善子・ルビィ「誓いの指輪を貴女に」
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もし───
ルビィ「ねえよっちゃん」
善子「ん、なに?」
もしも、自分の大切なものが守れるとして─
ルビィ「ルビィとよっちゃんが会ってから、もう少しで十年になるんだよね」
善子「……ええ、そうね」
ルビィ「懐かしいなぁ…最初に会ったときはビックリしちゃったけど」
善子「そうかもね…あの時は、そう…私も驚いたわ」
たとえ、その代わりに…別の大切なものを失うことになったとしても
善子「……でもね、それでも私は貴女と一緒にいたいと思った」
善子「責任とかじゃなくて、ただ貴女のことが…何よりも大切だったから」
善子「それに……約束したしね」
ルビィ「……よっちゃん?」
善子「ねえ、ルビィ──」
善子「聞いてくれる? 貴女に応える…十年越しの私の告白を」
それでも、アナタは運命を変えたいですか? ……
…
善子「………ん……」パチ
千歌「!! ………あ…」
善子「あれ…ここ……どこだっけ…」
曜「善子ちゃんっ…! 善子ちゃああああああん!!」ダキッ
千歌「よかった…善子ちゃん……本当に、よかったよ…っ…!」ポロポロ
善子「千歌さん…曜さん……それに…リリー?」
梨子「……おかえりなさい、心配したんだから」
善子(……そうか、私…帰ってこられたのね)
善子「……うん、ごめんなさい…」 ─
曜・千歌「……」スゥースゥー
善子「…二人とも寝ちゃったわね」
梨子「緊張の糸が切れたんでしょ、ここのところずっと睡眠不足だったもの…仕方ないわ」
善子「……そんなに」
梨子「言っておくけど私もだからね、善子ちゃん」フワァ
梨子「それに、貴女のお母さんだって……」
善子「……そう、よね」
「…全くずら、善子ちゃんは迷惑かけすぎだよ」
善子「! ……その声」 花丸「……」
善子「花丸…」
梨子「花丸ちゃん…」
花丸「ルビィちゃん、大丈夫そうだったから一回戻ってきたずら」
花丸「まだ眠ってるけど」
善子「! ルビィが…」
花丸「うん……だから今のうちに言っておくね」
善子「え…?」 花丸「……」フゥーッ
花丸「善子ちゃん、いい加減にしてよ」
善子「っ…!」
梨子「……」
花丸「勝手にマルたちの前からいなくなって、ずっと何の連絡もないし」
花丸「それにルビィちゃんまで巻き込んで、マルの心配増やしてばかりで……」
花丸「善子ちゃんは…みんなの気持ち……何も分かってない!」
花丸「……分かってないよ…っ…何も!!」グスッ 善子「花丸……ごめん」ダキッ
花丸「……うぅ……ずっ、と……心配して…たんだから…」
善子「……ええ、そうよね…」
善子「ありがとう、花丸」
花丸「善子ちゃん…っ…! うぅっ…わああああああああああん!!!」ポロポロ
……
… 花丸「……ぐすっ…それで、善子ちゃんこれからどうするの?」
善子「え?」
梨子「このまま千歌ちゃんのところで泊まるか、自分の家に帰るか…」
善子「あっ、ここって千歌さんの旅館だったのね」
梨子「皆で運んで連れてきたのよ、急に現れたからビックリしたけどね」
梨子「それで、ご両親はお仕事のこともあるし…目が覚めるまでは私たちに任せてくださいって千歌ちゃんが」
花丸「ルビィちゃんは黒澤家の人たちとマルが様子を見ていたんだ」
善子「…そうだったのね」 梨子「さてと、説明も終わったことだしさっきの話に戻るね」
梨子「もう結構いい時間だからここに泊まっていくのもありだとは思うけど……でもね」
梨子「私は帰った方がいいと思うわ、さっきも言ったけど善子ちゃんのご両親が一番心配してるはずだし」
花丸「マルも同じかな、早く帰って安心させてあげなきゃ駄目だと思う…」
善子「それは……そうかもしれないけど」 梨子「…何か気になることでもあるの?」
善子「ルビィ、まだ目が覚めていないんでしょ? 大丈夫かなって……」
花丸「それなら心配しなくても大丈夫ずら、マルがついてるから」
花丸「ルビィちゃんのお家の人にも許可はもらってるし」
梨子「善子ちゃんだって疲れてるでしょう? ルビィちゃんのことは私たちに任せて、ゆっくり休んだら?」
善子「……そこまで言うなら…分かったわ」
善子「ルビィのことお願いね、花丸」
花丸「もちろんずら」 善子「それじゃあ、また明日ね」
花丸「うん、また明日」
バタン
花丸「……行ったね」
梨子「そうね、お疲れ様花丸ちゃん」
花丸「ううん、そんなこと」 梨子「でも本当によかったわ…二人とも無事に帰ってくることが出来て」
花丸「……そうだね」
梨子「花丸ちゃん?」
花丸「……あっ、えっと…ルビィちゃん早く起きないかなあって」
梨子「そうね、目が覚めたのが善子ちゃんだけじゃ、まだ安心できないもの」
花丸「……うん」
花丸(ルビィちゃん…なんだろう、この不安……)
花丸(…………きっと気のせいだよね…?) ─そして翌日…
善子「……失礼します」バタン
善子「ふぅ、ようやく話が終わったわね」
善子「まあ一ヶ月ほど居なくなってたら、そりゃこうなりもするわよね」
善子「でも、今はそれよりも……早くあの子に会いに行かなくちゃ」
善子「待っててね、ルビィ…すぐ行くから」
……
… ─黒澤家、ルビィの部屋
バンッ!
千歌「花丸ちゃん! ルビィちゃんの目が覚めたって本当!?」
梨子「ちょっと千歌ちゃん落ち着いて、勢いつけ過ぎよ」
ルビィ「……あれ、梨子さんと曜さんと千歌さんだ」
ルビィ「こんにちは、学校から帰ってきたんですね」ニコッ
曜「よかった…! ルビィちゃんも無事だった…!!」
ルビィ「……無事? ああそっか、ルビィずっと眠っていたんだよね」
ルビィ「さっき花丸ちゃんに聞きました」
花丸「……」 梨子「そう、でも本当によかったわ…目が覚めて」
千歌「ルビィちゃん、具合とか悪くない? 大丈夫?」
ルビィ「うん平気だよ、ありがとう」
花丸「体調とかは特に問題ないって言われてたずら……ただ」
曜「花丸ちゃん?」
花丸「どうしてか分からないけど、ルビィちゃんはあの事件のこと…覚えていないみたいで」 梨子「事件って、二人が消えたときのこと?」
花丸「うん」
梨子「うーん…何かのショックで一時的に思い出せない、とかかしら?」
花丸「そこまでは分からないみたいだけど」
花丸(ただ、それよりも……なんだろう…どこも可笑しいところはないはずなのに)チラ 曜「そうだ! ルビィちゃん、これ差し入れで持ってきたんだ!」バッ
千歌「みかんだよ! たくさん食べて早く元気になってね!」
ルビィ「わぁ! ありがとうございます!」
梨子「ちょっと、どうして千歌ちゃんまで一緒に食べてるの!」
千歌「あはは…つい」
ルビィ「ルビィは気にしてないよ、みんなで食べよう?」
梨子「……まあルビィちゃんがそう言うなら」
花丸(どうして、今のルビィちゃんは変だって思っちゃうんだろう……) 曜「美味しいね!」
ルビィ「うん!」
花丸(……なんか、まるで……)
花丸(何かが一つだけすっぽりと抜け落ちてしまったような…そんな違和感が)
花丸「……」
梨子「花丸ちゃん、どうしたの? 昨日から何か考え込んでるみたいだけど」
花丸「梨子さん…」
花丸「……あの、実はマル…気になっていることが─」
バンッ 花丸「!」
善子「ごめん! 遅くなったわ!」ハァハァ
曜「善子ちゃん! やっと来た!」
善子「! ……あぁ……!」ジワ
ルビィ「?」
善子「ルビィ! よかった……っ! 目が覚めたのね! 私ずっと……」タッ
ルビィ「!?」ビク 善子「貴女のことが心配で…!」
ルビィ「……」サッ
善子「…………え?」
花丸「っ!?」
善子「ルビィ…? な、なんで……? ……なんで、避けるの…?」
ルビィ「……」ギュゥ
千歌「…ルビィちゃん? どうして花丸ちゃんの後ろに隠れたりなんか…」
ルビィ「…………あの」
ルビィ「あなた──誰ですか?」 ¶cリ ; ロ ;)| !!
まさかの…更新おつです! 善子「!」
曜「えっ……」
花丸「る、ルビィちゃん何言って……こんな時にそんな冗談笑えないよ…?」
ルビィ「?」キョトン
曜「ほ、本当に知らないの……? 嘘、だよね…ねえ?」
ルビィ「えっと……みんなはこの人のこと、知ってるの?」 梨子「……どうして」
千歌「そうだよ…こんなの可笑しいよ、だってルビィちゃん私たちのことは覚えてるのに!」
曜「なんで善子ちゃんのことだけ忘れて……」
ルビィ「……」チラ
善子「…っ……」
善子(その反応、知ってる……貴女が初対面の人にとるやつでしょ…)
善子(本当に…忘れたっていうの、ルビィ……どうして) ルビィ「……」キラッ
善子「! 貴女それ…その手に持ってるやつ」
ルビィ「え?」
花丸「善子ちゃん…?」
善子「……まさか…」 善子(その指輪のせいなの? ……そうよ、それ以外考えられない)
善子(けど、だとしても可笑しいわよ)
善子(だって、ルビィはあの時までちゃんと記憶が……)
善子(…………“まで”…?)
善子(……ちょっと…ちょっと待って) ─ただし、代償として
使用者は願いの対象となった事柄の記憶全てを失うことになる
善子(もし、記憶が消えるのが力を使った時点ではなく…願いが叶った瞬間だとしたら…?)
善子(…もし、そうだとしたら…)
善子(その願いが叶うまでの間は記憶を失わないでいられる……そして)
善子(ルビィは帰ってきてから…私のことを……忘れて……つまり)
善子(ルビィは…あの子が願ったことは……) 善子「……なんでよ」
善子(そんなの、もう分かりきってる…)
…だから、ルビィに出来ることなら力になってあげたくて……
お願いしたらね、何とかここに来ることが出来たんだぁ
善子(私を、助けたい…そう、願ったのよね? ………そうでしょ? ルビィ)
うーん、なんか大丈夫みたい…なんでだろうね?
善子(…大丈夫なわけないでしょ、これから自分の記憶がなくなるかもしれないってときに)
善子(…………意味、分かんないわよ)
貴女、どうしてそんなに笑ってられるの 善子(本当は、私なんかよりずっと…ずっと)
善子(帰りたくないって、そう思ってたはずなのに)
今はルビィのことよりも善子ちゃんのことだよ
善子(それでも、自分の気持ちを隠し続けたの?)
善子(私のために……)
あはは…善子ちゃんはなんでもお見通しなんだね
善子(…………馬鹿だ)
ルビィが分かりやすいだけでしょ
善子(……私、本当に…馬鹿じゃないの) 善子「……なんで、今まで気付かなかったのよ…」
善子「こんなこと、少し考えれば分かったはずなのに!!」
善子「なんで……っ……ルビィ…貴女も」
善子「どうして何も言わなかったのよ!! こんな…こんなことして…っ…!」ガシッ
善子「もっと自分を大切にしなさいよ!!」
ルビィ「…ひっ……」ビク
善子「!! ……ぁ…ちがっ……これは…」
善子「……ごめんなさい」パッ
梨子「善子ちゃん…」 千歌「…ルビィちゃん、こっちおいで」
ルビィ「え? はい」トテトテ
曜「千歌ちゃん?」
千歌「一回休もう? 花丸ちゃんは善子ちゃんをどこか落ち着ける場所に連れていって」
千歌「今は…そのほうがいいと思う」
曜「…そうだね、花丸ちゃんお願い出来る? ルビィちゃんは私たちが見ておくから」
花丸「……わかった、善子ちゃん…行こ?」
善子「…………ええ…」 バタン
「「…………」」
ルビィ「…あの」
梨子「…ねえルビィちゃん、Aqoursは何人?」
千歌「…梨子ちゃん?」
ルビィ「え? 9人…ですよね?」
曜・千歌「!!」
梨子「……全員の名前、言える?」
ルビィ「もちろん、千歌さん曜さん梨子さん、果南さんに鞠莉さんにお姉ちゃん、最後に花丸ちゃん」
梨子「…………」 ルビィ「あれ? 一人足りない……なんで?」
曜「梨子ちゃん、今はやめよう……私もう、この先を聞くのが怖いよ…」
千歌「……」フルフル
梨子「…そうね、ごめんなさい…少し軽率だったわ」
梨子「ルビィちゃんも、いきなり変なこと聞いてごめんね?」
梨子「さっきのことは……忘れて…っ」
ルビィ「…………はい」 大切なものを救うために大切なものを忘れる展開はホントキツイな… ─
善子「…………」
花丸「善子ちゃん…」
善子「……私、何も出来ないのね」
善子「ルビィにあれだけ救われていながら」
善子「あの子の記憶が無くなって、忘れられても……私にはどうすることも出来ない」
善子「…こんなの、最低よね」 花丸「……本当に方法はないのかな、もう一回指輪の力を使えば、もしかしたら…」
善子「…無理よ、まずもう一度この力を使うことが出来るかどうかも分からないし」
善子「それに、これは本来理想の世界を創るためのもの…現実の世界で起きていることは変えようがないわ」
善子「そして最後に……仮にルビィの記憶を取り戻したいと願って、それが叶ったとしても」
善子「その代償として、今度は願ったほうの記憶が無くなる…そうなれば完全にイタチごっこよ、キリがない」
善子「どうしようもないのよ……!」 花丸「…」
善子「だからもう、私には…」
花丸「……ねえ善子ちゃん、本当にそうかな」
善子「…どういうことよ」
花丸「それは……」ガサゴソ
花丸「…あった、善子ちゃんこれ見て」
善子「なに、手紙? …これがどうしたっていうのよ」
花丸「善子ちゃんを助けに行く前に、ルビィちゃんから預かったものだよ」
善子「!?」 花丸「善子ちゃんが戻ってきたら、読ませてほしいって」
花丸「さっきは驚いて、そのことに気付けなかったけど」
善子「……ルビィが…?」
花丸「…ルビィちゃん、その前にこうも言ってたよ」
花丸「善子ちゃんに伝えたいこと、たくさんあるけど全部言えるかどうか分からない」
花丸「だからもし、帰ってきたときに忘れてるようなことがあったら…読んでほしいって」
善子「!」
花丸「…ルビィちゃん、きっと最初から分かってたんじゃないかな」
花丸「こうなることも、全部……だから手紙をマルに預けた」 善子「……そんな」
善子「……ねえ、花丸……なんて、書いてあるの?」
花丸「いいの?」
善子「……お願い」
花丸「……じゃあ、読ませてもらうね」カサッ 花丸「……」
花丸「…………」
花丸「…………ぇ…?」
花丸「……! ……あ……そ…っか……ルビ……ちゃ…」ジワ
花丸「……うっ…ひぐっ……!」
善子「花丸…?」 花丸「なん……でも、ないっ……」ポロポロ
花丸「……うん…」ゴシゴシ
花丸「…………善子ちゃん、はい」スッ
善子「……私は」
花丸「善子ちゃん…これは善子ちゃんが読むべきだよ、この手紙には…ルビィちゃんの気持ち全部が詰まってる」 善子「ルビィの……気持ち…」
花丸「最後まで読んで、ちゃんとルビィちゃんの想いに応えてあげてほしいな……マルが言えるのはそれだけ」ニコ
花丸「行ってあげて善子ちゃん、ルビィちゃんのところに」
善子「……そうよね」
善子「分かったわ、ありがとう花丸」
花丸「ううん、どういたしまして」 バタン
花丸「……」
花丸「……ごめんね、善子ちゃん」
花丸「こんな時に言うのも不謹慎だけど……マルね」
花丸「ちょっとだけ、善子ちゃんが羨ましいと思っちゃった」 ─
「……」
ガチャ
「!」
善子「お邪魔するわよ」
曜「善子ちゃん…もう大丈夫なの?」
善子「ええ、少しだけ落ち着いたわ」
千歌「そっか、よかった」
ルビィ「……」
善子「……」 善子「それでね、皆にお願いがあるんだけど」
善子「ルビィと話をさせて貰えないかしら、私とルビィの二人だけで」
梨子「え? 私たちは別にいいけど……」
千歌「でも、ルビィちゃんは?」
ルビィ「…ルビィはいいよ、大丈夫」
善子「そう、ありがとう」
ルビィ「……」 梨子「じゃあ私たちは先に帰るね」
善子「ええ、今日は色々と助かったわ」
曜「気にしなくていいよ、それじゃあまたね善子ちゃん…ルビィちゃん」
千歌「また明日……」ガチャ
ルビィ「うん、また明日」 バタン
善子「……まずは謝らせて」
ルビィ「え?」
善子「さっきは悪かったわね、貴女を怖がらせるようなことして」
善子「ごめんなさい」ペコリ
ルビィ「あっ……ううん大丈夫、気にしてない…です」
善子「そう」
ルビィ「はい…」 善子「……」
ルビィ「……えっと、その」
ルビィ「み、みかん…食べますか?」
善子「…みかんは苦手なの」
ルビィ「……そう、ですか」
ルビィ「ごめんなさい、思い出せなくて」 善子「っ! どうして」
ルビィ「千歌さんたちから少しだけ、あなたのことを聞きました…」
善子「……そうだったのね」
ルビィ「ただ、聞いたって言っても津島さんが「善子」
ルビィ「え?」
善子「そう呼んでくれたほうが嬉しいわ」
ルビィ「…善子さんがAqoursのメンバーの一人で、ルビィたちと一緒に活動していたってことくらいですけど」 善子「……ええ、そうよ」
ルビィ「曲もちょっとだけ聞きました、ルビィの知らない…でもどこか懐かしくて」
ルビィ「だからすぐに善子さんの声だなって分かりました」
善子「他のみんなの声は、分かるものね」
ルビィ「はい…善子さんの声は透き通っていて、綺麗で、でも強く心に響くような歌声で」
ルビィ「その…とてもかっこよかったです」
善子「…ありがと」
善子「でも知ってるわよ、貴女…私によくそう言ってたから」
ルビィ「…そうですか」 ルビィ「えと、今のルビィが知ってるのはそれだけです」
善子「…………そっか」
ルビィ「はい…」
善子「……ごめんね、貴女の方から色々と喋らせて」
善子「私…まだ少し考えがまとまらなくて」
ルビィ「いえ…」 善子「……」
ルビィ「……あの、善子さん」
善子「なに?」
ルビィ「ルビィ、まだよくわからないけど」
ルビィ「あなたは、ルビィの大切な人…だったんですか?」
善子「っ……それは」 善子「…………分からない」
ルビィ「え?」
善子「…ううん、本当は分かってるの……ただ少し、自信がないだけ」
善子「私、あなたに何もしてあげられないのに…ってね」フッ
ルビィ「……」
善子(……だけどね)
だけどもし、貴女が私に何かを望んでいるって言うなら…わたしは
善子「……ねえ」スッ
それに応えてあげたいのよ。 貴女のように真っ直ぐに、強く。 ルビィ「は、はい」
私なりのやり方で…だから
善子「これ、貴女が書いた手紙なの、読ませてもらってもいいかしら?」
貴女の本当の気持ちを、私に聞かせて
ルビィ「…どうぞ」
善子「ありがとう」
善子「……」カサッ ─善子ちゃんへ
まず最初に……今ね、ルビィはとても安心しています。
だって善子ちゃんがこの手紙を読んでいるっていうことは、無事にこの世界に戻ってくることが出来たってことでしょ?
だからホッとしているの、ちゃんと帰ることが出来てよかったって
……あ、でも
多分、ルビィの記憶が無くなっていることにも気付いているんだよね
そしてきっと、それを知った善子ちゃんは自分を責めているんだと思う…
私のせいでルビィが…って、当たってるかなぁ? 今どうして分かるのよ、みたいな顔してるよね多分
分かるよ、善子ちゃんとずっと一緒にいればそれくらい分かっちゃうよ
ルビィは善子ちゃんのリトルデーモンだもん
…それにね
ルビィも、その気持ちはずっと持ってたから
だから、分かるんだ あのね善子ちゃん、ルビィもね
あの日、善子ちゃんが何処かへいなくなっちゃって
必死に探して……そして…そうなった理由を、原因を知ったときに
とても後悔したの、ルビィのこと…大嫌いになりそうだった
何でも知っているようなこと言いながら、善子ちゃんのこと、何も気付いてあげられなくて
少し考えれば分かったことなのにって、それに善子ちゃんもどうして何も相談してくれなかったの? って
自分のせいなのに八つ当たりして…それが一番、嫌だったの だから今の善子ちゃんの気持ちは痛いほどよく分かるんだ、だってルビィもそうだったから
でもね、それでも……ううん、だからこそかな
善子ちゃんには言わないでおこうって思ったの
どうしてだと思う? それはね、あのときの善子ちゃんと同じだよ
あなたのことが大切だから、ルビィのことで心配かけさせたくなかったの
たとえこうなるのが分かっていたとしても、ルビィは
あなたを、善子ちゃんを救いたかった ルビィ、悪い子だよね…善子ちゃんが傷つくの分かってて、それでも
こうすることを決めたんだから
だから…ごめんね、善子ちゃん
また迷惑かけちゃうかもしれないけど
記憶を無くしたルビィのこと、どうかよろしくお願いします ねえ、善子ちゃん
ルビィはね、幸せだったよ いつも貴女が傍にいたから
ああ……でも…ごめんなさい
本当は今…少しだけ、苦しいの
涙が出るくらい でも、大丈夫……今だけだから
ねえ
善子ちゃん
今まで貴女と過ごしてきた時間は私にとってかけがえのないものでした
例え記憶が消えてしまったとしても、それはずっと私の心の中に刻まれていることでしょう
決して色褪せることのない、大切なものだから ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています