璃奈「果林さん。ジャンケンしたい」果林「ジャンケン? いいけど、どうしていきなり」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
璃奈「じゃーん、けーん……」
果林「え。わわっ」
璃奈「ぽんっ」グー 果林「あっ」チョキ
璃奈「やった、果林さんに勝った」
果林「あー……、ふふ。負けちゃったわね」
璃奈「果林さん、ジャンケン弱い。びっくりした」
果林「……弱い?」 璃奈「今度みんなに会ったら話すね。果林さん弱かったって」
果林「……」
果林「もう1回」
璃奈「ん?」
果林「もう1回しましょう?」
果林「もう1回だけ」 璃奈「え。また?」
果林「さっきのは違うのよ。ちょっと油断してただけよ」
果林「次が本番よ。次は本気出すから。そう簡単に勝てると思わないでちょうだい」
果林「だって私、弱くないもの。むしろ強いわ。ジャンケン」
璃奈「ジャンケンに本気も何も」
果林「あるわ。あるのよ」
果林「私にはある」
果林「だからもう1回」 果林「私は次にチョキを出すわ。チョキ」
果林「さっきグーに負けた、チョキよ。この意味が分かる?」
璃奈「え。さっき負けた手を連続で出すなんて、そんな大胆なこと」
果林「ふふ……さあ。どうでしょうね?」ニヤッ
果林「じゃあ――始めましょうか。ジャンケン第2回戦」
璃奈「やるとは言ってないけど」
果林「えっ」
璃奈「言ってないよね。やるって」
果林「やりましょうよ」
果林「ジャンケンしましょうよ。もう1回」 璃奈「だってよく考えたら、別にジャンケンって楽しいわけじゃないし」
果林「楽しいわよ。すごく楽しい。魅力度No.1」
果林「私も今すごいテンション高くて。もうアゲアゲなのよ」
果林「だから璃奈ちゃんもやりましょうよ。ジャンケン。後悔させないから」
璃奈「ジャンケン以外の遊びでもいいんじゃないかな」
果林「ジャンケンがいいのよ」
果林「いい? 私はジャンケンがしたいの」
果林「私、ジャンケン以外の話をしたかしら? していないでしょう?」
璃奈「はあ……分かった。今回だけだよ?」
果林「さすが璃奈ちゃんね。話が分かるわ」 璃奈「じゃあ行くよ。じゃーん……」
果林「待って。最初はグーなの?」
果林「これは大事な取り決めよ。さっきこれを決めてなかったのは卑怯よ」
璃奈「でも果林さん、さっきちゃんとチョキ出してた。最初はグーの、グーじゃなくて。それで負けた」
璃奈「グーを出してればあいこだった」
果林「そういう問題じゃないのよ」 果林「いい? そういう問題では、ない。お互いにルールを認識しておくことが大事なのよ」
果林「でないと安心して手を出せないじゃない。そうでしょう?」
璃奈「……別に、無しでいいんじゃないかな。最初はグーは」
果林「じゃあそうしましょう。いきなり勝負ね?」
果林「ふふ。望むところよ」 果林「忘れないように改めて言うけど、私はチョキを出すわ。いい? チョキよ、チョキ」チョキチョキ
果林「大事なことだもの。よく覚えておいてね?」
璃奈「うん。覚えた」
果林「じゃあ行くわよ。じゃーんけーん」
璃奈「ぽんっ」グー 果林「ぽんっ」パー
璃奈「……あれ。果林さん、それ、パー」
果林「ふふ。ふふふふふふっ」
璃奈「嘘ついたの?」
果林「嫌ねえ。嘘だなんて。勝負の世界ってこういうものよ」
果林「つまり――大人の駆け引き、というヤツね」ドヤッ 璃奈「おとな……」
果林「まあ、私が本気を出せばこんなものよ」
果林「これが私の実力よ? 分かった?」
璃奈「ジャンケンで負けて本気になるのが、大人?」
果林「……」
璃奈「……」
璃奈「……おとな?」
果林「違うのよ」 果林「いいかしら、璃奈ちゃん。本当に大人というものは何事にも本気なの」
果林「建前をぶら下げて真剣勝負から逃げるなんて、大人のフリをした子供のすることよ?」
璃奈「さすが果林さん。いいこと言う」
果林「でしょう?」
璃奈「じゃあもう1回、本気でやろう。ジャンケン」
果林「えっ」
璃奈「だってこれで1対1。もう1回やらないと勝敗がつかないから」
果林「……あぁ」
果林「いえ、1回目はあれよね。違うわよね」
果林「本気じゃなかったもの。最初はグーの取り決めもなかったし」
果林「これはもう、1回目はノーカンでしょ。ノーカン」 璃奈「ノーカンってことは」
果林「ええ。1対0。私の勝ちよ」
璃奈「建前をぶら下げて真剣勝負から逃げる……」
果林「……」
璃奈「これが大人?」
果林「ちょっと待って」 果林「え、何かしら? 何かおかしかった? 何か言いたいことでもある?」
果林「言いたいことがあるならハッキリ言った方がいいわ。私に遠慮はいらないわよ」
璃奈「や、別にもう、いい」
果林「別にもう? それってアレよね。あるってことよね。言いたいこと」
果林「言ってちょうだい。その方がいいから」
璃奈「いいよ。本当に。言った方が大変そうだし……」
果林「大変? どういう意味かしら、それは。それじゃあまるで私が面倒くさい人間みたいじゃない」
璃奈「……」
果林「どうして黙るの? ねえ?」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています