エマ「女同士、離島」彼方「何も起きないはずがなく……」果林「何もないわよ」
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一瞬の静寂と緊張が私たちの間に流れて――。
「「「じゃんけん、ぽんっ」」」
彼方ちゃんがグー、エマちゃんはパー、果林ちゃんはチョキ。
私とエマちゃんは「おぉ〜」と声をあげて、三人とも前に出していた手を一旦引き戻す。
「……」
「……」
「……」
緩和した空気がまた張り詰めて――。
「「「あいこで、しょ!」」」
彼方ちゃんはチョキ、エマちゃんもチョキ、果林ちゃんはグー。
「よしっ!」
小さくガッツポーズの果林ちゃん。
「こういうのはね、大体言い出しっぺが負けるって相場が決まってるのよ」
勝ち誇った笑顔で私を見つめてきた。
ぐぬぬ……。
「……」
「……」
真剣な表情でエマちゃんと見つめ合います。
「「じゃんけん――」」
言い出しっぺの法則を覆してみせる。
北の地からお姉ちゃんに力を貸しておくれ、遥ちゃん……彼方ちゃんは――パーを出すぜ。
「「ぽんっ」」
「やったぜ!」
「あぁ〜っ!」
――うっかり勝ち申した。
グーを出した手をわなわなと震えさせるエマちゃん。
くさやパンの袋を破ったエマちゃんは顔を近づけて、恐る恐るくんくん……。
「……あれ?あんまり変な臭いしないよ?ふつうのパンの匂いだけど」
「え?そうなの?」
「割ってみてよ、エマ」
パンを半分に割ってみると中の具材が見えます。
焼き魚の身みたいなものが見えるなぁ、これがくさやか……エマちゃんは大胆にも顔を近づけて嗅いでみます。
次の瞬間――。
「ん〜!!あ゛ぁ゛ぁぁぁっ――!」
足をパタパタさせながら身悶えるエマちゃん。
ふっふっふ、エマちゃんもたまにはこういう体を張ったことしないとね?
涙目のエマちゃんは……。
「うっ、うぅっ……くんくん」
ちょっぴりかわいそうだけど、貧乏くじを引いてしまったエマちゃんを見て笑いがこらえきれない私たち。
「やっぱりくさいよぉ〜っ!」
爽快な夏の八丈島にエマちゃんの悲痛な叫びがこだましたような気がしました。
……でも結局、味は美味しいって言って帰りの車の中でちびちびと食べ進めるエマちゃんなのでした。
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