SS 小泉花陽はお腹がすいた -第二幕 魔法大国UDX編
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前回の、ラブライブ!!…の、SS小泉花陽はお腹がすいた
みなさんこんにちは。おひさしぶりです。小泉花陽です
音ノ木坂学院の一年生……だった私ですが、ある日気がついたら異世界に!?
私は戦争が原因で何もかもを失ったセト村の魔術師さん達によって勇者として召喚されたのです!驚き!
とはいえただの高校生である私に出来る事なんてありません
そこで私は現地で知り合った女の子、ユリカちゃんから勇者の素質がある者にだけ継承できるスキルを習得しました!
しかし中身が普通の女の子でしかない私にはそのスキルを上手く扱うなんてこともできず、状況に流されるままに……
たった1つ……スキルのおかげで知る事ができたものがあります
それはソラくんとアヤちゃんの関係が今より良いものとなるかどうかです
本当にソラくんにとってあの時の出来事はトラウマになるほど重いものなのか
もちろそんな軽い出来事だったわけじゃありません。それでも若いソラくんにとって憤りを感じるには十分でも重荷になっていたのでしょうか?
答えはノーです
ソラくんだって悔しくて辛い体験だったでしょう
でも、それでアヤちゃんに対して壁を作るなんてことはないんです。なんか話だけ聞いてるとすごい鈍感さんなようですし
そしてそれをアヤちゃんもよくわかっています
じゃあどうしてこういう態度を取るのか……それが答え
すべて、アヤちゃんがみんなのために作ってくれたキャラクターなのです
もしかしたら昔からそうあろうとしてきたのかもしれません
花陽「さあアヤちゃん、さっきも言いましたけど、ケンカしますよ!」
アヤ「………ふぇっ?」
だったら私が助けてあげられる方法は、やっぱりこれしかありません!
今シャッフルでちょうど君くせが流れてきてぴったりすぎる
乙 少し緊張しているのがわかります
アヤちゃんを抱きしめるが震えている……だけど、やるんですっ!
花陽「こうでもしないと、アヤちゃんは曝け出せないと思いますからっ」グッ
アヤ「………?」
パァァァァン!!
アヤ「っっっ!?!?」ヒリヒリ…
突然私にビンタされてさすがのアヤちゃんも呆けてます
凛ちゃん以外の人をぶったのは初めてです
こっちの手も痛い…でもここで止めたら意味がありません、ごめんなさいアヤちゃん
花陽「アヤちゃん、自分一人が不幸だなんて思ってないですか?」
アヤ「は………なに言ってんの…そんなわけない……」
花陽「みんないろんな苦悩を抱えてるの、アヤちゃんだってわかってるじゃないですか!」
アヤ「そ、そうよ……そんなの言われなくなたって……っ!」
花陽「アヤちゃんだって苦しんでるの、みんな知ってます!」グッ
バチィン
アヤ「…っつ……なにするのよ!」グイッ バシィ!
花陽「あぐっ……」
アヤ「みんな苦しんでるからこそ、助け合ってるんでしょ!!」ドンッ ドサッ
覚悟はしてましたけど、やっぱり痛いです……でも、みんなはもっと痛かったとはずです
アヤ「ハナヨちゃんには、私の苦しみは絶対にわかんないよ!」グイッ
花陽「痛みや苦しみはちゃんと訴えるものです、ユリカちゃんは最初からそうしてました!」ガッ
アヤ「そんなの、私だって……っ」ガッ ガツッ
花陽「アヤちゃんが本当に言いたい事、苦しい事、吐き出したい想い……それは飲み込んだままじゃいけないやつなんですだから…っ」ググ
みんな戦争の影響で生きる環境が変化する中、消え去りたい記憶もすべて背負いこんで前を向いて歩かなきゃいけない
心に余裕がないだなんて、私は彼女達を別の意味で軽視していました、反省すべきところ……
それでも手を取り合って生きていくと決めたのなら、アヤちゃんのような役回りは不要なんです
花陽「私はアヤちゃんも含めたみんなを助けます! だから聞かせて! アヤちゃんの本当の気持ち、苦しみを!」
元より非力な私がアヤちゃんに敵うはずもなく、あっという間に地面に転がされ、馬乗りにされる
だけど視線は……この私自身の想いはまっすぐに見つめています
花陽「私が絶対に助けるからっ! それが私がここにいる理由、役割だから、信じてっ!」
アヤ「っ!?」ピクッ
私を見下ろすアヤちゃんの手が止まる
彼女の中で、それを口にする事の恐れを感じます
みんな大変な目に遭いました。不運や不幸……軽い言葉ばかりで表現しきれない地獄を見てきました
その中でも特に凄惨な体験をしたのがアヤちゃん
彼女はその事を誰かに話すことはありませんでした
同じ境遇で互いに協力して生きていくのに、自分の不幸を押し付けるだけだと、それを躊躇しました
言っても冗談にもなりません。相手にも辛い思いをさせるだけ……あの時あの村にいた子供達はみんな知っています
だから強がりでもなんでも、自分を押し殺して明るくふるまおうとした
今私を見つめながら涙を流して泣いているこの子を救えないで、何が勇者でしょうか!
花陽「あなたが今見ている相手は、その気持ちをぶつけていい相手です。受け止めてくれる相手です」
アヤ「………っ………く、ぅぅ……」ググ…
花陽「その振るいあげた拳を……ぶつけてやりたかったんですよね? いいですよ、おもいっきり来てください!」
アヤ「ぅぅぅあぁぁ……あぁぅっ!」バッ
アヤさん、16歳(驚きの年上さん)
ちょっと幼く見える可愛い女の子。ソラくんの面倒をよく見ているお姉ちゃん
以前私が彼女達に出会った時の印象としてあげたものです
あの日からアヤちゃんはずっと明るく、みんなのためにお料理や掃除をしたりして、がんばっていました
アヤ「うう、ぐ…………あああぁぁぁ!!」ブンッ ガツッ
花陽「うっ!」
でもその裏で、傷つけられた体を見る度に、嫌でも思い出す惨劇に、ずっと苦しんできました
アヤ「痛かった………痛かったのよ!! 死んじゃうと思ったし、でも……助けなんてきてくれないし!!」ガッ ゴッ!
花陽「っ!………ぅっ…」
自分が泣けばみんなが悲しむ。自分が笑えば、みんなも笑顔になる
必要なら悪役だって演じる。みんながまとまっていけるなら……
アヤ「怖かったのよ……お父さんもお母さんも、殺されて……言葉さえかけることができなかった…!」バシッ
花陽「んっ………うん」
アヤ「私……ソラが好きなのに……大好きなのにっ……あんな……ひどいよっ…」
花陽「うん………」
アヤ「初めてだったのに……いつかソラとって、ずっと考えて……それが毎日楽しかったのに……っ」ポロッ…
花陽「うん………」
アヤ「ソラの前ですることないじゃん! どうせならそのまま殺して欲しかった……でも、それでもソラは傍にいてくれて……」
その言葉とともにアヤちゃんの手が止まる
彼女の中の本当の気持ちが……誰も聞けなかった奥底の気持ちがあらわれます
アヤ「傍にいるのに……こんな体じゃ私はソラに触れられない……抱きしめられない……」
花陽「……………」
アヤ「イヤだよぅ……こんな汚れた傷だらけの体………一生このままなんてイヤだ……」
アヤ「ホントはね、死にたいんだ………消えてしまいたい………」
花陽「………え!?」ドキッ
アヤ「この先何年も私はこの体のまま……ソラが違う誰かと結ばれても、止める事もできない……そんなの惨めだよぅ」
花陽「アヤちゃん……あなた……」
アヤ「本当の気持ち、言っていいんでしょ? 助けてくれるんでしょ?」
花陽「……………」
アヤ「だったら……みんなを悲しませることないように、私を消してよ……」
花陽「それは………出来ません」
アヤ「それじゃ私の体をキレイな頃に戻して……あの日の記憶をみんなから消して……」
花陽「……………」
アヤ「……………」
自由に観測できるのは一人……1回。それをアヤちゃんも知っているはずです
知っているからこそ、飲み込んで我慢していた
アヤ「それに……みんなもどっか頼りないし」
アヤ「私だってみんなの前で泣きたかった……でもちっちゃい子達もいるし…」
花陽「……………」
アヤ「ユリカちゃんもああ見えて微妙にズレてるし……」
花陽「それは……ちょっとだけ……」
アヤ「あと年上趣味で疑うことを知らないから、悪い大人にすぐ騙されてちゃうし……」
花陽「えっ!?」
さりげなく新情報
アヤ「誰かが強くでないと、今いる子達だけじゃ、流されてばっかりなんだよ……大人なんて誰もいないし」
花陽「それも…まぁ…」
アヤ「さっき、少しだけ後悔してるって言ったの、覚えてる?」
花陽「………はい」
アヤ「本当の気持ち、ついでだから言うね」
花陽「…………」
アヤ「こんな体のまま、何十年、何百年も生きていくなんて、地獄よりもっと酷いわ! 最悪よ!!」
花陽「ぅぅ………」
アヤ「調子のってほいほい気軽にしていいような事じゃないでしょ! アンタわかってんの!? このバカ!!」グッ
花陽「ぐふっ……ぅぅ」
アヤ「私がそのためにどれだけ………くっ……」スッ
花陽「…………?」
もっときつい一発が飛んでくるのを覚悟したのですが、アヤちゃんはゆっくりと私の上からどきます
そのまま隣に元のように座りなおす
アヤ「はぁ……やっと言ってやったわ」
花陽「あの…………」
アヤちゃんの本音。その中には私に対することも含まれていました
考えなかったわけじゃないですけど、面と向かって言われたのは初めて?
いえ、アヤちゃんだけはちゃんと言ってくれていました
アヤ「みんなハナヨちゃんの事持ち上げすぎなのよねーまったく…」
花陽「えー………」
アヤ「お人好しで、どんくさくて、大食いで……わりと抜けてる部分も多いわよね」
花陽「うぅ……」
アヤ「あーでもちょっとスッキリしたっ!」バタッ
花陽「ケンカはお終いですか?」
アヤ「やめやめ、ハナヨちゃん弱いし」
花陽「私はここにくる前はホントにただの一庶民だったんですから……」
アヤ「それもなんとなくわかってたよ。勇者って部分を除けば、ハナヨちゃんわりと私の嫌いなタイプだし」
花陽「え、そんな……」
こうやって軽口を叩いてすぐに明るくまたふるまう……
少しだけ気分を変えることが出来たかもしれませんが、そこで終わると結局いつもの流れです
私はアヤちゃんを救うと決めています
方法はあれだったけど、本音も聞けました。なら次は私の番ですね
花陽「とりあえずわかりました」
アヤ「ん…?」
花陽「記憶の問題は今はわかりませんが、アヤちゃんの体はかならずなんとかします」
アヤ「え………でも……」
花陽「アヤちゃんがせっかく吐き出してくれた本当の気持ちです。簡単に諦めるわけないじゃないですか」
アヤ「でも確かあのスキルって……」
花陽「あのスキル以外にも方法はあるはずですし、スキル自体の回数も増えました。手はあると思います。だから……」
アヤ「………………」
花陽「アヤちゃん?」
アヤ「ホントに………期待していいの?」
花陽「勿論です。助けますよ、全部」
アヤ「うっ…………んん、ホントのホント?」
花陽「はい」
アヤ「っ!…………」
彼女は優しい人です
結局また最後に私の事を想ってなのか、軽く流そうとしました。危ない危ない
勇者にだって無理な事はある。それはそうかもしれませんが、今あるものだけで無理なら違う方法を探すまで
フワちゃんに一度言われたことですが、それでも私自身がやりたいのです
私は……絶対にみんなを救ってみせます
アヤ「ぅぅ…………お願い…します」
花陽「まかせてください」
熱い展開
こういう文書くときって、自分も顔うぎぎぎってならん? さてここで一つ問題です
やってしまった事にはそれなりの結果がついてくるもので
後悔なんてあるはずもないのですが、少しばかり困った事になりました
アヤ「あー、中が切れてるね」グイ
花陽「アヤちゃんも少し切ってますね、血がでてます」ファサッ
アヤ「ハナヨちゃんのほうがひどい顔してるよ」グイグイ
花陽「アイドルはお顔も大事なんですから、もうこれっきりにしましょうね」
アヤ「ふふ、ユリ姉とか大騒ぎしそう」
ユリカちゃんに対する呼び方が元に戻ったみたいです。気持ちが落ち着いたからかな?
というか、ユリカちゃんや他のみんなになんて説明しよう……
アヤ「そのままでいいんじゃない?」
花陽「ケンカしてましたって言うの?」
アヤ「うん。実際やってたんだし」
花陽「それはそうですけど……」
アヤ「余計な心配はかけたくないっていうのもわかるよ、私もそうしてたと思う」
花陽「でも今回の事はきちんと話すべきだと、アヤちゃんはそう考えるのですね」
アヤ「色んな意味で迷惑かけてたからさ……ちゃんとして、スッキリしたいじゃん?」
花陽「なるほど。それは良いと思います」
意見が別れて家を飛び出し、それを追いかけた私とケンカして帰って来た
端的にするとなにやってるのと言われるかもしれません
だけど私も…きっとアヤちゃんも気分は悪くないのです
問題はまだ残っているのにどこか晴れやかなこの気持ち
花陽「……はっ、これが漫画にあったケンカの後の友情!?」
アヤ「なんの話?」
アヤ「っと、そうだ。言いたい事言ったついでに聞いて見たい事があったのよ」
花陽「この際何でも聞いてください」
アヤ「ハナヨちゃんのスキル、やたらうるさくない?」
花陽「え……スキル?」
アヤ「ナビ妖精の設定もしかしてそのままにしてるの?」
花陽「ナビ妖精の……設定?」
アヤちゃんの口ぶりはこの世界の人達にとっての常識であり、ある種のマナー的なものでした
アヤ「周りでナビ音声って聞いた事ないでしょ?」
花陽「そ、そう言われてみれば……」
花陽「みんなもスキルを使う時、音声が流れてるんですか?」
アヤ「あんまり周囲に響かせると迷惑になったりもするから、普通はコンフィグで設定するんだけど……」
花陽「コンフィグ……ってなんですか?」
アヤ「………………」
花陽「え?」
アヤ「あぁ、そっか。異世界の人っていうのを忘れてた」
花陽「すいません……」
この世界の常識としてあるものみたいです……
アヤ「ハナヨちゃんの場合は、何でしないんだろうなって疑問よりも先に、知らないのかなって考えるべきね」
花陽「そうしていただけると……」
コンフィグとは、スキルを習得すると同時に追加される、スキルの細かい設定を弄れる機能なのだそうです
そういえば昔凛ちゃんとにこちゃんが遊んでいたゲームでそういう話をしていたような?
凛「このコンボやりにくいにゃ〜」
にこ「ボタン配置やりやすいように変えてみれば?」
凛「んーそうする……設定画面で弄るにゃ」
花陽「あれってそういう感じのことだったんですね……」
アヤ「まぁ他人のスキルボードなんてまず見ないから気づかないのも無理ないのかもしれないけど…」
花陽「へ……そうなんですか?」
アヤ「……………」
花陽「またそういう顔をする……」
この世界の常識その2……スキルボードとは、言ってしまえば自分を表すものであり、ボードを見せるのは自身の内面をさらけ出すのと同じ
また、相手が何を出来て何が出来ないのかを知られるのは防犯の観点からもおすすめされるものではない
花陽「はぇー……」
アヤ「あの子達のスキルボードも見た事ないでしょ?」
花陽「そう言われてみると……あ、でも一度だけ……」
この世界にきたばかりの私にユリカちゃんが見せてくれました
あの時はスキルがどういうものか理解していなかった私に教えてくれるためだったと思いますけど
花陽「今思うとあれもユリカちゃんの配慮だったんですね…」
アヤ「いきなり呼びつけた異世界の人に説明するにはまぁ仕方ないけどね」
花陽「しかしそう考えると……」
けっこうポンポンだしてた覚えがあります
みんないつも驚くのが少しおかしく感じてたけど、逆に恥ずかしい思いをしていたのですね、私……
アヤ「ハナヨちゃんだけは別格だと思うけどね」
花陽「ん……そうなんですか?」
アヤ「見た事のないスキル……最上位のゴールドもあれだけズラーっと並んでるとさ、あ…こいつには逆らっちゃいけないって思うじゃん?」
花陽「そ、そういうものなんでしょうか……」
アヤ「もしそのスキルが取り外し可能なやつならすっごい金額で売れると思うんだよね」
花陽「え、売る!?」
まさかと考えましたが、そういえばそういう話を何度か聞いていました
ユリカちゃんはスキルの付け外しや上書きの事も言っていたと思います
そしてお店には日用品のように日常生活で使うスキルがあるとも……
アヤ「個人によって扱えるスキルレベルの上限、数には限りがあるから、みんな必要に応じてそのつど入れ替えたりしてるんだよ」
花陽「そうだったんですか……」
アヤ「それで、ハナヨちゃんもコンフィグでナビ妖精のことを少し弄っておいたほうがいいと思うんだけど…」
花陽「はぁ……でも私のスキルにそういうのあったかなぁ?」
と、ここでいつもの感覚でスキルボードオープン!
ヴォンッ
アヤ「わっ」
花陽「あ、ごめんなさい」
アヤ「ううん………はー………」
人前でボードを展開させるのは自身の内面をさらけ出すのと同じ……アヤちゃんはそう言いました
そう言われていてもこのボードに私自身があらわれているなんて感覚はまったくありません
アヤ「しかしやっぱり……すごいね、これ」
花陽「みなさんそう言いますね」
アヤ「異世界の勇者様……ハナヨちゃん見ててもまったく感じないけど、このボードを見てたらやっぱりね……」
私がこの行為を特に恥ずかしいものとして認識していないので、アヤちゃんも遠慮なく眺めています
アヤ「あ、あるじゃん一番すみっこに…ほら」
花陽「え………あ……」
アヤちゃんの示す場所……ずっと???だったスキルの一つが読めない文字に変わっていました
あれ……いつのまに?
アヤ「これがさっき言ったコンフィグね。これで他のスキルの細かい設定ができるよ」
花陽「そうなんですか、ありがとうございます」
ホントにいつのまに増えたんだろ?
イベントの後に増えるスキル
どんなものか気になります! その後、わりと騒いでいたけどフワちゃんは変わらずスヤスヤおやすみしているのを少し安堵し、帰宅しました
そして案の定……
ユリカ「ハナヨちゃんとケンカしたですってー!?」グワッ
アヤ「うん」
花陽「みっちりと」
アイナ「あらら、これはまた……」
エミ「わー!わー!わー!」バタバタ
アヤ「落ち着きなって……」
エミ「ここ、これが落ち着いていられますか! 勇者に手をあげるだなんて…っ!」
花陽「手を出せるって事が大丈夫な理由でもあるんだけどね」
ユリカ「それは元より危惧していませんが……あぁもう…こんなに…」
勢いでもなんでも、アヤちゃんに心の底から私をどうにかしてやるなんて気持ちはありませんでした
それが私に手をだせた理由。ただ、自分の感情を目の前の相手に初めてぶつけただけなんです
エミ「それでも……むぐぐ…ハナヨちゃんの顔にこんな……」
アヤ「ね、言った通りでしょ?」
花陽「ふふ、ほんとですね」
ユリカ「アヤっ! ちょっとこっちに来なさい!」
アイナ「それより先に傷の手当が先でしょー。ほら、二人ともこっち来て」ガタッ
アイナちゃんが共用の薬箱を持ってきて私達の手当をしてくれます
ユリカちゃんとエミちゃんがアヤちゃんに詰め寄るけど、これは少しフォローが必要かな
エミ「万が一何かあったらどうするんですかっ!」
花陽「エミちゃんちょっと待って。ケンカしようって言ったのは私なの」
エミ「へ?」
花陽「最初に手をだしたのも私。このケンカでどっちが悪いかって言うと、私なの」
ケンカの理由……それは二人だけの秘密にしておきます
結果としてアヤちゃんの心が落ち着いたのを見て、ユリカちゃんは少し察してくれたようです
しかし予想外な事に……
エミ「うににににに……っ!」ギリギリ…
アヤ「そんなに睨まないでよ。可愛い顔が台無しだよ?」ワシャワシャ
エミ「ん〜、撫でないでっ…」
花陽「あ、はは……」
エミちゃんのキャラが変わってしまいました
厳密に言うと、怒っているんですがその矛先をどうしていいかわからずにもぎもぎしています
原因が私にあり、アヤちゃんはやり返しただけとういもので、程度はともかく悪いのは私です
そのせいもあってか、ふくれています
でも、なんかとっても可愛いです
アイナ「はい、終わったよ」ポンッ
花陽「ありがとうございます」
アイナ「ん……可愛い可愛い」プニプニ…
花陽「あ、あいなひゃん?」
なんかほっぺたをぷにぷにされました
アイナ「ふふ、いっぺん触ってみたかったんだ〜」フニフニ
花陽「みょぅ……」
アイナ「……ありがとうねハナヨちゃん」グニグニ
花陽「ふぇぃ?」
アイナ「んっふふふ♪」
よくわからないまましばらく愛でられ続けました
私達が外で騒いでいた間にこちらの話し合いもひとまず落ち着いたようです
花陽「なにをおいても野盗集団の確保。これを最優先にという事ですね」
ユリカ「はい。私達があいつらを許す事はありませんが、まずは全員捕まえるのが先決かと」
エミ「ライ様が役目を終えたらすべての判断をこちらに委ねると仰っていましたし、仲間の所在も掴めるでしょう」
花陽「それでその後は?」
ユリカ「それは相手次第ですかね…」
花陽「相手……野盗達?」
エミ「はい」
花陽「それは、もしも相手が反省していたら許すって事ですか?」
ユリカ「いいえ。対応を変えるのです」
アイナ「きっちり責任はとらせる。もしどうしようもないクズなら……そん時考える!」
アヤ「クズじゃなかったらどうするのよ」
ユリカ「どうも話を聞いていると、元騎士団といっても野盗に成り下がる過程で色々あるようですし…」
エミ「確かに騙されていたとはいえ、ライ様達がやった事は許される事ではありません。しかしそこにも事情があるのです」
アヤ「どういう事情があれば私達の家族が殺されていい理由になるのよ」
エミ「それもわかってます……だから許す事はないと、私も考えています」
ユリカ「その辺りはさっきも話たけど、エミちゃんだって責任が重大なのをわかっているの…だから」
エミ「はい……。事情を考慮した上でなお下される判断に私も従います」
アヤ「それは、そいつが死んでもいいという事?」
エミ「…………はい」
エミちゃんの中ではまだライさんは昔の印象、想いでの方が色濃く残っているみたいです
この国には今、人を裁ける制度も環境もありません
そんな中で被害者であるユリカちゃん達が決断した道は、そう遠くないうちに訪れると思います
アヤ「それならいいわ。私も連中がどういう態度をとるのか見てやりたいしね」
花陽「……………」
アヤちゃんの中で何か変わった部分はあるようですけど、このキャラはわりと素でもあるのかな
ともあれ、一応の結論を出し、今日の騒動はお終いです
男子寮に行ったきりそのまま向こうでお休みしているソラくんと、子供達をあやして一緒に寝ているスズちゃん
それとリホちゃん達はどういう答えに辿り着くのかな……
ユリカ「相手の居場所はスズのスキルでわかるとして、私達は明日からどうしましょうか?」
アヤ「連中を捕まえに行くんじゃないの?」
エミちゃんの中ではまだライさんは昔の印象、想いでの方が色濃く残っているみたいです
この国には今、人を裁ける制度も環境もありません
そんな中で被害者であるユリカちゃん達が決断した道は、そう遠くないうちに訪れると思います
アヤ「それならいいわ。私も連中がどういう態度をとるのか見てやりたいしね」
花陽「……………」
アヤちゃんの中で何か変わった部分はあるようですけど、このキャラはわりと素でもあるのかな
ともあれ、一応の結論を出し、今日の騒動はお終いです
男子寮に行ったきりそのまま向こうでお休みしているソラくんと、子供達をあやして一緒に寝ているスズちゃん
それとリホちゃん達はどういう答えに辿り着くのかな……
ユリカ「相手の居場所はスズのスキルでわかるとして、私達は明日からどうしましょうか?」
アヤ「連中を捕まえに行くんじゃないの?」
エミ「ライ様はこのまま逃げるようなお方ではありません。事後処理にまだ時間もかかるでしょうし、先にユーディクスへ向かいましょう」
ユリカ「そうね。それでいいですか、ハナヨちゃん」
花陽「えっ? 私?」
ユリカ「ハナヨちゃんの意見も聞いておかないと……」
花陽「その辺りはおまかせします。私はライさん達の件とは別に考える事があるのです」
……そう、アイドルのライブをするために本格的に動き出すのです!
そのためには私の持つスキルをもっと良く知って、アヤちゃんの体を治してあげられるようにならないと
花陽「ってことですので、スケジュール的なのはおまかせします」
ユリカ「そのライブ……というのはいつやるかはまだ決まっていないのですね?」
花陽「時間も場所も規模もまだ何も。でもやるという決定事項だけがあるので……なんとか」
向こうじゃ考えられないプラン内容です
だけど何も決まっていないからこそ、全部自分達で作り上げていく楽しさを味わってもらいたいのです
とりあえずあ明日はまたフワちゃんにスキルについて色々教えてもらいましょう
>>408修正、差し替え↓
ユリカ「そうしたいところだけど、先に魔法学校の入学を決めておかないといけないと……」
エミ「ユーディクスにはいつまでという期日はあるのですか?」
ユリカ「入学試験は年中やっているけど、入学のタイミングは年に6回しかないのよ」
なんでも入学試験とは別の、入学や卒業というのは二か月おきにあるようです
変わった精度ですね
そしてもうじきある期日を過ぎれば、次は二か月先になると……
ユリカ「いくらハナヨちゃんがいいと言ってくれてもこのままズルズル先延ばしにするのはねぇ……」
アイナ「だね。先にそっちを決めてからでもいいんじゃない?」
作者死にかけてるやん
無理して毎日あげんでもええぞ 毎日同じ時間帯に更新してくれるのはありがたいけど、無理はしなくていいのよ…… なんなら週一でもいいくらいだぞ
今回も面白かった乙 -次の日 朝の女子寮
リホ「ほら、そんな慌てなくても平気だよ」
パイ「もっとゆっくり食べるのよ」
ヨシノ「ジュースもあるからねー」
それは朝食の席でのこと
カナ「……………」モグモグモグ…
アヤ「すっごい食べるね」
花陽「しばらく満足に食べていなかったみたいだから……」
エミ「でも少し抑えないと、お腹に響きますよ」
朝おきてから朝食の席まで、カナちゃんが何か話した事はありません
急激な環境の変化と、見慣れない人達に囲まれて落ち着けるはずがないのもわかります
だけどがんばって慣れていって欲しいです
みんなとも仲良くなってくれたら、きっと楽しいと思える日がくるはずです
カナ「…………っ」ケフッ
リホ「おー、全部食べた」
パイ「すごいのね」
エミ「ほら、口についてますよ」フキフキ
カナ「んー……」
バタン タッタッタ……
ソラ「あーお腹すいた、ご飯あるー?」
ユリカ「あらソラ、お帰りなさい」
アヤ「あーっソラ! 昨日なんで帰ってこなかったのよ!」バッ
ソラ「なんでって、向こうでご飯食べてお風呂はいって……なんとなくそのまま?」
アヤ「お風呂なら私が一緒に入ってあげるって言ってるでしょ」
ソラ「い、いいってそんなの……それよりご飯あるー?」
ユリカ「あら、向こうは朝ご飯の準備してないの?」
ソラ「みんなまだ寝てるんだよ。全然起きない」
アイナ「宴会みたいに騒いでいたみたいだしねぇ」
花陽「…………」
アヤちゃんのソラくんに対する態度はいつもと変わりません
その内に秘めた想いには気づく事なくソラくんもいつもと変わりません
そんな二人のやりとりを日常の一つとしてみんなは特に気にすることなく眺めています
この空気はすごく和やかで、私も好き
ユリカ「しょうがないですね。ちょっと向こうへ行って朝食の用意でもしてきますね」スッ
アイナ「私も行こうか?」
ユリカ「ご飯の用意するだけだし、大丈夫よ」
リホ「行ってらっしゃいー」
アヤ「……………」
花陽「………?」
アヤちゃんがユリカちゃんの背中をじっと見つめて………ん?
アヤ「…………」ジィ
花陽「え、な、なに?」
アヤ「なんでも…」
と、思ったら今度は私が見られてました
何かしらのアイコンタクトだったのでしょうか?
――ユリカちゃんは年上趣味
花陽「………………」ハッ
アヤ「…………」
昨日なにげに耳にした情報がふと思い返されます
……え、まさかこの状況でそういう事になるのかな?
花陽「あ、私今後の予定とか伝えないといけないので向こうに行ってきますね」サッ
アヤ「よろしく」
エミ「……?」
つい適当な要件を口にしてその場を後にします
まさかというか、そういう発想がまったくありませんでした
しかし客観的に見れば、ここには年頃の女の子がたくさんいます
わりと年は離れているけど男性陣もいます
………え、本当にそういう事ってあるんですか?
フワ「おはよう花陽ちゃん」
でもユリカちゃんてお父さんが大好きで……はっ!
花陽「そういえばトロスタンのあの男の人もダンディといえなくもないような……」ブツブツ
フワ「花陽ちゃーん?」
でもまさかユリカちゃんに限って……いえ、ユリカちゃんだからこそあり得る……?
少し前の壮絶な体験から、ちょっと優しい言葉に乗せられて……
フワ「おーい」
そういえば騙されやすいとかアヤちゃんが言ってました!
まさか男子寮の誰かに口説かれた……何てことがあるのでしょうか?
花陽「ユリカちゃん可愛いですし、可能性は十分に……」ブツブツ
フワ「…………」
ゴツッ
花陽「いったあい!」
フワ「大丈夫?」
花陽「あ、フワちゃん…大丈夫です……今一体何が!?」ジーン…
フワ「考え事しながら歩くと危ないから止めといてあげたわ」
花陽「それはありがとうございます」
フワ「で、どうしたのよ。昨夜のケンカまだ引きづってるの?」
花陽「いえ、それとは別の事で……え?」
フワ「すごい剣幕で暴れてたわよね、二人とも」
花陽「み、見てたの!?」
フワ「ええ、バッチリ」
花陽「こ、声かけてくださいよっ!」
フワ「ケンカに巻き込まれるなんてゴメンだわ」
花陽「えー……」
なんでも昨夜は私達の話を全部聞いていたというフワちゃん
恐ろしく耳がいいらしく、周囲の色んな音を感知して対応できるのだとか
自分で呼び出しておいてなんですが、すごいアルパカさんです
フワ「ケンカじゃないとすると、他に悩み事?」
花陽「悩みというか……私の知らない世界のお話しです」
フワ「?」
花陽「ユリカちゃんがね……」
フワ「ん、さっき男子寮へ行くって出ていったけど?」
花陽「……うん」
このまま私が行ったところでどうしていいかわからないし、フワちゃんに一度相談してみましょう
フワ「うん、まずないわね」
花陽「あれ……そう言い切れるものなんですか?」
フワ「恋ってね、心に少なからずある隙間に生まれるものなのよ」
花陽「は、はぁ……」
どういう意味だろう?
フワ「今のあの子にはそんな隙間にかまけている余裕なんてないし、ちゃんと自制できるわよ」
花陽「つまり……ユリカちゃんの心は他の事でいっぱいだから大丈夫と?」
フワ「良い意味で余裕がないのよ」
花陽「心に余裕がないのが、いい意味?」
フワ「ようは今やるべき事、これからやるべき事に向けて充実しているのよ」
-男子寮
花陽「フワちゃんは気にしなくてもいいって言ってたけど……」トトト…
ギン「ん、花陽か」
花陽「ギンさん、おはようございます」
ギン「ああ、おはよう。今ユリカが来ているぞ」
花陽「はい。こっちはみなさんまだ寝ているとか……」
ギン「特に朝から用事を請け負っていなかったからな。勝手に起きてくるだろうと放置していた」
花陽「はは……」
ギン「もしこちらの対応で不備があるところは都度報告してくれ」
花陽「はい、そのの時はお願いします」
ギンさんはとても頼りがいがあるというか、頼んだ事には徹底して努めてくれると思いますが
ギン「…………ん、何か用事か?」
花陽「ああいえ…」
ちょっとお堅いイメージ……。大人の男性みたいですし……
花陽「大人の男性………」チラッ
ギン「…………?」
花陽「さすがにないですよね……」
ギン「どうしたというんだ?」
ガチャ バタン
ユリカ「あれ、ハナヨちゃんどうしたんですか?」
花陽「ユリカちゃん? ちょっと様子を見に来たんだけど、朝食を作りにきたんじゃ?」
ユリカ「そのつもりだったのですが、色々と足りないものが多くて、取りに戻ろうかと……」
花陽「そうなんだ」
ユリカ「あ、すいませんギンさん」
ギン「ん?」
ユリカ「少しはみなさんにお家を片付けておくように言ってくれませんか? 散らかりすぎです」
ギン「そうか。掃除とは無縁の連中だからな」
ユリカ「それでもです。たった数日であれだけ物が散乱するのは逆に感心します」
よっぽどなんだろうなぁ……
ユリカ「ということで私一度戻りますね」サッ
ギン「ユリカ」
ユリカ「っ、は、はいっ!」ビクッ
花陽「……?」
ギン「わざわざすまないな……感謝する」
ユリカ「いえ…これくらい別に……で、では……」ササッ
…………ん?
さっきのはなんだったんだろう?
ギン「花陽」
花陽「は、はいっ」ドキ
あ……なるほど、少しわかったかも……
ギン「連中に用があるなら呼んでくるが?」
花陽「あ、うーん……寝ているなら後にします。またお昼ごろに来ますね」
ギン「わかった。そう伝えておこう」
花陽「それではまた後で……」タタッ
不意打ちのように名前を呼ばれるとドキっとしてしまいます
ギンさんの声って、とても深みのある声で、なんというのだろう……イケボ?
おそらく……男子寮の中でも一番シブい部類ではないでしょうか
私達の予定は魔法王国ユーディクスにある魔法学校にユリカちゃん達が試験に合格して入学する事
そして学んだ魔法、魔術で私を元の世界に送り返す事です
それと同時進行ですると決めたのがみんなに知ってもらいたいアイドルの魅力とすばらしさ
本格的に同時進行となりますがアヤちゃんの体の事、保護したカナちゃんの事も考えなくてはいけません
今日お昼に国境を超えるために出発するのですが、その前に昨日アヤちゃんのおかげで気づく事のできたスキルをためしてみます
フワ「それで私のトコに来たのね」
花陽「意見を聞きたくて……それと…」スッ
フワ「ふふ、仕方ないわねー」サッ
花陽「おじゃまします〜」ボフッ
やっぱりフワちゃんの懐は最高に気持ちがいいです
花陽「自分のベッドにしたいくらいですー…」
フワ「漏れてるわよ、心の声」
フワ「コンフィグ……なるほどね」
花陽「いつの間にか増えてたんです、これ」ヴォンッ
他のスキルの時は使えるようになると同時にお知らせがあったのですが、これは昨日言われて気づいたほどです
フワ「それは単純な話、これは元々あったスキルなのよ」
花陽「え、どういう事ですか?」
フワ「花陽ちゃんが認識しているかどうかで表示が変わったのね」
フワちゃんが言うには、元々あったけど私が存在を微塵も考えなかった、想像すらできない段階のものだったからだと……
花陽「もしかして残りのスキルもそうなのかな?」
フワ「それは不明ね。条件が必要なものとそうでないものと、謎が多いのは確かよ」
フワ「それで、そのコンフィグで色々設定できるのでしょ?」
花陽「アヤちゃんが言うには、ナビ妖精の設定もできるとか……やってみるね」スッ
ボードにあるコンフィグと書かれているらしい文字に触れます
するとそこからさらに別枠でウィンドウが開き、たくさんの文字が……
花陽「読めない……」
フワ「元々こっちの世界にあるスキルだからね。代わりに読んであげるわ」
花陽「フワちゃん読めるの?」
フワ「必要になるだろうし覚えたわ」
うぅ……羨ましいですINT999……
フワ「こっちのがナビの音量調節で、こっちが発信範囲制限」
花陽「それってどういうのです?」
フワ「んーとね……あら、これは便利そう」
フワちゃんが教えてくれたのはナビ音声の声が響く範囲の事
いつもスキルが発動するたびに周囲にお知らせしていたあの声が、なんと私にだけ聞こえるようになるそうです
これはとても便利そうなのでさっそくフワちゃんに操作を習い設定を私にだけ変更しました
フワ「他にも開放されているスキルの細かい設定とか弄れるみたいよ」
花陽「スキル個別のですか?」
フワ「そう……例えば………」
フワちゃんがスキル「隣の観測者」について1つ、大切な事を教えてくれました
花陽「……え……履歴から効果を消せる?」
フワ「出来るみたいね」
花陽「それって……無かった事に出来る……?」
フワ「ええ。例えばスキルで生み出したこの家とかも元の素材に戻せるわ」
ただし、スキルの使用回数が戻せるわけではないそうです
あくまで観測した結果を消滅させることができると……
花陽「それって、同じ相手に1度しか効果がないものでもやり直せるのかな?」
もし可能ならアヤちゃんの体を……
フワ「出来るかどうか、考えてみれば答えがでるんじゃない?」
花陽「あ、そうか……やってみる!」
アヤちゃんの不死身の体を元に戻して、綺麗な体だった頃に戻してあげる事は……
ピピッ
――スキル「それ正解!」が発動しました
花陽「わあっ、頭に声が響きました!」
フワ「そういう設定にしたからね。でも、うまくいったのね」
花陽「はい、よかった……アヤちゃんの体、これで……」
フワ「でもその方法はどうかしら?」
花陽「……え?」
フワ「それって、一人だけ大召喚の術者から外れるってことでしょ?」
花陽「え…あ、うん……でも一人くらいなら……」
フワ「周りのみんなが長い時を共に生きていくのに、自分だけが先に死ぬことにもなる……」
花陽「…………」
フワ「それは、あの子の幸せにつながるのかしら?」
アヤちゃんの望みは確かに叶う……けど、そこには違う問題もでてきます
一度与えた奇跡を取り上げてしまう事は少し勝手だとも思いますし……
でも確かにある方法でもあります
フワ「一度本人に聞いて見てもいいんじゃないかしら?」
花陽「………………」
おそらく……聞くまでもないと思います
アヤちゃんはそれを受け入れる事はありません
スキルも反応しない……
フワ「………………」
花陽「やっぱり別の……」
フワ「花陽ちゃん」
花陽「ん、なんですか?」
フワ「その正解がわかるスキル、便利ではあるけど少しまかせすぎないほうがいいわよ」
花陽「えっ!?」ドキッ
フワちゃんには私が今「それ正解!」を使ったことがわかったのでしょうか
いえ、それよりもまかせすぎないとはどういう……
フワ「花陽ちゃんは、ラブライブに優勝できないってわかったらがんばれる?」
花陽「ラブ……ライブ……」
フワちゃんの口からまさかその言葉を聞くとは思いませんでした
私やみんなが目指したスクールアイドル夢の舞台、ラブライブ……
フワ「逆の意味でも同じ。優勝できるってわかっても変わらず全力で取り組める?」
花陽「…………」
答えはすぐに出ました
花陽「最初のはノーで、後のはイエス。結果がすべてじゃないから、私は大好きなスクールアイドルに全力を尽くします、きっと…」
フワ「ん、そうね」
花陽「大事なものはその道のり、過程にもたくさんあると思うから……」
あ……フワちゃんの言いたい事が少しわかった気がします
フワ「勿論スキルによってでた結果が大事な時もある。だけどそこへ至るまでに生じる様々な要素、想いはきちんと向き合わないと見えないものよ」
花陽「うん。ありがとうフワちゃん」
フワ「便利で今まで助けられてきたのは一度や二度じゃないのは分かってるわ。でも、さっき考えていた事はきちんとしたほうがいいわ」
花陽「どうしてフワちゃんは私の考えている事がわかるんですか?」
フワ「前にも言ったでしょ? 私は花陽ちゃんの中から生まれた存在。思考や価値観は別だけど、根底にあるのは同じなのよ」
根底にあるもの……んー……なんだろう?
花陽「時々はぐらかすような言動もどうしてですか?」
フワ「多少ミステリアスな部分があったほうが女の魅力になるからよ」クスッ
花陽「そこはハッキリ言うんだね」
フワ「ふふ。ま、人生の先輩、お姉さんの助言だと思って聞いておきなさい」
花陽「フワちゃんて実際のところいくつなんですか?」
フワ「ヒ・ミ・ツ♪」
私の中から生まれたはずなのに私じゃ絶対に言わないような事をよく言いますこのアルパカさん
それが嫌とは感じない、フランクな空気を心地よくさえ思えるのはやっぱり人柄のせいでしょうか
花陽「………あ、ちょっと思ったんですけど」
フワ「今度はなあに?」
花陽「ギンさんも私から生まれた存在なら、根底にあるのは同じなのかな?」
フワ「やめてよ気持ち悪い」
花陽「……………」
ギンさんにやけに強くあたるのはなんでかなぁ〜?
ありがとー
ラストのフワちゃんスゲー真顔なんだろうなw -女子寮 二階
答えがわかっていても、直接見て聞いて、感じるものは別の道へ進むためのきっかけになる
フワちゃんと話してその事は理解できます
では一体どういった流れになるのかはまったく想像もつきません
つかないのであれば、動いてみるのが一番です
花陽「と、思ったのですが……アヤちゃんは?」
リホ「アヤお姉ちゃんなら向こうに行ってるよー」
パイ「お片付けするんだってー」
花陽「向こう……というと男子寮ですね。お片付け?」
ヨシノ「お掃除の仕方を教えに行ったのです」
ユリカちゃんが言っていた惨状がどうやら本格的のようです
となると呼び戻すのもなんですし、少し時間をおきましょう
花陽「みんなは何してるの?」
リホ「お絵かきだよっ」
パイ「アイドルちゃんが着てる可愛い服をかいてるのっ」
花陽「ああ、ライブ衣装ですね」
ヨシノ「フリフリなの」
みんなの絵を見せてもらうと、それぞれ個性がでていてとても可愛らしいデザインがたくさん
ヨシノちゃんは絵が上手なだけでなく、独創的な感性で奇抜なデザインが多数見受けられます
でもこれはこれで曲のイメージとハマればいいかもしれません……
花陽「………ん?」
カナ「……………」
部屋の隅っこにうずくまるようにしてカナちゃんが座り込んでいます
やっぱりまだ……
花陽「カナちゃん、こっちでみんなと遊びませんか?」
カナ「……………」
リホ「あの子ずっとあんな感じなの」
パイ「遊ぼうって言っても……」
ヨシノ「しょうがないの」
みんなカナちゃんの境遇を知っているので無理強いはしません
少しづつでもいい……カナちゃんにも何か興味を持ってもらいたいです
花陽「……………あ」
ふと子供達がお絵かきしている紙が目に入ります
この世界にあるのかは知りませんが、少しは楽しんでくれるかな?
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