩の西郷どんだよ」
エマ「あなたが西郷さんだねー、噂と違って可愛いねー」
姫乃「果林さんを馬鹿に……ひっ……」
姫乃が刀に手をかけるもエマと目が合い手が止まる
エマ「偉い偉い、ちゃんと物事が理解できる狼さんだねー」
果林「いいから、本題に入りましょう?それで、私に会う理由は何?」
エマ「簡単だよ、一緒にこの国を作り直さないかな」
果林「国を……」
エマ「うん、私たちともう一つ強い藩が加われば、新しい国を作れるよ」
果林「……」
彼方「そろそろ薩摩も動くべきだよ、果林ちゃん」
果林「……そうね、話を聞いても損はしないわね」 時間かかりましたが四部完です
近藤勇:高海千歌
土方歳三:渡辺曜
沖田総司:桜内梨子
山南敬助:鹿角聖良
永倉新八:黒澤ダイヤ
井上源三郎:松浦果南
藤堂平助:鹿角理亞
原田左之助:小原鞠莉
斎藤一:津島善子
島田魁:黒澤ルビィ
山崎丞:国木田花丸
伊東甲子太郎:絢瀬絵里
鈴木三樹三郎:絢瀬亜里沙
服部武雄:高坂雪穂
芹沢鴨:高坂穂乃果
新見錦:南ことり
平山五郎:園田海未
佐々木只三郎:小泉花陽
松本良順:平安名すみれ
坂本龍馬:高咲侑
中岡慎太郎:鐘嵐珠
トーマス・グラバー:ミア・テイラー
桂小五郎:桜坂しずく
高杉晋作:宮下愛
久坂玄瑞:優木せつ菜
吉田稔麿:三船栞子
大村益次郎:天王寺璃奈
小松帯刀:上原歩夢
西郷隆盛:朝香果林
大久保利通:近江彼方
中村半次郎:綾小路姫乃
宮部鼎蔵:紫藤美咲
岩倉具視:エマ・ヴェルデ
松平容保:矢澤にこ
一橋慶喜:西木野真姫 新選組が西本願寺へと屯所を移し、隊士の数も更に増えていった
千歌「ありがとう約束通り来てくれて!」
すみれ「ま、まあついでよ、ついで」
千歌「これが新選組の屯所だよ!」
すみれ「……すごいわね、この人数は……」
千歌「でしょ!?すごいでしょ!」
千歌とすみれが話をしているのを陰で花丸とルビィが覗いている
ルビィ「あの人、誰かな?」
花丸「知らないずらか!?医学所の松本良順先生ずら、日本一の医者ずら!」
ルビィ「そんなすごい人がなんでここに……?」
花丸「やっぱり千歌ちゃんはすごいずら……」 すみれ「それに予想以上の病人と怪我人ね……」
千歌「う、うん……」
すみれ「新選組には医者はいないの?」
千歌「えーっと、一応知識があるのが花丸ちゃんで……」
すみれ「花丸?」
花丸「は、はいっ!」
花丸が二人の元へと飛び出す
ルビィ「え!?あれ、花丸ちゃんいつの間に……」
すみれ「あんた医者なの?」
花丸「え、いや、家が医者というか……」
すみれ「まあどうせ漢方医ね、それじゃ仕方ないわね」
花丸「色々試したけど、病人がちっとも減らないずら……」
すみれ「……とりあえず、病人は部屋を分ける!これじゃ病気が広がる一方!!」
すみれ「それと病人の部屋もだけど、もっと清潔に!お風呂!お風呂入りなさいよ!それから……!」
千歌「ま、待って!え、えっと、曜ちゃーん……!」 *****
***
*
曜「なるほど、わかったよ、すぐに屯所内の部屋を分ける、それから浴室もちゃんと確保するね」
すみれ「私が言った通りにすれば多少はマシになるわね、それから……」
千歌「ま、まだあるの?」
すみれ「これだけ広いんだし、豚とか鳥を飼う気ない?」
千歌「え?」
すみれ「栄養がつくわ、欧米人は牛とかも食べるらしいわよ、だから身体が大きいの」
千歌「そうなの!?」
曜「なるほどね、ここで飼って食糧にすればいいんだ、残飯あるから餌はあるし、いいね」
ルビィ「あ、あのー……ここ一応お寺じゃ……」
すみれ「いいわよ、気にしなくて」
曜「うん、気にしなくていいね」
ルビィ「えー……」
曜「それじゃ、すぐに手配しよっかな」
すみれ「ええ、あとは一通り病人を診てあげるわ」
千歌「あ、あの、それじゃ……」
すみれ「ええ、真っ先に診てあげるわよ」 *****
***
*
すみれは診察を終えると千歌と曜と共に部屋を出る
すみれ「……労咳ね、かなり悪いわ」
千歌「そんな……」
曜「……」
すみれ「栄養をつけて、清潔にして……、なんとか持ち堪えればいいけど……」
千歌「……嫌だよ、もう誰も死んでほしくないのに……」
すみれ「私の弟子を今後も定期的に来させるから」
曜「ありがとう、色々と」
すみれ「危なかしくて、見捨てられないわよ、これじゃ……」
曜「だね……」 絵里「構え……、かかれっ!!」
「おおおおおっ!!」
屯所内で絵里の掛け声に合わせて隊士たちが一斉に動き出す
絵里「まだ乱れてるわ、もっと合わせて」
ダイヤ「これは、なんの訓練なのですか?」
絵里「曜が洋式軍隊のような訓練方法を新選組も取り入れたいって」
ダイヤ「……隊士全員が同じ動きをするのですね」
絵里「ええ、本当は銃の訓練もしたいらしいけど、そんなに集められないし、大砲で我慢してもらっているわ」
ダイヤ「あー……、それであの大砲ですか、最近は鞠莉さんの玩具になってますが」
絵里「完全に戦に向けて準備しているわよ、曜は」
ダイヤ「遅かれ早かれ、今の状況であればそうなるのでは?特に長州と」
絵里「そうね、でもこんな異国の軍隊の真似をしなくても……」
ダイヤ「曜さんはその辺りにこだわりはありませんわ、より効率よくですから」
絵里「局長と副長が言うから、私も出来るだけ期待には応えるつもりだけどね」
ダイヤ「このやり方、新選組としては向上しますが、手練れという人物は今後出てこないかもしれませんわね……」
絵里「……上のやり方に不満?」
ダイヤ「……そうではありませんが、聖良さんの件から曜さんの考えがわからなくなってきましたわ」
絵里「……そうかもね」 京の街で羽織を来て堂々と隊士を引き連れて果南と鞠莉、そして雪穂が歩いている
果南「久々の見回りは気持ちいいねー」
鞠莉「でもいいのかしら、幹部揃って見回りなんて」
雪穂「あの、私は一人でも……」
果南「いいからいいから、まだ雪穂は町に慣れてないでしょ」
鞠莉「それもそうねー」
雪穂「あれ、このあたりは新選組の範囲外では……」
果南「そうだっけ?」
鞠莉「そんなのあるの?」
雪穂「えー……」
雪穂(あ、あれ、もしかして私がこの中だとしっかりしないといけないのかな……)
凛「あー!新選組にゃ!」
鞠莉「何あれ?」
果南「さあ?」
雪穂「あれは……、見廻組ですね」 果南達の向かいから京都見廻組がぞろぞろと歩いてくる
凛「この辺りの警護は新選組じゃなくて京都見廻組の担当!」
果南「え?そんなのあったっけ?」
鞠莉「私は知らないから、ないんじゃない?」
雪穂「だ、だからさっき言ったはずじゃ……」
果南「んー、でも町ってみんなのものじゃない?」
鞠莉「流石、果南いいこと言うわね!」
凛「すっごい無視されてるにゃ……」
花陽「あのー……」
果南「あれ?確か、見廻組の」
花陽「佐々木です、ご無沙汰してます」
鞠莉「じゃあ、本当にこの人たち見廻組なのね」
凛「なんだと思ってたの!?」
花陽「えっと、こちらは見廻組に入った、今井信郎さんです、まだ正式じゃないんですけど」
凛「よろしくにゃ」 雪穂「ど、どうも」
果南「それで、本当にこの辺りってそっちの担当なんだっけ?」
花陽「え、ええ、そのはず……」
凛「かよちん!自信持つにゃ!」
雪穂「ほ、ほら、皆さん、間違えているのはこちらですから、行きましょう……!」
鞠莉「わかったってば」
果南「そうだね、ちょっと手練れ二人と喧嘩はやめておこっか」
花陽「……そちらは三人もいるのですから、不利はこちらですよ」
果南は隊士たちを連れて来た道を戻る
雪穂「あの二人、強いですね」
果南「だね、雪穂と同じくらいには出来るかもね」
雪穂「わ、私はそんな……」
鞠莉(んー、雪穂は自信がついたら梨子や善子並みに強くなりそうだけど、それはまだまだ先かしらね) 新選組屯所内で隊士の訓練を理亞が眺めている
ルビィ「理亞ちゃん、訓練しないの?」
理亞「……やる気出ない」
ルビィ「……」
理亞「姉様のこと、切り替えようとしても、……どうしても駄目」
ルビィ「理亞ちゃん……」
理亞「私はこの先、何を目指すべきか、道が見えない」
ルビィ「な、ならルビィと一緒に探そうよ、ルビィもこれからのこととか、わかんないけど……」
ルビィ「それでも必死に毎日頑張って……、みんなと一緒にいれるように……えっと……」
理亞「ルビィに励まされているようじゃ、私もまだまだね」
花丸「そうずら、ルビィちゃんはいい加減副長助勤になるずら」
ルビィ「花丸ちゃん!?いつの間に……」
理亞「この前もずっと旗を持ってただけでしょ」
ルビィ「だ、大事な仕事だもん!新選組はここだー!ってみんなに知らせるために……」
花丸「……確かに、遠くでもルビィちゃんが旗を振ってたらみんな気付くかも」
理亞「それじゃ、戦場で迷ったら旗持ち担当のルビィのところに行けばいいわけね」
ルビィ「旗持ち担当……ルビィも戦うよ!」
花丸「それじゃ旗を持つ人いないから困るずら」
ルビィ「そんなぁ……」 ルビィ達の様子を遠くで善子が眺めている
善子「……」
曜「善子ちゃん、何してるの?お腹痛いの?」
善子「くっくっく、我が妖刀が暴れ出すのを必死に止めているのです」
曜「……はあ」
善子「はあって!」
曜「妖刀はいいけど、あんまり斬りすぎちゃ駄目だよ」
善子「別に、不要なものは斬ってるだけよ」
曜「……まあ善子ちゃんは上手くやってくれるからいいけどさ」
善子「ねえ、梨子は」
曜「ん?部屋で休んでるけど?」
善子「……労咳なの?あの子」 曜「違うよ、そんなんじゃない」
善子「噂になってる、沖田は労咳で長くないって」
曜「誰がそんな噂を……」
善子「言いふらしてるのは谷」
曜「あー……」
善子「梨子がいなくなったら自分が一番隊任せられるとか本気で思ってそうよ」
曜「困るなー、仕方なく入れてるだけなのに……」
善子「それで、本当に労咳じゃないのね」
曜「違う」
善子「そう、それならいいわ」
善子は刀を手に取って歩き出そうとする
曜「善子ちゃん」
善子「……私は新選組、悪くないと思ってる、この私にふさわしい場所よ」
善子「でも、そこに不要なものは、私はいらない、新選組の邪魔をするのは特に」
曜「……そこまで善子ちゃんが新選組のこと好きとは思わなかったなー」
善子「式神の場所を守るのは使役する私の役目なのよ」
善子は刀を手に大袈裟な構えをとる
曜「はあ……、その妖刀、しっかり抑えといてよ?」
善子「出来る限りはそうするつもりよ、安心して」
善子はそのまま屯所の外へと去っていく
翌日、七番隊組長の谷三十郎が何者かに斬られて発見された 凜はやはり今井か
となると勝海舟と蝦夷勢も決まったようなもんか 新選組が内部で揺れる中、情勢は少しずつ動こうとしていた
ランジュ「それでね、ランジュとしては薩長が組んで幕府を討つのがいいと思うの」
侑「薩長が組むのはいいんだけど、後半はなー……」
ランジュ「もう!じゃあ他に何か方法があるのっていうの!?」
侑「それは……、考え中」
ランジュ「煮え切らないわね、いいわ、私は私で動くから!」
ランジュは席を立つとさっと部屋を出ていく
侑「参ったなー……」 愛「なんかすごい怒ってる人とすれ違ったんだけど、ゆうゆ怒らせちゃった?」
ランジュと入れ替わりで愛が部屋に入ってくる
侑「私が怒らせたわけでは……、あれ、でも私なのかな」
愛「やっぱり難航しそう?」
侑「……うん、でもこれしかないよ」
愛「そだね、薩長が手を結ぶ、これしか長州としては道がないんだよねー」
侑「ただなー、どうもすれ違うんだよね、しずくちゃんと果林さん」
愛「そこは上手くやってよ、得意だよね?」
侑「いや、そうは言っても……」 二人が話していると突然バタバタと足音を立ててある人物が部屋に慌てて入ってくる
かすみ「侑さーん!用意できましたー!」
侑「本当!?でかしたよ、かすみちゃん!」
愛「えーっと、誰?」
侑「あ、えっとね、仕事を手伝ってもらってる……」
かすみ「紀州藩の陸奥ですよー、侑さんの右腕と言っても過言とは言えない敏腕の」
侑「まあ、それは置いておいて……」
愛「それで用意って……、まさか」
侑「うん、頼まれてた最新式の銃、それに軍艦、用意したよ」
愛「嘘っ!?りなりーの無茶をまさか……」
侑「いやー、大変だったんだけどね」
かすみ「かすみんの交渉術でミア子を説得すること、三日!」
侑「まさか、三日間ずっと……」
かすみ「うんと言うまで付き纏ってました!」
侑「ミアちゃんに後で怒られそうだな、私……」 愛「とにかく、それが用意出来たなら、勝てるっ……、愛さん、最後の大暴れだ!」
侑「最後ってそんな……え?」
愛「愛さん、本当は新しい世の中っていうのも見たかったんだけどさ、ほら、他の子達だと不安じゃん?」
かすみ「え?え?」
愛「でも、まあ、愛さんの役目は引き継ぐことかな、だからさ、ゆうゆ、任せたよ」
侑「愛ちゃん……そんな、嘘でしょ……」
愛「多分、そんなに長くはないかな」
侑「……」
愛「このまま幕府と本格的にやり合って、薩摩と長州だけに任せちゃ駄目だよ、きっとおかしな方向に行っちゃうから」
愛「それは愛さんの面白い世の中とは違うからさ、だから、ゆうゆに託す、きっと導いてくれる」 侑「……無理だよ、私はそんな大それたことは……」
愛「大丈夫、出来るよ、一番いいと思った道がきっと正解だから」
侑「……」
愛「かすかす」
かすみ「え!?かすか、……かすみんですか!?」
愛「ゆうゆを守り切ってね、絶対に」
かすみ「……も、もちろんです!かすみんは侑さんに人生賭けたんですから!」
侑「重いなー……」
愛「さてと、愛さんの本気を幕府の見せてやろうかな!」
侑「……かすみちゃん、私たちも今以上に頑張ろう」
かすみ「了解です!しず子は私が説得して来ますっ!」
侑「なら、私は歩夢と一緒に果林さんを堕としてくるよ」 京にあるとある宿にて
ダイヤ「また長州ですか」
ダイヤが隊士に捕縛されている浪人を見て呟く
理亞「最近になってまた増えてる……」
ダイヤ「やはり、あの噂は……」
理亞「噂?」
ダイヤと理亞が話していると二階の方で叫び声が聞こえる
ダイヤ「……まるで鬼に出会ったような声ですわね」
梨子「もう……、そんな言い方」
梨子が仕事を終えて二階から降りてくる
理亞「二階はもう片付いたの?」
梨子「うん、大した数じゃないし」
ダイヤ(妙な噂もありますが、梨子さんは問題ないみたいですわね) 理亞「それよりさっきの噂って」」
ダイヤ「ああ、それは……」
花丸「長州と薩摩が手を組むという噂ずら」
花丸が床から顔を覗かせる
理亞「ひいい!?どこから出てくるのよ!?」
花丸「他に隠れてないか探索ずら」
梨子「そ、それより、本当なの、長州と薩摩が……」
花丸「あくまで噂なんだけど……、この前も長州の桂と、薩摩の西郷が会合しようとしたけど失敗したとかで」
理亞「でも噂でしょ?」
ダイヤ「単なる噂で私たちがここまで動きますか?」
理亞「それは……確かに」
梨子「少なくとも曜ちゃん達は可能性があると思ってるってこと?」
ダイヤ「ですわね」
花丸「おかげで監察は池田屋以来の大忙しずら」 *****
***
*
絵里「ここまで監察を動かす必要あるのかしら」
曜「まだ疑ってる?」
絵里「長州と薩摩の動きが曜の言う通り可能性は高いと思うわ」
曜「絶対あるよ、というか長州としてはそれ以外手がないよ」
絵里「ええ、でもその会合が京で行われるかどうかは……」
曜「それは千歌ちゃんの意見を採用したんだけどね」
絵里「え?」
千歌「んー、だって、長州と薩摩って仲悪いし、もし手を組むなら対等?じゃないと認めないよね?」
絵里「それは……そうね」
千歌「そしたら、お互いの藩で会合はしないんじゃないかな?私なら相手の場所に行ったら負けだと思うし」
千歌「かと言って、あまりに関係ないような場所とか地味な場所でやるのもあれだし……」
千歌「ならいっそ京でやる方が雰囲気あるし、いいかなって」 曜「私は結構良い線だと思ったんだけど、どう?」
絵里「……確かに言われてみれば京でやる他にないわね」
曜「でしょ?でも、その理屈だと薩摩藩邸では行えない」
絵里「それはそうね、それなら……」
千歌「桂さんと西郷さん、お互いの仲良い人の家とか?」
曜「……心当たりは?」
絵里「あるとすれば……、そうね……、……小松帯刀」
千歌「じゃあ、そこだ!」 *****
***
*
善子「で、なんで私なのよ……」
果南「いいじゃん、大役だよ」
小松帯刀の別邸近くで善子と果南が周囲を見張っている
善子「二人で見張ってると目立つ気がするけど」
果南「私は勝手に善子が斬らないようにする見張りだからさ」
善子「なっ……、斬るのは私じゃなくこの妖刀で」
果南「まあ、私が呼ばれるのは警告の意味もあるからね」
善子「うぐ……、一応私だって人は選んでるわよ、それにそっちだって暗殺ばっかりでしょ」
果南「私は言われた相手しか斬ってないよ」
善子「……嫌なのよ、大して何も出来ないのが新選組を汚すのが」
果南「気持ちはわかるけど、斬り方がバレバレだから気をつけなよ」
善子「わかってるっ!……なんかこっちに近付いているんだけど」
こちらに近付いてくる相手を見つけ善子は反射的に刀に手をかける 果南「落ち着いて……、あれは薩摩の」
果南は相手を見て慌てて善子を制止する
彼方「んー?誰かと思ったら新選組の人だねー」
果南(なんだっけ、薩摩の大久保)
彼方「彼方ちゃんと新選組は一応味方だよー」
果南「ま、そだね」
善子「失礼、見回りで私の妖刀が荒ぶっていたのよ」
彼方「うんうん、わかってるよー、お互い危害を加えるつもりはないよねー」
果南「それは、もちろん」
