曜も善子も今日は船に帰ってきません。
なぜなら今、私たちは沼津国の内浦港に停泊しているからです。それぞれ、実家へと帰省しています。つまり、この船には、私とかすみの二人きり。

ドア「コンコン」

かすみ「夕ご飯出来上がりましたよ」

海未「いつもありがとうございます。今行きます」パタパタ

 私は読んでいた本を閉じ、食堂へ向かいました。といっても、ほんのちょっとの距離ですが・・・
心なしかかすみの背中はウキウキしていたような気がします。

かすみ「今日は腕を振るって豪華に作ってみました!」

海未「中華ですか、おいしそうですね。いただきます。もぐもぐ・・・おいしいです。腕を上げましたね、かすみ」

かすみ「海未さんのおかげですよ。また教えてくださいね」

 夕食の間は他愛のない話をしていたと思います。あの店がおいしいとか、あの店は値引きしてくれないだとか、函館の肉屋の海獺で散々な目にあったとか、そんな、どこにでもある普通の会話でした。
でも正直、この間のこともあり、かすみとは気まずい空気にはしたくなかったので、自分でも饒舌だと思うほど話過ぎたのだと思います。

それがあの言葉に繋がった。


かすみ「あのっ・・・きょ、今日は一緒に寝ませんか?」