0544名無しで叶える物語(たこやき)
2018/05/31(木) 21:28:54.94ID:PY35JQws1)
「ことりちゃん。また、ラブレター?」
手元を覗き込むように話しかけてきたのは、幼馴染の高坂穂乃果。
視線は、下駄箱から取り出したばかりの手紙に注がれている。
「そうみたい」
「なんて書いてるのっ?」
「穂乃果。そういうのは聞かないのがマナーですよ」
もう一人の幼馴染、園田海未。興味本位で中身を知ろうとする穂乃果に苦言を呈している。
「え〜?海未ちゃんも気になるでしょ?」
「……それとこれとは話が別です」
「ほら、気になるんじゃん!」
「あはは……」
盛り上がる二人であったが、当の少女―――南ことりはそれほどの興味は持てなかった。
これまでのラブレターと似たようなことが書いてあるだけで、お断りするのが大変なだけ、というのが本音だった。
二人が話している間に、手紙の内容を確認してみたが……、予想の範疇を超えないものだった。
2)
校舎の裏手、中庭の奥に静かにたたずむアルパカの飼育小屋で、朗らかに笑う彼女―――南ことりもそんな学校に通う女の子の一人である。
「また、アルパカ小屋に行っていたんですか?」
「うん♪」
一年生の頃、私が初めてアルパカさんたちに会ったときの衝撃といったら。それはもう言葉にできないものでした。
アルパカさんのつぶらな瞳に、モフモフのふっわふわ。見てるだけで可愛い。触っても可愛い。とにかく可愛い。
たまにとばされる涎はちょっとくさいけれど、わたしはアルパカさんの虜になってしまったのです。
二年生になった今でも、毎朝のアルパカ小屋通いは続いています。
「……ことりは本当にあの子たちが好きですね」
「だって可愛いんだも〜ん」
呆れる海未ちゃんに、えへへ〜と笑顔を返す。
あれ?そういえば、いつもならここで、「ほんとによく飽きないねー」と、海未ちゃんと一緒になって呆れる穂乃果ちゃんの姿が見えません。