彼方「新選組の斎藤一に井上源三郎、とっても強いって有名だよね」
果南「よく知ってるね」
彼方「敵のことはよく調べるのは基本だからねー」
善子「敵って……」
彼方「流石に彼方ちゃんも、二人相手なんてすぐに斬られちゃうから何もしないよ」
彼方「でも、ここは薩摩藩邸も近いから、彼方ちゃんが呼べばたくさん薩摩兵呼べちゃうんだけどねー」
善子「ちょっと、さっきから何を……」 彼方「……案外、もういたりして?」
善子と果南が警戒すると既に背後に姫乃が構えていることに気づく
姫乃「……」
善子「いつの間に……」
果南「ほらね、私いて良かったでしょ」
善子「よくこの状況で冗談言えるわね……」
果南(まずいなー……なんとか善子だけでも逃して……)
歩夢「……彼方さん、遅いと思ったら何してるの」
彼方「お、歩夢ちゃーん、お出迎え?」
歩夢「……」
彼方「冗談だよー、何もしないってー」
姫乃「私は別にいつでも……」
歩夢「あんまり勝手なことすると果林さんにも言うよ?」
姫乃「っ……」
歩夢の言葉に姫乃が構えを解き引き下がる 歩夢「もう……、新選組の方々もすみません、うちの藩の者が」
果南「いやいや、別に」
歩夢「でも、ここは薩摩藩邸ではないですけど、立ち位置としては難しい場所で……」
歩夢「薩摩と幕府の関係も理解しているとは思いますが……」
果南「あー、私たちは、ほら下っ端だからそういうのよくわかんなくてさ」
歩夢「……とりあえず、今日のところは下がってもらえると」
善子は指示を仰ぐように果南を見る
果南(んー、ここで粘るのもなー……)
果南「そうだね、今日のところは」
善子「この辺に長州がうろついてるって噂があるんだけど、知らない?」
善子の言葉に歩夢や彼方、姫乃の動きが止まる
果南(おーい……、なんでさっき私見たんだよー……) 善子「それだけわかれば下がるわよ、長州の不逞浪士を捕まえればそれで仕事終わりなんだから」
彼方「んー、歩夢ちゃん、眠いからここは任せたよー」
歩夢「え、ちょっと、彼方さん!?」
彼方は姫乃を連れて家の中へと入っていく
歩夢「もう……、……そうですね、ここは私の個人的なお客さんも多いから……」
歩夢「でも、危険な人はいない、かな」
善子「あんまり答えになってないんだけど」
歩夢「私は争うのはあんまり好きじゃないけど、譲れないところはあるから」
善子「……んー……んー……、やめた、終わりでいいわ」
善子はそういうと小松邸とは反対の方向へと歩いていく
果南「え、ちょっと!?勝手だなー……、それじゃ、これで失礼するよ」
果南も慌てて後を追いかける
歩夢「……」 果南「ちゃんと我慢したね、偉い偉い」
善子「あそこで斬ってもいいけど、その後に千歌や曜に迷惑かかる方がすごい大きそうだからやめただけ」
果南「だね、流石にここまでだ」
果南「収穫としては……」
凛「かよちん、どうする?」
花陽「……ここは引いた方がいいかな……、あの後に見廻組も行くのはちょっと」
凛「にこちゃんに怒られるんじゃ……、あんた達!絶対に長州と薩摩の尻尾を捕まえないよ!って言ってたし」
花陽「んー、こればっかりは仕方ないよ」
凛「はあ……新選組に先を越されたにゃ……」
花陽「だけど、多分……」
果南&花陽「薩摩と長州は繋がってる」 *****
***
*
歩夢「さてと……、こっちはどう?」
侑「いやー、どうもこうも……」
小松邸では果林としずくが睨み合うように座り、中央でランジュが演説をしている
ランジュ「というわけで、薩摩と長州が組むことが倒幕への最善手ってわけよ!」
しずく「そこで長州が後になるのが気に入りません」
ランジュ「え、じゃあ長州と薩摩……」
果林「あら、頼るのは長州の方じゃないの?」
ランジュ「えー……」
歩夢「す、すごい空気……」
かすみ「もうー、しず子も意地張り過ぎだよ!」
しずく「必要な意地です、私は……、せつ菜さんと栞子さんのことを許したわけでは……!」
果林「片方は新選組でしょ?それにあの時はこっちも立場があったのよ」
ランジュ「もう!そんな過去より!今よ!今!ここで組まなきゃ幕府倒すなんて無理よ!」 彼方「難航するとは思ったけどねー」
歩夢「どうしよう、侑ちゃん……」
ランジュ「ランジュがここまで言ってるのに、わからない人たちね!このままで幕府を倒せるの!?」
果林「それが薩摩のためになるか微妙なところね」
しずく「こちらの台詞です、長州のためになるのか……」
ランジュ「そんなこと言ってる場合じゃ……」
侑「……二人とも、結局これからどうしていきたいの?」
果林「え?それは……」
しずく「私は、長州が生き残る道を……」
侑「そういう立場を捨てて、どうしていきたいのかってこと!」
しずく「それは……、この国が異国に負けない強い国を……」
果林「それは私も一緒よ、今のままじゃこの国は異国に侵略される、強い国にしないと」 侑「そうだよね!藩とか、幕府を倒すとかじゃなくて、新しい国を目指すんだよ!」
侑「藩とか言ってる場合じゃないんだよ、この国のためにどうするか、それが大事なんだよ!」
侑「そのためには藩なんていいんだよ!」
かすみ「そ、それは、言い過ぎじゃ……」
侑「だって、多分だけど、新しい国になったら藩とか言ってられないよ?」
かすみ「えー……」
侑「私はね、藩とか身分とか関係なく国を動かしていくべきだと思うだよ、んー、考えるだけでときめくなー!」
歩夢「侑ちゃん、侑ちゃん、自分の世界に入らないで……」
ランジュ「というわけだけど、二人の考えは?」
しずく「……一番の目的は新しい国作り、それは変わりません」
果林「藩とか、言ってる場合じゃない、わね」
しずく「遺恨がすべてなくなったわけではありませんが」
果林「お互いの大きな目的のためにここは手を組むのが得策ね」
ランジュ「きゃあ!それじゃ、同盟成立ね!」 かすみ「はっ、侑さん!話終わりそうです!戻ってきてくださいー!」
侑「それじゃ、二人とも!」
侑はしずくの手と果林の手を引っ張って手を握らせる
果林「ち、ちょっと!?」
しずく「な、何をっ」
侑「欧米では話し合いがまとまったら、シェイクハンド!あ、ハグの方がいいのかな?」
果林「は、はぐ?」
侑「そう!抱き合うの!」
しずく「だ、抱くっ!?は、破廉恥です!!」
侑「え?」
こうして不可能と思われた薩長同盟がここに成立した >>1です
なかなか休めず、書けないのでもう少し待ってください… >>1ですが、せっかくの休みも疲れ切って書く気力が起きない状態です
もう少し仕事が楽になれば… この状態じゃ気が向いたときにイチが新スレ立てたほうが良いかも
だいぶ埋まってきたし お待たせしてます>>1です
ようやく仕事が落ち着いたのでもうすぐ復帰してなんとかスーパースター始まる前になんとかしたいと思ってます
追加の5人をどうするか全く思いつかないので
期間も空いたので新しくスレ立てて再開する予定です
長い間保守してもらいありがとうございました ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています