ルビィ「片割れのジュエル」
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ルビィ「言おうと思ったから言っただけなのに」
善子「どうだか」
ルビィ「でも善子ちゃん嬉しそうだよね」
善子「……気のせいでしょ」
ルビィ「そうかなぁ? うーん、まあいいや」
善子「そこはいいのね」
ルビィ「それより善子ちゃん、今日はお買い物に行こうよ」 善子「買い物ねえ、服でも見に行くの?」
ルビィ「半分正解」
善子「半分ってどういうことよ」
ルビィ「まあまあ、行ってみれば分かるよ」ニコッ
ルビィ「フフッ楽しみだなぁ…」テクテク
善子「……やっぱり変というか」
善子「何考えてるのか、未だに分からないわあの子」 善子「ま、一緒にいるのは嫌じゃないけど」
ルビィ「善子ちゃーん」
善子「はいはい分かってますって」スタスタ
善子「今そっちに行くからもう少し…ってちょっと! なに先に進んでるの!」
善子「ルビィ! あーもう本当に勝手なんだから! あとで説教してやるわ!」 〜店内〜
ルビィ「ごめんなさい、久しぶりだからワクワクしちゃって」
善子「あのねえ…もし離れて迷子にでもなったらどうするつもりだったのよ」
ルビィ「それは困るかなぁ、善子ちゃんと一緒に行くのが楽しみだったんだもん」
善子「……なら余計落ち着きなさいっての、全く」
ルビィ「はーい」
善子「しっかしアイドルの衣装ねえ…半分正解ってこういうこと」
ルビィ「うん! ルビィね、アイドルが好きなんだぁ」 善子「ふーん、アイドルか…いいんじゃない?」
善子「よくいるもんね、ルビィみたいなちっちゃい子って」
ルビィ「それって可愛いって意味で言ってるの?」
善子「そう捉えられるなら、ある意味向いてるかもね」
ルビィ「ありがとう、でももっと向いてそうな人がいるよ?」
善子「へえ、誰?」
ルビィ「善子ちゃん」 善子「私って、なんでまた」
ルビィ「美人さんだし、スタイルもいいし、何より姿勢が悪くない」
ルビィ「しゃんとしてるって言うのかなぁ、だからね、善子ちゃんなら絶対にスクールアイドル向いてる! って最初見たときに思ったんだぁ」
善子「…はい?」
ルビィ「ざっくり言うとアイドルの資質、みたいな感じかも」
善子「それを初見で……へえ、成程つまり」
善子「あのとき、あんたはそんなアイドル事務所のスカウトみたいな感じで私に話しかけてきたと?」
ルビィ「うーん、分からないけど…多分そうかも」
善子「……」 ルビィ「でも、どうだろう…それだけじゃないような……ん? 花丸ちゃんだ」
花丸「ルビィちゃん! また善子ちゃんとお出かけ?」
ルビィ「そうだよー、今日はね、善子ちゃんに似合う衣装を探そうと思って」
花丸「そっかそっか、善子ちゃんもこんにちは。すっかり仲良くなったね?」
善子「ああ花丸、丁度いい所に」
花丸「ん?」 善子「ちょっとこっち、ルビィはそこで少し待ってて」
ルビィ「うん、別にいいけど」
善子「悪いわねすぐに終わるから、行くわよ」
花丸「…なにがなんだか分からないけど、とりあえず行ってくるね」
ルビィ「はーい、いってらっしゃい」
ルビィ「…何の話だろう?」 ……
善子「よし、これくらいでいいわね」
花丸「善子ちゃん、どうしたの急に、何かあった?」
善子「あんた二週間前に私とした会話覚えてる?」
花丸「あの学校の前で会ったときの? 覚えてるけど」
善子「記憶力いいって言ってたものね…じゃあ改めて聞くけど」
花丸「うん」 善子「……何が運命ですって?」ガシッ
花丸「ずら?」
善子「思いっきり個人的願望が含まれていたんだけど!? 何だったのよこの前の意味ありげなやり取りは!」
善子「そういうロマンとは程遠い事実が今しがた! あの子の口から証明されたわよ!」
花丸「いきなり何の話? …ってああ、ルビィちゃんにアイドルのことで何か言われたの?」
花丸「そうだよね、善子ちゃん美人さんだもん」フフッ 善子「なにを?気に笑ってんのよ! あーもう、本当にがっかりだわ……」
花丸「んー? まあ違ってたのは謝るけど、そんなにムキになることかなあ」
善子「ムキっていうか、現実とのギャップっていうか…」
花丸「ぎゃっぷ?」
善子「なんか…違ったから、私が初めてあの子と会ったときに感じたものと」 花丸「違うって?」
善子「だから…確かに変わってはいるけどあの子はもっとこう、純粋で真っ直ぐなもんだと思ってたのに」
善子「向こうからすれば勝手な話かもしれないけど、ね」
善子「でもあまりいないタイプだから運命だなんて聞いたときには疑いもあったけど多少の期待もあったのよ、それなりには。なのにねえ…」ハァ
花丸「……ふうん、だからがっかりだと」 善子「何よ」
花丸「善子ちゃん、推しのスキャンダルがばれたら発狂しそうな考え方してるね」
善子「ちょっと!? どうしてここで具体的かつ的確な追い打ちをするのよ! どんだけえげつないのあんた!」
花丸「ごめんごめん、冗談で言っただけだから気にしないで」
善子「冗談って…悪いけど、洒落ならもう少し小粒で気の利いたものにしてちょうだい……」 花丸「でも善子ちゃんって意外とロマンチストなんだね」
善子「ほっといて」
花丸「まあまあ、理想を求めるのもいいことだよ?」
花丸「ただ、そんな善子ちゃんのために一つ補足させてもらうけど」
花丸「それくらいの理由じゃルビィちゃんは自分から話しかけたりしないよ、精々心の中で思うくらいかな」
善子「え、そんなもんなの?」 花丸「うん、だから落ち込むにはまだ早いんじゃないかな。とは言ってもマルのこの運命説も所詮は個人的願望に過ぎないんだけどね」
善子「はあ……つまり私は最初からあんたたちの“なんとなく”に振り回されたってこと」
花丸「いやあそう聞くとなんだか申し訳なくなってきたずら」
善子「笑いながら言っても説得力ないわよ……まあいいわ、知り合えたことに文句はないわけだし」
善子「ただ、思わせぶりな言い方は今後控えてもらいたいわね」
花丸「善処はします」
善子「その答えじゃどこまでもつのやら分かったもんじゃないわね、取り敢えず戻りましょ。あんまり待たせても悪いし」
花丸「了解ずら〜」 ルビィ「あ、おかえりなさい。長かったね」
善子「少しごたついてね、でも大丈夫、一応解決はしたから」
ルビィ「そっか、花丸ちゃんはこれから用事?」
花丸「うん、もう少し一人で見て回りたいかなって」
ルビィ「わかった、それじゃあ今日はお別れだね」
花丸「うん、またね。善子ちゃんも」
善子「ええ、また」 ルビィ「花丸ちゃんと仲いいんだね」
善子「どうしてそう思うのよ」
ルビィ「前より距離が近かったから」
善子「意外と話しやすいってだけよ」
ルビィ「そこが花丸ちゃんのいいところなんだけどね」
善子「…ま、雰囲気の良さってのはあるかもね。それより」
善子「ねえルビィ、気になってたんだけど。花丸がこういったところに来るのってなかなか珍しいんじゃない?」
ルビィ「ん、なんで?」 善子「いや、あの子はあの子でぼんやりしてるというか」
善子「こういったアイドルものには興味ない気がしてたからちょっとね」
善子「どっちかと言えば、花丸って文学系なイメージだし」
ルビィ「わあ、善子ちゃん鋭いね。大当たり」
善子「やっぱりそうなの? けど、それならどうしてこんなお店になんか」
ルビィ「うーん、気分転換ってやつじゃないかなあ」
ルビィ「…たまーに行きたくなる、とか」
善子「成程ね、気晴らしか」 善子「まあずっとルビィと一緒にいるくらいなんだからアイドルにも興味くらいは持つわよね、そりゃ」
ルビィ「ううん、さっきはああ言ったけど」
ルビィ「アイドルに対する興味だけなら、花丸ちゃんはルビィと会う前からずっと持ってたよ」
善子「へえ…意外。花丸って寺生まれなんでしょ?」
ルビィ「うん」
善子「それに貴女たちも付き合い長いみたいだし」
ルビィ「確かに、あれから結構経ったねえ」
善子「なのにそのルビィに出会う前からって相当よね、何に影響されたのかしら…ちょっと気になるわね」
ルビィ「…………さあ、ルビィは知らないからよく分かんないや」 善子「? そう、なら仕方ないわね」
ルビィ「それより買い物の続きしようよ、あっちでね、善子ちゃんに似合いそうなもの見つけたんだぁ」
善子(……はぐらかされた?)「どんな感じの?」
ルビィ「まずは黒を基調にしたモノクロのドレスがいいかなぁって、全体的に丈は短めでフリルも少ないけど善子ちゃんはスタイルいいからこれくらいでも十分だと思うの」
善子「ずいぶん簡素ね、こんなんでステージ映えとかするの?」
ルビィ「ううんこれはあくまでベースで、必要なものは後から付け足していくの、例えばこういう感じでね。はい、シニヨンに羽を付けてみました」 たぶん のんき だと思うんだけど、文字化けしてる漢字がある…こっちの環境の問題かな 善子「……」
ルビィ「ね、こういうのが一つあるだけでも…ってどうしたの?」
善子「いや、思った以上に真剣でつい…ね。本当にアイドル好きなんだなって」
ルビィ「ありがとう、ルビィが夢中になれるのってそれくらいしかないから」エヘヘ
善子「良いことだと思うわよ…あーでも、あまり長く付き合わされるのは勘弁願いたいわね」
ルビィ「…で、次は腕のあたりなんだけど──」
善子「そこ、露骨に無視しない」 >>65
本当ですね、文字化けしてました……ありがとうございます
書き溜めを全部載せたあと修正したレスを投下しますのでもう少しお待ちください。 ─
花丸「えっと、ひーふーみー……ぎりぎり足りるかも、良かったあ」
花丸「でもその前にちょっと休憩……ふう、疲れたあ…」ストン
ダイヤ「ここは意外と広いですからね」
花丸「あれ、ダイヤさんいつの間に」
ダイヤ「ええつい先ほど、飲みますか? これ」
花丸「じゃあお言葉に甘えて」ゴクゴク 花丸「うーん、生き返るずらぁ〜…」プハ
ダイヤ「ずいぶん歩き回ったみたいですわね」
花丸「いやいや、マルに体力がないだけだよ」
ダイヤ「どうでしょうかね」
花丸「それよりダイヤさんはどうしてここに? ルビィちゃんのお迎え? ならさっき向こうで善子ちゃんと」
ダイヤ「いえ、多分理由は貴女と同じですわ」
花丸「……珍しいですね」 ダイヤ「ええ、こういうのは花丸さんに任せておこうとも思っていたのですけど、たまにはね」
ダイヤ「それにこの時期になると貴女がここに来ることも分かってましたし、まあ早い話が参考にさせてもらおうと」
花丸「ならないよ、マルは安いものしか買えないから」
ダイヤ「そういった問題では…」
花丸「ないかもね。なら、髪飾り…とかかな」
花丸「最近は、そう思うようになってきた」
ダイヤ「……ええ」 ダイヤ「ありがとうございます花丸さん、良い参考になりましたわ」
花丸「それはよかったずら、じゃあマルはこれで」
ダイヤ「……待ってください」
花丸「まだ何か?」
ダイヤ「…あの、花丸さん」
ダイヤ「その、そろそろ高校生になりますわよね」 花丸「そうだね」
ダイヤ「……」
ダイヤ「貴女……卒業したら、どうするつもりですか?」
花丸「!! …いやだなあダイヤさん、まだ入学すらしてないのに」
花丸「卒業だなんて、気持ちが先走りすぎずら」
ダイヤ「……」
花丸「そんな先のことまで考えてないよ、昔はあった気もするけど」
花丸「今となってはどんな答えが一番いいのか、さっぱり分からないし」 ダイヤ「…そうですわね、確かに」
ダイヤ「余計なことを言いました、今のは忘れてください」
ダイヤ「それでは、帰りにお気を付けて」
花丸「うん、またねダイヤさん」
ダイヤ「……髪飾り」
ダイヤ「簪とか、置いてあるのかしら」 >>44 修正
ルビィ「楽しいから別にいいかなぁって」
善子「呑気よねホントに」
ルビィ「あ、じゃあその良いところを見つけるために会ってたっていうのは?」
善子「本人に堂々と後付け宣言するってどうなのよ」
ルビィ「駄目? いいと思ったんだけどなあ…」
善子「……ならもう勝手にすれば? いちいち聞くのも馬鹿らしくなってきたわ」
ルビィ「やった、善子ちゃん大好き」
善子「随分と都合がいいときに出る大好きね」 >>55 修正
善子「なにを呑気に笑ってんのよ! あーもう、本当にがっかりだわ……」
花丸「んー? まあ違ってたのは謝るけど、そんなにムキになることかなあ」
善子「ムキっていうか、現実とのギャップっていうか…」
花丸「ぎゃっぷ?」
善子「なんか…違ったから、私が初めてあの子と会ったときに感じたものと」 穏やかな空気感の中に謎めいた描写もあって引き込まれる
続きが楽しみ ─津島家
善子「…………」
善子母「どう? お口に合うかしら」
ルビィ「はい、とても美味しいです!!」
善子「ねえ」
ルビィ「あ、善子ちゃんおはようー」
善子「なんでうちの食卓に混ざってるの」
ルビィ「早起きなものですから」ズズ…
善子「要するに上がり込んできたってことよね」 善子母「だって善子何回呼んでも起きないし、ずっと外で待たせるのも可哀想でしょ?」
善子「そんなこと言われたって……まだ学校まで全然時間あるでしょ、早すぎなのよ」
ルビィ「確かにそうだね、ちょっと張り切りすぎたかなぁ」
善子「そんなに気分上がるイベントだったかしら入学式って…」
ルビィ「ルビィたちにとっては重要なことだったりするんだよ」
善子「たちねえ……別にいいけど。それよりママ、私の分のご飯ある?」 善子母「ええちょっと待っててね、今用意するから」
ルビィ「ねえ善子ちゃん、善子ちゃんはご飯の前にその寝ぐせをどうにかしたほうがいいと思うよ」
善子「余計なお世話どうも。どっかの誰かと違って今起きたばかりなのよ私は」
ルビィ「ふうん、どこの誰だろうねえ。ごちそうさまでした」
善子母「はいお粗末さまでした」ニコニコ
善子「さあ…少なくとも今分かってるのは」
善子「ここで三文の徳をしているってことくらいかしらね」 ─
花丸「……」
「ご挨拶ですか?」
花丸「あ、おはようございます」
黒澤母「おはようございます。今日は一段と早いですね」
花丸「入学式ですから」
黒澤母「フフッ、晴れ舞台ですものね」 黒澤母「そろそろ出ますか?」
花丸「ええまあ、用も済みましたし」
黒澤母「そうですか。ではルビィによろしく伝えておいてください」
黒澤母「あの子、起き上がるなりすぐに家を飛び出していったものだから、ね」
花丸「あはは、よく言っておきます。それでは」
黒澤母「はい。でも花丸さん最後に一つだけ」 花丸「なんでしょうか」
黒澤母「制服、とてもよく似合っていますよ」
黒澤母「それだけです。いってらっしゃい」
花丸「ありがとうございます、いってきます」
黒澤母「……すっかり綺麗になったわね」 ダイヤ「おはようございます、お母様」
黒澤母「あら、ダイヤも来てたの」
ダイヤ「少し前に……今のは、花丸さんですか?」
黒澤母「ええ、久々に先を越されてしまいました」
ダイヤ「今日は入学式ですからね」
黒澤母「みたいですね」 黒澤母「しかし、ともすれば貴女も生徒会長として一仕事あるのでは?」
ダイヤ「大丈夫ですわ、その辺りは問題ありません」
黒澤母「でしょうね、ダイヤはしっかりしてるから」
ダイヤ「というよりも、そうでなければ姉としての示しがつきませんので」
黒澤母「世話の焼ける妹を持つと大変ですね、お姉ちゃんは」クス
ダイヤ「そうですわね……それは変わらない気がします。昔も──今も」 黒澤母「……祈っていきます?」
ダイヤ「いいえ、もう済ませましたから」
黒澤母「あら、私は三番目でしたか」
ダイヤ「どうでしょうね、もしかしたら四番目かもしれませんよ」カサッ
黒澤母「……成程。ねえダイヤ」
ダイヤ「はい」
黒澤母「意外としっかりしてますよね、ルビィは」
ダイヤ「……ですね」 ─学校
キーンコーンカーンコーン
善子「はぁーやっと終わったわね」
花丸「やっとって、明日からはもっと長くなるのに」
善子「授業と行事ではまた違うと思うんだけど」
ルビィ「えー、そうかなぁ」
善子「そんなもんよ、まだ授業のほうが気が楽だわ」
善子「さてと…私はもう帰るけど、そっちはどうするの?」 花丸「じゃあマルも一緒に」
ルビィ「うーん、ルビィはいいや」
善子「…聞いた? 今の」
花丸「珍しいね、何かあったの? ルビィちゃん」
ルビィ「うん。スクールアイドル部のほうに行ってみようかなと思って」
善子「行くって…今日の朝に声かけられてしどろもどろになってたクセに?」
ルビィ「うん」
善子「やめておいたら? 私たちと一緒でもあんなんだったのに一人じゃ無理に決まってるでしょ」 ルビィ「でも気になるから、二人は先に帰ってていいよ」
善子「いやいや、またの機会にしときなさいって」
花丸「分かった、じゃあ先に帰ってるね。行こう善子ちゃん」ギュ
善子「ちょっ、いいの?」
花丸「いいの、ほら早く」
善子「ああもう分かったから引っ張るんじゃないわよ」
善子「ルビィ! しっかりやんなさいよ!」
ルビィ「はーい」フリフリ
ルビィ「……まずは挨拶から、うん。挨拶だよね…うん」 善子「──ねえ、見えなくなるまでずっと棒立ちだったんだけど、本当に大丈夫なんでしょうね」
花丸「いや、多分大丈夫じゃないだろうね」
善子「……それなら」
花丸「随分気にするね、そんなにルビィちゃんと帰りたかったの?」
善子「そういうことじゃなくて」
花丸「やらせてあげなよ、心配なのは分かるけど」
善子「…あの子、気が小さいのに妙なところで胆が据わってるわよね」
花丸「好きなものに対して真っ直ぐなんだよ、ルビィちゃんは」
善子「好きなもの、ねえ」 花丸「そういう意味では善子ちゃんもその中に入ってるんだよ?」
善子「……どうだか」
花丸「またそんなこと言って」
善子「いまいちしっくりこないんだもの、それに」
花丸「それに?」 善子「私はてっきり貴女たち二人が上手くいってるものかと思っていたわけだし」
花丸「マルとルビィちゃんが? あはは、それは絶対にありえないずら」
善子「やけにはっきりと言うのね、嫌なの?」
花丸「もちろんルビィちゃんは大好きだけど、そう思われるのはあんまり…ね」
善子「恋愛関係が苦手とか、そういうの?」
花丸「ううん、そうじゃなくて」
花丸「マルにはもう心に決めた人がいるから」
善子「え、嘘…?」
花丸「ほんとほんと」 善子「あんた、見かけによらず中々やるわね…で、その相手って?」
花丸「マルたちと同じ年の子だよ」
善子「へえ、同い年……ならもしかするとこの学校に」
花丸「もし生きていたら、だけどね」
善子「えっ?」
花丸「今はもういないんだ」
善子「……ごめん」
花丸「そんなに気を遣わなくていいよ」 ……
花丸「マルね、昔は本当に誰とも話そうとしなかったんだ、いつも本ばかり読んでてね」
花丸「人嫌いっていうか、一人でそうしている時間が好きだったからつい夢中になって」
善子「まあ、らしくはあるわね」
花丸「そんな日が続いた頃、ちょうど家の用事とやらでバッタリと会ったのがその子」
花丸「とっても明るくて天使みたいに可愛くて、まあ少しだけ元気の良すぎるところはあったけど」クス…
花丸「でも、マルの手を引っ張って外の世界に連れ出してくれた、恩人なんだ」
善子「……そう」 花丸「それでね…その子に言われたの、大人になったら結婚しようねって」
善子「結婚?」
花丸「そう、でもその後ダイヤさんに怒られたっけ…ふふっ、小さいときでもダイヤさん真面目だったから」
善子(……ダイヤさん?)
花丸「けどそう言われたことが本当に嬉しくて、だから今でもその約束を覚えてるの」
善子「それで絶対にありえない、か……」
花丸「おかしい?」
善子「どこに笑うところがあるのよ」
花丸「善子ちゃんならそう言ってくれると思った。ありがとうね」 善子「いや、私は別に…」
花丸「ルビィちゃんも同じこと言ってたよマルを変に言う人たちに、何がおかしいの! って」
善子「そういう経験…やっぱりあるのね」
花丸「まあ、家柄的に直接言ってくることはなかったんだけど我慢できなかったみたい。 ルビィちゃん優しいから」
花丸「でもね、マルは思うんだ。 ただ優しいだけじゃそんなこと出来やしないって」 善子「……」
花丸「何かに立ち向かっていける強さがあって初めて出来ることなんだって」
花丸「だから同じ言葉を返した善子ちゃんを見て、やっぱり運命ってあるのかなあって思っちゃった」
花丸「二人ともあまり似てないのに、そういうところそっくりなんだもん」
善子「主観的すぎるでしょ、どういう理屈よ」 花丸「まあそう照れないで」
善子「誰も照れてないっての!」
花丸「あはは、それに今のは理屈じゃないよ」
善子「? じゃあ何よ」
花丸「願望、もっと言うならエゴかな」 善子「エゴ?」
花丸「マルは、あの子と出会った偶然…必然を否定されたくないの」
花丸「本当はね、それだけかもしれない」
善子「……ねえ花丸」
善子「言っておくけど、私自身は貴女を否定するつもりは毛頭ない」
善子「でも証人になってあげるつもりもないわ、その辺りはちゃんと理解してね」 花丸「うん、分かってる」
善子「そう……あと、なんか悪かったわね。そんなつもりなかったのに色々聞いちゃって」
花丸「ううん、こっちも色々聞いてもらってスッキリしたから」
善子「なら、いいんだけど」
善子「…………」
花丸「善子ちゃん?」
善子「ねえ、謝った手前聞きづらいんだけどさ…もう一つ、聞いてもいいかしら?」
花丸「いいけど?」 善子「さっきの話でダイヤさんがどうこう、って言ってたわよね」
花丸「うん」
善子「私はどうしてそこでダイヤさんの名前が出てくるのか、いまいち分からなくて」
善子「ねえ花丸、貴女が言う“その子”って…一体どんな子なの?」
花丸「……そうだね、簡潔に、分かりやすく言うなら…」
花丸「黒い髪のルビィちゃん、ってところかな」
善子「……それ、どういう意味」
花丸「そのうち分かるよ、善子ちゃんがこのままの形でルビィちゃんと関わっていくのなら、ね」 善子「……」
花丸「マルから言えるのはそれだけ、じゃあまたね」
善子「…花丸」
花丸「なに?」クルッ
善子「あまり無理するんじゃないわよ」
花丸「……」クスッ
花丸「そういうところだよ、善子ちゃん」 スタスタ…
善子「小さい頃の約束、か」
善子「まさか、花丸にそんな過去があったなんてね……」
善子(ということは、ずっと前からアイドルに興味があったっていうのも多分その子から……)
善子「……? いや、でもそれ何か、引っかかるような……」
善子(それに引っかかるといえば、さっき花丸の言った黒い髪のルビィっていうのも気になる)
「善子ちゃん」 善子(別に言いたくなければ答えなくても良かったのに……なんでわざわざそんな言い方をしたの?)
善子(そう答えたことに何か意味があったってこと? …いや、仮にそうだとしても)
善子(どうしてそれをルビィで例える必要が……)
「善子ちゃーん」
善子(…さっきまで、花丸は私に対して結構深いところまで話してくれたと思っていたけど)
善子(まだ他に、そのことについて隠していることがあるんじゃ……)
ルビィ「善子ちゃんってば」ヒョコッ 善子「んなぁっ! い、いきなり目の前に現れるんじゃないわよ!」
ルビィ「いきなりでもないけど、そのくらいやらないと気付いてもらえなさそうだったから」
善子「あっ…そう」
ルビィ「まだ帰ってなかったんだね」
善子「まあ色々あったから」 ルビィ「色々って?」
善子「世間一般ではあまりしない世間話をちょっとね」
ルビィ「なにそれ、変なの」クスクス
善子「そういうあんたはどうなのよ」
ルビィ「何が?」
善子「スクールアイドル部」 ルビィ「うん。名前は言ってきたよ」
善子「名前だけって…」
ルビィ「あとこれ、入部届貰ってきた」ハイ
善子「私は入らないわよ」
ルビィ「じゃあルビィが名前書いておくね」
善子「冗談でもそういうことサラッと言うのやめなさい」
ルビィ「本気ならいいの?」
善子「余計に駄目だわ」 ルビィ「うーん、じゃあまた誘うことにする」
善子「やめはしないのね」
ルビィ「だって善子ちゃんや花丸ちゃんと一緒にスクールアイドルやりたいから」
善子「花丸、やると思ってるの?」
ルビィ「やるよ。絶対に」
善子「……」
─善子ちゃんがこのままの形でルビィちゃんと関わっていくのなら─
善子「あのさ、ルビィ」 ルビィ「なに? もしかして入ってくれるの?」ニコッ
善子「…………あー、いいや。それはまた今度にする」
善子「今は、うん。やめておくわ」
ルビィ「えぇ、そんなあ」
善子「また日を改めてってこと。それじゃね」
ルビィ「はーい…」
善子(急がなくてもいずれ答えは出るだろうし……ね) ─
花丸「こんばんは。また来ちゃったずら」
花丸「二回も来るのって結構久しぶりだよね」
花丸「友達にあなたのことを話したらつい……」
花丸「覚えてる? 前に話した善子ちゃんって子」
花丸「そう、ルビィちゃんのお気に入りのね」 花丸「善子ちゃんもルビィちゃんのことがちょっとだけ気になってるみたい、ちょっとだけね」
花丸「本人はそのちょっとも否定してるみたいだけど…ふふっ」
花丸「安心した? ううん、聞いてみただけ」
花丸「うん、だからね。学校も楽しくやれそうだよ」
花丸「それに……いや、これはまだ秘密にしておくずら」
花丸「はい、今日のマルのお話しはここまで。続きは今度ね」
花丸「じゃあ…また来るね、アオちゃん」
……
…
── 黒澤家之墓 ── 一週間後
──海岸
タッタッタ…
タッタッタッタ……
ダイヤ「……ハア、やっぱり少し鈍っているわね」
「おや、珍しい人がいる。珍しいというか、久しぶり?」
ダイヤ「いつも顔を突き合わせているじゃありませんか、果南さん」
果南「それは学校、ここは砂浜。だよね?」
ダイヤ「ああ、場所の問題でしたか」 果南「分かってたくせに、で? なーんでまた走り込みなんかしてたわけ」
ダイヤ「たまにはいいかと思いまして」
果南「それだけ? 私はてっきり体力作りのためかと」
ダイヤ「何のための体力作りですか」
果南「そりゃもちろんスクールアイドルのでしょ。理由は、うーんそうだなあ」
果南「今になって千歌が部を立ち上げたいときたものだから、そのおかげで居ても立っても居られなくなった……とか?」
ダイヤ「……さあ」
果南「おお、正解みたい」 ダイヤ「…別に、気晴らしですわよ」
果南「戻ってくればいいじゃん、辞めたわけじゃないんだしさ」
ダイヤ「貴女の変わり身が早すぎるんです」
果南「いやいや折角だから流れに乗っておこうと、千歌に誘われたってのもあるけどさ」
果南「鞠莉だってどうせ今年帰ってくるんだし、それなら環境はある程度整っていたほうがいいでしょ」
ダイヤ「確かにそうかもしれませんけど」
果南「それに、スクールアイドルやってればルビィちゃんとの距離も縮まるかもしれないし」 ダイヤ「ルビィですか」
果南「そんな睨まなくても、別に狙ってるわけじゃなしに」
果南「ただほら、未だに苦手意識を持たれてるのも私としてはこう思うところがあるわけで」
ダイヤ「すみません、嫌っているわけではないのですが」
果南「分かってるって、元からそんな性格だもんね。それに……環境もひっどいもんだしさ」
果南「寧ろよくやれてると思うよ」
ダイヤ「……しかし、それでもやるとあの子が決めた以上は乗り越えなければなりません」 果南「手厳しいね…というか、もしかしてそれで入部してないわけ?」
ダイヤ「はい。私がいるとあの子は私に頼ってくるでしょうから、それでは駄目なんです」
果南「ほんと、妹を一番に考えるところは変わってないね。昔からさ」
ダイヤ「……」
果南「そうだ、そのことだけどグループ名もそのまま使わせてもらってるから」
ダイヤ「…ちなみに人数は」
果南「んー、私と千歌と曜とルビィちゃんで四人かな」
果南「あとは目を付けられた二人が近いうちに」 ダイヤ「その二人とは?」
果南「千歌のお気に入りとルビィちゃんのお気に入りさ、長いこと断ってきたと思うけどそれも時間の問題だろうね」
ダイヤ「ああ、成るほど」
果南「しっかし分からないんだよね、すぐに影響を受ける千歌が音ノ木坂出身の梨子ちゃんを付け狙うのはともかくとして」
ダイヤ「言い方」
果南「なんでルビィちゃんはあそこまで善子ちゃんに執着するのかなあ」
ダイヤ「憧れ、もっと言うなら羨望でしょう、あの子が彼女に向ける視線は大体そんな感じですから」
ダイヤ「もっとも、それが何を指しているのかまでは知りませんが」 果南「ふーん、そんなもんか」
果南「まあいいや。とにかくそういうわけだから、ダイヤが戻ってくる頃にはきっと結構な人数になってると思うよ」
ダイヤ「そうですか、ではそれまでの間部のことは任せますわね」
果南「了解。ま、私はリーダーじゃないから陰ながらってやつですかね」
ダイヤ「どちらでも構いませんわよ、ではそろそろ行きますからこれで」
果南「ん、じゃあね」
果南「さてと。もうひとっ走りしてくるかな」 ……
─部室
千歌「みんな注目ー! 新しい部員を捕まえてきましたー!」
曜「千歌ちゃん言い方」
千歌「こちら新メンバーの桜内梨子ちゃんです!!」
梨子「よ、よろしくお願いします」
曜「おぉー、遂に陥落」パチパチ
千歌「いやぁ長かったねえ」シミジミ 果南「へえ、噂をすればなんとやら」
ルビィ「果南さん?」
果南「いやいやなんでも」
千歌「これで曲は問題なし! ねえ果南ちゃん、もう活動してもいいよね!?」
果南「そう慌てないの、梨子ちゃんまだ入ったばかりじゃん」
千歌「えー、でもさあ」
果南「そもそもスクールアイドルが何なのかちゃんと教えたの?」 千歌「……言ったよね?」
梨子「いいえ、聞いてないけど」
果南「知らないみたいだね」
千歌「でも音ノ木坂出身だし…」
曜「μ'sのことはあまり詳しくないって言ってたじゃん」
千歌「……」 千歌「梨子ちゃん」
梨子「はい」
千歌「ここから始めよう! きっと大丈夫!」ガシッ
梨子「…ちなみにその台詞は二回目なんだけど、大丈夫?」
千歌「…心配ないって!」
曜「根拠はないよね」
果南「保証もないしね」
梨子「……何ならあるの逆に」チラッ
ルビィ「えっ……えーと、その」 ルビィ「笑顔、ならあると思います」
千歌「おおルビィちゃんいいこと言った! そうだよ笑顔だよ!」ギュッ
ルビィ「ひぁっ……!」
千歌「スクールアイドルでも部活でもそれが一番大事だよね! うん私もそう思う!」ブンブン
ルビィ「は、はい…そうですね」
果南「言った本人の顔引きつってるけど」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています