かすみ(25)「かすみんって呼ばないでください」
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かすみ「みーんなー!」
かすみ「宇宙一可愛い、スクールアイドルのかすみんだよ〜!」
かすみ「かすみんがみーんなをきゅん、きゅん! させちゃうよぉ〜!」
かすみ「応援してねっ!」
かすみ「えへっ!」ニコッ
ピピピピピピッ!! ──ピッ
かすみ(25)「……」
かすみ「はぁ……」
かすみ「最悪」
──その日の目覚めは、最悪な気分だった。 かすみ「ごちそうさまでしたっ」
かすみ(さて、今日は何をしようかな)
かすみ(そろそろオーディション、受けないとだから)
かすみ(今日はオーディションを探してみよっかな)
かすみ(その後ダンスの練習をして、夕方にりな子の所に行ってお仕事のお手伝いをしよう。よし、決まり)
お皿を洗いながら、今日のプランを考える。
毎日の自分の行動を決めて、動く。無気力だった頃と比べたら、毎日が充実し始めたと思う。
──そんな事を考えている時だった。
インターホンが鳴る。
かすみ「え? はーい」
別に声は届かないのは分かってるけど、返事をする。
そのままテレビドアホンで相手を確認する。
宅急便のようだった。
かすみ(なんだろ?)
とりあえずそのまま出て、対応する。
届き物は小さな箱。すごく軽い。何も入ってないんじゃないかってくらい軽い。
──時間指定便の物だった。
かすみ「!!」
この荷物を送ってきた人物は──歩夢先輩だった。
私はすぐに中身を開け、確認する。
かすみ「え? はがき?」
箱の中身は、まさかのはがき。
かすみ「なんでわざわざ……」
疑問点多数あり。とりあえず裏面を見ると、そこにはQRコードが印刷されていた。 かすみ「え? 何これ?」
かすみ「こわ……」
とりあえずスマホでQRコードを読み取ることにした。
わざわざ歩夢先輩が送ってきたんだ。何かあるはずだ。
表示されたURLは動画サイトのものだった。そのままアクセスする。
アクセスすると、そのまま自動で動画が再生される。
動画タイトルは──『夢を追う人達へのお知らせ』というものだった。
つい先程upされたものなのに、既に数万再生されている。歩夢先輩が人気なのは知っているが、動画サイトで見るとそれが数字として現れている。
悔しいけどすごいや。
歩夢『動画を観ている皆さん、こんにちはっ!』
歩夢『上原歩夢です』
歩夢『今日は皆さんに告知したい事があって、この動画を投稿しましたっ』 アラサーの音楽教師がアイドルプロデュースしますって何言ってんだって話だよ これ侑は最初からかすみの事好きだろw
マジで面白いわ
毎日の楽しみ この作品に関しては恋愛沙汰なく最後まで行って欲しい感じある 歩夢を侑キチにはすんなよな
もししてたら書き直せよ 歩夢『タイトルにもある通り、夢を追う人達への大切なお知らせがあります』
歩夢『この度、私が所属するプロダクションが新たなアイドルタレントを募集することになりました』
かすみ「!?」
歩夢『オーディションがありまして、その詳細内容と募集要項は動画概要欄のURLにて確認できますので、みてくださいっ』
歩夢『これは──夢を追っているが、中々叶える事が出来ない方。一度夢を諦めたけれど……もう一度追いたい方などの夢をサポートする為のプロジェクトです』
歩夢『第一、第二、最終選考の3回のオーディションがあります。そしてなんと、最終選考は地上波で全国生中継!』
歩夢『当日のサプライズもありますっ』
歩夢『夢を追う全ての方々。是非とも参加をお待ちしております!』
歩夢『お知らせは以上ですっ。ご視聴ありがとうございました! またね〜』フリフリ
そこで動画が終わる。
たった30秒の動画。私はそれを観終わってすぐに、歩夢先輩へ電話を掛けた。
──忙しいかもしれない? そんなの考慮する余裕は無かった。
歩夢先輩は、ワンコールで電話に出た。 歩夢『もしもし?』
かすみ「どういうことですか」
歩夢『何がかな?』
かすみ「しらばっくれないでくださいよ」
かすみ「わざわざ時間指定便であんなの送って来て……ワンコールで電話に出て……全部狙ってやってますよね?」
歩夢『ん〜たまたまなんじゃない?』
かすみ「へぇ、なら歩夢先輩は相当暇人なんですね?」
歩夢『ううん。忙しいよ? 今だってドラマの撮影中だもん』
かすみ「ならこんな電話に出ないでそっちに集中してくださいよ」
歩夢『今は休憩時間中なの。私が一言休憩したいって言うと、皆すっごく気を遣い始めるの』
歩夢『なんでだろ? 不思議だよね〜』
かすみ「…………」
かすみ(分かってて言っているのか、本当に分かってないのか……)
かすみ(歩夢先輩の行動の意図が、全く分からない) かすみ「歩夢先輩」
かすみ「はがきの裏にあったURLからあの動画観ましたよ。本当に、何がしたいんですか?」
歩夢『誰でも参加できるし、かすみちゃんにとっても良い話かな? って思ってね』
かすみ「……それでわざわざ私の家までお知らせを送ってきたんですか? 時間指定便まで使って」
歩夢『予約投稿の時間に合わせたの。それにちゃんと荷物として送った方が時間指定守ってくれる気がしたし』
歩夢『どの道このプロジェクトの内容はかすみちゃんの耳に入ったと思うよ? 地上波でも宣伝するみたいだし』
かすみ「…………」
歩夢『ちょっとした優しさだよ。あんまり気にしないで』
かすみ「気にするに決まってるじゃないですか」
かすみ「そもそも言いたいことは沢山あるんですよ」
かすみ「なんです? あのタイトル。『夢を追う人達へ大切なお知らせ』って名前なのに、募集している人達を絞りすぎだと思うんですけど? タイトル詐欺です」
歩夢『あのタイトルの方が色々な人に観てもらえて再生数が稼げるってマネージャーが言ってたよ?』
かすみ「ずるじゃん……」
歩夢『世の中そんなもんだよかすみちゃん』 歩夢『それで、参加する気はあるの?』
かすみ「……参加しない理由が見つかりません」
歩夢『そっか。なら頑張ってね』
歩夢『全国のアイドルを目指す若者達が集まるだろうから、何十万人が参加するんじゃない?』
歩夢『その中で最終選考に選ばれるのは30人。中々厳しいよ?』
かすみ「……言っちゃっていいんですか? それ」
歩夢『かすみちゃんが周りに言いふらさなきゃ良いだけだよ』
かすみ「…………」
かすみ「歩夢先輩」
歩夢『どうしたの?』
かすみ「昔のあなたは、何事にも一生懸命ぶつかってて、必死に頑張っていました」
かすみ「そんな所がすっごく可愛いって思っていました」
かすみ「でも、今のあなたはどこか余裕ぶっていて、達観した態度で」
かすみ「なんか……面白くなさそうです」
歩夢『…………』 かすみ「このプロジェクトを教えてくれた事、お礼は言います。ありがとうございます」
かすみ「ただ、その余裕な態度が取れないくらい……私は立派なアイドルになりますから。あなたを追い抜く」
歩夢『うん。楽しみにしてるね』
かすみ「……」
歩夢『あと、これだけ言っておくね』
かすみ「はい?」
歩夢『私も最終選考で皆を審査する側なの』
歩夢『かすみちゃんが最終選考まで残れるか分からないけれど』
歩夢『中途半端な仕上がりだったりしたら』
歩夢『容赦なく落とすから』
かすみ「!!」
歩夢『それじゃあまたね、かすみちゃん』
そこで歩夢先輩との電話が切れた。
かすみ「…………」 歩夢「…………」
コンコンコン ガチャ
しずく「歩夢さん? 監督達がそろそろ再開したいって仰ってましたよ?」
歩夢「あっ、しずくちゃん。うん。分かった」
歩夢「戻ろっか」
しずく「はい!」
歩夢「そうだしずくちゃん。今度の7月29日、スケジュール空いてたりする?」
しずく「え? 今から1ヶ月と少し先ですね……多分空いてますよ?」
歩夢「ならさ、テレビに出ない?」
しずく「へ?」
歩夢「私が企画したプロジェクトの最終選考が生中継されるの。ゲストとして呼ぶよ?」
しずく「え? へ?」
歩夢「ふふっ」
歩夢「多分、面白いのが見れるよ」
・
・
・ 続きはよる!
最近寝落ちしてばかりで更新遅くて申し訳ないです!! さらに面白くなってきたやんけ!!
乙です!続きもゆるゆるまってます さらに面白くなってきたやんけ!!
乙です!続きもゆるゆるまってます 乙、かっすの挫折と再起って王道展開最高やね
めっちゃ面白いけど俺には一抹の不安が頭から離れないのは何故だろう…
普通にハッピーエンドでかすみんと俺の脳を破壊する展開になったりしないよね…? 中途半端な仕上がりなら最終選考まで残れないと思うのですがそれは 乙、かっすの挫折と再起って王道展開最高やね
めっちゃ面白いけど俺には一抹の不安が頭から離れないのは何故だろう…
普通にハッピーエンドでかすみんと俺の脳を破壊する展開になったりしないよね…? 乙、かっすの挫折と再起って王道展開最高やね
めっちゃ面白いけど俺には一抹の不安が頭から離れないのは何故だろう…
普通にハッピーエンドでかすみんと俺の脳を破壊する展開になったりしないよね…? かすみは本当ええ人達と出会えたねー。SSに言うのもなんだがここまで親身になってくれる人なんてなかなかいないよね。居ても小中の友達くらいやんね、高大の友人とかはなんか表面だけの付き合いばっかりや うわー!めちゃ面白くなってきてるやん!続きが楽しみすぎる!! 侑「へぇ、そんな事があったんだね」
夕方、りな子の動画の手伝いが終わって今は夜。自由な時間である。
私と侑先輩はレンタルスペースに来て、ダンス練習をするために柔軟体操をする。侑先輩はお手伝いに来てくれたんだ。本当にありがたい。
そんな中、今日起きた話の内容を全て侑先輩に伝え終わったという状況である。
かすみ「そーなんですよ!! 歩夢先輩、ぜぇったい全部わかった上でこのはがき送って来ましたよ! これだけ準備すれば、必ず私がこのオーディション受けるって!」
侑「まぁまぁかすみちゃん。多分歩夢なりの思いやりだよ?」
かすみ「回りくどいんですよやり方が! 普段忙しいのかもしれませんが、これだけ手が込んでるやり方するなら直接会いに来て内容を伝えた方が絶対楽に決まってます!!」
かすみ「それに……学生の頃なら……絶対直接渡してくれたと思うのに……」
侑「なるほど」
侑「かすみちゃんは歩夢が変わっちゃったんじゃないかって思ってて、寂しいんだね?」
かすみ「!!」
かすみ「そう……かも、しれません……」
侑「かすみちゃん、歩夢に懐いてたもんね」
かすみ「な、懐いてないです!!」
侑「そっかそっか〜。私も歩夢の後輩だったらかすみちゃんと同じように懐いてたんだろうなぁ」ニコッ
侑「想像しただけでときめいちゃう」
かすみ「だから懐いていませんってばぁ!!」
何故か頭をなでなでされる。
本当に子供扱いされてばかりだ。これは一生変わらないのかもしれないなぁ。 侑「かすみちゃん」
侑「歩夢はスクールアイドルの時とあんまり変わってないよ?」
かすみ「へ?」
侑「確かにあの頃と比べると落ち着いたし、慌てる事も無くなったけど」
侑「あの頃と一緒で、優しい歩夢のままだよ」
かすみ「……幼なじみ贔屓してません?」ジトー
侑「あははっ、してないよ〜」
かすみ「むぅ……」
侑「とりあえず、そのオーディションには参加するんだよね?」
かすみ「当然です。もうエントリーも済ませてあります」
かすみ「最終選考まで残ってる期間は1ヶ月とちょっとですし、第一選考まではあまり時間もありません。気合い入れて練習して!」
かすみ「ぜぇ〜〜〜〜〜ったい!! 最後まで残りますから!!」
侑「うん。気合いも充分だね。──よし、柔軟体操も終わり!」
かすみ「せんぱい! ありがとうございますっ!」ニコッ
侑「いえいえ」ニッコリ 侑「選考の内容とかってもう発表されてたりするの?」
かすみ「えっと、まず第一選考でビジュアルとポージングを見てもらいます。それが突破出来たら、第二選考で体力トレーニング及びダンスで審査されます」
かすみ「最終選考は、地上波生中継の場で歌と踊りを披露するという内容らしいです」
侑「第一選考でかなり絞ってきそうだね……」
かすみ「はい」コクリ
侑「でも、それなら第二選考突破に向けたメニューを組んで準備しないとだね」
かすみ「へ?」
侑「かすみちゃんの可愛さなら、第一選考は難なく突破できるよ」ニッコリ
かすみ「ッ!!////」
かすみ「と、当然です!! わ、私は宇宙一かわいいんですから!////」
侑「うん!」
胸を張るが、顔の熱さは治まらない。
こういう事平気で言うんだから。この人はほんとにもう……。 かすみ「とにかく、今は出来ることを全力でやります」
かすみ「その為に、秘策も考えてきました」
侑「え? 秘策?」
かすみ「はい」
prrrrrr!!
かすみ「あっ、早速連絡が来た。侑先輩、出ていいですか?」
侑「え? うん。大丈夫だよ?」
かすみ「ありがとうございます」ピッ
かすみ「あっ、もしもし? 着いた? ──うん。そう、201のレンタルスペースだよ〜。ありがと。うん。鍵は開いてるからそのまま入って大丈夫だよ?」
侑「……」
ガチャッ
侑「──え!?」
スタスタ
遥「こんばんは! かすみちゃん、侑さん!」
侑「は、遥ちゃん!?」
かすみ「はる子、急にこんな事お願いしてごめんね? 必ずお礼はするから」
遥「ううん。全然大丈夫ですよ! かすみちゃんが本気でアイドル目指してるってお姉ちゃんからも聞いてたし、かすみちゃんは大事な友達だもん。お安い御用です」ニコッ
侑「か、かすみちゃん!? これどういう状況!?」
かすみ「私からはる子にお願いしたんです。ダンスレッスンをしてほしいって」
遥「頼まれましたっ」
侑「ま、マジか」
かすみ「この短い期間でもっと自分を仕上げる為には、なりふり構っていられません。やれる事は全部やります」
かすみ「こうでもしないと、国民的アイドルである上原歩夢には追い付けない。天才の手を借りて、そのスキルを自分のモノにしないといけません」
かすみ「生活面でも、バランスの取れた今後の食事メニューをこちらに書いてまとめました。ダンス練習だけでなく歌の練習も、もっとやります」スッ
かすみ「もう一度、夢に向かって──全力で努力します」
侑「かすみちゃん……」 この歩夢かすみのこと大好きすぎ
侑ちゃんのことより好きそう 侑「色々……考えたんだね」
かすみ「はい」
かすみ「もう、引っ張られるだけでなく……自分から動くって決めました」
かすみ「絶対に──アイドルになります!」
かすみ「だから、よろしくお願いします」ペコリ
侑「……わかった!」
侑「出来ることはなんでもするからね、かすみちゃん!」
かすみ「はい! ありがとうございます!」
かすみ(待ってて下さい、歩夢先輩)
かすみ(必ず、最終選考まで残って)
かすみ(ビックリさせちゃいますからね!!) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
私には、大好きな子達が沢山いる。
幼馴染の侑ちゃんは勿論、私にスクールアイドルを始めるきっかけを作ってくれた優木せつ菜ちゃんこと中川菜々ちゃん。
しずくちゃん。璃奈ちゃん。エマさん。彼方さん。果林さん。そして──かすみちゃん。
私は同好会メンバーの皆が大好き。あの子達との日々は、かけがえのない宝物。
その中でも、特に印象に残っている思い出がある。
かすみ『ちーがーいーまーすー!』
かすみ『歩夢先輩! こうです! えへっ』キャピ
歩夢『え、えっとぉ……え、えへっ?』
かすみ『笑顔が硬すぎなのとポーズもぎこちないです!』
歩夢『む、難しいよぉ!!』
かすみ『難しくないですよ! 歩夢先輩、可愛いんですから自信もってください』
歩夢『へ!? か、かわいい?』
かすみ『まぁ、かすみんが一番可愛いですけれど!』エッヘン
歩夢『…………』
侑ちゃんはよく私の事を可愛いって言ってくれた。
けど、あんまり他の人達からは言葉にして言われた事がなかった。
だから、恥ずかしくもあったけれど──
歩夢『えへへっ、ありがとう! かすみちゃん』ニコッ
かすみ『!! ──その笑顔ですよ、歩夢せんぱいっ!』
歩夢『へ?』
──嬉しかった。恥ずかしかったけれど、ね。 かすみ『せ〜んぱ〜い〜! スクールアイドルに興味がおありなんですかぁ〜?』
かすみ『かすみんは生徒会に目をつけられているので……』
かすみ『この前、かっわいい〜写真が撮れたんですぅ! 歩夢先輩、見てくださいっ!』
かすみ『特訓しましょう……! 歩夢先輩……!!』
かすみ『仲間だけどライバル……仲間だけどライバルですよぉ!!』
いつも自分が一番可愛いと自信たっぷりで、何事にも全力でぶつかっていたかすみちゃん。
本当に可愛くって、大切な後輩であると同時に──憧れの子だった。 歩夢『誕生日おめでとうかすみちゃん! はい、プレゼント』
かすみ『あ……ありがとうございます……』
歩夢『他に何かしてほしい事とかない?』
かすみ『してほしい言葉に……』
かすみ『にひひひ……何でもいいんですかぁ〜?』ニヤニヤ
歩夢『うん! 何でも言って!』
かすみ『……』ポカーン
かすみ『……歩夢先輩と話していると調子が狂います……』
かすみ『かすみんが悪い子みたいじゃないですか……』
歩夢『え?』
──思い出は、沢山ある。
「おーい。歩夢ちゃ〜ん?」
歩夢「へ?」ハッ
歩夢「あっ……マネージャー……」
歩夢「ごめんなさい。うたた寝してしまってました」 「別にええんやけど……大丈夫? 疲れ溜まってきてる?」
歩夢「いえ、大丈夫です。本当に少しだけうたた寝してしまっただけですから」
「そっかぁ。まぁ、何かあったらすぐに相談してなぁ?」
歩夢「はいっ!」ニコッ
「それにしても歩夢ちゃん、寝てる時良い笑顔だったけど何か良い夢でも見てたん〜?」ニヤニヤ
歩夢「……秘密ですっ」
「えぇ〜? ウチにだけ教えて? ね?」
歩夢「ダメです。秘密」バッテン
「ちぇ」
歩夢「…………」
──本日、7月29日。
オーディション最終選考の日。
オーディション参加人数──24万人。
最終選考に選ばれたメンバー、30人。
歩夢「…………」ペラッ
名簿表を確認すると、見知った子の名前がある。
──中須かすみ。
歩夢(よく残ってくれたね。あなたの今の底力を、私に見せてね)
歩夢(かすみちゃん)
オーディション最終選考が──もうすぐ始まる。 マネージャーが関西弁ってだけで希で脳内再生されてしまう… 1年→3年って順番で並べてるし普通に抜け落ちたんだろうな 「各学年3人ずつ」とインプットされてるから虹2年が侑含めて4人という事を失念しやすい
私も以前うっかりせつ菜を書き忘れた事があった これ三部作でしょ?
歩夢もいい仕事してる。
才能あってもそれを活かす努力をしなければ伸びないし、長くは居られない。
栗東CWコース、一杯追伸びる、だよ。
やっぱり歩夢はいいな。
我が妻だけはある。 >>556 内容修正。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
私には、大好きな子達が沢山いる。
幼馴染の侑ちゃんは勿論、私にスクールアイドルを始めるきっかけを作ってくれた優木せつ菜ちゃんこと中川菜々ちゃん。
しずくちゃん。璃奈ちゃん。愛ちゃん。エマさん。彼方さん。果林さん。そして──かすみちゃん。
私は同好会メンバーの皆が大好き。あの子達との日々は、かけがえのない宝物。
その中でも、特に印象に残っている思い出がある。
それは、後輩のかすみちゃんとの日々。
かすみ『ちーがーいーまーすー!』
かすみ『歩夢先輩! こうです! えへっ』キャピ
歩夢『え、えっとぉ……え、えへっ?』
かすみ『笑顔が硬すぎなのとポーズもぎこちないです!』
歩夢『む、難しいよぉ!!』
かすみ『難しくないですよ! 歩夢先輩、可愛いんですから自信もってください』
歩夢『へ!? か、かわいい?』
かすみ『まぁ、かすみんが一番可愛いですけれど!』エッヘン
歩夢『…………』
侑ちゃんはよく私の事を可愛いって言ってくれた。
けど、あんまり他の人達からは言葉にして言われた事がなかった。でも、かすみちゃんはわりと私の事を可愛いと言ってくれた。
だから、恥ずかしくもあったけれど──
歩夢『えへへっ、ありがとう! かすみちゃん』ニコッ
かすみ『!! ──その笑顔ですよ、歩夢せんぱいっ!』
歩夢『へ?』
──嬉しかった。恥ずかしかったけれど、ね。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
7月29日。ついにこの日がやってきた。
朝起きた時、つい寝坊したと思ったけれどいつもより2時間早く目が覚めてしまった。
目覚ましのアラームが鳴るはるか前に起きてしまう事に、あぁ……私は緊張しているんだなぁという正直な気持ちを実感させられる。
第一、第二選考と毎回こんな感じだった。
──本日、ついに最終選考。
現場入りも終わり、広い会場に最終選考メンバーとして残った30人が集まり、一列に並ぶ。
かすみ(ついに、ここまで来たんだ)
かすみ(やれる事は、全部やりきった)
かすみ(出来るとこを、全力で努力した)
かすみ(頑張ろう、中須かすみ)
胸に手を当て、静かに深呼吸する。
そうこうしていると──会場に歩夢先輩がやってきた。
歩夢「皆さん、こんばんは。上原歩夢です」
歩夢「ここまで本当に頑張ったね。皆さんにはまず、最終選考まで残れた事に誇りを持ってほしいかな。あなた達は24万人の中から選ばれたファイナリストです」
歩夢「本当におめでとう」ニコッ 本日の夜完結予定です。日は跨ぐ可能性ありますがよろしくお願いします。 >>558 誤字修正
歩夢『誕生日おめでとうかすみちゃん! はい、プレゼント』
かすみ『あ……ありがとうございます……』
歩夢『他に何かしてほしい事とかない?』
かすみ『してほしい事……』
かすみ『にひひひ……何でもいいんですかぁ〜?』ニヤニヤ
歩夢『うん! 何でも言って!』
かすみ『……』ポカーン
かすみ『……歩夢先輩と話していると調子が狂います……』
かすみ『かすみんが悪い子みたいじゃないですか……』
歩夢『え?』
かすみ『そうですね! なら、今日かすみんと遊んでくださいっ!』
かすみ『朝から夜まで、いっぱい遊びましょうっ』
歩夢『うんっ! いいよっ』ニッコリ
──思い出は、沢山ある。
「おーい。歩夢ちゃ〜ん?」
歩夢「へ?」ハッ
歩夢「あっ……マネージャー……」
歩夢「ごめんなさい。うたた寝してしまってました」 >>578 誤字修正
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
7月29日。ついにこの日がやってきた。
朝起きた時、つい寝坊したと思ったけれどいつもより2時間早く目が覚めてしまった。
目覚ましのアラームが鳴るはるか前に起きてしまう事に、あぁ……私は緊張しているんだなぁという正直な気持ちを実感させられる。
第一、第二選考と毎回こんな感じだった。
──本日、ついに最終選考。
現場入りも終わり、広い会場に最終選考メンバーとして残った30人が集まり、一列に並ぶ。
かすみ(ついに、ここまで来たんだ)
かすみ(やれる事は、全部やりきった)
かすみ(出来ることを、全力で努力した)
かすみ(頑張ろう、中須かすみ)
胸に手を当て、静かに深呼吸する。
そうこうしていると──会場に歩夢先輩がやってきた。
歩夢「皆さん、こんばんは。上原歩夢です」
歩夢「ここまで本当に頑張ったね。皆さんにはまず、最終選考まで残れた事に誇りを持ってほしいかな。あなた達は24万人の中から選ばれたファイナリストです」
歩夢「本当におめでとう」ニコッ 誤字ばかり……
愛さんの名前も流れで書いてたら抜け落ちてました。申し訳ない
指摘して頂きありがとうございました!! >>465
そんなもん気にしてるのお前だけだぞクソガイジ 歩夢「本日のオーディションの内容は、前に通知していた通りです。皆さんにはこの場で歌とダンスを披露してもらいます」
歩夢「世に出回っている既存曲でもいいですし、自分の作ったオリジナル曲でも、なんでもいいです」
歩夢「そして、これはこの後生中継が始まります。長丁場になるかと思うから、少しでも体調が悪くなったりしたら遠慮せずにすぐに言ってください」
かすみ(テレビでそんな情けない姿晒したくないけどね)
歩夢「ちなみに、今日の最終選考の結果なのですが」
歩夢「本日その場で確認できます」
かすみ「!?」
歩夢先輩のその一言で、会場が少しザワつく。 歩夢「歌とダンスの披露後に、点数が付けられます」
歩夢「その点数の付け方なんだけれど……スタッフさん、ごめんなさい。ステージの幕をあげてください」
一列に並ぶ私達の後ろにあった幕が開放される。──そこには多くの人達が椅子に座り、私達を見つめている。
何だか、その人達はソワソワしている。早く声を出したいって雰囲気が漂っている。
歩夢「別所で募集していた、あなた達の歌を本日現地で聞いて頂けるお客様です。この方々は1人1ポイントずつ持っていて、皆の歌を評価できるの」
歩夢「一人ずつ、歌う度に集計時間が用意されていて、お客様が毎回点数を付ける。皆さんの歌が良いと感じたらポイントを入れる。その合計点が90点を越えたら」
歩夢「最終選考突破。合格です」
歩夢「この方々の人数は合計で90人。つまり全員から評価されて点数を入れてもらえれば合格って事だね」
かすみ(簡単に言わないでほしい。全員からって……)
歩夢「簡単に言うなって思うよね?」
かすみ「!!」ドキッ
歩夢「流石に厳しすぎるので、救済処置として」
歩夢「私も皆を点数で評価するよ。私の持ち点は10点。つまり、80人の方から点を入れてもらって、私が良かったと思って10点を入れたら」
歩夢「その時点で合格となります」
歩夢(まぁ、本当は30点くらい私が持ちたかったけれど……止められたんだよね) 歩夢「まぁ、ここまで長く説明したけれど、やる事は単純だよ」
歩夢「歌って踊って、皆に認めてもらい評価してもらえばいい」
かすみ「…………」
歩夢「皆さんには、期待してます」
歩夢「無事このオーディションに合格して」
歩夢「私が所属する新しいアイドルタレントとして──新たな人生を歩もうね」
かすみ「…………」グッ
拳を握り、気合を入れる。
──絶対に、合格してみせる。
自分の為に。今まで、支えてくれたみんなの為に。侑さんの為に。
絶対、夢を叶えよう。
歩夢「さぁ、もうすぐ生中継も始まります」
歩夢「各自、夢を叶える準備をしてねっ」ニッコリ
・
・
・ 歩夢「テレビの前の皆さん! こんばんは〜!」
歩夢「上原歩夢です」
歩夢「本日は、アイドルになる夢を叶える為に、全国から集まった若き精鋭達の努力する様子が生中継されます」
歩夢「ご視聴中の皆さんも、応援してくれたら嬉しいですっ!」
歩夢「では、みんな──入場をお願いします!」
事前にリハーサルのあった様に、進行していく。
メンバーが一列に綺麗に並びながら歩き、入場し終える。
かすみ(よし、綺麗に並べた)
かすみ(この様子がテレビに映ってるんだよね?)
かすみ(流石に……緊張する……)
バクバクと、心臓が鼓動する。
でも、それと同時にワクワクもした。
まるで、ライブ前の緊張感。この感覚を味わうのは久しぶりだった。
スクールアイドルの時にいつも味わっていた、この感覚。
──堪らない。
かすみ(早く──歌いたい) 歩夢「さぁ、メンバーの入場も終えまして」
歩夢「本日、この番組の進行をサポートしてくれるゲストの紹介も致します」
歩夢「入場してくださいっ」
スタスタスタスタ
かすみ「!?」
しずく「テレビをご覧の皆さん、こんばんは。桜坂しずくです」
しずく「本日は番組進行を上手にサポート出来るよう、精一杯頑張りたいと思います。よろしくお願いしますっ」ニコッ
かすみ(し、しず子!? ──ゲストに呼ばれるだなんて、聞いてないよ!?)
しずく(かすみさん、すっごいおめめをぱちくりさせてる。ごめんね、内緒にしなきゃいけなかったの!)
歩夢「桜坂さん、本日はよろしくお願いしますね」ニコッ
しずく「はい!」ニッコリ
歩夢「──あと、もう一人いらっしゃいます」
歩夢「本日のサプライズなのですが、伝説の方をゲストとしてお呼び致しました。なんと、司会進行をして頂けるとの事です」
歩夢「入場、お願いします!」
かすみ(で、伝説……?) タッタッタッタッタ!!
「みなさーん! こんにちはー!!」
かすみ「!?!?!?」ビクッ!!
穂乃果「シンガーソングライターの、高坂穂乃果でーす! 本日は司会進行として頑張ります!」
穂乃果「オーディションを受けるみんな!」
穂乃果「ファイトだよっ!」
かすみ(こ、高坂穂乃果さん!?)
かすみ(スクールアイドルが目指す祭典、ラブライブで優勝を果たした……誰もが憧れるグループのμ'sのリーダー!)
かすみ(今や世界で評価されるシンガーソングライターで、本当に伝説の方だ!)
皆、生中継という事を忘れてザワついている。驚きが隠せない気持ちは分かる。
中には感動して泣いている子までいる。気持ちは分かる。μ'sと言えば本当に伝説の存在だし、その元リーダーが同じ空間にいるんだ。
でも、涙でメイク落ちちゃうよ? 歩夢「高坂さん。本日はお忙しい中本当にありがとうございますっ」
穂乃果「キミのプロダクションの社長にはお世話になってるからねっ。呼ばれたら来るよ!」
歩夢「その中でも時間を作って頂いたので──」
穂乃果「もー! 硬いよ歩夢ちゃん? それにさぁ、名前で呼んでよ〜」
歩夢「いや、番組中ですし……」
穂乃果「いいのいいの〜。そっちの方が和気あいあいとした雰囲気になって皆の緊張ほぐれると思うよ?」
穂乃果「ね? しずくちゃん?」
しずく「え? あっ……は、はい!!」
穂乃果「うーん、素直でいい子だね〜」ポンポン
しずく「そ、そんな……恐れ入ります」
かすみ(しず子もめちゃめちゃ緊張してそう……)
歩夢「……わかりました。では穂乃果さん。お手数お掛けしますが、本日はよろしくお願いします」
穂乃果「はーい!」
穂乃果「では、まずは番組の説明とオーディションの内容についてなんですが──」ペラペラ
人が変わったように、落ち着いた様子のまま穂乃果さんは番組を進行させていく。 穂乃果「では、続いてオーディションメンバーの紹介です。──そこのあなた!」ピシッ!
かすみ「!? はい!」
歩夢「…………」
穂乃果「自己紹介と簡単な自己PRをよろしくっ!」ニコッ
しずく「な、なぜ突然あの方に……?」
穂乃果「なんとなく!」ニッコリ
かすみ「…………」
なんとなく、かぁ。中々目の付け所が良い方だ。
──ここで指名されたのも、何かの縁かもしれない。
かすみ「……」ニコッ
──伝説の方に、名前を覚えて帰ってもらおう。
かすみ「こんばんは〜!」
かすみ「中須かすみでぇっす!」
かすみ「今日はぁ〜」
かすみ「──この場の誰よりもかわいいのは私だって事を証明する為に来ましたっ!」キャピ
かすみ「合格目指して頑張りますっ!」ニコッ
“この場の誰よりもかわいいのは私”。全方位に向けた、宣戦布告だ。
周りの空気が、変わる。でも、関係ない。私は私に出来ることをやるだけだ。
この場で一番可愛いのは、かすみんである私なんだから。
それを証明するだけだ。 穂乃果「おぉ〜、意気込みもばっちりだね!」
かすみ「はいっ!」ニコッ
穂乃果「うんうん。若いっていいねぇ〜。──では次の方、自己紹介をお願いしますっ!」
そのまま少しずつ番組は動き、刻々と歌と踊りの時間が近づく。
気が付けば、歌う順番を決める所まで番組が進行していた。
用意された箱の中から数字が載っているボールを取り出す。書かれた番号は、1番。
──私は、一番目に歌う事が決まった。
かすみ「中須かすみ、1番です」
穂乃果「おぉ! 今日は何かと一番に縁があるねキミ」
しずく「では中須かすみさん。皆さんが番号を引き終わりましたらすぐに実技を見させて頂きますので、こちらの席で待機をお願いします」
かすみ「はい」コクリ
しず子に席まで誘導される。
目が合った瞬間、頑張れって言っているような気がした。
私、頑張るよしず子。
歩夢「…………」
歩夢先輩は、私を静かに審査席から見つめていた。
何を思っているんだろうか。想像が出来ない。今のあなたの考えは、正直な所分からない。
だから──中須かすみはかわいいって事以外、考えられないようにする事にした。
かすみ(見ててください。歩夢先輩)
かすみ(私の──歌と踊りを!) 穂乃果「ではでは、皆の番号が引き終わったみたいなので」
穂乃果「早速1番の方に披露して頂きたいと思います!」
穂乃果「観客の皆も準備はオッケー!?」
穂乃果さんの声に合わせて、お客さん達から歓声が上がる。待ってましたと言わんばかりだ。
かすみ「……」
歩夢「中須かすみさん。準備は出来ていますか?」
かすみ「──はい」
歩夢「では、早速見させて頂きます」
歩夢「よろしくお願いします」 かすみ「はい。中須かすみ、歌います。よろしくお願いしますっ」
かすみ「──」スゥゥゥゥゥ
静かに、息を吸う。
──これまで、本当に色々な事があった。
しずく『もう一度、アイドルを目指してみない?』
きっかけは、親友からの一言。でも、この時の私はまだ──腐っていた。
侑『もう一度、アイドルを目指してみない?』
──でも、それでも私を救おうとしてくれた人がいた。
せつ菜『大事なのは、今ですよ』
──過去ではなく、今を生きる事が大事だって分かった。
彼方『でもこれは』
彼方『私のやりたかった事だから』
──自分の本当にやりたい事が、見つかった。 歩夢がかすみに点数入れて勝ったら旧知の間柄だからみたいな声は絶対あがりそう 璃奈『かすみちゃん』
璃奈『ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルだよ』
──親友から返ってきた言葉もあった。
私は、本当にダメダメになっていた。
自分に自信が無くなって、夢を勝手に諦めて、ネガティブになっていた。
皆がいなかったら、今も変わらなかったと思う。
本当に、良い人達と出会えた。
歩夢「…………」
歩夢先輩だって、きっと私の事を思ってくれている。……と思う。
ただ今は、後輩として気にかけてもらっている気がする。
それはいやだ。あなたには──対等な立場で見て欲しい。
かすみ(私は)
かすみ(世界一かわいいアイドル)
今から歌うのは、私の一番自信がある歌。
──私は昔、しっかりとファンの皆のから投票してもらって、同好会の中で一番になれた。
その時、記念に侑先輩が作ってくれた歌。
その特別な歌の名前は──
かすみ「世界一かわいいのは、この私!」
かすみ「かすみんなんですからねっ!」
【無敵級ビリーバー】 歩夢「……」
かすみちゃんが歌う。
歌もダンスも、スクールアイドルの時より確実にレベルアップしていた。
小柄な身体を自分の特徴として最大限に活かした、あざといけれど心に残る動き。とっても可愛らしい。私には出来ない動きだ。
いや、私だけじゃない。かすみちゃんにしか出来ないモーションを完成させていた。
本当にこの期間、たくさん努力をしたんだろう。
かすみ「♪〜!」
歩夢「……」
──すっごく楽しそうな笑顔が、かわいい。
『歩夢せんぱいっ! かすみん、今日もかわいいですかぁ〜?』
『うん。可愛いよかすみちゃんっ』
『うぐっ……と、当然ですよ! えっへん!』
『あれ? かすみちゃん照れてる?』
『照れてないです!』プイッ
歩夢「……」
かすみちゃんは、私の仲間でライバルの子。とっても可愛い、私の憧れの女の子。
そんな子が──日の目を浴びずに腐っていて、いいわけが無いの。
余計な事をしてしまったかもしれない。酷いことだって沢山言ってしまった。
今までの私の行動は、エゴだったかもしれない。
でも、それでも私は──かすみちゃんとまた一緒に歌いたかった。
──同じアイドルとして。
かすみ「I’m a sweetie cutie braver────!!」
「「「──────!!」」」
歓声が響き渡る。
世界一かわいいアイドルのかすみんが、ここにいた。
歩夢「……」
歩夢「おかえりなさい」
歩夢「待ってたよ」
歩夢「かすみちゃん」ニコッ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
オーディションも終わり、数ヶ月が経ちました。
今の私が何をしているか、説明します。
かすみ「こんにちは〜!」
かすみ「新人アイドルの、中須かすみで〜す」
かすみ「よろしくお願いしますっ!」
正直に伝えます。驚かないで下さいね?
──ビラ配り。
かすみ「………………」
かすみ「思ってたのと違う─────ッ!!」
アルバイトのような事をしていた。 「──で?」
「道端で突然大声を上げたと?」
かすみ「……はい」
「はぁ……」
「このお馬鹿! そんなことするアイドルがどこにいるのよ!」
かすみ「だ、だって! せっかくアイドルになれたのに、やってる事はビラ配りばかりじゃないですかぁ!」
かすみ「もっとアイドルらしい事がしたいですよー!」
「ぬぁに言ってんのよ! 考えが甘い! こういった地道な活動も大切なの! 歩夢だってやってたんだからね!? ビラ配りで作れる関係もあるし、ちゃんとやりなさい!」
かすみ「うぅ……申し訳ございません」ペコリ
「たくっ。……まぁ、反省してるならいいわよ」
「まぁまぁ社長〜。かすみちゃんも反省しとるし、そんな怒んなくたってええやん。シワが増えるよ?」
「うっさい!」
かすみ「……」
「あっ、そーだかすみちゃん。歩夢ちゃんが呼んどったよ?」
かすみ「へ? 歩夢先輩が?」
「うん。駐車場にいるってさ」
かすみ「へ? 駐車場……?」 ・
・
・
スタスタスタスタ
かすみ「こんにちは、歩夢先輩」
歩夢「あっ、かすみちゃん来た。遅刻だよ?」
かすみ「いや、遅刻も何も突然呼ばれたんですけど……」
歩夢「冗談だから軽く流してよ。じゃ、とりあえず乗って?」
かすみ「へ? どっか行くんですか?」
歩夢「うん。大事なお仕事があるの」
かすみ「はぁ……」
歩夢「かすみちゃん、この後スケジュール空いてるでしょ?」
かすみ「今のかすみんはビラ配りするかレッスンするしか無いので……」
歩夢「あっ、ごめん」
かすみ「謝らないで下さいよ……」
歩夢「まぁでも、わりと最初はそんなもんだよ? とりあえず今日はお手伝いして欲しいことがあるの」
かすみ「いいですけど……。あっ、ちなみに歩夢先輩はどれくらいの期間、ビラ配りとかの下積みしてたんです?」
歩夢「3週間」
かすみ「やっぱり練習します」
歩夢「だーめ! 手伝って! かすみちゃんの力が必要なの!」
かすみ「……はぁい……」 かすみ「てか歩夢先輩、車運転出来たんですね」
歩夢「うん。免許証あると便利だし。フォークリフトの免許も持ってるよ?」
かすみ「いや、それなんの意味があるんです!?」
歩夢「ライブ演出に使えるかなぁって」
かすみ「えぇ……」
歩夢「とりあえず、発進するよ?」
かすみ「事故らないで下さいね? 歩夢先輩、おっちょこちょいなんですから。私まだ死にたくないですので」
歩夢「かすみちゃんが座ってる側だけ削れるかもしれない」
かすみ「事故宣言!?」
歩夢「冗談だよ。車傷付けたくないし」
かすみ「私の心配をしてくださいよぉ!!」
歩夢「あっはは!」ニコッ
かすみ「……」ポカーン
歩夢「ん? どうしたのかすみちゃん?」
かすみ「いや、えっと。……歩夢先輩」
かすみ「最近、よく笑うようになったなぁって」
歩夢「あっ、確かにそうかも」 かすみ「なにか理由、あるんですか?」
歩夢「うーん」
歩夢「うーーーーん……」
歩夢「うーん……」
歩夢「……秘密っ」
かすみ「はいはい……言うの渋ってたのでそう言うと思いましたよ」
歩夢「まぁ、色々あるんだよ」
かすみ「そうですか」
歩夢「うん」
歩夢「──ただ、一つ言いたいことがあるの」
かすみ「え?」
歩夢「かすみちゃん」
歩夢「あなたとまた一緒にアイドルになれて、すっごく嬉しい」
かすみ「!!」
歩夢「もう一度夢を目指してくれて、ありがとうね」
かすみ「…………」
何も言えなかった。
ただ、少しだけ視界がぼやけた。
かすみ「……っ……!」
私は歩夢先輩に顔を見られないように、窓側に顔を向ける。
涙を流している自分の顔が、窓に映っていた。 オーディションで歌い終わった時、皆からの点数が明かされた。
点数は、歩夢先輩のも含め91点。
中々ギリギリではあったけれど、私はオーディションに合格する事ができた。
発表された後のことは、あんまり覚えていない。
とにかく、涙が止まらなかった。そして、進行サポートだったしず子もすっごく泣いていたのは覚えている。
穂乃果さん、すっごく焦ってたなぁ。申し訳ない事をしてしまった。
ただ、晴れて合格は出来たものの──当然落ちる子達もいる。合格者はわずか私含めて5名。
それに加えて私は元々歩夢先輩と同じ学校出身だったという事で、中々物議を醸していたみたいだ。
全て中須かすみの為に作られた、出来レースだったのではないかと。
そう言われても、否定は出来ないのかもしれない。
私は、たくさんの人に支えてもらってアイドルになれたのだから。
でも、そんな評価のまま終わりたくない。だから私は、これからも全力で努力し続けなければいけない。
ビラ配りも、大事なお仕事だ。しっかりとやっていこう。 オーディションが終わり家に帰ると、侑先輩に抱きつかれた。
そのまま2人でわんわんと泣いたのを覚えている。
侑先輩は、本当に喜んでくれた。あの時は嬉しかったなぁ。
今は侑先輩も忙しくなってしまい、二人の同居生活も終わってしまった。
だから、家に帰ると中々寂しい。
──侑先輩に、会いたいなぁ……。
歩夢「──すみちゃん。かすみちゃん」
かすみ「……ん〜……?」ウトウト ポー
歩夢「着いたよ?」
かすみ「!!」ガバッ
かすみ「ご、ごめんなさい! 私……うたた寝しちゃってました……!」
歩夢「ううん。大丈夫だよ?」
かすみ「運転してもらってたのに、本当にごめんなさい」
歩夢「よく侑ちゃんも隣の席で寝てるから、あんまり気にしないで?」
歩夢「むしろ安心してもらってるんだなぁって思えて、嬉しくなるよ」ニコッ
かすみ「うぅ……ほんとごめんなさい。運転ありがとうございました」ペコリ
歩夢「いいからいいから。さっ、かすみちゃん降りて?」
歩夢「今日の主役は、あなたなんだから」
かすみ「え?」
車から降りると、目の前には彼方先輩の喫茶店がある。 歩夢「さっ、入った入った〜」
かすみ「え? えぇ!?」
歩夢先輩にそのまま背中を押され、お店の中に詰め込まれる。
入ってすぐに、私の耳にはクラッカーの音が届く。
かすみ「えぇ!?」
何事かと思った。
中には──虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の皆がいた。はる子もいる。
皆、笑顔で私を見つめていた。 ターラーラーラッタッター
ドラクエ宿屋のBGMを思い出す。
歩夢が不合格にさせたのかと勘繰ってしまうな。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています