善子「死ぬほどついてないヨハネの話」
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〜通学路〜
ザアァーッ…
善子(最近、思うことがある)
トラック「ブッブー」
トラック「ブロロオオオオ」
バシャーン!
善子「・・・・・・・・・」ポタポタ ←ずぶ濡れ
善子(ヨハネの不幸体質に、磨きがかかってきた) 〜教室〜
善子「・・・・・・おはよう」ゲッソリ
ルビィ「あ、おはよう、善子ちゃ・・・・・・って、ずぶ濡れだよ!?」
花丸「大丈夫ずら!?」
善子「善子じゃなくてヨハネ!」
善子「あーもう、朝から最悪よ!」
ルビィ「何があったの?」
善子「ほんと、朝からついてないことばっかり!」
善子「目覚ましの電池が切れてて遅刻しかけるわ、傘は風で壊れるわ、トラックに水ぶっかけられるわ、犬のウンコ踏むわ!」
花丸「えんがちょ」
善子「もう、一体なんだっていうのよ〜!」 ルビィ「ところで善子ちゃん、1限は小テストだけど」
花丸「科目を間違えた、なんてベタなこと言わないずら?」
善子「大丈夫よ! 航空力学Tでしょ! そんなベタな間違いしないわよ!!」
キーンコーンカーンコーン
善子(テスト範囲間違えた・・・・・・) 〜放課後、体育館〜
善子(その後も、弁当食べたらお腹下したり、トイレ入ったら紙が無かったりしたけど、なんとか放課後を迎えた)
千歌「今日は雨だから屋内で練習だね」
曜「梅雨だからか、最近、雨多いねー」
善子(雨ばっかりなのもヨハネのせいかも・・・・・・)
ダイヤ「さあ、しゃべってばかりいないで練習しますわよー」 ダイヤ「はい、ワン、ツー、スリー、フォー」
プツッ
善子「・・・・・・!!?」
善子(まずい、今の感覚・・・・・・)
善子(もしかして、パンツのゴム、切れた・・・・・・!?)
ズルッ
善子(やばっ!! パンツずれて、落ち・・・・・・!!)
梨子「・・・・・・善子ちゃん? どうかした?」
曜「なんで体クネクネさせてるの?」
善子「ちょ、ちょっと、待・・・・・・!!」
ツルッ
善子「うえっ!?」
ズテーン 善子「いたた・・・・・・ん?」
善子「」←開脚
8人「」
善子「あぎゃああああああああ!?!?」
8人「きゃあああああああああ!!!!」 〜帰り道〜
善子(・・・・・・その後、必死に弁解して)
善子(なんとか、ノーパンでダンス練習をする痴女というレッテルは貼られずに済んだ)
曜「やー、いいもん見れたわ」
梨子「ご馳走様」
善子「ぶっとばすわよ」
千歌「善子ちゃんって堕天使だけど下の毛ってまだ、」
善子「ほんとぶっとばすわよ頭かんかんみかん!!!」 花丸「まあまあ、善子ちゃん」
ルビィ「元気出して。頑張ルビィ!」
善子「だけど、こんなんばっかりじゃ・・・・・・」
ベチョッ
ルビィ「あ、善子ちゃんの頭に鳥の糞が!」
グニュッ
ルビィ「犬のウンコも!」
善子「・・・・・・・・・」
花丸「えんがちょ」
善子「ああ〜、もう、やっぱり私は不幸の星の下に生まれた堕天使なのよ〜!!」 〜帰りのバスの中〜
ブロロロ…
曜「まあ、こんな日もあるって。気にしない方がいいよ」
善子「こうなったら天界堕天条例に従って運命を逆転させる儀式を・・・・・・」ブツブツ
キキーッ
ガツン!
曜「わあ!!」
善子「な、なに!? なんかぶつかった!?」
『えー、お客様にお知らせいたします』
『ただ今、当バスはイノシシと衝突したため、安全確認のためしばらく運転を見合わせます』
ようよし「」
曜「イノシシ!? マジで!?」
善子「イノシシまでヨハネに不幸をもたらそうと・・・・・・」 〜翌日、淡島に向かう連絡船〜
善子(次の日、気分を変えてトレーニングしようってことで、ヨハネたちは淡島に向かっていた)
ルビィ「昨日の帰りも災難だったみたいだね、善子ちゃん」
善子「ヨハネな」
善子「イノシシのお陰で家に帰るの2時間遅れるわ、バス降りた瞬間に土砂降りになるわ、近所の犬に吠えられて空き巣に間違えられそうになるわ」
善子「ママが急用でいなくてご飯は無いわ、仕方ないからペヤング食べようとしたらお湯捨てた拍子に中身までドバっとこぼすわ」
ルビィ(あまりの不幸愚痴っぷりに堕天使の設定忘れてる・・・・・・)
花丸「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄」
善子「・・・・・・なに唱えてるのよ」
花丸「般若心経ずら」
善子「そういうこと訊いてるんじゃなくて」
花丸「妖怪でも取り付いてるんじゃないかと思って」
善子「縁起でもねえな!!」 ヒュンッ
ドカッ!!
善子「!?」
千歌「な、なになに!?」
グラグラッ
鞠莉「何かが空から降ってきて、エンジンを直撃デース!!」
ダイヤ「一体、なんですの!?」
千歌「まさか、隕石とか!?」
梨子「嘘でしょ!?」 ボンッ!!
果南「エンジンが爆発炎上した!」
千歌「船が沈むー!!」
ブクブク
ゴボゴボ
ルビィ「ピギャアアアア!?」
花丸「舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是」
善子「だから縁起でもないっての!!」
善子(まさか、これも・・・・・・ヨハネの、不幸体質のせいで・・・・・・!?) 果南「救助は任せろー」
バシャバシャ
SA-KA-NA SA-KA-NA SA-KA-NA
自由な未来は
SA-KA-NA SA-KA-NA SA-KA-NA
泳ぎやすいよ
善子(船が沈没してみんな海の藻屑と化してリアル恋アクになりかけたところを、)
善子(魚人・・・・・・もとい、果南が泳いで全員救助したので事なきをえた)
善子(果南は魚か河童だと思う)
善子(・・・・・・・・・)
善子(ヨハネのせいで、みんなが・・・・・・) 〜夜、浦の星女学院 理事長室〜
ダイヤ「なんですって・・・・・・!?」
果南「それ・・・・・・確かなの!?」
鞠莉「イエス。先程、NASAと、小原グループが統括する宇宙開発財団が観測したわ」
ググッ…
鞠莉「このままだと、世界は・・・・・・!!」 〜翌日、浦の星女学院 屋上〜
ヒュウウウ…
善子「・・・・・・・・・」
善子(ヨハネは、生まれついての不幸・・・・・・)
善子(それで、ヨハネだけじゃなく、周りのみんなまで不幸になるんじゃ・・・・・・いっそのこと・・・・・・)
ルビィ「よ、善子ちゃん!?」
花丸「そんなはじっこに立って、何してるずら!?」 善子「だからヨハネな」
ルビィ「よ、善子ちゃん、早まっちゃ駄目!!」
花丸「生きてればいいことあるずら!!」
善子「・・・・・・・・・」
善子「いいことなんて、なんにもないわよ」
善子「最近、思うの。これだけ立て続けに、不幸なことばっかり起こって。昨日なんて、隕石まで落ちてきたし」
善子「しかも、ヨハネだけじゃなく、周りの皆まで不幸にするくらいなら」
善子「だったら私なんて、いっそのこと・・・・・・」
ルビィ「なに言ってるのぉ!?」
花丸「死んだらなんにもならないずら!!」
善子「・・・・・・・・・」
スタッ
善子「・・・・・・自殺なんか、しないわよ」
善子「だって、死にたくても死ねないもの」
花丸「え・・・・・・?」
ルビィ「どうゆうこと?」 善子「私ね・・・・・・中学の時、今よりもっと堕天使に身も心も近づいていた時」
ルビィ(厨二病のこじらせ度がMAXだった頃だ)
善子「自分の不幸体質に心底嫌気がさして・・・・・・自ら、死の淵へ飛び込んで、真の堕天使になろうとしたことがあったの」
花丸「ええっ!?」
ルビィ「自殺未遂!? こじらせすぎだよ!!」
善子「だけど・・・・・・死ねなかった」
善子「屋上から飛び降りてみても、絶対木の枝に引っかかるし。海に入ってみても、絶対漁船とか通りかかって網に引っかかるし」
善子「その時、思ったの。“死にたい”って願いすら叶わないほど、私は不幸なんだって」
善子「不幸を抱えたまま生き続けなきゃいけないほど、ついてないんだって・・・・・・」 花丸「善子ちゃん・・・・・・! それは、不幸なんかじゃない」
花丸「きっとお釈迦様が、善子ちゃんのことを救ってくれたんずら!」ナムー
ルビィ「そ、そうだよ! お釈迦様か、神様かは、わからないけど・・・・・・!」
ルビィ「せっかくの命、大切にしなきゃ!」
善子「何言ってるのよ。神様なんて、私を不幸にするばかりで、全然守ってなんてくれない」
善子「生きてたって、いいことなんてひとつも・・・・・・!!」
ルビィ「――そんなことない!!」 ルビィ「そんなことないもん!!」
善子「る、ルビィ?」
ルビィ「だってルビィは、善子ちゃんとお友達になれて良かったって思ってるもん!」
ルビィ「善子ちゃんがいなくなっちゃったら、悲しいもん!!」
善子「・・・・・・!!」
花丸「ルビィちゃんの言うとおりずら」
花丸「少なくともマルたちは、善子ちゃんに会えて良かったって思ってる」
花丸「善子ちゃんにとって、マルたちとの出会いも・・・・・・Aqoursに入ったことも、不幸なの?」
善子「そ、それは・・・・・・」 花丸「ちょっとくらい不幸が続いたとしても、気にすることなんてない」
花丸「不幸がある分、幸福だってあるはずずら」
花丸「それに――不幸体質だって、善子ちゃんにとっての個性」
花丸「人間は、みんな意味があって生まれてくる」
花丸「もしかしたら、そんな不幸体質を持って生まれてきたことにも、意味があるかもしれないずら」
善子「―――」
善子「・・・・・・何よ、それ」クスッ
善子「それに私は、善子じゃなくてヨハネ――」
ヒュゴオオッ
カッ
ドコオオオオオン!! 花丸「!?!?」
ルビィ「ピギャアアアア!?」
善子「なっ・・・・・・!?」
ズズズズ…
善子(地響きが、校舎を揺らす)
善子(見ると、近くの山の山頂付近が削られて、大量の煙が・・・・・・)
善子(なに・・・・・・!? 空から、何かが、降ってきた・・・・・・!?)
ルビィ「な、なんなの・・・・・・!? まさか・・・・・・」
花丸「隕石・・・・・・!?」
ウウウウウーッ
バタバタ
ダイヤ「――ルビィ!! 花丸さん、善子さんも!! 無事ですの!?」
ダイヤ「至急――理事長室に、集まるのですわ!!」 〜理事長室〜
善子(理事長室の机で、見たことのないくらい真剣な面持ちの、鞠莉)
善子(それを取り囲むように集まった、私たち、Aqoursのメンバー・・・・・・)
千歌「い・・・・・・一体、何が起こってるの!?」
曜「さっきの、山に降ってきたアレは!?」
鞠莉「・・・・・・説明するより、まずは見た方が早いわ」
ポチッ
善子(そう言って鞠莉が、理事長室のTVの電源を入れると――) 『――引き続き、臨時ニュースをお伝えします!』
『先程、政府、アメリカのNASA、宇宙開発財団が連名で発表したところによると――』
『巨大隕石が、地球に落下することが確実とのことです!!』
『落下予測地点は、日本の静岡県付近!!』
『落下予測時間は、明日正午頃!!』
『落下予測地点周辺は、未曾有の被害となることが予想されます!!』
『関東甲信越地方、東海地方にお住まいの方は、なるべく遠くに避難を――』
『繰り返します。巨大隕石が、地球に――』
シ……ン
千歌「・・・・・・・・・」
梨子「・・・・・・・・・」
曜「・・・・・・・・・は?」 千歌「な・・・・・・に? これ・・・・・・」
曜「映画、だよね・・・・・・? こんな・・・・・・」
梨子「巨大隕石が、地球に、なんて・・・・・・!」
ダイヤ「・・・・・・残念ですが、事実ですわ」
果南「今や、日本中――いや、世界中がパニックだよ」
ルビィ「そんな・・・・・・!!」
鞠莉「・・・・・・・・・」
鞠莉「駿河湾が、今から約1億年前の隕石の衝突によって出来た地形、ということは知ってるわね?」
善子(いや、知らんけど) 鞠莉「かつてこの地に、隕石が落ちてきた」
鞠莉「そして、研究の結果、1億年周期で再び同じ場所に隕石が落ちる可能性が高いことがわかった」
花丸「それが、今回の、隕石・・・・・・!!」
果南「今から思えば、昨日の小さな隕石は、前触れだったんだろうね」
鞠莉「しかし、まさかこんなに早く来るなんて・・・・・・観測が遅れてしまったのが、悔やまれマース」
善子「ちょ、ちょっと待って。それじゃ、隕石が落ちてくる場所って・・・・・・!!」
鞠莉「――勿論」
鞠莉「ここ、内浦よ」 鞠莉「観測によると、ここに向かってくる隕石の大きさは、恐竜が絶滅した原因とされている小惑星を上回る、直径約30km」
千歌「ええっ!? じゃあ浦の星、廃校になっちゃうの!?」
曜「千歌ちゃん、廃校どころじゃないよ!!」
千歌「うちの旅館も壊れちゃう!?」
梨子「もっと大きなスケールで考えて!!」
鞠莉「・・・・・・日本列島は消滅――どころか」
鞠莉「世界が、終わるわ」
梨子「・・・・・・・・・」
曜「しかも・・・・・・落ちてくるのが、明日、って・・・・・・」
曜「・・・・・・終わった・・・・・・」 鞠莉「でも、私たちだって、何もしてこなかった訳じゃない」
鞠莉「いつかはやって来る隕石に備えて、我ら小原グループが中心になって結成した宇宙開発財団は、長年準備を進めてきたわ」
鞠莉「隕石災害を防ぐ――準備を」
ポチッ
ゴゴゴゴ…
善子「!?」
善子(鞠莉が、机に設置されたスイッチを押すと――どこからか、地響きが)
千歌「あ、みんな、あれ見て!!」
善子(見ると――窓の向こう、淡島が割れて、中からロケットの発射台みたいなものが・・・・・・!?)
善子「ななな、何よアレ!?」
千歌「すごーい、カッコイイ!! 地球防衛軍の秘密基地!?」
善子「なんであんたはそんな嬉しそうなのよ!!」 鞠莉「巨大隕石を防ぐ手段は、ただひとつ」
鞠莉「落下前に、至近距離まで近づいて攻撃、破壊するしかない」
曜「もしかしてあれが、その攻撃用ロケットの、発射基地・・・・・・!?」
果南「淡島の内部に、長年秘密裏に建設してきたの」
鞠莉「そして攻撃用ロケットの操縦は、限られた特殊な訓練を受けた人間にしか出来ない」
鞠莉「そこで、そのロケット操縦が出来る人間を養成するために、造られた学校が――」
梨子「ま・・・・・・まさか・・・・・・」
鞠莉「そう。浦の星女学院よ」
鞠莉「通常の授業カリキュラムと見せかけて、その実、ロケット操縦に必要な技術を身に付ける訓練を行っていたのよ」
千歌「だから、授業に『航空力学』やら『宇宙工学』やら『特殊機器操作』やら変なのがあったんだー!」
梨子「確かに、ちょっと変わってるなとは思ってたけど」
曜「全然気付かなかったよー」 鞠莉「生徒のみんなには秘密にしていて、申し訳ないと思ってるわ」
ダイヤ「この事実を知っているのは、鞠莉さんとわたくし、果南さんの3人のみ」
果南「そして、現状――ロケット操縦に十分な能力を持ってるのも、この3人だけ」
花丸「じゃあ、まさか――」
鞠莉「――イエス」
鞠莉「私、ダイヤ、果南の3名は――」
鞠莉「明朝、隕石を破壊するために、ロケットに乗って出撃するわ」 ルビィ「そんな・・・・・・お姉ちゃんたちが・・・・・・!!」ジワッ
ダキッ
ダイヤ「ルビィ・・・・・・!」
ルビィ「やだよ・・・・・・そんな、危ないこと・・・・・・! 行かないで、お姉ちゃん・・・・・・!」グスッ
ルビィ「だって・・・・・・もしかしたら、死んじゃうかも、しれないのに・・・・・・!!」
ダイヤ「」クスッ
ダイヤ「大丈夫ですわ、ルビィ。わたくしは、死にません」ナデ…
千歌「か、果南ちゃんに鞠莉ちゃん! みんな、大丈夫だよね!?」
千歌「死んじゃったり、しないよね!?」
鞠莉「オフコース! モッチロン♪」
果南「むざむざ、死ぬつもりなんてないよ。私が丈夫なの、知ってるでしょ?」
千歌「約束だよ! これからも、この9人でスクールアイドル、やるんだから!!」
善子「・・・・・・・・・」
『――全世界の皆様。今や我々、人類と、地球の全ての生命の命運は――』
『日本の、わずか十代の少女たちの手に委ねられました』
『我々は、願いましょう。祈りましょう』
『彼女たちが、地球を救い、そして無事に還ってくることに――』
日本の、東京で。アメリカの、マンハッタンで。
ロンドンで、パリで、モスクワで、北京で、バチカンで。
都市で、田舎で、砂漠で、北極圏で。
その夜――世界中の人々が。
それぞれの思いを胸に、空を見上げていた。
〜夜、淡島基地〜
善子(・・・・・・・・・)
善子(どうにも眠れず・・・・・・私は、基地内の寝所を抜け出して)
善子(基地の外へと、出た)
善子(夜空を見上げると――空の彼方に、僅かに尾を引き、光る星)
善子(きっと、あれが――)
ボソボソ…
善子「!」サッ
善子(その時、桟橋の方から、話し声が聞こえてきて――)
善子(私は思わず、物陰に隠れた) 果南「・・・・・・ルビィは?」
ダイヤ「泣き疲れて・・・・・・眠ってしまいましたわ」
鞠莉「・・・・・・言わなくて、良かったの?」
鞠莉「ロケットに内蔵された兵装だけじゃ、巨大隕石を破壊できる可能性は、極めて低い」
鞠莉「いざとなったら、ロケットごとぶつけて、隕石を破壊する」
鞠莉「帰って来れる可能性なんて――ほとんどない、ってことに」
善子「・・・・・・・・・!!」
ダイヤ「・・・・・・・・・」
ダイヤ「・・・・・・言える訳がありませんわ」クスッ
ダイヤ「それに、それはお二人も同じでしょう?」
鞠莉「まあ――」クスッ
果南「――そうだね」クスッ ダイヤ「ルビィなら、きっと大丈夫ですわ。わたくしがいなくなっても」
ダイヤ「だってあの子は、見た目より、ずっと強い子ですもの」
鞠莉「そうね・・・・・・それに、私たちの手で、人類を、地球を守れる」
果南「こんなに、痛快なことなんてないしね」
鞠莉「・・・・・・ありがとう。果南、ダイヤ」
鞠莉「私、二人に会えて、本当に良かった」
ダイヤ「なんですの、改まって」
果南「そんなの――こっちの台詞だよ」
果南「ただ、まあ――心残りといえば」
果南「また、千歌たちと――Aqoursの9人で、スクールアイドル、やりたかったなあ・・・・・・」
鞠莉「ええ・・・・・・」
ダイヤ「そうですわね・・・・・・」 善子(・・・・・・・・・)
善子(私は、そっと、その場から離れる)
善子(そして――)
スッ
善子(私は、足元に落ちていた、小さな貝殻を手に取ると――)
バッ
善子(空に向かって、思いっきり放り投げた)
善子(そのまま、目を瞑っていると――)
コツンッ
善子(私の頭に、落ちてくる、貝殻) 善子(・・・・・・・・・)
善子(やっぱり、絶好調。私の、不幸体質)
善子(なぜ、ここしばらく、私の不幸体質に、磨きがかかっていたのか)
善子(私の、不幸体質の、意味)
善子(私が、生まれてきた――意味)
ギュッ…
善子(もしかして・・・・・・このために・・・・・・?) 〜早朝 淡島基地〜
花丸(翌朝――まだ、日の出前の時刻)
花丸(果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤさんの出発の準備が、着々と進められていました)
『ロケット発射 30分前です』
ルビィ「お姉ちゃん・・・・・・」
ダイヤ「もう、ルビィ、そんな顔をしないの。ルビィは、強い子なのですから」
梨子「ダイヤさん、鞠莉ちゃん、果南ちゃん・・・・・・どうか、ご無事で」
曜「地球を・・・・・・お願いします」
鞠莉「当然デース! マリーたちに任せておけば心配ナッシング!」
果南「隕石になんか、負けないよ。大船に乗ったつもりでいて」
千歌「みんな・・・・・・」
千歌「絶対、帰ってきてね。約束だからね・・・・・・!」
ダイかなまり「・・・・・・・・・」
花丸(・・・・・・あれ? 善子ちゃんは、どこに・・・・・・)
ウーッ ウーッ ウーッ 鞠莉「!? 警報!?」
果南「なに!?」
管制官『緊急事態発生!!』
管制官『ロケット一号機のエンジンが、点火されています!!』
鞠莉「ホワッツ!? なんですって!?」
ダイヤ「ロケットに――誰かが、乗っているんですの!?」
果南「一体、誰が、勝手に・・・・・・!?」
管制官『駄目です!! こちらからの呼びかけにも、応答しません!!』
ゴゴゴゴ…
花丸(マルたちの目の前で――天に向かって屹立する発射台に乗ったロケットのエンジンが火を噴き、)
花丸(そして、大きな轟音と光とともに――)
ドドドドド!! ダイヤ「ああっ!!」
鞠莉「ロケットが・・・・・・!!」
ゴオオオオーッ…
花丸(呆然とする、マルたち8人を尻目に――)
花丸(ロケットは、天高く、飛び立った)
花丸(日の出が近づき、東の空が明るみ始めている――天)
花丸(その中で、もはや月よりも大きく、はっきりと不気味に光る隕石に向かって――)
果南「一体誰が、勝手に・・・・・・!!」
ザッ…ザザーッ…
管制官『――通信、繋がりました!!』
管制官『映像、モニターに出します!!』
ブンッ 『・・・・・・・・・』
『あれ・・・・・・これ、映ってるの?』
花丸(モニターに映し出された、ノイズ混じりの映像)
花丸(そこに映った、宇宙服を着た顔は――)
ルビィ「よ――」
花丸「善子ちゃん!!?」
善子『あっちゃあ、バレちゃったか』
善子『ご機嫌よう。素敵な朝ね、リトルデーモンの諸君』ギランッ
果南「善子!!? あんた、勝手になにやってるの!?」
ダイヤ「ふざけてる場合じゃありませんわよ!!」
鞠莉「戻ってきなさい、善子!!」 善子『戻る――か』
善子『くっくっく。天に昇り、堕天使から真の天使へとクラスチェンジするヨハネにとっては、聞けない注文ね』
曜「だからふざけてる場合じゃないんだよ!!」
梨子「よっちゃん、ロケットの操縦なんて出来るの!?」
善子『学校で知らずに訓練受けてたお陰か、なんとなく操縦方法はわかるわ』
千歌「なんで、善子ちゃんが・・・・・・!!」
鞠莉「戻ってきて、善子!!」
善子『・・・・・・・・・』
善子『ごめん、マリー。それにダイヤ、果南も』
善子『私、ゆうべ、聞いちゃったんだ』
善子『3人とも――たぶん、出発したら、戻ってこれない――って』
ルビィ「え・・・・・・!?」
ダイヤ「・・・・・・!!」 善子『3人もいなくなっちゃったら、これからのAqours大変だし』
善子『3人は、これからも必要な人間でしょ?』
鞠莉「だからっ・・・・・・自分が、身代わりになろう、って言うの・・・・・・!?」
ダイヤ「馬鹿なっ・・・・・・馬鹿なことを!! そんな勝手、許しませんわよ!!」
果南「第一、ロケット1機だけじゃどの道、隕石は破壊できないんだよ!?」
善子『ふっ。案ずることはない、リトルデーモン』
善子『諸君も知っていよう。このヨハネの、不幸体質を』
梨子「不幸体質・・・・・・!?」
曜「まさか・・・・・・!?」
善子『ここ最近、立て続けに、ヨハネに不幸が降りかかってた』
善子『そして、思ったの。これだけとびっきりの、“未曾有の不幸”なら・・・・・・』
善子『きっとヨハネの許に、降りかかるだろう、って』
花丸「まさか・・・・・・」
花丸「隕石を、誘導して・・・・・・軌道を、ずらすつもりずら・・・・・・!?」 ダイヤ「そんな、馬鹿なことっ・・・・・・!!」
千歌「それに・・・・・・どの道、善子ちゃんは死んじゃうじゃん!!」グスッ
千歌「駄目だよ、善子ちゃん!!!」
花丸「善子ちゃん、戻ってきて!!」
善子『・・・・・・・・・』
善子『ずら丸・・・・・・言ってたわよね』
善子『人には、生まれてきた意味がある。不幸体質にだって、意味があるのかもしれない、って』
善子『それなら・・・・・・私が、不幸体質を持って生まれてきた意味って・・・・・・』
善子『今日、この日のためだったのかもしれない』
花丸「え・・・・・・」
BGM:I Don't Want to Miss a Thing /エアロスミス 善子『私なんか、生きてても仕方ないって思ってた。周りのみんなのことまで、不幸にしちゃうくらいなら』
善子『だけど・・・・・・そうじゃなかったのね』
善子『こんな私が・・・・・・初めて、みんなの役に立てる』
善子『みんなを・・・・・・地球を、救えるって思うと。なんだか、嬉しいの』
ルビィ「よ・・・・・・善子ちゃん・・・・・・!!」グスッ
善子『ルビィ、ありがとう。私と会えて良かった、って言ってくれて』
善子『今なら――胸を張って、言える』
善子『私は――みんなと。Aqoursのみんなと出会えて、良かった』
善子『――ありがとう、みんな』
曜「よ・・・・・・」
千歌「善子ちゃん・・・・・・!!」ポロポロ 管制官『ロケット、間もなく大気圏に突入!!』
管制官『通信、遮断されます!!』
善子『ふっ。なんて顔してるのよ、リトルデーモンたち』
善子『ヨハネは、天界に還る。元いた場所に、戻るだけなのだから・・・・・・』
千歌「善子ちゃん!!」
果南「善子!!」
曜「善子ちゃん・・・・・・!!」
梨子「よっちゃん!!」
鞠莉「善子ー!!」
ダイヤ「善子さん!!」
善子『ふっ・・・・・・だーかーら』
善子『善子じゃなくて――ヨハネ』
ブツッ
ザァァーッ…
ルビィ「善子ちゃん・・・・・・!!」ボロボロ
花丸「善子ちゃぁぁぁぁぁん!!!」 〜ロケット 操縦席内部〜
ザーッ…
善子(それっきり――モニターには、何も映らなくなった)
善子(そう。これでいいんだ。私ひとりの命で、Aqoursのみんなが、世界中の人たちが、救われるのなら)
善子(ママには――お別れ、言えなかったな)
善子(ごめんね。ママのつけてくれた名前、ずっとダサいとか言っちゃって)
善子(ママ――私を、産んでくれて――ありがとう)
ガタ…ガタ…
ジワ…
善子(駄目・・・・・・震えちゃ駄目。泣いちゃ駄目)
善子(みんなに、あんな風に言ったんだから)
善子(最後まで、堕天使らしく――アイドルらしく――)
善子(――笑ってやる)
BGM:スパークル /RADWIMPS 善子(私の目の前――操縦席の、窓の外には)
善子(もう、目前にまで迫った、巨大な隕石――!!)
善子「――さあ」
ギュッ…
善子「あんたが――“未曾有の不幸”だっていうんなら」
善子「この私の許に――降ってきなさい!!」
グイッ!
グオオオオッ!!
善子(操縦桿を握った私は――機体の進行方向を変え)
善子(大きく迂回させ、そのまま速度を上げる――!)
善子(そうだ――ついてこい!)
善子(そして、向かう先は――) こんなんでちょっと泣きそうになってるとか俺疲れてるのかな 〜地上 淡島基地〜
千歌「――あ!!」
花丸(8人で――空を見上げ)
花丸(千歌ちゃんが――空の一点を指さす)
ダイヤ「隕石が・・・・・・!!」
鞠莉「軌道を・・・・・・変えた・・・・・・!?」
花丸(空の中で――尾を引いていた大きな光の玉が、僅かに動きを変え)
花丸(そして――何かに吸い寄せられるように、どんどん、別の方向に向かって進んでいく)
花丸(その先にあるのは――)
花丸「月・・・・・・!?」 〜ロケット 操縦席内部〜
善子(私は――月に向かって)
善子(一直線に、ロケットを飛ばす)
善子(月――か)
善子(ヨハネが再び天に昇って、天使になる場所としては相応しい――)
ゴオオオオオッ!!
善子(後ろからは――押し潰すほどの勢いで、隕石が迫ってきている)
善子(各機器はアラームを鳴らし続け、きっともう、機体ももたない――)
善子「・・・・・・・・・」
クスッ
善子「みんな――」
善子「さらばっ!」
カッ
〜地上 淡島基地〜
曜「隕石が・・・・・・!」
梨子「どんどん、月に向かって・・・・・・!」
花丸(そして――次の瞬間)
カアアアアッ!!
花丸(月を中心に――空が、昼間のように、まぶしくなった)
花丸(しばらくして――その光が、収まると)
果南「隕石が・・・・・・消えた・・・・・・?」
鞠莉「月に・・・・・・落ちた、の・・・・・・?」
パアアア…
花丸(そして――東の海から、太陽が覗き)
花丸(辺りは――柔らかな朝日に、包まれた)
BGM:SKY JOURNEY /Aqours
鞠莉「地球は・・・・・・人類は、救われたんだわ」
果南「善子の、お陰で・・・・・・!」
ダイヤ「善子さん・・・・・・」
花丸(朝日の中――)
花丸(マルたち、8人は――少し、影の形が変わった、月を見上げていた)
梨子「よっちゃん・・・・・・世界を、救ってくれたのね・・・・・・」
曜「ありがとう、善子ちゃん・・・・・・」
千歌「だけど・・・・・・やっぱり、やだよ・・・・・・」ポロポロ
千歌「なんで、善子ちゃん・・・・・・!!」
ルビィ「善子ちゃん・・・・・・!! うわぁぁぁん!!」
花丸「善子ちゃん・・・・・・」ポロポロ
花丸(――その日。ひとりの堕天使の、尊い犠牲で)
花丸(世界は、救われたずら――) 〜1週間後 内浦の砂浜〜
ザン…ザザン…
花丸(あれから1週間――内浦は、地球の人たちは、またいつも通りの日常を取り戻していたずら)
花丸(善子ちゃんがいない――その、1点だけを除いて)
ルビィ「・・・・・・ねえ、花丸ちゃん」
花丸「なに? ルビィちゃん」
ルビィ「善子ちゃん・・・・・・言ってたよね」
ルビィ「『堕天使から、真の天使になる』って――」
花丸「うん・・・・・・」
ルビィ「善子ちゃんは・・・・・・天使に、なれたのかな?」
鞠莉「――なれたに、決まってるわ」 ルビィ「――あ」
花丸「鞠莉ちゃん、みんな・・・・・・」
花丸(そこにやって来たのは――鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤさん)
花丸(千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん)
果南「そうだよね。私たちを、地球を、救ってくれた、善子は――」
千歌「正真正銘の、天使だよ」
花丸「千歌ちゃん、みんな・・・・・・」
ルビィ「そう・・・・・・そうだよね」
ルビィ「だけど・・・・・・やっぱり」
グスッ
ルビィ「また、善子ちゃんに・・・・・・会いたいな・・・・・・」
キラッ
鞠莉「・・・・・・ん?」 鞠莉「ホワッツ? あれは・・・・・・」
ダイヤ「どうしたんですの?」
果南「空の向こうで、何かが光ったような・・・・・・」
曜「――確かに、何か見えるよ。キラキラ光る――星? なんだろ?」
梨子「ね、ねえ・・・・・・気のせいか、なんだか、近づいてきてない?」
千歌「ま、まさか・・・・・・また、隕石!?」
鞠莉「――違うわ! あれは・・・・・・あれは・・・・・・!!」
花丸(空の、彼方から――)
花丸(銀色に光る、小さな、円錐形の物体が、こちらにどんどん近づいてきて)
花丸(あれは――)
鞠莉「ロケットの――脱出ポッドでーす!!」 ゴオオオッ
千歌「わーこっちに落ちてくる!?」
曜「退避!! 退避ー!!」
バッシャアアアアン!!
花丸(あたふたと逃げ回るマルたちを尻目に――)
花丸(銀色の物体は、マルたちの目の前の、海に落下した)
ザアアアアッ
千歌「わぷっ!? 水しぶきが!」
梨子「冷たっ!」 シーン…
千歌「え・・・・・・UFO?」
千歌「アルマゲドンの次はインデペンデンス・デイ?」
曜「いや、違うでしょ・・・・・・」
花丸(目の前に着水した物体を、みんな呆然と見つめていたけど――)
ギギ…
ダイヤ「!!」
果南「ハッチが開いた!!」
花丸(その中から――ずるずると、這い出してきたのは、)
「天使になれたと思ったのに・・・・・・」
「また・・・・・・地上に、堕天してしまった・・・・・・」
ルビィ「よ・・・・・・」
花丸「善子ちゃん!!!」 千歌「善子ちゃ〜〜〜ん!!!」
バシャバシャ
花丸(マルたちはみんな、制服が濡れるのも構わず、善子ちゃんの許に走り寄った)
鞠莉「アンビリーバブル!!」
梨子「良かった、無事だったんだね・・・・・・!!」
曜「善子ちゃん!!」
善子「善子じゃなくて、ヨハネ・・・・・・」
善子「って、1週間飲まず食わずで、力が・・・・・・」
花丸「良かったずら、善子ちゃん・・・・・・!!」
ルビィ「でも、なんで・・・・・・?」
善子「」フッ 宇宙服ってうんことかおしっこってどうするのかな おむつ? 善子「・・・・・・やっぱりね。ヨハネは、とびっきり不幸なの」
善子「言ったでしょ? 『死にたいと思っても、死ねないくらい不幸だ』って」
花丸「あ・・・・・・!!」
善子「あの時、私、死んでもいい、って思った」
善子「だから――不幸にも、死ねなかったみたい」
花丸「不幸なんかじゃ・・・・・・ないずら・・・・・・!」ポロポロ
ルビィ「おかえり・・・・・・善子ちゃん・・・・・・!」ポロポロ
善子「・・・・・・ふっ」
善子「ただいま、みんな」 BGM:勇気はどこに?君の胸に! /Aqours
善子「それに、何度も言わせないでよ!」
善子「私は、善子じゃなくて、ヨハネ――」
ガッ!
善子「うわあああ!?」
バッシャーン!
アハハハハ
善子(これは――死ぬほど、ついてない)
善子(堕天使、ヨハネの――お話)
〜完!〜
ギャグSSなので細かいことは気にしないでください
アルマゲドンはずいぶん前に見たきりなので細部はよく覚えてません! 乙、面白かった
割と伏線張ったり話考えられてたしちょっとうるっときた ____ r っ ________ _ __
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`´ `‐' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`‐'  ̄ ` `´ `ー' `ー───-′ じゃあ死ねよ
読んでねえけど善子とか死んでいいだろ BGMかけて読むとサビに入る前に次の曲になっちゃうのモヤる >>84
同じでわろた
ちょうどサビ前でよく知らんラッドウィンプスに変わった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています