鞠莉「はっ……はっ……はっ……」タッタッタッタッ

見慣れない校舎。

窓の外に広がるのは内浦の山や海じゃない、どこかの町並み。

すれ違う生徒はみんな知らない顔、身を包む制服も浦女のものじゃない。

階段の段数、廊下を蹴る心地、手すりの温度、掲示物、調度品、消火器の位置。

まぶたの裏に焼き付いているほど鮮明なそれらと重ならない光景は、つまりここが見ず知らずの学校だという、それだけのことで。

廊下は走っちゃいけませんなんて、小学生でも知っていることなのに、私は足を止められなくて。

無我夢中で辿り着いたその先は、

──鞠莉『南ことりはっ、今日──来ているの…!?』

──穂乃果『へ?もちろん来てますよ』

──鞠莉『どこに──どこに行けば、会えるの!?』

──穂乃果『ことりちゃんなら────』

鞠莉「………はっ!」タンッ


『被服室』


そう。

そうなのね。

あなたはやっぱり、ミシンと布がよく似合うわ。

扉の奥から聞こえる、知った声も混じる談笑。

左手は祈るように胸の前で握り締めて、その扉に──手をかけた。



的なね
相当好き勝手に書かせてもらってます