0032名無しで叶える物語(SIM)
2021/05/01(土) 18:30:01.67ID:kCcmYMddモニターには日本地図と船の位置情報が表示されている。
北緯35度、東経139度……客船は鎌倉を過ぎ、横須賀を過ぎ、もうしばらくで房総半島を抜けて外海に出ようかというところだった。
「でも八丈島はまだまだ先だね」
日本地図から数センチ離れて、ポツンと表示されている私の故郷。
「そうね。でも眠って朝になればすぐよ?」
「えへへ、待ち遠しいなぁ」
そう言うエマは本当に待ち遠しそうに目を細める。
もう少しエマとお喋りしたいんだけど……そろそろ寝させた方がいいかもしれない。
というのも、明日の朝5時には三宅島に、6時には御蔵島に到着する。その騒ぎで船旅に慣れてない人だと目が覚めてしまうかもしれないから。
せっかく島内のスポットを散策するのに、眠くなったら本末転倒でしょ?
「エマ、そろそろ寝たら?」
私がそう促すと、少し眠たそうな顔のエマはゆっくり私の方を向いて、
「……うん、そうだね。歯磨きしてもう寝ることにするよ。果林ちゃんは?」
「エマが寝るなら私も寝るわ」
「そっか、じゃあ急ぐね」
エマはすくりと立ち上がって洗面台の方へ歩いていった。