遥か昔の、遠い異国の、夢だった。
その国は深い渓谷の底にあった。
南北は高い山脈に挟まれており、東西には清らかな川が流れていた。
川の上流には土堤が盛られている。流れを堰き止めて溜め池を作っていた。
透明度の高い美しい池だった。
国の中央......小川のほとりには古城がただずんでいた。
主を失ったその城は、すでに荒れ果てた廃墟と化している。
ボロボロに裂けた真紅の暗幕が、窓の至るところからはみ出していた。
春先の風に吹かれて、暗幕は寂しげに揺らめいていた。