曜「大変なことになった……」
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千歌「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
千歌「あのさっ!」
千歌「ち、チカね……梨子ちゃんのこと、好きなんだけど……」
梨子「えっ?」
梨子「あーっ、あははっ!」
梨子「うん。私も千歌ちゃんの事が好きだよ? 一番の親友だと――」
千歌「違うよ!」 梨子「……」
千歌「わかるでしょ? そういう"好き"じゃあないの!」
千歌「チカの好きは、恋愛の好きなの!」
梨子「こ、困るよ。そんなの!」
千歌「えっ?」
千歌「こ、困る?」
梨子「第一、曜ちゃんに悪いわよ……」 千歌「何で? 何で曜ちゃんが出てくるの?」
梨子「ご、ごめん。私曜ちゃんに恨まれたくないから!」ダダッ
千歌「あっ! ちょ、ちょっと! 梨子ちゃん!」
梨子(困った事になったなぁ……)
梨子(私は千歌ちゃんの事は嫌いではない。むしろ好意を抱いている)
梨子(けど曜ちゃんと千歌ちゃんの仲を引き裂くつもりもないのだ) \ライン♪/
梨子(う、そんな事を考えていると千歌ちゃんからラインだ……)
梨子(とりあえず機内モードにして、っと)
ちかちー<曜ちゃんの事を言い訳に使わないで、しっかり答えてよ
ちかちー<りこちゃんの気持ちが聞きたいの!
ちかちー<りこちゃんのやってる事は逃げだよ!
梨子「うわぁ……」
梨子(そう言われても、こっちとしても曜ちゃんとの禍根を残すわけにもいかないし)
梨子(うーん……)
梨子「あの手を使うか……!」ポン Prrrrrrrrr
ガチャ
善子『我、堕天の王なり!』
Pi
♪〜マッテーナイヨラブ♪
スッ
善子『そっちからかけてきて、なんで切るのよ!』
梨子「ごめん、つい……」
善子『で、何よ、リリー』
梨子「リリーは止めて。ま、とにかく、相談があるのだけど……」 善子『クックック! 言ってみなさいリリー! 悩めるリトルデーモンを導くのも堕天使の使命! 聞いてあげるわよ……!』ギラン
梨子「じゃあ相談なんだけど。私と付き合う気ない?」
善子『は?』
善子『あ、ああ。買い物に、とか、ダイエットに、とか、そういう系ね』
梨子「言い方が悪かったわね。恋人になるつもりはある?」
善子『はぁぁぁぁぁぁ!?』
善子『馬鹿リリー! 何言ってんのよ!』
善子『そもそもそういう大事な話を電話で言うのってどうなのよ、もう!』
梨子「落ち着いて」 善子『逆にリリーは何でそんなに落ち着いてるのよ!』
梨子「また言い方が悪かったみたいね」
梨子「少しの間でいいから、恋人のフリをして欲しいんだけど」
善子『えぇっ!?』ドッシェー
梨子「お願いっ! 頼れるのはヨハネ様しかいないの!」
善子『よ、ヨハネ様っ……!』キラキラ
善子『フフフ……! わかったわ! 上級リトルデーモンリリーよ! そこまで言うのなら、あなたの願いを聞いてあげましょう!』ワハー
梨子「ありがとう、善子ちゃん!」 善子『ヨハネでしょ、そこ! で、なんたって急に恋人のフリなんて?』
梨子「それが、最近ちょっと厄介な人に言い寄られていて。困っていたのよ」
梨子「体よく断るのに、もう既に恋人がいるって事にしておきたいの」
善子『そっ、そうなの!? もう、それならそうと早く言いなさいよ!』
善子『そんな事情があるなら、協力しないわけにはいかないじゃない!』
梨子「ふふっ。ありがとう、善子ちゃん」
梨子「じゃあ、明日早速協力してもらうから。私が善子ちゃんを恋人だって紹介するから、善子ちゃんもそれっぽい感じで振舞って頂戴」
善子『クックック……! この堕天使ヨハネの演技力を刮目するがいいわ!』
梨子「普通でいいのよ、普通で」 梨子「じゃあ、明日はよろしく! 本当にありがとうね、善子ちゃん!」
善子『あ、おやすみ。また明日学校でね』
Pi
梨子「よし!」ガッツポーズ
梨子「後は千歌ちゃんに……」スースーポンポン
ごめんなさい>
理由は明日話します>
梨子「これで今夜もくつろいで熟睡できるわね……!」 〜翌日、部活終了後〜
花丸「ぬあー疲れたずらー」
ルビィ「ね、今日練習きつかったね!」
善子「大会近いから仕方ないわよ」
千歌「みかん、みかん♪」
鞠莉「バッチェ冷えてますよ」
パンパン!
梨子「皆着替えたりする前にちょっと聞いて!」
梨子「えー、突然ですが皆さんに重大発表があります!」
8人「!?」ザワザワ 梨子「私こと桜内梨子ちゃんは、ここにいる津島善子ちゃんとお付き合いさせて頂いております」
善子「!?」
梨子「この度は一部の方に、私の態度や仕草で『もしかしたら付き合えるのでは?』と誤解させてしまった事をここに深くお詫び申し上げます」
梨子「今後も今までと変わらず真摯にスクールアイドル活動に取り組んで行きたいと思っていますので、どうか変わらぬご声援をよろしくお願いします」
一同「」ポカーン
善子「え、あ、そ、そうなのよ〜! 実はねぇ、リリーってばヨハネを独り占めしたいなんてワガママ言うもんだから……」
ルビィ「しょうだったんだ! じぇんじぇんきぢゅかにゃかったよ!」
花丸「それならそうと言ってくれたら良かったのに。マルたち結構お邪魔じゃあなかった?」
善子「そ、そうやって気を使われるのが嫌で今まで秘密にしていたのよ。ゴメンネ!」 曜「……」
千歌「……」
梨子「そういう事なの。今まで黙っていたのは悪いと思っているけれど……」
千歌「ふーん。良いんじゃあない? お似合いだと思うよ」
梨子「千歌ちゃん……」
花丸「マルもそう思います」
鞠莉「マリーも同意デェス! でも、ユニット活動のときにマリーだけのけ者にしたら、NO! なんだからネ☆」
梨子「みんな……ありがとーう!」フリフリ
――――
―――
――
― 梨子「じゃ、善子ちゃん一緒に帰りましょ」
善子「え、ええ」
梨子「みんなさようならー」
善子「ではまた!」ギラン
テクテクテクテク
善子「あれでよかったの?」
梨子「うん、完璧」
善子「そう、よかったわ。それにしても、まさかその"厄介な人"とやらがメンバー内にいるとは……」
梨子「そうなのよね。だからあまり強く言うわけにもいかずに困ってたの」 善子「で、でもあまりメンバーを悪く言うのは……」
梨子「言い方は悪かったかもしれないけど……。けど、本当にこじれて厄介なことになりそうだったのよ」
善子「まぁ……それなら仕方ないのかもしれないけど……」
梨子「向こうもこれで諦めてくれたと思うし、本当に助かったわ!」
善子「うぅ、ヨハネがその人に恨まれたりしないでしょうね……」
梨子「あははは、ないない! そういう人じゃあないわよ!」
善子「ふぅん……?」
善子「ていうか千歌ちゃんでしょ? リリーの事を好きな人って」 梨子「へっ!?」
梨子「な、なんで……」
善子「消去法で千歌ちゃんしかいないし」
梨子「くっ……!」
梨子「……まぁ別に支障はないかな……。一応、内緒にしておいてね」
善子「言いふらす趣味はないわよ」
梨子「ありがと、善子ちゃん」 善子「それにしても、リリーが千歌ちゃんの告白を断ったのは意外だったわ」
梨子「そう?」
善子「好きなのかと思ってた」
梨子「ううん……好きではあるけど」
梨子「でもやっぱり、あの二人の間には入り込めないかな」
善子「……そうかしらね」
梨子「?」
善子「まぁ、リリーが選択したのならどうこう言うつもりはないわ」
梨子「うん……。あっ、私ここだから。またね!」
善子「クックック……! 闇に飲まれよ!」
…… 梨子宅
梨子(あー、良かった!)
梨子(千歌ちゃんも諦めてくれたみたいだし!)
梨子(後はほとぼりが冷めるのを待って、自然消滅した感じにしておけば大丈夫ね!)
梨子(善子ちゃんにも感謝だわ)
梨子(そうだ! 曜ちゃんにアドバイス送ってあげようっと!) Prrrrrr
曜『もしもし』
梨子「あ、曜ちゃん、今大丈夫?」
曜『うん』
梨子「えっとね、実は曜ちゃんにお願いがあって」
曜『お願い?』
梨子「うん。えっとね、私千歌ちゃんに告白されちゃって」
曜『うん』
梨子「ほら、私、今日も言ったとおり、善子ちゃんと付き合ってるじゃない?」
曜『……』 梨子「だから断ったんだけど……多分、傷ついているかもしれないから」
梨子「曜ちゃん慰めてあげてくれない?」
曜『え?』
梨子「ほら、曜ちゃんに慰められたらきっと千歌ちゃんもさ。ね?」
曜『……』
曜『梨子ちゃんと、善子ちゃんって』
曜『いつから付き合ってるの』
梨子「えっ?」 梨子「それは、えーっと、結構前からだよ」
梨子「そんな事どうでもいいから、今は千歌ちゃんだよ」
梨子「曜ちゃん、千歌ちゃんの事好きでしょ?」
梨子「これを機にさ、距離を縮めても良いと思うんだよね」
梨子「曜ちゃんも千歌ちゃんと恋人同士になりたいでしょ?」
梨子「だからさ、今の傷心状態の千歌ちゃんなら……優しい言葉をかけてあげればきっと曜ちゃんに振り向くから!」
梨子「頑張って、曜ちゃん!」 曜『あー……』
曜『……』
曜『……ありがと、梨子ちゃん』
梨子「えへへ! どういたしまして!」
曜『じゃあ私、眠いから切るね』
梨子「あ、うん! おやすみな」Pi
梨子「さーい、って最後まで言わせてよー。せっかちだなぁ曜ちゃんは」 〜翌日〜
梨子「おはよー」
曜「おはヨーソロー!」
千歌「おはよ」
梨子「曜ちゃん」コソッ
曜「んー?」
梨子「ね、千歌ちゃん見るからに元気ないでしょ?」コソコソ
曜「そうだねー!」
梨子「元気付けてあげてね、曜ちゃん」コソコソ 曜「あははははははっ! 任せてよ! ヨーソロー!!」
千歌「二人でこそこそ何話してるの」
梨子「あ、えっと今日の小テストの範囲を……」
曜「千歌ちゃんを元気付ける作戦を立てていたのであります!!」
梨子「ちょっ、曜ちゃん!?」
千歌「……何それ」
千歌「変な気とか使わなくていいから」
梨子「ご、ごめんなさい」
曜「ま、何にせよ元気だそうよ。元気が一番だよ!」
千歌「……」
曜「さっ、今日も一日頑張るぞい!」 〜お昼休憩〜
曜「……」ソワソワ
梨子「曜ちゃんどうしたの?」
曜「い、いや、ちょっと……」
千歌「具合悪いの?」
曜「あ、うん……。そうかも……」
千歌「保健室行く?」
曜「あ……えっと……ごめん、ちょっとお昼は二人で食べてて」 曜「私ちょっと用事……」
千歌「用事?」
曜「う、うん。水泳部のことで。ごめん」
千歌「わ、私達は全然いいけど……」
梨子「本当に大丈夫なの……?」
曜「うん、うん。全然。こんなの平気、うん」
曜「じゃあ私行くから。また。後で」ササッ 千歌「……」
千歌「なんか、明らかに変じゃあない?」
梨子「う、うん……流石に、おかしいよね……」
千歌「朝はうざいくらいテンション高かったのに、途中からすっごい沈んでたよね」
梨子「うん……」
千歌「なんか病気なんじゃあないの?」
梨子「躁鬱病みたいな……? あんまり詳しくないけど」
千歌「なんか怖いよね」 梨子「千歌ちゃん……」
梨子「!」ピッコーン
梨子「千歌ちゃん、曜ちゃんについててあげたら?」
千歌「えっ?」
梨子「ほら、きっと曜ちゃんも千歌ちゃんと一緒にいたら落ち着くと思うし」
千歌「あのさ」
千歌「変な気使わないでよ」
梨子「えっ……?」 千歌「私と曜ちゃん、別に何もないし」
梨子「あ……、そ、そうよね、ごめん」アセアセ
千歌「はぁ、それより早くご飯食べよーよ!」
梨子「あ、うん」
千歌「梨子ちゃーのお弁当は相変わらず美味しそうなのだ」
梨子「そう? よかったら食べる?」
千歌「いいの!?」
梨子「うふふ、どうぞ」
…… 〜後日、部活後〜
梨子「善子ちゃん、一緒に帰ろ」
善子「ええ」
曜「……」
梨子「みんな、またねー」
善子「ではまた!」
……
梨子「善子ちゃん、帰りに甘い物でも食べてく?」
善子「あっ、良いわね」
梨子「じゃあおごってあげる」 善子「え? いいの?」
梨子「善子ちゃんのおかげで助かったからね」
善子「フフフ……! そういう事ならその厚意、受け取っておきましょう!」
善子「で、どこに行くの?」
梨子「良いところがあるのよ」
梨子「はい、ここ」
セブンイレブン「いい気分」バーン
善子「……コンビニじゃあないの」 梨子「そうだよ?」
梨子「最近はコンビニスイーツも美味しいのよ!」
善子「えー」ジトー
梨子「ほら、たまにはいいじゃない。買い食いっていうのも」
善子「ま、奢ってもらうのに文句は言わないけどね」
梨子「そうそう。行こ行こ!」
…… 善子「ごちそうさま。あー、美味しかったぁ」
梨子「でしょ?」
善子「ホント、最近のコンビニスイーツは専門店顔負けねぇ……」
梨子「そうよねぇ。お値段もお手頃で財布に優しいし」
善子「侮りがたし、人間界の進歩!」
梨子「じゃあ、そろそろ帰ろっか」
善子「ええ、そうね。今日はありがとう、リリー」
梨子「お礼なんだから、気にしなくていいの」
善子「それでも、よ。楽しかったわ」
梨子「私も。またこうして二人で遊びましょう」
善子「ええ!」 梨子(善子ちゃんといるのも結構、楽しい)
梨子(お互い、気を使わなくていいからかな。気楽でいいわ)
梨子(この感じ、『好き』とは違うけど。なんだろう、『安心』って言ったほうが近いかな)
梨子(たまにこうして二人で遊びに行くのもいいかもね)
梨子(でも、本当にお礼がコンビニスイーツ1つっていうのも寂しいかなぁ)
梨子(今度またお菓子でも作って持っていってあげようかな)
梨子(うん、そうしよう!)
梨子(しかし、私と善子ちゃんが再び一緒に遊ぶことは、二度と無かった) 〜数日後、学校〜
梨子(善子ちゃんが入院した)
梨子(何でも変質者に襲われたらしい。犯人はまだ不明)
梨子(お見舞いに行った私は……行った事を後悔した)
梨子(それくらい凄惨にやられていて……あの可愛らしかった彼女の面影は、どこにも無かった)
梨子「……おはよう」
千歌「……お、おはよう、梨子ちゃん……」
曜「おは、おお、おはよ……」ガクガク
千歌「っ! き、聞いたよ、善子ちゃんの事!」
千歌「今ね、みんなでお見舞いに行かないかって話していたの!」
梨子「……やめてあげて」 千歌「えっ?」
梨子「多分、今の姿、見られたくないと思う……」
梨子「……特に私達には」
千歌「そう……なんだ……」
曜「……」
梨子「許せないよ……」
千歌「ううっ……」
梨子「なんで善子ちゃんなの……?」 梨子「なんであんなことができるの!?」
梨子「ひどいよ! こんなの! ひどすぎる!」
曜「う、ううう! うるさい!!」
梨子「え?」
曜「あ、頭に響くから! 大声出さないで……」
梨子「え? え?」
曜「響くの……ううっ!」
梨子「よ、曜ちゃん……? も、もしかして……体調悪いの?」
曜「ち、違う! うるさいの……!」 千歌「なに……その言い方……」
千歌「曜ちゃん最近ちょっとおかしいよ!?」
千歌「仲間が傷付いたって言うのになんでそんな態度なの!?」
曜「だ、だから……」ガクガク
梨子「……曜ちゃん、その右手、怪我したの?」
曜「え、う、うるさい……関係ないでしょ……」
千歌「曜ちゃんがやったんじゃないの?」 曜「え?」
千歌「善子ちゃん」
曜「は?」
千歌「曜ちゃんがやったんでしょ! だからそんな怪我したんでしょ!!」
千歌「同じバス使ってるしさぁ! 乗り場も近いんだから! 曜ちゃんしかいないんじゃん!」
千歌「善子ちゃんは仲間なんだよ? 大切な仲間なんだよ? 今までずっと一緒にやってきた!」
千歌「それを平気な顔して傷つけて!」
千歌「もう信じられない! 出てって! Aqoursからも! この学校からも! 出ていってよ!」
曜「い、いや、何言ってんの?」イライラ 曜「元はと言えばさぁ!」ガリガリ
千歌「何!? 言い訳するつもり!?」
梨子「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いてよ!」
曜「うるさいなぁ!」ドンッ
梨子「きゃあっ!」ガラガラッ
千歌「もう嫌! 誰か! 誰か来てー!」
ザワザワ
曜「チッ!」ダッ
ガララッ 千歌「梨子ちゃん、大丈夫……?」
梨子「う、うん。怪我とかはないみたい」
千歌「なんなの、あれ……。ホントに意味わかんない! 最近おかしいよ……」
梨子「……」
梨子(その日、曜ちゃんの姿を放課後まで再び見る事は無かった) 〜放課後、部室〜
鞠莉「……みんな、来てるのかしら?」ガチャ
花丸「あっ、こんにちは」
ルビィ「こんにちは……」
鞠莉「ダイヤと果南は?」
千歌「見てないよ」
鞠莉「……おかしいわね……二人共、朝に曜に呼ばれたっきり、帰ってこなかったのよ……」
梨子「……えっ? 曜ちゃんも朝からいなくなって……」 千歌「3人でどこか行ったのかな……? なにか最近、曜ちゃんの様子おかしかったし……」
梨子「うん……今朝も、ちょっとね……」
梨子「もしかしたら、二人で曜ちゃんの相談に乗ってあげてるとか?」
鞠莉「そうなのかなぁ……そうなのかもね」
鞠莉「あの二人、マリーに内緒で何か色々しているみたいだし」
鞠莉「ハブにされたみたいで、嫌な気分だわ……」
千歌「……」 ガチャ
曜「おっはヨーソロー!!!」バタン
曜「あっれー? みんな暗いよー!?」
曜「あ、はい暗い暗い暗い暗い暗い! Don’t cry!」
鞠莉「よ、曜?」
曜「あれ、そういえば善子ちゃんは? 善子ちゃんはどこにいるの? おーい! ヨーシコー!!」
梨子「ヒッ……!」
花丸「よ、曜ちゃん……?」
ルビィ「ぴぎぃぃぃ……」ガクガク
鞠莉「あなたその返り血みたいなのは一体……!」 曜「え? あー、綺麗にしたつもりだったんだけど! 聞いてよ! ダイヤさんと果南ちゃんがいじわるしてきてさ!」
千歌「いい加減にして!!」
千歌「曜ちゃんどうしちゃったの!? 本当におかしいよ!」
千歌「もうここから出て行ってよ! 怖いよ!!」
曜「ま、まぁまぁ! 千歌ちゃん! 話を聞いてよ!」
千歌「うるさい! もう嫌! 意味わかんないんだよぉ!!」
曜「わ、わかったごめん! 今日はもう帰るから! でも一つだけ!」 曜「善子ちゃんに会わせてよ! 善子ちゃんに会うためだけにココに来たの!」
千歌「ふざけないでよ!!」
千歌「善子ちゃんはここにはいないの! 曜ちゃんがやったんでしょ!?」
千歌「善子ちゃんは仲間だったのに! 私達の仲間だったのに!」
千歌「曜ちゃんなんてもう知らないよ! 出てって!」
千歌「さっさと出てってよぉ!!」
曜「」プツン 曜「っるさいなぁぁぁぁ!!」
曜「元はと言えばさぁ! あの馬鹿女の口車に乗せられたあんたが悪いんだろ!?」
曜「みんなで私をハブにしやがって!」ガシッ
千歌「い、痛い! 離して!」バタバタ
曜「うるせぇ!!」バキィッ
千歌「ぎゃっ」パキッ
梨子(千歌ちゃんは……髪の毛を掴まれたまま、曜ちゃんの、おそらく全力の拳を顔面に喰らった)
曜「……!」バキッバキィッ
千歌「ぐえっ、いひゃ」ゴッ ベキッ 梨子(2発、3発……、4発目で……曜ちゃんが千歌ちゃんの髪の毛を離して、千歌ちゃんは倒れ込んだ……)
花丸「うっ! おえぇぇ」
梨子(……ように見えた。実際は違った。曜ちゃんは離してなんかいなかった)
ルビィ「うえええええええええええん!」
梨子(千歌ちゃんの髪の毛は頭皮ごと……曜ちゃんの手に残ったまま。綺麗な白い頭蓋を露出して、千歌ちゃんは潰れた眼孔からおびただしい量の血を流していた)
鞠莉「お、落ち着きなさい! 曜!」
梨子(……眼の前の惨状は、本当に人間の仕業なのだろうか。あれは、人間に為せる事ではない)
梨子(力が、というだけでなく……あそこまで、人間を思いっきり殴れるものなのだろうか? 手加減も、慈悲もなく)
千歌「」
梨子(千歌ちゃんはピクリとも動かなくなった。生きているのか、死んでいるのか、そんな事はもうどうでも良かった)
梨子(私は一刻も早く、この場から逃げ出したかった) 梨子「……ヒッ!」バッ
曜「待て! 梨子ちゃん! 全部あんたのせいだ!」
曜「善子は? 善子を返してよ!!」
曜「ううっ、梨子! 善子は……」
曜「梨子ォ! 待て! 殺してやる!」
鞠莉「ダメェ! やめなさい曜!」
曜「殺す!」
曜「待てェ! 私にあいつを殺させろォォォォォ!!!」
鞠莉「マル! ルビィ! 逃げなさい! 先生呼んできて!」
曜「どけ! 殺す!」
結局、私は逃げ出した。 私やルビィちゃん、花丸ちゃんを庇って曜ちゃんを止めようとした鞠莉さん、そして生きているか死んでいるかもわからない千歌ちゃんを残して。
情けない話だが、私は怖かった。
花丸ちゃんとルビィちゃんは無事だった。
代わりに、二人と私を守ろうとした鞠莉さんは帰らぬ人となった。
花丸ちゃんとルビィちゃんはすぐに先生を呼び、駆けつけた男の先生が数人がかりでようやく抑え込めたらしい。
千歌ちゃんは一命を取り留めた。とはいえ、脳に傷が付いており、後遺症は残っているようだ。
千歌ちゃんのお母さんの話によると、今後まともに会話ができるかどうかはわからないらしい。
ダイヤさんと果南さんは3階奥の女子トイレにて死体で発見された。二人共、無残な姿で――特に頭部が激しく損傷していたそうだ。
善子ちゃんは今では大分回復し、元の可愛かった善子ちゃんに戻りつつある。完全に傷跡が消えたわけではないけれど、元の明るさは取り戻しつつあった。 曜ちゃんはあの後すぐに入院した。
検査した所、覚せい剤を使用していた反応がでたらしい。
信じられない話だが、ダイヤさんが曜ちゃんに薬を売っていたらしい。
今でもあの時の曜ちゃんを思い出す。
あの爛々と目を光らせた悪鬼のような形相。薬のせいもあったのだろうが、あれほど憎しみを湛えた表情は私は見たことがなかった。
そしてそれほどの憎しみを向けられたことも。
身に覚えはないが、私が悪かったのかもしれない。何かか曜ちゃんの恨みを買うようなことをしていたのかもしれない。
だけど私は――もう二度と、曜ちゃんには会いたくない。 第二部
曜(私は、桜内梨子という女の子の事が好きではなかった)
曜(好きではない、という言い方はどうも生易しいかもしれない。誤解を恐れずに言えば、気に食わないと、そう言った方がより正しかった)
曜(梨子ちゃんは、可愛らしく言えばお節介焼きで――悪く言えば、独り善がり。自分で決めた価値観の中で、他人の幸福も推し量ろうとする。そういう所が苦手だった)
曜(それを押し付ける事を”やさしさ”だと勘違いしている)
曜(何度もそういう考えは打ち消そうとした)
曜(梨子ちゃんなりに、善意で動いているのだと。でも、ダメだった)
曜(思えば思うほど、私の梨子ちゃんに対する反感は、徐々に大きくなっていった) 曜(ずっと仲の良かった千歌ちゃんは、ここの所ずっと梨子ちゃんにべったりしている)
曜(そういう所も反感の原因だったのかもしれない)
曜(大切な幼馴染が取られちゃった様な気がして、寂しかったのかもしれない)
モブ子「曜ちゃん飛び込みって本当にすごいのよ?」
モブ子「すごくキレイで私もファンだし」
モブ子「この前だってナショナルチームのスカウトが来てたでしょ」
モブ子「曜ちゃん単純だからあんまり考えてないかもしれないけど、そんな事この田舎ではありえないくらいすごい事なんだから!」
モブ子「だからあまりよそ見せずに集中して頑張ってよね!」
曜「あ……うん」
曜(私はスクールアイドルの活動も好きだから両方頑張ってるんだけど)
曜(まぁ、それは良い)
曜(問題はこの後だ) 曜「っていう事があってさー」
千歌「曜ちゃんはモテるねーっ」
曜「そんなんじゃあないよ///」
千歌「でも確かに曜ちゃんはすごい選手だもんね」
千歌「でもぉ、Aqoursの活動も手を抜いちゃあ嫌だよー!」
曜「あはは、それはもちろん」
梨子「千歌ちゃん、あんまり曜ちゃんにワガママ言っちゃだめだよ」
千歌「ちぇっ、はーい」
曜「いや、別にそんな」 梨子「そうだ。今日は曜ちゃん、お休みしてもらったら?」
曜「え?」
梨子「曜ちゃんも疲れてるでしょ?」
曜「わ、私は別に……!」
梨子「良いから、良いから! 曜ちゃんも衣装作りとか大変でしょ? 息抜きだと思ってさ」
千歌「うん。そうだよ。思えば曜ちゃんには負担をかけすぎていたかも」
曜「そんな事ないよ!」 ……
曜(結局、私は押し切られる形でその日は休むことになった)
曜(私は好きでスクールアイドル部にいるのに)
曜(水泳部との掛け持ちだって、そんなに苦ではないのに……)
曜(梨子ちゃんに、押し付けられた善意が辛い) 〜別の日、バス〜
曜「そういう感じで、押し付けてくる人がいてさ」
善子「災難ねぇ」
曜「それで最近、ストレスが溜まっちゃって」
善子「大声でも出してみたら?」
曜「海に向かって、『バカヤロー!』って叫んでみようかな」
善子「ちょっと古典的すぎない?」
曜「うーん、じゃあカラオケに行くとか?」
善子「それは名案ね」
曜(善子ちゃんとの時間は好きだった)
曜(善子ちゃんは私に何も押し付けない。ただ話を聞いてくれる)
曜(私の日常の、唯一の癒しと言ってもよかった) ……
千歌「曜ちゃん」
曜「千歌ちゃん」
千歌「曜ちゃんって、チカの事好きなの?」
曜「えっ?」
千歌「今日、梨子ちゃんに告白したんだ」
千歌「勇気を出して、思い切って気持ちを伝えたの。その上で拒絶されるなら、それでもいいと思った。でも……」
千歌「梨子ちゃんは、『曜ちゃんに悪い』って。だから、断られた」
千歌「ねぇ、曜ちゃん、曜ちゃんはチカの事が好きなの?」 曜「えっと、いや、それは……」
千歌「チカは曜ちゃんのせいで振られたの?」
千歌「なんでチカなの?」
千歌「曜ちゃんがチカを好きでなければ、チカの気持ちは受入れられていたの?」
曜「そ、そんな……」
千歌「曜ちゃんのせいじゃん……」
千歌「曜ちゃんがチカを好きじゃあなければよかったのに!」
曜「そ、そんな言い方!」
千歌「うるさい!」 千歌「曜ちゃんなんて嫌いだ!」
千歌「曜ちゃんと幼馴染なんかじゃ、なければよかった!」
曜「は……」
曜「それ、本気?」
千歌「……」
曜「本気なんだ……」
曜「っ……!」ダッ
千歌「あっ……」
曜(私はその場から逃げ出した) 曜(……まただ)
曜(また、梨子ちゃんの勝手な価値観を押し付けられた)
曜(私は、千歌ちゃんに友情以上の感情を持ち合わせていなかったのに)
曜(梨子ちゃんの価値観で、勝手に気を使われて)
曜(その結果がこれだ)
曜(独善的で――たかが数ヶ月しか私たちを見ていないはずなのに、己の価値観を妄信する梨子ちゃんにも)
曜(長年築いてきた友情よりも、恋愛なんていう一時の流行り病を優先する千歌ちゃんにも)
曜(私はいい加減、限界が来ていた) 〜バス〜
善子「曜、たまには海にでも寄って行く?」
曜「えっ。突然どうしたの?」
善子「たまには、ね」
曜「うーん。でも面白そうだからいっか!」
〜海〜
善子「スゥゥゥゥゥ」
善子「バカヤローーーーーーーー!!!」
曜「よ、善子ちゃん!?」 善子「曜もやってみなさいよ。思ったよりスッキリするわよ、これ」
曜「で、でも流石に恥ずかしくない?」
善子「うっ……いいのよ! どうせ人もそんなにいないんだから」
善子「ほら、見てなさい」
善子「堕天使ヨハネ、降臨ーーーーーーーーー!!!!」
善子「これで曜も恥ずかしくないでしょ!」
曜「善子ちゃん……」
曜「スゥゥゥゥゥ」
曜「バカヤローーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」 曜「あはは、ホントだ。なんだかスッキリしたかも」
善子「フフ。いい顔になったわね」
曜「えっ?」
善子「曜ってばさっきまで死にそうな表情してたもの」
善子「見ているこっちまで気が滅入りそうだったわ」
曜「そうだったんだ……。ごめんね」
善子「いいわよ、別に。またストレス溜めてたんでしょ?」
曜「正直に言うと、うん……」
善子「たまにはこうして、発散しないと」 曜(善子ちゃんの優しさは本当に心地良い)
曜(心地が良すぎて……涙が、我慢出来なくなりそうだ)
曜「私が全部悪いのかな」ジワッ
曜「私が我慢できないから、心が狭いから」
曜「私が他人を穿って見ちゃうから」
曜「全部……全部、それが返ってきちゃうのかなぁ」ポロポロ
善子「よ、曜さん!?」アタフタ
曜「うう、もう嫌だよ……」エグエグ
善子「曜……」ナデナデ 善子「私は、事情は全くわからないけど」
善子「曜は全然悪くないと思うわよ」
曜「え……?」
善子「事情はさ、あまり知らないから、好き勝手言うけど」
善子「曜は悪くない。全く悪くない。悪いとしたら、曜以外に原因があるわね」
曜「善子ちゃん……」
曜「うっ、うぐっ、うえぇぇぇぇぇん」
善子「曜は溜め込みすぎなのよ」ギュッ
善子「たまにはこうして、吐き出してスッキリしなさい」 ……
曜「いやー、お恥ずかしいところをお見せしました」テレテレ
善子「ホントよ。このヨハネが迷えるリトルデーモンを救済する愛の堕天使でなければ、手に負えなかったわ」
曜「えへへ。善子ちゃんはホントに天使だね」
善子「ヨハネよ! それに堕天使よ、堕天使!」
曜「ありがと、善子ちゃん」
善子「ヨハネね」
曜「あのさ、善子ちゃん」
善子「だからヨハネ」 曜「あの、善子ちゃんにしてみたら、凄く迷惑だし、鬱陶しいと思うかもしれないけど……」
善子「ヨハネよ」
曜「もし、また辛くなったら……善子ちゃん、また私の話、聞いてくれる……?」
善子「ヨハネ!」
善子「はぁ、……ていうか、そんな事?」
善子「それ位で良いなら、夜通しだって聞いてあげるわよ」
曜「善子ちゃん……!」ダキッ
善子「ヨハネだってば!」
曜「ありがとう……」ギュッ
善子「もう、甘えんぼね」ナデナデ
…… >>73
ダイヤが覚せい剤売ってた辺りでそんな気はした
最後まで続けて 曜(あー……)
曜(善子ちゃんには恥ずかしい所を見せちゃったな///)
曜(でも、本当に良かった)
曜(善子ちゃんのおかげで、かなり心に余裕が出来た)
曜(やっぱり、善子ちゃんと話していると落ち着くな) 〜翌日〜
曜(何故かダイヤさんに呼び出された)
曜(3階の奥にあるトイレ。ここは殆ど人も寄り付かず、なんとなく隔離された場所のような感じだ)
曜(こんな場所で一体何の用なのだろう)
曜(暫く待っているとダイヤさんと果南ちゃんがやって来た)
果南「やっほー、曜」
ダイヤ「すみません、曜さん。急にお呼び立てしてしまいまして」
曜「いえ。それより話って?」
ダイヤ「曜さん、あなた、最近何か悩み事を抱えていませんか?」
曜「えっ?」 ダイヤ「見ていればわかりますわよ。落ち込んで、元気が出ないという日が多いのでは?」
曜「あ、あはは。ダイヤさんは凄いな」
ダイヤ「もし、限界が来て、どうしようもなくなった時は、これを使ってみる事をオススメします」
曜(錠剤……? それにしては変な色だけど)
曜「これは……」
ダイヤ「気分が落ち着くお薬ですわ」
ダイヤ「非常に高価なお薬なのですが、曜さんは仲間ですので。トクベツに差し上げます」
ダイヤ「あっ、勿論、非合法でしたり、怪しい薬ではありませんわよ。きちんと医療目的で販売されている薬ですので」
曜「……ありがとう、ダイヤさん」
ダイヤ「いえ。私達は仲間、ですものね」ニコッ
果南「またね、曜。元気だしなよー?」
曜「うん。果南ちゃんもありがと」 曜(うう、なんだか心配させちゃったみたいだ)
曜(そんなに顔に出てたのかな……)
曜(でも、ダイヤさんの気持ちは嬉しいけれど、私にはこんなものは必要ない)
曜(私は病気ではないのだから。薬なんて必要ない)
曜(それに、気分を落ち着かせたいなら薬なんて飲まなくても善子ちゃんと話せばいいもんね)
曜(ダイヤさんには申し訳ないけど、この薬の出番は無いかな) 〜放課後、部室〜
曜(善子ちゃんとお話したいな)
曜(千歌ちゃんや梨子ちゃんと顔を合わせるのは苦痛だけど。終われば善子ちゃんと一緒に帰れる)
曜(それだけが楽しみで、スクールアイドルをしているようなものだ)
梨子「えー、突然ですが皆さんに重大発表があります!」
8人「!?」ザワザワ
梨子「私こと桜内梨子ちゃんは、ここにいる津島善子ちゃんとお付き合いさせて頂いております」
曜(……は?) 梨子「この度は一部の方に、私の態度や仕草で『もしかしたら付き合えるのでは?』と誤解させてしまった事をここに深くお詫び申し上げます」
梨子「今後も今までと変わらず真摯にスクールアイドル活動に取り組んで行きたいと思っていますので、どうか変わらぬご声援をよろしくお願いします」
曜(嘘だよね。善子ちゃんが、そんな……)
善子「え、あ、そ、そうなのよ〜! 実はねぇ、リリーってばヨハネを独り占めしたいなんてワガママ言うもんだから……」
曜(嘘だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!)
曜(なんで善子ちゃんがあんな女と!)
曜(気が狂いそうだ)
梨子「じゃあ、私は善子ちゃんと帰るから」
善子「ではまた!」ギラン 曜(気が狂いそうだ)
曜(あの女がまた、私から大切なものを奪って行く)
曜(善子ちゃんとの時間まで)
曜(気が狂いそうだ)
曜(その日の夜、梨子ちゃんから電話がかかってきた)
曜(好き勝手な事を言われて……私は、怒りを抑えるので精一杯だった)
曜(もう、限界だ)
曜(……寝よう)
曜(寝て起きたら、みんなが死んでいればいいのに) 〜翌朝〜
曜(うう……)
曜(寝ても覚めても気持ち悪い……)
曜(これから学校へ行かなくちゃあだめなのか……)
曜(無理だ……もう何も楽しいことなんてないのに)
曜(そういえば……ダイヤさんから貰った薬)
曜(試してみてもいいか……)
曜(……)ゴクン
曜(あ……)
曜(すごい……嘘みたいに気分が晴れていく)
曜(なんだろう……気分がいい。今なら何でも出来そうだ)
曜(ああ、凄い!)
曜(世界が、私を祝福しているようだ!)
曜(千歌ちゃんのこととか、梨子ちゃんのこととか、そんなのもう、どうだって良い!)
曜(ふふふっ! 学校行こっと!) 〜学校〜
曜(学校でも私の気分は良いままだった)
曜(千歌ちゃんや梨子ちゃんの顔を見ても、何とも思わないくらい)
曜(これなら、なんだって乗り切れそうだ)
曜(ふふっ! ダイヤさんにはお礼を言わなくちゃ!)
――――
―――
――
― 曜(ううっ……)
曜(朝はあんなに気分が良かったのに……今はすごくしんどい……)
曜(もしかして薬の効果が切れたのかな……)
曜(ううっ……もうダメだ……もっとほしい……)
曜(ダイヤさん……ダイヤさんに言ってもっと貰おう……)
曜(ダイヤさんにラインしよう……)スースーポンポン
曜(……)
ブーブー
曜(返事が来た!)
曜(……お昼休みにこの前と同じ場所……)
曜(それまで我慢しないとダメなのか……)
曜(ううっ……) 〜お昼休憩〜
曜(お昼休み、私を心配する千歌ちゃんと梨子ちゃんを適当にはぐらかしてダイヤさんに会いに行った)
曜(相変わらず果南ちゃんも一緒にいるみたいた)
曜「だ、ダイヤさん! お願い、この前くれた薬、もっと頂戴!」
ダイヤ「あら。ふふ、やはり使いましたのね」
曜「う、うん……! それで、もうちょっとほしんだけど……」
ダイヤ「困りましたね……」
曜「えっ? えっ? まさか、もうないとか?」 ダイヤ「いえ……まだ少しございますが……その、あの薬は高価なものでして」
曜「ど、どれくらい? お金なら出すから、お願い!」
ダイヤ「具体的な値段は伏せさせていただきますが……そうですね。曜さんは大切な仲間なので、一錠あたり5,000円でお譲りしましょう」
曜「5,000円……わ、わかった!」
曜「財布の中は……1万円しかない……」
ダイヤ「では2錠ですね」スッ
曜「あ、ありがとう」
ダイヤ「大事に使ってください。次回も同じお値段で、というわけにはいかないかもしれませんので」
曜「わ、わかったよ」
…… 曜(たった2錠の薬は、当然すぐに無くなった)
曜(あんな高い薬は、早々手が出ない……)
曜(私は我慢しようとしたが、すぐに限界が来た)
曜(その度にダイヤさんに薬を売ってもらって……)
曜(でも、すぐに貯金は底を尽きた)
曜(私はついにやってはいけない事に――ママやパパのお金に――手を出した)
曜(悪いことだとはわかっている。だけれど何故かそれほど罪悪感はなくて)
曜(薬を飲むと、全てを忘れられた)
曜(その反動か、効果が切れた時は最悪だった)
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