ルビィ「片割れのジュエル」
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善子「みたいね、話してるだけでも幸せそうに見えるわよ今の貴女」
花丸「ん、そうかなあ」
善子「見えるわよ。でもさ」
花丸「でも?」
善子「そんなあんたがよくルビィと親友になれたわよね……きつかったんじゃないの? 色々」
花丸「そう、だね……うん。正直そんな関係になれるとは思っていなかったよマルも」 花丸「まず第一印象が最低だったからね。初めにルビィちゃんに会ったときさ」
花丸「気持ち悪くて吐いたの、本人の目の前でだよ」
花丸「いなくなった人の代わりがすぐに見つかりました。みたいな」
花丸「なんだろう、そういう嫌悪感がきっと物凄かったんだと思う」
花丸「だってどこからどう見てもアオちゃんじゃないのに、そのくせアオちゃんにそっくりで」
花丸「頭がおかしくなりそうだったよ、本当に」
善子「……成程ね、どおりで」 花丸「?」
善子「さっきルビィがさ、言ってたのよ。あんたのこと大嫌いだったって」
善子「それに納得した」
花丸「……そっか、ルビィちゃんが」
花丸「申し訳なかったんだずっと、マルたちはあれだけ酷い仕打ちをしておきながら」
花丸「ルビィちゃんは何も言わない、何も言わせない日々を送らせていたことが」
善子「立場とかの問題ってこと?」
花丸「まあ、ね。あとは本人の我慢強さや気遣い、こっちのほうが割を占めてるんじゃないかな」 花丸「マルや他の人達はさ、それに甘えていたんだよ。ダイヤさんも」
花丸「そのことに気付いたのはマルがたまたまお墓参りに遅れて」
花丸「先にアオちゃんのお墓の前でお参りしながら、一人ボロボロに泣いてるルビィちゃんを見たときだった」
花丸「何をしているんだろうって思った。こんなの、おかしいって」
花丸「そこから先はもう無我夢中で駆け寄って、抱きしめて、一緒にわんわん泣いた。悪者のくせに」
花丸「それまでは自分たちだけが苦しい思いをしていると思い込んでたクセに」
花丸「ごめんね、ごめんねって言葉も、もうどっちに言ってるのか分からなくて」
花丸「ただただ泣き喚くしかなかったんだ。それ以外に、出来ることなんてなかった」 花丸「そのときに思ったの、この子の傍にいたいって」
花丸「一人の女の子として、友達として支えてあげたいって」
善子「……それが親友になるきっかけ、か」
花丸「うん。でも良かった、嫌いだってちゃんと言える人が見つかって」
善子「好きになったからもう言えないともね」
花丸「……本当に参るよね、そういうの聞いちゃうと」 花丸「善子ちゃん、どうして善子ちゃんはマルにそのことを教えてくれたの?」
善子「そうね、まあ本人のためにも控えておくべきだったし、私も言うつもりはなかったんだけど」
善子「逆になったって感じね、ルビィとは」
花丸「逆って?」
善子「あんたのこと好きだったけど、さっきの話聞いてすごいムカついた」
善子「だから言った。それだけよ」
花丸「なるほど、納得ずら」 善子「ええ、でも正直まだイライラしてるから」
善子「ストレス発散にちょっと付き合いなさい」
花丸「というと?」
善子「私の家でゲームするわよ、ルビィと三人で」
花丸「!」
善子「ボッコボコにしてあげるから覚悟しなさい」
花丸「……あはは。それは、怖いねえ」 善子「あんたにゲームの素晴らしさと恐ろしさ、その魅力を骨の髄まで味わわせてやるから覚悟することね」
花丸「うん。でもマルは二人の応援だけでも十分な気がしてきたよ」
善子「はあ? 何言ってんのよ、あんたは」
善子「まだ勝負は始まってもいないでしょうが」スッ
入部届
花丸「……っ…」
善子「やり切りなさいよ、最後まで」
善子「じゃあ私、ルビィを起こしに行ってくるから」
花丸「……うん」クシャッ
花丸「ありがと」ポロポロ ─
果南「おー、今日はいい風が吹いてるねえ」
ダイヤ「少し生温いですけどね」
果南「そこがいいんだよ」
ダイヤ「それで、話したいこととは何でしょうか?」
果南「善子ちゃんに色々話したんでしょ? そのことでまた考え込んでるんじゃないかと思ってね」
ダイヤ「お節介な人」
果南「世話焼きって言ってよ」 ダイヤ「別に善子さんなら心配ありません、彼女になら安心して任せられます」
果南「へえ、公認か……善子ちゃんもやるねえ」
ダイヤ「茶化すことですか」
果南「いやいや真面目に聞いてますってば」
ダイヤ「どうだか」
果南「ま、でも確かに傍から見ても適任だとは思うけどね、同じ学年だし」
果南「花丸ちゃんとも仲がいいんでしょ? 上手くやれるんじゃないかな」 ダイヤ「花丸さん、ですか」
果南「あーやっぱりそこ気にする」
ダイヤ「何か問題でも?」
果南「あると言えばある。ないと言えばない」
ダイヤ「なんなんですか一体…」
果南「私情ってやつだよ。それよりさ、ようやく鞠莉が帰ってきたわけだけど」
果南「どうすんの? 元リーダー」 ダイヤ「まだしばらくは様子を見ます」
果南「そんなことばかり言ってたらいつの間にか居場所なくなってるかもよ?」
ダイヤ「そのときはそのときですわ、スクールアイドルとは別のあの子たちを手助けする方法を探します」
果南「別の方法って……本気で言ってるの?」
ダイヤ「ええまあ」
果南「ダイヤは本当にそれでいいの、あんなに必死だったのに」
ダイヤ「……」
果南「そもそもダイヤがサファイアちゃんのためにって始めた活動でしょ」
果南「Aqoursって名前を付けたのもそういうことじゃん!」 ダイヤ「……」
果南「確かに私はそんな大層な理由もなくただダイヤに付き合っただけだし」
果南「鞠莉に至ってはどうせ廃校決まってるから自分の卒業までに何か大きなことを成し遂げたいってノリで入ってきたけど」
果南「それでも一年間一緒に続けてきたんだから戻ってきてほしいに決まってるじゃん!」
果南「私たちはダイヤがいないと駄目なんだよ!」
果南「だから鞠莉だって留学することになっても絶対に戻ってくるって私たちに約束したんだ!」
果南「今日のライブ見たでしょ! ルビィちゃんはあれだけの人の前でもしっかり歌えてた! もう十分やっていける!」
果南「それに自分で立ち上げた部活でしょ、はっきり言うけどそれで戻らないのは無責任だよ!」
果南「一体どうしてそこまで迷う必要があるのさ!?」 ダイヤ「……本当にお節介な人ですわね」
ダイヤ「ですが、果南さんの言う通りですわ」
果南「話してよ、理由があるなら」
ダイヤ「……気まずいのです、本音を言うと」
ダイヤ「以前話したルビィのためというのも嘘ではありませんが、それ以上に不安なんです」
ダイヤ「活動を休止し一年以上も離れた上に、今年その存在を知ったばかりの人に部を任せている」
ダイヤ「そんな私が、果たしてあの子たちの指標になるのかと」 果南「何かと思えばそんなこと!? 細かいこと気にしすぎじゃないの?」
ダイヤ「そんなこととはなんですか、気にしすぎでも何でもありませんわ」
果南「あるって、大体休止したのは鞠莉の留学の件があったからなわけで」
果南「部活の方なんて任せるも何も、千歌に目付けられて引っ張り出されたからああいった形になったんだし」
果南「なんでそれくらいのことで一々躊躇うかなあ、もうちょっと別に問題ないでしょってくらいの気軽さでいってもいいんじゃないの?」
ダイヤ「果南さんはそうかもしれませんけれど」
果南「ダイヤもそうしなさいって話」 ダイヤ「……分かりましたわよ、戻ったら伝えてみます」
果南「うんうん、そうこなくっちゃね」
ピロン
果南「ん? 鞠莉からだ……花丸ちゃんと善子ちゃん入部するんだって」
ダイヤ「花丸さんが?」
果南「これはもう入らない理由なんてないよね」 ダイヤ「どういう意味ですかそれは」
果南「どうも何も、花丸ちゃんのことずっと気にかけてたじゃん」
ダイヤ「当然です、花丸さんはあの子にとって唯一の……」
果南「本当にそれだけなの?」
ダイヤ「……なにを根拠に」
果南「いいや、特には」 ダイヤ「……」
果南「……」
ダイヤ「……昔は」
果南「ん」
ダイヤ「昔は、ダイヤちゃんと。 そう呼ばれていたんですよ」
ダイヤ「あの子がいなくなる前はそう……」
──
─ 『……今回はお世話になります』
『いえ、こちらの方こそ』
『花丸ちゃんはどちらに?』
『それが……部屋の中に籠りきりでして…』
『そう、ですか………あら、ダイヤ…?』 コンコン
『ダイヤです。マルちゃん、いるのでしょう?』
『……』
『返事をしてください、お願いします!』
『せめて顔だけでも……どうか』
ギィ……
『……』 『! あ、マルちゃ『ダイヤさん』
『──!!』
『マルに何か用ですか?』
『……いいえ、用があるわけではないんです』
『ただ、花丸さんのお体が心配だっただけ。それだけですわ』
『ありがとう。マルなら、大丈夫だから』ニコッ
『じゃあまたね、ダイヤさん』
『はい。また……』
バタン スタスタ…
『……』
『ダイヤ、おかえりなさい。花丸ちゃんはどうでした?』
『……っ…』
ダキッ
『ダイヤ……?』 『なんでもないと……大丈夫だって……言ってました……!!』
『だからはなまるさんにはっ! 何の心配もありませんわ!!』
『……そうですか、それなら今から私も…』
『そう呼ばないと、いけませんね』
『……ひっく…うぅっ……ああぁぁぁあ……!!』
──
─ 果南「……」
ダイヤ「あのとき、察してしまったんです」
ダイヤ「私は、決してあの子のようにはなれないのだと」
ダイヤ「もちろん、誰かに取って代わるなど烏滸がましい話ではありますが」
ダイヤ「それを望んでいる自分も確かにいたのです」
果南「……分かる気がするな、それ」 ダイヤ「本当ですか?」
果南「こんなときに冗談言わないよ」
ダイヤ「それもそうですわね、フフッ」
果南「……で、続きは?」
ダイヤ「ええ、そう願ってはいたのですが」
ダイヤ「されど、彼女が私の傍に来ることはなかった」 ダイヤ「思えばいつもそうだったんです、こうなる以前からずっと」
ダイヤ「そう、私は最初から、常に一歩引いたところであの子たちを見ていた」
ダイヤ「年上だからとか、横槍を入れたくなかったからとか、そんなどうでもいい些細な理由ではなく」
ダイヤ「ただ二人が楽しそうに話している…その光景を見るのが私にとっての幸せで、喜びだったんです」 ダイヤ「だから、それを良しとしていたのは…他でもない自分で、当然の帰結なんですよ」
ダイヤ「彼女はそのことを分かっていて、理解出来ていなかったのは私。これはそういう話なんです」
ダイヤ「お零れをもらっていただけに気が付かなかった、盲目なお姉さんの……ね」
ダイヤ「笑えるお話しでしょう?」 果南「さあ、私はそういうジョークには疎いから何とも言えないし笑えないけど」
果南「ただ……うん、なんだろうな」
果南「ダイヤさ……それ、今でも気にしてる?」
ダイヤ「かもしれません…少なくとも」
ダイヤ「無理だと分かっていても、もう一度、そう呼んでほしいくらいには」 果南「そっか……まったく。重いね、ダイヤは」
ダイヤ「嫌ですか? 重い女は」
果南「いんや、沈むのには慣れてる」
ダイヤ「せめて引き上げてくれると助かるのですけど」
果南「引き上げるさ、本当にもういいっていうのならね」
ダイヤ「……」
果南「けど、自分の意志で留まっている人を無理に引っ張り出すわけにもいかないでしょ」
果南「いや、この場合は戸惑っているのほうが合ってるのかな?」 ダイヤ「…お好きな方でどうぞ」
果南「まあ、どちらにしても踏ん切りがついたときに言いなよ」
果南「そのときは一緒にいるからさ」
ダイヤ「…大分待たせるかもしれません」
果南「分かってるよそんなことは」
ダイヤ「え?」
果南「言ったでしょ重いって、軽々しく振り回せるなんてこっちは思っていないよ」
果南「ただ抱えて歩いていくだけ、それくらいがちょうどいい」 ダイヤ「…ではそのときがきたら、お願いしますわ」
果南「はいよー、いつでもどうぞ」
ダイヤ「なんか少し軽くないですか?」
果南「ん、そうかな」
果南「これでも結構気を遣ってるんだけどなあ…私としては」
ダイヤ「果南さん?」
果南「いやいやなんでも」
果南「ほら、私まで重くなると流石に息苦しいからね、うん」 ダイヤ「そうですか、しかし…」
果南「うん?」
ダイヤ「果南さん、自分から話を振ったとはいえ女性相手に何度も重いなどという発言をするのはいかがなものかと」
果南「あれ、言葉足らずだった?」
ダイヤ「足りないのはデリカシーです」
果南「ああ、そっちのほうね」
ダイヤ「他に何があるんですか…」 果南「さてと、それじゃそろそろ行きますか恋愛事情も聞いたことだし」
ダイヤ「あ、貴女が話せと言ったんでしょう!?」
果南「いやいや私はそんなこと一言も口にしてないけど」
ダイヤ「空気というものがあるでしょう! その場の!」
果南「さあ、どうだったかな」
ダイヤ「果南さん、あなた鞠莉さんに毒されてませんか」
果南「それはあるかもね。流石にあそこまでの野次馬根性はないけど」 果南「あ、そうそう。それとだけどさ」
ダイヤ「はい?」
果南「さっきのこと、やるだけやってみるけど期待はしないでね」
ダイヤ「望み薄ですか」
果南「なかなか加減が難しくてね」
果南「あまり細かくしすぎると意外と引っかかってくれないんだこれが」 ダイヤ「…何の話ですか?」
果南「そうだね、こっちの話」
ダイヤ「?」
果南「一つだけ言わせてもらうなら、私にもそう呼ばれたい誰かがいるってこと」
ダイヤ「はあ、よく分かりませんが…」
ダイヤ「果南さんもいつか呼ばれるといいですわね、その人に」ニコ
果南「あはは、この調子だとまだまだ先は長いだろうねえ」 >>277
いやスマンスマン
アニメ画像だとさ耳の位置が顔と後頭部のちょうど真ん中あたりにきてるんだよ
後頭部というか首筋?髪のボリューム?
それがちょっと気になってね
話しは楽しく読ませてもらってるよ〜 すげえ、細かい設定もオリジナルに組み立てられててワクワクする
長くなってもついていきます ─
鞠莉「あっようやく戻ってきたわね!」
果南「そんなに長いこと話してたつもりはないんだけど」
鞠莉「いいえ長かったわ! 全くマリーの知らないところで何をイチャイチャしてたんだか」
果南「してないってば」
鞠莉「ふーん、まあいいわ」
果南「釈然としないなあ…」
鞠莉「それよりダイヤ、千歌っちがダイヤに話したいことがあるみたいよ」 ダイヤ「? 何でしょう」
千歌「はい! スクールアイドル部を正式に認めてもらいにきました!」
ダイヤ「ああ、そのことですか」
鞠莉「最初から認めてあげればいいのに(仮)とかホントお堅いわよね」
ダイヤ「そこ、お静かに」
千歌「ライブが成功したので! それに作曲出来る人も見つけましたし!」グイッ
梨子「ちょっと千歌ちゃん…」 ダイヤ「みたいですわね」
千歌「これならもう全然大丈夫ですよね!」
ダイヤ「ええ、問題ありませんわ。許可しましょう」
千歌「やったー!」
千歌・ダイヤ「それでですね(!)」
千歌・ダイヤ「……ん?」
千歌「あれ? 何か言いたいことでも」
ダイヤ「いや、お先にどうぞ」 千歌「それでですね! 今日のライブでメンバーも結構集まったことだし」
千歌「しばらくはこの八人でやっていこうかなって思いまして!」バッ
ダイヤ「」ピクッ
鞠莉「あらあら?」
果南「これは…」
ダイヤ「……あの、千歌さん。八人でとはどういう」
千歌「だってこれ以上部員が増えたら、全員をステージに出すのも難しくなってくると思うし」
千歌「そうなると折角入ってくれた人に申し訳ないかなーって」
ダイヤ「成程、筋の通った意見ですわね」 ダイヤ「しかし、しかしですよ…せめてあと一人くらいは入るのではありませんかね。ええ」
千歌「まあ確かにμ'sも九人だったし…出来なくはないですよね、でもあと一人って?」
ダイヤ「そうですわね、例えば私が入ったとしましょう」
千歌「いやいやそれはないですよ!」
ダイヤ「…何故ないと」
千歌「だって生徒会長忙しいじゃないですか!」
鞠莉「……くくっ…即答…」
果南「いやいやまさか、こんなに早く回収されることになろうとは」 ダイヤ「千歌さん? 生徒会長でも部活くらいやりますわよ」
千歌「ダイヤさんやってないじゃないですか」
ダイヤ「以前はやっていました!」
千歌「そのとき生徒会長だったんですか?」
ダイヤ「…ではなかったですけども」
千歌「じゃあ前みたいには出来ないかもしれませんよね?」
果南「あー駄目だこれ、状況証拠が揃いすぎてる」
鞠莉「……ちょっと…千歌っち、貴女本当に面白いわ…くくくっ」
果南「笑っちゃ駄目だよ鞠莉、本人たちは…いたって真剣…フフッ」 ダイヤ「そんなものはやってみなければ分からないでしょう!?」
千歌「でも無理はよくないと思いますよ」
ダイヤ「どうして私のときだけそんなに拒絶するんですか!? 入ってほしくないのですか!」
千歌「そういうわけじゃないですけど……えっと、もしかして入りたいんですか?」
ダイヤ「……いえ、あくまで例えの話なので」
千歌「そうですか、じゃあ無理ってことで」
ダイヤ「」 鞠莉「あはははははは!! 無理って! こっちがもう無理!!」バンバン
果南「素直に言えばいいのにねえ、なんでこう意気地になるのか」
鞠莉「まったくよね」
果南・鞠莉「生徒会長さん。あっははははははは!!」
千歌「え? え? どういうこと?」
ダイヤ「……つまりこういうことです」スッ 千歌「ん? 入部届じゃないですか……あれ?」
ダイヤ「検討しておいてください、では」
ダイヤ「貴女たち、ちょっと来なさい」
果南「あはは、本日二回目だねー」ズルズル
鞠莉「BYE千歌っち。あなた最高だったわ、これからもその調子で頼むわね」ズルズル
千歌「……まいっか、九人目ゲットー!」
梨子「…なんか、無垢って恐ろしいわね」
曜「わかる」 ─その夜
善子の家
花丸「さ、流石にもう限界ずら……」
善子「何よ、だらしないわね」
花丸「善子ちゃんがおかしいんだよ」
ルビィ「うん。ルビィもちょっとやりすぎだと思う」
善子「……仕方ないわね、少し休みましょうか」
花丸「露骨すぎない?」
善子「うっさいわね、いいでしょ別に」 ルビィ「よいしょっと」
善子「そして何故あんたは私の布団に潜り込んでるの」
ルビィ「え、駄目なの?」
善子「駄目に決まってるでしょ」
ルビィ「いつもやってることなのに?」
花丸「ん?」
善子「ちょっ……あんた花丸の前でそういうことバラすのやめなさいよ!!」
ルビィ「だって善子ちゃんが」
花丸「へえ…いっつもやってたんだ」ニヤニヤ 善子「ほらもうこうなるから!」
花丸「えー何も言ってないけど」
善子「顔で分かるわよ! ほんっとにもうルビィも何か言ってやりなさいよ……って」
ルビィ「……」スゥスゥ
善子「もう寝てるし…今日どんだけ寝るのよこの子」
花丸「そうは言うけどもう十二時過ぎてるんだよ?」
花丸「善子ちゃんの感覚がおかしいだけずら」
善子「え、なにもうそんな時間なの」 花丸「うん」
善子「あー……夢中になってて全然気が付かなかったわ」
花丸「マルはもう寝るから布団出して」
善子「あんたもあんたで図々しいわね、よいしょっと」
善子「ほら、それ使いなさい、私はルビィと一緒に寝るから」
花丸「はーい」 善子「よっと……はあ、暖かい」
花丸「なんかそれ如何わしく聞こえるからやめて」
善子「なんでよ!」
花丸「あははっ、冗談だよ」
善子「まったくあんたは……」 善子「……しっかし、長い一日だったわね今日は」
花丸「うん、今日だけで色々あったね」
善子「前にさ」
花丸「ずら?」
善子「花丸がサファイアちゃんのことについて話してくれたとき、変だなって思ってたのよ」
善子「なんでルビィの名前が一切出なかったんだろうって、ダイヤさんは出てきたのに」
花丸「ああ、最初に話したやつ?」
善子「そうそう、それね」 善子「そのときはまだ会っていなかったからなんだって納得はしたけど」
善子「なんかさ、不思議で」
花丸「なにが」
善子「どっちもアイドル好きなのが」
花丸「まあアオちゃんは性格的に憧れるのも分かるけど」
善子「ルビィって何でアイドルが好きになったんだろ」
善子「そもそもあの子がどこから来たのかも知らないし、そりゃ言いたくないことや聞かないことだって少なからずあるけど」
善子「私、ルビィのことまだ全然知らないんだなってちょっと思ってね」 花丸「まあ、確かに」
善子(……というか、単にルビィに関わる秘密が多すぎるってだけかもしれないけど)
善子(それにあの子一人だけの問題ってわけでもないし…「東京」
善子・花丸「?」
ルビィ「一回東京のおっきな画面でね、見たことがあるの」
ルビィ「楽しそうに歌って踊っているアイドルを」
ルビィ「それを見ていいなって思って、多分あのとき好きになったんだろうね」
善子「ルビィ、起きてたの?」
ルビィ「ついさっき」 ルビィ「それからはね、よくテレビで音楽の番組とかバラエティとか付けて」
ルビィ「ずーっと見てた気がする、その時間が…ルビィは一番好きだったかな」
ルビィ「あとはずーっと、静かだったから」
善子・花丸「……」
ルビィ「お父さんがいなくなっちゃった後、もう一回だけあそこでアイドルを見てみたいって思って」
ルビィ「それで外に出たんだけど迷っちゃって……その後は、知ってるよね」
善子「黒澤家に拾われた」 花丸「ちょっと善子ちゃん」
善子「そして私に会った、でいいんでしょ?」
ルビィ「はい、そういうことです」エヘヘ
ルビィ「……あ、でもね多分だけど」
ルビィ「その拾われた日、ルビィ善子ちゃんに会ってたと思う」
花丸「えっ」
善子「はい?」
ルビィ「分からないけどね、それだけ」モゾッ 善子「いや…いやいやいやいや、待ちなさいちょっと待ちなさい」
善子「今なんか重要そうなことをさらっと口にした気がするんだけど」
花丸「というか善子ちゃん東京に行ったことあるの?」
善子「あんまり覚えてないけど、一回くらいはあるわよ」
善子「そりゃ家族なら一度は夢の国に行くでしょ、いやあそこは千葉だけど」 花丸「うーん、マルは行ったことないなあ…」
善子「え、ごめん……ってそうじゃなくて!」
善子「東京で会ったかもってどういうことよ、ルビィもっかい起きなさい!」
ルビィ「……」スヤ
花丸「そのうち聞いたら?」
善子「これで思わせぶりだったら、何だったのって話だけどね……」ハァ ……
善子「……」スゥスゥ
花丸「……」スヤスヤ
ルビィ「……」
ルビィ(…言わないほうがいいよね)
ルビィ(少なくとも今は) ──
『ルビィ…?』
『そう、貴女はこれから黒澤ルビィとして生きていくの』
『……』
『……駄目、よね。ごめんなさい、今の話は聞かなかったことに』
『いいよ』 『私、ルビィでもいいよ』
『……本当に?』
『うん。だから』
『私をつれてって、暗くないところに』
『…分かりました。約束しましょう』 スタスタ……
スタスタ……
『……あれ』
『ん?』
『あれも、アイドル?』
『どうでしょうか…私もそちらにはあまり詳しくないので』
『そっか』 『……』
『気になりますか?』
『…ううん』
『そうですか、では』
『うん……?』
ジャラ 『なにこれ、どうぶつ?『あーーーーーっっ!!』
ダダダダッ
『ねえ! その持ってるやつ見せて!!』
『……? はい』
『…やっぱり! ここに落ちてたんだ!』
『?』
『どうやらこの子の落とし物みたいですね、それ』 『そうなの?』
『ええ、まちがいないわ!!』
『じゃあはい、あげる』
『本当に!? いいの!?』
『あなたのものだから』 『ありがとう! 私ね、それずーっと探しててもう見つからないんじゃないかと思ってたんだけど』
『あなたは私の恩人ね!! えへへっ!』
『おんじん……』
『知らないの? 助けてくれた人にはそう言うんだって!』
『テレビで見たことあるわ』 『善子ー、何してるのー』
『今そっちに行くー! じゃあ私もう行かなくちゃ』
ギュッ
『──!』
『拾ってくれて本当にありがとね! それじゃ!』
タタタッ 『行っちゃいましたね』
『うん』
ママー!コレミツカッター!! アラヨカッタワネ!
『……』
ツギモマタイキマショウネ ウン!!
『……』 あなたは私の恩人ね!!
『……そう、だよね』
家族、かぞく。 あれが普通の、家族なんだよね。
お母さんがいて、お父さんがいて、もしかしたらお姉ちゃんもいるかもしれない
きっとそんな家庭が、あの子にはあって。
……いいなあ。
私にも、あればいいのに。 『どうしました?』
『えと、なんでも……?』
貴女はこれから黒澤ルビィとして生きていくの
『…………あ』
『……何か?』 ──ああ、そっか。 そうじゃないよね
まだあるんだ、“私”にはなくても
“ルビィ”にならきっと
お母さんがいて、お父さんがいて、もしかしたらお姉ちゃんもいるかもしれない
そんな──家族が。
ルビィには……
『……ううん、ルビィちょっとだけ疲れちゃって』 『……そうですか、なら早く帰りましょう』
『まずは体を洗って、服を着替えて、ご飯を食べて、ゆっくり眠って』
『これからのことは、そのあとでいいから』
『うん……』
『……ねえ』
『はい』
『あなたは、私の恩人?』
『…そうありたいですね』 『そっか、ルビィと一緒だね』
『……もうじき日も暮れます、急ぎましょうルビィ』
『夜になると冷えますから』
『そうだね……帰ろっか』
『お母さん』
──
─ ルビィ(……もっとロマンチックなのが良かったなぁ)
ルビィ「これじゃルビィも、花丸ちゃんのこと言えないよ」
ルビィ(いつか、このことを懐かしいと思えるくらいに時間が経ったら)
ルビィ(そのときまで、傍にいてくれたら……話すよ)
ルビィ「だからそれまで聞かないで……待っててくれる?」ダキッ
善子「……いいわよ、別に」
ルビィ「……ありがとう」 それから一ヶ月後……
─学校、屋上
ダイヤ「──はい今日の練習はここまで!」
千歌「ふう〜疲れたあ……」
果南「でも大分いい感じになってきたと思わない?」
千歌「思う! いやーやっぱりちゃんと仕切ってくれる人がいると違いますなー!」
梨子「誰かさんもそれくらいしっかりしてくれたらね、一応リーダーなんだから」
千歌「そ、それは今学んでる最中だから!」
梨子「本当かしら?」
千歌「ホントだってば!」 ワイワイ
曜「……」
鞠莉「混ざらなくていいの?」
曜「邪魔しちゃ悪いかなって」
鞠莉「ふ〜ん」
曜「なに?」
鞠莉「余計なことばかり考えるタイプなのね曜って」
曜「いや、そういうわけでも……あるかな」
鞠莉「あら、思ったより素直ね」 曜「でもよく分からないというか」
鞠莉「え、嫉妬でしょ?」
曜「え?」
鞠莉「だから、梨子に嫉妬ファイアーでメラメラー! 火拳ーーッッ!!」ドンッ!!
曜「最後関係ないよね」
鞠莉「Sorry 面白かったからつい宣伝を」
曜「絶賛上映中だからね、内容も熱い展開の連続でラストの締めも最高だったし。あれは感動しちゃうよ」バスターコールジャァ…!!
鞠莉「貴女もノリノリで宣伝してるじゃない」
曜「国民的少年漫画ですから」 鞠莉「まあそれは置いといて、別の意味で燃えてる曜ちゃんの件ですけども」
曜「そこで戻ってくるの」
鞠莉「普通に混ざってくればいいのにって私は思うのよね」
曜「普通って言われても、どんな感じでいけばいいのか」
鞠莉「だからいつも通りよ、結局ねそれが一番いいの」
曜「……」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています