善子・ルビィ「誓いの指輪を貴女に」
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もし───
ルビィ「ねえよっちゃん」
善子「ん、なに?」
もしも、自分の大切なものが守れるとして─
ルビィ「ルビィとよっちゃんが会ってから、もう少しで十年になるんだよね」
善子「……ええ、そうね」
ルビィ「懐かしいなぁ…最初に会ったときはビックリしちゃったけど」
善子「そうかもね…あの時は、そう…私も驚いたわ」
たとえ、その代わりに…別の大切なものを失うことになったとしても
善子「……でもね、それでも私は貴女と一緒にいたいと思った」
善子「責任とかじゃなくて、ただ貴女のことが…何よりも大切だったから」
善子「それに……約束したしね」
ルビィ「……よっちゃん?」
善子「ねえ、ルビィ──」
善子「聞いてくれる? 貴女に応える…十年越しの私の告白を」
それでも、アナタは運命を変えたいですか? ─学校、教室
善子「……ふわぁ〜…眠っ……」
生徒A「おはよう! 津島さん」
生徒B「今日も早いね」
善子「ん、おはよう…それなりに近いから」
生徒B「いいなあ〜」 生徒A「あっそうだ、今日のさ数学の宿題! やってきた?」
善子「一応ね」
生徒A「おお、流石教師の娘さん……! それでお願いなんだけど…」
善子「見せないわよ、自力でどうにかしなさい」
生徒A「そんなぁ……」
生徒B「ご愁傷様」 善子「こういうのは自分でやらないと意味がないでしょう」
生徒A「うう…返す言葉もない……」
生徒B「あははっ! ほらねAちゃんだから言ったでしょ、津島さんは真面目だから無理だって」
善子「いや真面目っていうか私は……」
生徒C「みんなー、そろそろ先生来るよー」
生徒A「えっ、もうそんな時間!? 早く席に戻らなくちゃ! またね津島さん!」
善子「普通のことを言ってるだけって…ちょっと! ……全くもう…」 キーンコーンカーンコーン
─ガラッ
生徒A「あっ、先生来た…けど」
生徒B「ん〜? 誰だろうあの子?」
生徒C「この学校の生徒…じゃないわよね」
善子(……なんかすっごい目立つ髪色してるわね)
善子(…でも何でだろう、自然と目が惹かれて……まるで─)
善子(宝石のような…) 教師「皆さんおはようございます、さて早速ですが今日は皆さんに大事なお知らせがあります」
教師「今日からこのクラスに転校生が来ることになりました、皆さん仲良くしてあげてくださいね」
生徒A「転校生!?」
生徒B「あー、なるほどねえ」
教師「それでは黒澤さん、どうぞ」
善子(……ん? 黒、澤……?)
「はい」 「……」カッカッ
善子(……なに、この感じ)
「……」カッ
善子(私…どこかで……)
「皆さん、はじめまして」
ルビィ「転校生の黒澤ルビィです」
第一話 赤髪の転校生 善子(……黒澤…)
善子「……ルビィ」ボソッ
ルビィ「…………あ、あの」
ルビィ「よ、よろしくお願いしましゅ!」ペコリ
善子(あっ噛んだ) 教師「それじゃあ黒澤さんはあそこの席ね」
ルビィ「は、はい……」
善子(私の隣かあ…)
善子(黒澤ルビィか、変な名前……それに)
善子(なんか弱そうねー、オドオドしてるし…もしかして人見知り?) ルビィ「……」チョコン
カワイイー カワイイネー
善子(……いやまあ、確かに可愛いっちゃ可愛いけど)
善子(でもどちらかといえば小動物系の……)チラッ
ルビィ「……?」クルッ
善子(あっやば、見てるのバレ……)
ルビィ「…」ニコッ
善子「……えっ?」キョトン 教師「津島さん? どうかしたの?」
善子「あっ…いえ、なんでもないです」
教師「そう…じゃあこの問題の続きを──」
善子「……」チラッ
ルビィ「……」サラサラ
善子(なに……今の?) ─昼休み
生徒A「ねえねえ!黒澤さんってどこから来たの?」
生徒B「何か見てるテレビとかある?」
生徒C「ちょっと二人とも落ち着いて」
ルビィ「あわわ……」アセッ
善子(ほら、やっぱり焦ってる)
善子(…じゃあさっきの余裕というか、慣れたような顔はきっとまぐれね) ルビィ「……あっ、ちょっと待ってその前に」
ルビィ「ねえ善子ちゃん」
善子「…………え? わたし?」
ルビィ「うん、そうだよ」ニコッ 善子「…私に何か用でもあるの?」
ルビィ「あのね、今日一緒に帰れないかなぁって」
善子「帰る? ……私と? 貴女が?」
ルビィ「うん」
善子「ふーん……………え?」
生徒「「ええええええええええええ!!?」」ガタッ 生徒A「え、黒澤さんと津島さんってもうそんなに仲良くなったの!?」
生徒B「もしかして知り合いだったとか!?」
善子「いや知らないし! それに仲良くなんて……」
ルビィ「ん?」
善子「…っ…いや、まあ、別に一緒に帰るくらいなら私はいいけど…」 ルビィ「本当に? えへへっ、やった…じゃあまた後でね、善子ちゃん」
ガラッ
善子「行っちゃったし…」
生徒C「ねえ津島さん、本当に知り合いじゃないの?」
善子「どうして?」
生徒C「なんか、話してる雰囲気が初めてじゃないような感じがして……それに」 善子「それに?」
生徒C「黒澤さん、津島さんのことだけは下の名前で呼ぶから」
善子「え?」
生徒A「あれ? 気付いてなかったの?」
生徒B「津島さんってそういうところ結構気にしそうなのに」
善子「……」 善子(…そうね、確かにそうだわ)
善子(でも何故か、あの子が私の名前を呼ぶことをそこまで否定する気にはなれなかった)
善子(いや、そもそもあの子にそう呼ばれるのが当たり前、みたいな……)
善子(どうしてかしら……?)
善子「…………」
善子「……ルビィ……黒澤ルビィ、か…」
善子(少し、気になるわね) ─放課後
ルビィ「……」
スタスタ
ルビィ「……あっ」
善子「悪かったわね、待たせちゃって」
ルビィ「ううん、大丈夫」
善子「そう」 善子「……あの、黒澤さ「ルビィって呼んで?」
善子「え?」
ルビィ「そっちのほうが嬉しいな」ニコ
善子「……じゃあ、ルビィ」
ルビィ「うん、なに? 善子ちゃん」
善子(……なんなのこの子、人見知りじゃないの…? 私の思い違い?) 善子「一緒に帰るとは言ったけど貴女の帰り道は? 私と同じ方向なの?」
ルビィ「……あっ、そういえば知らなかった」
善子「ちょっと何なのよもう…」
ルビィ「ごめんなさい…」
善子「……まあ別にいいけど」ハァー 善子「ならとりあえず貴女の家まで行きましょ、私土地勘はそれなりにあると思うし」
善子「ルビィだってこっちに来たばかりで迷うのも嫌でしょ?」
ルビィ「…優しいんだね」
善子「……普通よ…ほら、行きましょ」
ルビィ「うん」 スタスタ
善子「そういえばさ」
ルビィ「なに?」
善子「ルビィってどこから越してきたの?」
ルビィ「えっとね、内浦ってところから」
善子「あー静岡の」 ルビィ「…知ってるの?」
善子「え? ああいや…思い浮かんだものを言っただけなんだけど……当たり?」
ルビィ「うん」
ルビィ「…………そっか」ボソッ
善子「へえ、言ってみるものね」 善子「でもそこから東京までわざわざ越してくるなんて……そんなにここに大事な用でもあったの?」
ルビィ「……そうだね、あるよ…とっても大事なこと」
善子「ふーん…」
ルビィ「善子ちゃんにもそのうち教えるね」ホホエミ
善子「? ええ」キョトン ルビィ「…あっ見えてきた、あそこ」
善子「なんだ、意外と私の家と近いじゃない」
ルビィ「あれ? そうなんだ」
善子「ええ」
ルビィ「じゃあ、これからも一緒に帰ることができるね」
善子「ちょっと勝手に決めないでよ」 ルビィ「善子ちゃんは嫌?」
善子「そういう話をしてるんじゃなくて…」
ルビィ「うん分かってる、ごめんね困らせちゃって」
善子「…分かっているなら」
ルビィ「でも、やっぱりルビィは善子ちゃんと一緒がいいな」
善子「……ねえ、どうしてそこまで私に拘るの?」
ルビィ「それは…………」 ルビィ「…善子ちゃんともっと仲良くなりたいなぁって思ったから」
善子「それだけ?」
ルビィ「うん、それだけ」
善子「…正直意外だったわ、貴女がそんなに積極的だなんて」
善子「もっとこう、人と関わるのに控えめな子だと思ってた」
ルビィ「…………そう、だね」
ルビィ「本当は……そうだよ」 善子「え?」
ルビィ「ううんなんでもない…ねえ善子ちゃん、いいかな?」
ルビィ「これからもルビィと一緒に帰ってくれますか?」
善子「そうね……」
善子「ま、考えておくわ…とりあえず今日はここでお別れだけど」 ルビィ「ありがとう善子ちゃん」
善子「まだ一緒に帰るって決めたわけじゃないわよ」
ルビィ「大丈夫、分かってるから」
善子「ならいいけど…じゃあまた明日ね」
ルビィ「うん、バイバイ善子ちゃん」フリフリ 善子「…………行ったわね」
善子「…黒澤ルビィ、やっぱりよく分からない子ね……でも」
善子「……」スタスタ
善子「仲良くなりたい、か……」
善子「……変なの」クスッ ──
─
『あら、今日はなんか良さそうなものがあるじゃない』
『なんだ…また貴女ですか、本当に物好きですね』
『ほっといてよ…ねえ、それよりこれ─』
『……そちらに興味があるのですか?』
『ええ、このアイテム…どこか底知れない秘めた力を感じるわ! この堕天使ヨハネには分かる!』
『はぁ……冗談交じりでも当たっているのが恐ろしいですね』 『へ?』
『曰く付きの品なんですよ、貴女が気になっているその指輪は』
『そ、そうなの?』
『ええまあ、“願いを叶える指輪”などと称されていますが…こうして流れてきた経緯を考えるに…どう考えても皮肉『買うわ!!』
『いくらなの!? それ!』
『……こういう商売をしていながら言うのもなんですが』
『多少の顔なじみとして忠告しておきます、それを買うのはやめておいた方がいいですよ』 『危険だから? 別に絶対使うわけでもあるまいし』
『身近にあるというだけで誘惑に負けてしまうということもありますよ』
『悪魔は…人の心の弱さにつけ込みます、もし貴女が何かに追い詰められるようなことがあればそれは……』
『平気よ、ヨハネも悪魔だし…………でもありがと、心配してくれて』
『どうやら言っても無駄みたいですね……はぁ…ならせめてこちらも持って行きなさい』 『何これ? 本?』
『その指輪の説明書みたいなものだと思ってください、それとその本の中にもう一つ……』
『…まあ、使わないのが一番いいんですけども…いざという時に』
『ふーん、よく分からないけど…貰っておくわ』
『また見に来るわね!』
『ええ…………お気を付けて』
──
─ ピピピピッ…… ピピピッ…
善子「…………んぅ…」ピッ
善子「朝……かぁ…」フワァ
善子「……」ノビー
善子「…なんか気になる夢だったわね、指輪を買うとかなんとか」
善子「これにちょっと似てたし」 善子「でも本なんて無いわよね、どこ探しても」
善子「ま、別にいいか…多分そんなに関係ないでしょ」
善子「あんなの所詮は夢なんだから」
善子「…さてと、そろそろ行かなくちゃ」
善子「いってきます」ガチャ
バタン
──キラッ 善子「……」スタスタ
善子「ん?」
ルビィ「……」トテトテ
善子「ねえ」ポン
ルビィ「ひゃぁっ!? …………あれ? 善子ちゃん?」 善子「そんなに驚くことないでしょ…いや、私が悪いんだけど」
ルビィ「あはは……」
善子「おはよう、早いのね」
ルビィ「おはよう、こっちだとルビィ一人だけだから…ちゃんとしなくちゃって」
善子「ふーん、色々大変なのねルビィも」 ルビィ「善子ちゃんはいつもこれくらいの時間に学校に行ってるの?」
善子「そうね、大体は」
ルビィ「ねえねえ、善子ちゃんは学校で何をやってるの?」
善子「ん、勉強」
ルビィ「それだけ?」
善子「それ以外に何かあるの? 部活とか入ってるならまだしも」
善子「私そういうの入ってないから特にやることもないし」 ルビィ「…………」
善子「…ルビィ?」
ルビィ「あっ…ううん、なんでもないの」
ルビィ「善子ちゃんは真面目なんだね」
善子「他の人にもよく言われるけど……普通でしょ、こんなの」
ルビィ「ルビィはそんなことないと思うよ? 凄いなぁって思う」
善子「……そうかしらね」
ルビィ「うん」 善子「あっ、じゃあさルビィは?」
ルビィ「え?」
善子「貴女のほうは何かやることとかないわけ?」
ルビィ「うーん……えっとね、学校っていうわけじゃないんだけど」
ルビィ「行きたいところなら色々あるかな」
善子「そう、初めてだものね」
ルビィ「ううん、東京には何回か旅行で行ったことがあるの」
善子「あれ、そうなの?」 ルビィ「うん、でもあんまりゆっくりは出来なかったから」
善子「へえ、ちなみに行きたいところっていうのは?」
ルビィ「神社、神田明神っていうところ」
善子「神社…? 変わってるわね、神社なんて特に何もなくない?」
ルビィ「ルビィにとっては特別な場所なの」
善子「特別、ねえ…」 ルビィ「でも、そっか……やっぱり何もないんだね」
善子「なに、昔はあったの?」
ルビィ「今でもあるよ、ここにはないだけ」
善子「はあ? よく分からないんだけど」
ルビィ「そうだね…ごめんね、変なこと言っちゃって」
善子「……?」 ルビィ「…あっ、学校が見えてきたよ」
善子「意外と早かったわね」
ルビィ「うん……あっそうだ善子ちゃん、今日お昼ごはん一緒に食べようよ」
善子「構わないけど本当にグイグイ来るわね…言っておくけど私たち昨日会ったばかりなのよ?」
ルビィ「じゃあ、やめる?」
善子「やめない! ……ってあれ?」 ルビィ「やった、それなら約束ね善子ちゃん」ニコ
善子「……」
ルビィ「善子ちゃん?」
善子「え…? ……ああうん、分かったわよ仕方ないわね」 善子(……なにかしら、さっきの変な感じ…)
善子(うーん…ま、いいか)
ルビィ「ねえねえ善子ちゃん、ルビィ中庭で食べてみたい」
善子「あんたって意外と注文多いのね……」
善子「全くしょうがないわね……それなら授業の終わりにすぐ──」
……
… ──
─
『えへへっ…善子ちゃんとこうして一緒に儀式をしたの久しぶりだね』
『かもね、最近は忙しかったし…中々やる機会がなかったもの』
『そうだね、でも今も結構忙しいと思うんだけど……』
『ねえ善子ちゃん、どうして急にルビィを誘ってくれたの?』 『フッ、よくぞ聞いてくれたわね我がリトルデーモン』
『そう、実はルビィに見せたいものがあったのよ』
『見せたいもの?』
『ええ、今日はそのために呼んだの……見て』
『わぁ…綺麗な指輪だねぇ……見せたいものってこれ?』 『フフッ…ただの指輪じゃないわよルビィ、それね…本物なの』
『本物?』
『真の魔力が秘められている、曰く付きの魔術道具らしいわ』
『ええっ!? すごいね善子ちゃん! ううん、ヨハネ様!!』
『そうでしょう! まあだからこそ大事に保管しているんだけど、今回は特別』
『ルビィにだけは見せてあげようと思ってね』 『え?』
『だって私の……その……立派なリトルデーモンだもの!』
『えへへっ…そっかぁ、ありがとう善子ちゃん』
『フッ、礼には及ばないわ』
『…………また言えなかった』
『ん?』
『…なんでもないわ、それよりルビィ、続きをやるわよ!』
『うん、善子ちゃんっ!』
──
─ 善子「…………ん」パチ
善子「……なに、いまの…っていうか……なんで」
善子「…ぁ、そうか…ご飯食べたあと、そのまま寝ちゃったのね私たち…」チラ
ルビィ「……」スヤスヤ
善子「………気持ちよさそうにしてまあ…」クスッ 善子「……もしかして私、この子といるのそんなに嫌じゃないのかしら」
善子「あんなに仲良くしてる夢を見るくらいだし」
善子「……ただ」
善子「なーんか初めてって感じがしないのよね、さっき見た夢の内容…みたいなもの」
善子「気のせいかもしれないけど」 ルビィ「…………ぅゅ…」
善子「あ、起きたわね」
ルビィ「よしこちゃん?」ボーッ
善子「そうよ、おはようルビィ」
ルビィ「ん…」
善子「ほら、シャキッとしなさい、そろそろ昼休み終わるわよ?」ユサユサ
ルビィ「はーい……」ゴシゴシ
善子「全く、手間がかかるんだから…」クス ─それから放課後
ワイワイガヤガヤ
生徒A「やっと終わったよー!」
ルビィ「Aちゃんお疲れさま」
生徒B「ルビィちゃんもね! 来たばかりで大変なのにすごいね!」
ルビィ「ううん、そんなこと」 生徒A「ねえねえルビィちゃん、一緒に帰ろうよ!」
ルビィ「あっ、ごめんなさい今日は…」
生徒B「あーそっか、津島さんと一緒に帰るんだよね?」
ルビィ「うん」
生徒C「それじゃあここでお別れね」 生徒A「うー、残念…」
ルビィ「ごめんなさい…」
生徒A「ううん、いいよ! ルビィちゃん、次は月曜日ね!」
ルビィ「うん! またね!」フリフリ 善子「……ふーん」
ルビィ「お待たせ善子ちゃん」
善子「ううん、別に」
善子「ねえ、割とすぐにクラスの子とも馴染めるのねルビィって」
ルビィ「うーん、ルビィの知ってる人たちに似てるから…かな?」 善子「そうなの?」
ルビィ「多分」
善子「多分って……」
ルビィ「本当のところはルビィには分からないから」
ルビィ「それを知ってるのは善子ちゃんだけだもん」
善子「あんた時々よく分からないこと言うわよね…」 善子「まあいいわ、ほら、さっさと行くわよ神社」
善子「場所は知ってるんでしょ?」
ルビィ「うん、でも本当にいいの?」
善子「ルビィが神社に興味を持ってるっていうのが少し気になっただけよ、それだけ」
ルビィ「そっか…ありがとう」
善子「いいから、そういうのは」
……
… ─神田明神
ルビィ「ふぅー……やっと着いたね」
シーン……
ルビィ「……あれ? 善子ちゃん?」
善子「ま、待ってよ……」ハァハァ
善子「ルビィ……早い…」
ルビィ「え?」 善子「だって……はぁ…この階段……段が大きいし…はあ……長いし……」
善子「かなり、きっついんだけど……」
ルビィ「ご、ごめんね善子ちゃん」
善子「いいけど…ルビィ…ぜえ…あんた、よく涼しい顔出来るわね…」
ルビィ「それは、毎朝走ってるからかなぁ?」
善子「毎朝……ねえ…」フゥー 善子「─はぁ…ようやく回復してきたわ」
ルビィ「よかった」
善子「しかしまあ……見事に何もないわね」キョロキョロ
ルビィ「……そうだね」
善子「あんまり言いたくないけど賑わっている感じもしないし…ねえ、ここが本当にルビィの─」
ルビィ「……」スッ ルビィ「…………」スタスタ
パンパンッ
ルビィ「…………」ペコリ
善子「……ルビィ?」
ルビィ「…ん、お参りしてきた」
善子「お参りって、なにか願いごとでもあったの?」 ルビィ「……」スタスタ
善子「ちょ、ちょっと」
ルビィ「…善子ちゃん」クルッ
ルビィ「本当はここにはたくさんの絵馬があったの」
善子「絵馬?」
ルビィ「みんなが自分たちの夢を叶えるために、ここに来て、どうかお願いしますって、お祈りしていた」
ルビィ「そしてそれはルビィたちも同じで…」
ルビィ「ここは……そんな願いが集まる場所だったの」
善子「……」 ルビィ「だからね、ルビィの今のお願いはたった一つだけ」
善子「…………なに?」
ルビィ「また善子ちゃんと一緒に、みんなに会えますようにって…それだけ」
善子「……みんな…?」
ルビィ「うん、やっぱり一人だけだと……ちょっとだけ不安だから」 善子「……」
善子(さっきから言ってる意味が全然わからない……でも、嘘を言っているようにもみえなくて)
ルビィ「……ごめんね、また変なこと言っちゃった」ニコ
善子(それを受け入れようとしている自分がいる……何なの…この変な感じ)
ルビィ「今日はもう帰ろっか」
善子「……そうね」
善子(さっきの話を聞いてから、ここにいるのが……苦しい) 今回はここまでです。次は投下遅くなるかもしれません なかなか更新出来ずに申し訳ありません…明日の昼頃には投下する予定です ─
ルビィ「今日はありがとう、一緒に行ってくれて」
善子「いいのよそんなの」
ルビィ「クスッ…そっか、じゃあまたね善子ちゃん」クルッ
善子「……ええ」
ルビィ「……」スタスタ
善子「……」 善子「……待って!」
ルビィ「え?」
善子「ルビィ、貴女さっき言ってたわよね…自分たちもあの神社で夢を叶えるためにお祈りしていたって」
ルビィ「うん」
善子「……」
善子「貴女、何かやっていたの?」 ルビィ「……スクールアイドル」
善子「スクール……アイドル…?」
ルビィ「そうだよ、ルビィの大好きで大切なもの」
ルビィ「……帰るね」タッ
善子「待って、まだ聞きたいことが……」 善子「……行っちゃった」
善子「スクール、アイドル……」
善子「何それ……そんなの、あったかしら」
善子「…………でも」
善子(やっぱり疑いきれなくて…)
善子「……私が知らないだけで、本当はあるのかしらね……」
善子「明日から調べてみましょう、その…スクールアイドルのこと」 ルビィ「…………」
『─そういえばさ』
『ん?』
『ねえルビィ、そろそろ4月になるわよね』
『うん、そうだね』 『…………あの、さ』
『本当は言おうかどうか迷ってたんだけど……聞いてくれる…?』
『善子ちゃん…?』
『ルビィ、私ね……本当は、まだ──』
後悔してるかもしれないの。
ルビィ「…………善子ちゃん」 ─第二話 浦の星女学院
図書委員「うーん……」トントン
善子「どう? 見つかった?」
図書委員「ううん、なーんにも見つからなかったよ」
善子「そう…ここって女子高だし、アイドル関係のものもあるんじゃないかって思ってたんだけど」
図書委員「一応あるにはあるよ、でもそんな名前が入ってるアイドル雑誌とかは置いてないかな」 図書委員「名前以外に情報とかはないの? それならもう少し絞り込めそうだけど」
善子「ごめん、肝心の子から名前以外何も聞きだせていないのよ」
図書委員「黒澤ルビィさん、だったよね? 最近転校してきた」
善子「知ってるのね」
図書委員「うん、すっごく可愛い転校生が来たってちょっと話題になってたから」
図書委員「あとその子が善子ちゃんに夢中だっていうのも知ってる」 善子「いやそういうのじゃないから」
図書委員「照れなくてもいいのに」ニヤニヤ
善子「照れてないっての!!」
図書委員「ふふっ…まあ冗談はこれくらいにして、まずはルビィちゃんに詳しい話を聞くのが先かな」
善子「そうね、この前は聞けなかったけど」
図書委員「そんなに気になるんだ?」 善子「…多少よ、多少」
図書委員「そっか」クスッ
善子「なによその顔は!」
図書委員「ううんなんでも」
善子「はぁ…まあいいわ、今日はもう帰るわね、ありがとう手伝ってくれて」
図書委員「どういたしまして」 善子「収穫があったらまた来るわ」ガチャ
図書委員「うん、またね」
バタン
善子「……本にも載ってなかったかあ」
善子「パソコンで一通り検索しても見つからなかったし…」
善子「やっぱりルビィに直接聞くしかないわね」
善子「……でも、どうしてこんなに気になるのかしら…?」
善子「ま、考えていても仕方ないか」 ──
─
『後悔って……?』
『…最近、よく考えちゃうのよ…どうしてか』
『あのときもっと頑張っていれば、もしかしたら今もあの学校に通えていたかもしれない…ってね』
『! ……善子ちゃんそれは…』
『分かってるわよ、もう過ぎたことだもの…今更言ったところで変えられもしないし』
『終わってしまったことを、いつまでも引きずるわけにもいかない……わかってる、わかってるけど……』 『…………』
『…やっぱりなんでもない……ごめんね、急にこんなこと言って』
『ううん、大丈夫だから……善子ちゃんは?』
『え?』
『大丈夫かなって』
『……フフッ、私も平気よ…ありがとう、ルビィ」
『そっか、それならいいの』 『今日は色々心配かけさせて悪かったわね』
『平気だよ、だってルビィは善子ちゃんのリトルデーモンだもん』
『悩んでいる主を助けるのも僕の大事なお仕事ですっ!!』
『クス……ええ、そうかもね』
『ありがとうルビィ』
『えへへっ…』 『またね善子ちゃん!』
『…ん、また明日』
ガチャ バタン
『…………』
『……そうよ、終わった…全部』
『知ってるわよそんなの、この目で見届けたもの』
『…………わかってるけど…っ…』 『……それでも』
キラッ
『…………もし』
『もしも……それが、変えられるんだとしたら……?』
『あのときの、私たちの想いが、報われるのだとしたら…?』
『今の、私の……願いが』
本当に叶うのだとしたら……? 『……っ…』
『これさえ、あれば』
『変わるっていうの……?』
『今までのことも……そして』
『これからのことだって…』
『……ねえ』
そうなのよね?
──
─ …コチャン ヨシコチャン…
善子「…………」
ルビィ「ねえ、起きて」ユサユサ
善子「……ん……」ポー
ルビィ「あっ起きた、ごめんね遅くなっちゃって」
善子「…ルビィ……?」
善子「…………」ギュッ
ルビィ「善子ちゃん?」 善子「…おかしな夢を見たわ」
ルビィ「どんな?」
善子「あんまり内容は覚えてないんだけど……私の傍にルビィがいたの」
善子「ずっと私の傍で話を聞いてくれていた……気がした」
ルビィ「うん」 善子「それでね、たったそれだけのことなのに……」
善子「何故かとても、嬉しかったの」
善子「“そこ”にいたのが貴女でよかったって…そう思ったわ」
ルビィ「…そっか」ニコッ
善子「ええ……」 善子「…………って」ハッ
善子「…いや、いやいや…ちょっと待って! やっぱり今のなし、なしで!」
善子(なに平然と恥ずかしいこと言ってるのよ私は!!)
ルビィ「え?」キョトン
善子「あの…ほら、アレよ! その…今のは寝ぼけてたからってだけでつまり」
ルビィ「分かってるよ、そういうつもりで言ったわけじゃないんだよね?」 善子「そう! そうなのよ! ……ってあれ?」
善子「ルビィ、どうして分かったの?」
ルビィ「ん、なんとなく」
善子「いや、なんとなくで察せられるものなのかしら? こういうのって…」
ルビィ「まあまあ…それより善子ちゃん、ルビィに何か用があったんじゃないの?」 善子「え? ……ああ、そうだったわ」
善子「あのねルビィ、この前貴女が言っていたスクールアイドルのことについて教えてほしいんだけど」
ルビィ「……」
ルビィ「……気になるの?」
善子「まあそれなりに」
ルビィ「そうなんだ……じゃあ、理由は?」
善子「……?」
ルビィ「善子ちゃんがスクールアイドルを気にする理由」
善子「えっと…それは……」
あれ? なんでだっけ? 善子「それは……」
スクールアイドルが、私の知らないことだから? ううん違う
なら…ルビィのことについてもっと知りたいから…?
ルビィ「…………」
いや、それも違う。
そうじゃない、きっと私は…… 善子「貴女の話を聞いて、知らなくちゃいけないような……そんな気がしたから」
スクールアイドルそのものに、何かを……求めているんだ
そして、多分……ルビィにも
善子「私にとっても、何か重要な…大事なものなんじゃないかって」
ルビィ「……」
善子「そう思ったの」 ルビィ「本当に?」
善子「ええ、本当よ」
ルビィ「…わかった」
ルビィ「それじゃあ善子ちゃん、今週のお休みの日は予定…空けておいてね」
善子「予定? 特にないけど、どうして?」
ルビィ「連れていきたいところがあるの、ルビィが前にいた学校なんだけど」 善子「ルビィの……」
ルビィ「そう──浦の星女学院って学校」
善子「…………え?」
善子(今……なんて…)
ルビィ「そこで分かるんじゃないかな、スクールアイドルが善子ちゃんにとってどういう存在なのかも」
ルビィ「今、善子ちゃんがおかしいと思っている違和感の正体も…全部」 善子「! ……なんでも知っているようなことを言うのね」
ルビィ「善子ちゃんのこと、ずっと見てきたから」
ルビィ「だってルビィ、善子ちゃんのリトルデーモンだもん」
善子「リトル……なに?」
ルビィ「ううん、なんでもない……それでどうするの善子ちゃん? 行く?」
善子「…………」 善子「…………行くわ…でも」
善子「ごめん…もう少しだけ、時間が欲しい」
善子(さっきルビィが言った、私が求めている違和感の答え…それは、確かに知りたい)
善子(…でもそれを知ってしまったら、もう二度と引き返せないような……そんな不安と恐怖が、あって…)ギュッ
善子(どうして……こんなに…) ルビィ「…怖いの?」
善子「……本当にごめんなさい、聞いたのは私のほうなのに…」
ルビィ「大丈夫だよ、ルビィは気にしてないから」
善子「でも…」
ルビィ「うーん、それなら一つだけお願いしていい?」 善子「……お願い?」
ルビィ「うん、学校に行く前に……」
ルビィ「ルビィと一緒にデートしようよ、善子ちゃん」ニコッ
ルビィ「あっ、場所はどこでもいいからね」
善子「…………はい?」ポカン
……
… ─休日、善子の部屋
善子(……って感じで)カチカチ
ルビィ「あーまた負けちゃったぁ…」
善子(今ルビィが私の家にいるわけだけども)
善子「ふぅ…少し休憩しましょうか」
ルビィ「そうだね」 善子「やっぱりゲームには糖分補給が大事よね」パリポリ
ルビィ「善子ちゃん、チョコレート好きだもんね」パクパク
善子「誰だってチョコレートは好きでしょ」
ルビィ「あははっ、そうかも」
善子「でもルビィ、本当によかったの? 私の家なんかで」
ルビィ「んー?」
善子「いや、もっと行きたいところとか色々あったんじゃないかなって」 ルビィ「いいの、これで」
善子「そう?」
ルビィ「うん、ルビィは善子ちゃんと一緒ならどこでもいいし」
ルビィ「それにいつも通りの善子ちゃんのほうが、ルビィも安心するから」
善子「……あんたよくそんなこと平気で言えるわね…」 ルビィ「だって本当のことだもん」
善子「本音だとしてもよ…っていうか今の本音だったのね、なんか尚更恥ずかしくなってきたわ…」
善子(多分そこまで深い意味はないんでしょうけど)
ルビィ「?」
善子「素直すぎるのも考えものねって話」
ルビィ「うーん、よく分からないけどいいや」 善子「いいのね…」
ルビィ「それより善子ちゃんに聞きたいことがあるの」
善子「なによ?」
ルビィ「あそこの机の上にある指輪のこと」
善子「ああ、アレね」
ルビィ「……あれっていつから持ってるの?」 善子「なに、気になるの?」
ルビィ「うん」
善子「そうね…あまり詳しくは覚えてないけど」
善子「確か二年生の始業式の頃にはあったわよ」
ルビィ「……やっぱり」ボソッ
善子「? どうかしたの?」
ルビィ「ん? 綺麗だなぁって思っただけだよ」 善子「綺麗、ねえ」
ルビィ「善子ちゃんは違うの?」
善子「そうね、あんまり考えてはいなかったかも」
ルビィ「ふーん、ねぇねぇどこで買ったの?」
善子「へえ、ルビィって案外アクセサリーにも興味あったりするのね」
善子(あっ、でもこの子アイドルや衣装が好きって言ってたから、そこまで意外でもないか)
善子「えーっと、買ったところは確か……」
善子「……あれ? どこで買ったんだっけ?」 ルビィ「覚えてないの?」
善子「いや、買った……のまでは思い出せるんだけど」
善子「場所が東京の、どの付近で買ったのかが全然記憶になくて…」
ルビィ「…東京以外の場所とかは?」
善子「まさか、外出することはあっても基本的に都外には行かないわよ私」
ルビィ「……不思議だね」
善子「まあそのうち思い出すでしょ、だから安心しなさい」
善子「ルビィの分もちゃんと見つけてきてあげるから」
ルビィ「え?」 善子「? これが欲しくて気になってたから、どこで売ってるか聞いてきたんじゃないの?」
ルビィ「あぁ……ううん、そうじゃないの」
善子「ならどうして」
ルビィ「ルビィも善子ちゃんの指輪と同じようなもの持ってるから、少し気になっただけなんだ」
ルビィ「ごめんね、勘違いさせちゃって」
善子「いやそれはいいけど、ルビィも持ってるの? これ」
ルビィ「うん、借り物だけどね」 善子「……ふーん、指輪を貸し借りするってなんか親密な関係に感じるけど」
善子「それって誰からのものなの?」
ルビィ「ルビィにとって大切な人、大好きな人」
善子「…………そう、そんな人がいるのね」
善子(ルビィの大切な人…か、なんかいいなあ…そんなにこの子に想われているなんて)
善子(……いやいや、別に嫉妬とかそういうのじゃないけど) ルビィ「うん、でも急にルビィたちの前からいなくなっちゃって」
ルビィ「それからずっと…ずっと探していたの、その人のこと」
ルビィ「きっと一人で悩んで、苦しんでいたはずだから…」
ルビィ「…だから、ルビィに出来ることなら力になってあげたくて……」
善子「それが、ルビィが東京にきた理由…?」
ルビィ「そうだよ、お願いしたらね、何とかここに来ることが出来たんだぁ」ニコッ
善子「そっか…そんな事情が、あったのね」 善子「…ねえルビィ」
ルビィ「なに? 善子ちゃん」
善子「あの…ルビィさえ良ければなんだけど、今日うちに泊まっていかない?」
ルビィ「善子ちゃんのお家に?」
善子「私ね、もっと知りたいのよルビィのこと」
善子「たまに貴女は私のこと、知ってるような口ぶりで話すけど……でも私はルビィのこと、まだ何も知らない」
ルビィ「……」 善子「さっきの話だって今日初めて聞いたし……えーっと、だからね…」
善子「その…他にも色々教えてほしいのよ、貴女のこと」
ルビィ「善子ちゃん…うん、わかった」
ルビィ「じゃあ今日は一緒にお泊まりしよう」ニコッ
善子「…ありがとう」
ルビィ「ううん、ルビィのほうこそ…だってさっきの凄く嬉しかったもん!」 善子「そ、そう?」
ルビィ「本当だよ!」ギュッ
善子「ちょ、ちょっといきなりっ……」
ルビィ「んーっ」
善子「あぁもう……何気にスキンシップ多いんだから……でもまあ」
善子「そんなに喜んでくれるなら…私も嬉しいわ」ナデナデ
ルビィ「ホントに?」
善子「ほんとよ、嘘言ってどうするの」
ルビィ「クス…そうだね」 善子「ただ一つだけ覚悟しなさい、私の夜は長いわよ?」
ルビィ「善子ちゃんは夜更かし得意だもんね」
善子「分かっているなら話は早いわ、なら早速聞かせてもらおうかしら」
ルビィ「えへへっ…なんかドキドキしてきた」
善子「…本当、楽しそうねルビィ」クスッ
善子(私も同じだけど)
ルビィ「こういうのなんか久しぶりだから……それじゃあ話すね」
ルビィ「あのね、これはお正月にあったことなんだけど──」
……
… ──
─
『終わったねー! 新しい学校の記念すべき一日目が!』
『記念って言っても新学期の行事とかで忙しくて、あんまりそんな感じがしなかったけど…』
『まあまあ、それも含めてってことで! ね? 千歌ちゃん』
『そうそう、そういうことだよ!』
『本当かしら…?』 『だけど善子ちゃんがいないのがね……』
『そうだね、みんなで一緒に行きたかったのになあ…』
『二人も今日は見ていないのよね?』
『うん、時間になっても来なくて欠席扱いになってたずら』
『うーん…どうしたんだろうね、善子ちゃん』 『善子ちゃんのことだから運悪く風邪を引いていたりとか?』
『それありえるかも、でも、もしそうならお見舞いに行かなくちゃね』
『そうね、私ちょっと善子ちゃんのお母さんに行っていいか聞いてみるわ』
『うん、お願い梨子ちゃん』
『……あっもしもし桜内です、はい、善子ちゃんのことについてお聞きしたいことが…』 『……善子ちゃん、大丈夫かな…』
『ルビィちゃん、きっと善子ちゃんのことだからすぐに治って学校に来るよ』
『花丸ちゃん……でも、気になるの』
『なにが?』
『…だって、善子ちゃんから学校に何の連絡もなかったから……電話も出来ないくらい辛い風邪なのかなって…』
『そういえば……確かに無断欠席だったね、善子ちゃんって普段はそういうことしないのに』
『……え? 本当、ですか…? はい……はい…分かりました……失礼します』 『あっ、梨子ちゃん電話終わったの? どうだった?』
『……』
『梨子ちゃん?』
『……それが…いない、って…』
『…いない?』 『善子ちゃんのお母さん、今日の朝から善子ちゃんを見ていないらしくて…』
『だから、てっきり朝早くから学校に行ったものだと思ってたって……』
『えっ……?』
『……それ、どういうこと…? だって善子ちゃん…学校にも来てないんだよね?』
『うん、マルたちは三人とも一緒の教室だからすぐに分かったよ…』
『……けど、それなら……』
『善子ちゃん……今、どこにいるの…?』
──
─ ルビィ「…………」スゥースゥー
善子「ルビィ、ルビィ」ポンポン
ルビィ「……」スヤスヤ
善子「ルビィ起きなさーい、朝よー」ユサユサ
ルビィ「……むにゃ…」
善子「全く…夜遅くまで起きるのが苦手ならそう言えばいいのに」
善子「わざわざ無理して私が起きている時間に合わせて」ムニー
ルビィ「…ふぇ……」 善子「それで、結局私が起こすことになるのよね」
善子「ホントにもう…相変わらず手のかかるリトルデーモンだわ」フフッ
善子「……」
善子「……ん? リトルデーモン?」
善子「というか私…今、ルビィのこと知っているかのような…」
ルビィ「…うゅ…」パチ ルビィ「あ…よしこちゃんだ」ポー
善子「…起きたのね、おはよう」
ルビィ「うん、おあよう」
善子「ほら、目が覚めたなら顔洗ってきなさい、洗面所はあっちにあるから」
ルビィ「はーい…」トテトテ
善子「……何かしら、この、妙に慣れている感じ」
善子「まるで何回もあの子と一緒に寝泊まりしたことがあるような、そんな…」
善子「……気のせいよね?」 ルビィ「うーん、まだ眠たぃ…」
善子「シャキッとしなさい」
ルビィ「ぁーい」
善子「いや全然出来てないし…」
ルビィ「…ふわぁ…」
善子「……」 善子(本当に気のせい、なのかしら)
善子「……ねえ、ルビィ」
ルビィ「んー?」
善子「多分、変なこと聞くかもしれないけど」
ルビィ「変なの?」
善子「あのさ、私たちって」
善子「前にもこうして一緒に遊んだりとか、泊まっていたりしていたの?」
ルビィ「…してたよ、たくさん」 善子「…そっか」
ルビィ「うん」
善子「じゃあ、もう一つ聞いていい?」
ルビィ「いいよ」
善子「ルビィが知っていて私が知らないこと、あとどれくらいあるの?」
ルビィ「…それもたくさん」
善子「…………そう」 ルビィ「でも、どうしたの急に?」
善子「ううん、少し確認したくて」
ルビィ「確認?」
善子「ええ、おかげで決まったわ」
善子「ルビィ、来週……私を内浦まで連れていって」
ルビィ「! いいんだね」
善子「問題ないわ、大丈夫…」
善子「私、知りたいの……いや、きっと知らなくちゃいけないのよ……真実を」
善子「それに、貴女のことも」 ルビィ「……辛いかもしれないよ」
善子「それでも、お願い」
ルビィ「…ん、わかった……じゃあ来週待ってるね」
善子「ええ」
ルビィ「……真実」ボソッ
ルビィ(そうだよね…それがたとえ、今の善子ちゃんを傷つけることになったとしても)
ルビィ(本当のことを知らなきゃ…きっと何も変わらない、伝えなくちゃ…ダメなんだ)
ルビィ(ルビィだって、そのためにここに来たんだから)
……
… ─そして一週間後
ルビィ「……」
タッタッ
善子「ごめんなさい、待たせたわね」
ルビィ「ううん、大丈夫だよ」
ルビィ「…いこっか」
善子「…そうね」 善子「ここが内浦…」
ルビィ「そうだよ、東京と比べると何もないかもしれないけど」
善子「そんなことないわ、とても景色が綺麗で…素敵な場所じゃない」
ルビィ「えへへっ、ありがとう」
善子「…本当のことを言っただけよ」 善子「ただ…」
ルビィ「ただ?」
善子「…なんでもない、学校へはあとどれくらいかかるの?」
ルビィ「まだ結構距離があるかも」
善子「そう、分かったわ」 善子「…」スタスタ
善子(ただ…なんだろう、この…懐かしさ)
善子(いや、懐かしいっていうよりも…安心するというか)
善子(まるで……まるで…)
私の居場所がここにあったかのような─ スタスタ
善子「……結構長いわね」
ルビィ「あともう少しで着くよ」
善子「そう」
ルビィ「…学校のこと、気になる?」
善子「…とても」 ルビィ「……」ピタッ
ルビィ「着いたよ」
善子「……ここが…」
善子(最初に聞いたときから、おかしいとは思っていた)
善子(だって、今私たちが通っている学校と…同じ名前だったから)
善子(そんなこと、あるわけないって) 善子(でも、確かに見える)
善子(閉められた校門と、その向こう側の校舎と、そこに刻まれた学校の名前が)
善子「ここが…浦の星女学院……」
ルビィ「うん、ルビィたちの…大切な思い出の場所」 善子「……」
ルビィ「ビックリした?」
善子「…ええ、正直いって今も訳がわからないわ」
ルビィ「だよね、ルビィも最初は驚いたもん」
ルビィ「東京のあの学校がいつの間にか浦の星に変わっていたんだから」
善子「……え?」
ルビィ「…でもね、なんとなく分かっちゃったんだ」
ルビィ「善子ちゃんが考えてたこと」
善子「ルビィ……?」 ルビィ「……」スッ
善子「それ、指輪…」
ルビィ「お願いしたんだよね、この指輪に……そして」
ルビィ「なかったことにしたんだ、全部」
ルビィ「そうでしょ? 善子ちゃん」
善子「何を……言っているの……?」 ──
─
ヨシコー アサヨー ヨシコー?
『……あった』
『いつかあの商人から貰った、指輪の説明書』
『これに指輪の力の使い方が記されているのよね』
『……読ませてもらうわよ』
『……前説』 『─前説、この指輪が行使できる力は以下の通りである』
『使用者の記憶を辿り、その情報を基に使用者の理想とする世界を創りあげること、また指輪によるその世界への情報操作、介入……その全て』
『これにより、世界における全ての権限は使用者本人に委ねられ、その意思表示一つで大幅な歴史改変を行うことも容易となっている』
『さて、このことについてどう考えるかは個人の自由だが、故に私たちはその自由を尊重し促すため、これを創りあげた』 『何かに迷い、戸惑い、絶望し…そんな者たちを救済する一つの術として』
『この空想の権利を贈呈することにした、ぜひ人生に役立ててほしい』
『…………』
『……成程ね、願いを叶えるってそういうこと』
『確かにこれは痛烈な皮肉だわ、正直馬鹿馬鹿しいにも程がある』 『だってこんなことしたってどうにもならないし』
『何の意味もない』
『そんなの…分かってるのにね』
『……でも』
『でも……こんなに未練があるなんてことは、今の、今まで、分からなかったのよ…』
『本当の馬鹿は……私だった』 身近にあるというだけで誘惑に負けてしまうということもありますよ
『ああ、本当にそうね』
悪魔は…人の心の弱さにつけ込みます
『強がりなんて、結局無駄な足掻きでしかなかったもの』 ギュゥッ
『……フゥーッ…』
『……聞いて! 私っ…私は!!』
『私はまだあの学校に通っていたい! だからっ…廃校を、なかったことにしてほしい!!』
『それだけでいいの!! 私の願いは!! だから…っ!!』
『私をそこに連れていって!!』 ピカッ
『っ!? 眩しい…っ…! 何これ、急に光っ……』
『…………ぁ……』
フッ…
『善子ー、入るわよー? ……善子?』
『あら、おかしいわね……もう出かけたのかしら?』
ガチャ バタン
……
… ──ペラッ
─ただし、代償として
使用者は願いの対象となった事柄の記憶全てを失うことになる。
また、願いの内容に対して不都合な事実がある場合は
使用者が関わった人物、出来事も≪可能な限り≫ここでは存在しないものとして扱うこととみなす。
何故ならば
作り上げられた理想郷で生きていくにあたって、余計な真実はそれこそ不要なものだからである。 レスの反応だけおってるけどどんな感じ?
簡単なあらすじよろしく >>256
善子が通う学校にルビィが転校してくる。そこから善子は事あるごとに違和感を感じるようになる。
実は善子は前の世界で廃校が嫌になって理想の世界を創る指輪で廃校がなかった世界に行き、スクールアイドルのことを忘れた状態で過ごしていた。
おそらくこんな感じ 願いが叶ったのに願った事実も想いも忘れるパターンはやっぱキツイな… ─第三話 0から1へ
善子「……なかったことにした? 廃校を? ……私が?」
善子「……」
善子「何を言い出すかと思えば…ありえないでしょ、そんなの出来るわけない」
善子「確かに話を聞く限りでは…まあ、今までの辻褄も合うとは思うわよ」
善子「でもねルビィ、考えても見なさいよ、世界を創るなんて無理に決まってるでしょ」
善子「私は魔術とかそういうオカルトめいたものは信じていないわけじゃないけど」
善子「流石に限度ってものがあるんじゃない?」 ルビィ「…ごめんなさい」
ルビィ「でも証明する方法なら、あるよ」
ルビィ「それはね、善子ちゃんの記憶を取り戻すこと」
善子「……」
ルビィ「ねえ善子ちゃん、入ってみる? この校舎に」
善子「…どうやって入るのよ、ここは廃校になって閉まっているのよ? 鍵だってかかってるじゃないの」 ルビィ「大丈夫だよ、さっきも言ったけどここは善子ちゃんが創った理想の世界」
ルビィ「善子ちゃんが入りたいって思えばそれだけで…んしょっ」ギイイィ
ルビィ「門だって簡単に開くことが出来るから」
善子「嘘……」
ルビィ「あっ、これも一つの証明にはなったのかな?」
善子「……案内して」
ルビィ「うん、いこっか」 善子「それに、よしんばルビィの言ったことが事実だとして」
善子「じゃあなんで私はわざわざ東京の方にそんなもの作ったのよ」
善子「廃校が嫌だっていうなら、普通は元と同じ場所にするでしょ」
善子「通いたかったのはそこの学校だったんだから」
ルビィ「……」
善子「…とにかく、私が言いたいのは」
善子「ルビィの話だけじゃまだ信じられないってことよ」
善子「だって、そんなの……すぐに、受け入れたくないもの……」 ─
善子「……」スタスタ
善子(教室の場所も、数も、学校の大きさも……全部同じ)
善子(ただ、あそこと一つだけ違うことは……こっちには何もないってこと)
カッカッ…
善子(…足音だけしか聞こえない学校って、こんなに、虚しいのね……) ルビィ「そうだ善子ちゃん、スクールアイドルのことだけど」スタスタ
善子「…」
ルビィ「簡単に言えばスクールアイドルはね、ご当地アイドルみたいなものなの」
ルビィ「芸能事務所とかそういうプロの人たちが関わっていなくて、あくまで学生だけが決めて活動するものだから」
ルビィ「だからね、やりたいって思えば誰でもなれたんだ」
善子「何の経験がない人でも?」
ルビィ「うん…でもね、そのかわりに歌とか、衣装とか、ダンスの振り付けとか…全部自分たちだけで考えて、どうにかしなくちゃいけなくて」
ルビィ「…それがすっごく大変だったんだけど」
ルビィ「とても楽しかったの」
善子「!」 ルビィ「─ここが屋上だよ、ここでよく練習していたんだ」
善子(見覚え、ある…)
善子「練習って、スクールアイドルの?」
ルビィ「ううん、ライブの」
善子「ライブ?」
ルビィ「そう、ライブ…もちろん地元のイベントとかそういったところでもやるんだけど」
ルビィ「一番はラブライブに出るためかな」
善子「……ラブライブって?」 ルビィ「全国のスクールアイドルが集まって、その中から一番を決める大会」
ルビィ「この大会で優勝するために、みんな一生懸命頑張っているの」
ルビィ「ラブライブ優勝が、スクールアイドルみんなの夢だから」
善子「……もしかして、前に言ってた神社の絵馬って…ラブライブのこと?」
ルビィ「そうだよ、覚えていてくれたんだ」
善子「…あぁそっか、だから……」
善子(あそこには何もなかったのね)
善子(私が、スクールアイドルをなかったことにしたから……) ルビィ「あの神社、神田明神は伝説のスクールアイドルμ'sにとって特に縁のある場所だったの」
善子「…なるほど、験を担ぐにはこれ以上ない場所ってわけね」
ルビィ「うん」
善子「おかげで少しずつ分かってきたわ、でも」
善子「そのスクールアイドルと私に、一体何の関係があるのかしら」
ルビィ「……本当は善子ちゃんも気付いているんじゃないの?」
善子「……何のことよ」
ルビィ「記憶を失う前の善子ちゃんがスクールアイドルをやってたってこと」 善子「……へえ、知らなかったわ」
ルビィ「Aqoursってグループに入っていたの、ルビィたちと一緒に」
善子「…で?」
ルビィ「…それで廃校を無くそうとした」
善子「─!?」
ルビィ「廃校の件は途中から知ったんだけどね、最初は純粋にやりたいからやっていただけ」 ルビィ「でもそのことを知って、学校のことでルビィたちにも何か出来ることがないか探し始めたんだ」
善子「…それが、ラブライブ」
ルビィ「うん、でもやっぱりどうにもならなくて…結局廃校になっちゃったけど」
ルビィ「Aqoursがラブライブで優勝したことで浦の星の名前を残すことは、出来たと思う」
善子「……そう、なの」 ルビィ「だからね善子ちゃん、さっきの質問に答えると」
ルビィ「善子ちゃんが東京に浦の星を創ったのは、多分そういうことだってルビィは思うの」
善子「…どういう意味?」
ルビィ「あれも善子ちゃんの生み出した願望って意味だよ」
ルビィ「Aqoursは廃校を阻止することは出来なかった、でもμ'sはそれを成し遂げることが出来た」 ルビィ「つまりそのμ'sがラブライブで優勝して、廃校を回避した音ノ木坂学院こそが……」
ルビィ「善子ちゃんが求めていた、浦の星の理想の姿だったんだよね?」
ルビィ「だから善子ちゃんは東京にある音ノ木坂を、浦の星に作り替えた」
善子「……っ…」ズキ
どうして…
ルビィ「きっと、そうなんだよね…」
善子「…………知らないわよそんなの、筋は通ってると思うけど」
善子「記憶の無い私には…もう関係ない話でしょ……っ…」ギュッ ルビィ「…関係ないことないよ、だって」
善子「なに? 元の私にとって重要なことだから? …たとえそうだとしても」
善子「今の私にとってはどうでもいいことよ、そうよ…もういいじゃない」
善子「確かに知りたいって言ったのは私だし、ここまでしてくれてるルビィにも感謝してるわ」
善子「……だけど、別に…そんな記憶がなくたって、何の問題もない…だって、今のままでも充分幸せだもの」
ルビィ「……善子ちゃん」
ルビィ「なんでそんな嘘つくの…?」
善子「嘘なんかじゃないわよ」
どうしてこんなに痛いの 善子「じゃあ逆に聞くけど現状の一体どこに不満があるっていうの?」
善子「ルビィ、私はね…この生活が嫌いじゃないの、たまに退屈に感じるときもあるけどそんなに悪いものじゃないし」
善子「最近になって貴女が転校してきた、まだ会ってからそんなに日は経ってないけど」
善子「ルビィと一緒にいる時間はあっという間でとても楽しいの」
善子「だからっ…寧ろ今が私にとって、一番幸せなときなのよ……本当に、そうなんだから」
ルビィ「……」
善子「…なんでそんな目で見るのよ、ルビィだって同じ気持ちじゃないの」 善子「貴女…私と仲良くなりたいって言ってたじゃない、私と一緒ならどこでもいいって! 言ってたじゃない!!」
ルビィ「……うん、言ったよ」
善子「だったらここでもいいでしょ!? 創られた世界で何が悪いの! 私が問題ないって言ってるのよ!」
善子「ルビィももう一回浦の星に! この学校に通えて嬉しいんじゃないの!? 貴女そのために頑張ってきたんだから!」
善子「それならルビィにとっても悪い話じゃないはずよね!? ねえ…そうでしょ?」
ルビィ「……」
善子「ルビィ、これからは私と一緒にいましょうよ…! ここで…っ…ずっと……!」
善子「だって…それが一番……幸せ、なんだから…!」
なんでこんなに苦しいの 廃校を無くしたことがスクールアイドルを無くしたことに繋がってたのか… ルビィ「……」
ルビィ「……ごめんね善子ちゃん、ごめんなさい」
善子「…なによ、急に…なんで…謝ってるの」
ルビィ「ルビィ、気付けなかったから…善子ちゃんがまだ学校に未練を持ってたってこと」
ルビィ「もし気付いて相談にのっていたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに」
ルビィ「善子ちゃんがこんなに苦しむこともなかったのに……ごめんなさい」
善子「だから……どうでもいいって…言って」
ルビィ「じゃあ、どうして泣いているの?」
善子「……ぇ……」ポロポロ 善子「ゃだ…なんで……っ…違う、違うの…これは」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「ちがぅ……だって…ルビィが、話…聞いてくれないから……」
善子「一緒にいようって…いってるのに…」
ルビィ「…ルビィも一緒にいたいよ」
善子「なら…」
ルビィ「でも…それは出来ない、ここじゃ駄目なの」
善子「なんでよ…っ」 ルビィ「元の世界でみんなが待ってるから」
善子「み、んな…?」
ルビィ「千歌さん、曜さん、梨子さん、花丸ちゃん……みんな心配してるんだよ? 善子ちゃんのこと」
ルビィ「だから、一緒に帰ろうよ…」
善子「…嫌よ…っていうか誰よその人たち…私知らないし……」
善子「さっきから言ってるじゃない、私は、そんなのどうでもいいの…」
善子「ルビィ、貴女さえいれば…それだけで」
ルビィ「……もうやめようよ善子ちゃん、嘘つくの…やめよう?」 善子「私は本当のことしか言ってない!!」
ルビィ「ううん、違う……だって」
ルビィ「もう全部思い出してるんでしょ? 学校のことも、スクールアイドルのことも……そこから目を背けてるだけで」
ルビィ「…だから今、辛くて、苦しいんじゃないの?」
善子「─!」
ルビィ「知らないなんて、嘘だよ」
善子「う、嘘じゃないわよ! 思い出してなんかいないっ!! 私は…っ…何も知らないんだ!」
ルビィ「……」 ルビィ「……善子ちゃんをスクールアイドルに誘ってくれたのは千歌さんだよ」
善子「……いきなり何言ってるの」
ルビィ「曜さんは善子ちゃんと帰り道が一緒で、よく二人で帰っていたよね……ルビィね、ちょっとだけ羨ましかったの」
善子「…ルビィ、やめて」
ルビィ「梨子さんとは一緒に犬のお世話をしてからすごく仲良くなったよね、閉校祭のときも二人でいたくらいだもん」
ルビィ「…知ってるよね、閉校祭」
善子「もういいから」 ルビィ「花丸ちゃんは善子ちゃんの幼稚園の頃のお友達で、それから高校生になったときに再会して…」
ルビィ「善子ちゃんのこと、いつも気にかけてくれていて……」
ルビィ「善子ちゃんにとっても、ルビィにとっても…大切なお友達で」
ルビィ「ずっと三人一緒だったよね、この学校にお別れするときだって」
善子「やめてって言ってるでしょ!!」
ルビィ「嫌だ! やめないっ!!」
善子「…っ…! このっ……!」 ルビィ「善子ちゃん! 善子ちゃんはこのままで本当にいいの!? 全部知らないことにして! なかったことにして!」
ルビィ「それで善子ちゃんは幸せなの!? みんなでまた会おうねって約束したよね!? それもどうでもいいの!?」
ルビィ「果南さんや鞠莉さん、お姉ちゃんは善子ちゃんがいなくなったことすら知らない!!」
ルビィ「このままじゃっ…! …本当にあの卒業式が最後になっちゃうんだよ!」
ルビィ「ルビィはそんなの嫌だよ!」
ルビィ「廃校がなくなったって皆がいなくちゃ…「分かってるわよ!!」
善子「こんなものを創ったところで、何の意味もないってことくらい…自分が一番! 分かってるわよ!!」
善子「皆との約束だって! どうでもいいわけないじゃないっ!! だけど!」
善子「だけど……!」 善子「…………」ギュッ
善子「……帰るってことは、この世界を壊すってことなのよ…なかったことにするってことなの」
善子「私が自分の手で……ルビィ、これがどういうことか分かる?」
ルビィ「それは…」
善子「私が浦の星をもう一度廃校にするってことよ、しかも自分の意志でね」
ルビィ「!」
善子「たとえそれが作りものでも、関係ない…消えるの」 善子「馬鹿みたいよね、廃校が嫌だから…そうお願いして」
善子「代わりに、学校での思い出全部無くして、忘れて……そこまでしたのに結局…」
善子「どうにもならなくて、ただ、同じことを繰り返そうとしているだけ…」
善子「……フフッ…本当に馬鹿よね、自業自得もいいところだわ」
善子「私は、ピエロだった」
ルビィ「…あ……」 善子「…ねえ、どうしたらいいと思う?」
善子「私、もう分からないの……出来ないのよ」
善子「私、だって…帰りたい……みんなに会いたい……っ」
善子「会いたいわよ……でも…!」
善子「私は……っ…!」 一緒に閉めるずらっ!! ……お願いだから…
……分かったわよ
……ごめんね
いいわよ別に…
今まで、マルたちを守ってくれて…ありがとう
…ありがとね
─バイバイ。 善子「もう一度…あんな思いをするなんて……嫌なのよ…っ…!!」
善子「私っ……どっちも、選べなくて…」
善子「だから、今こんなに…痛くて…辛くて……苦しいんじゃないっ!!」ポロポロ
ルビィ「うん……そう、だよね」ダキッ
ルビィ「ごめんね…」ギュッ
善子「違うの、悪いのは私なの……私が…やったせいで…!」
善子「こんなこと…やらなきゃよかった……っ…!」
善子「だけど、もしかしたらって…思って……誰にも言わないで…一人で勝手に決めて……!」 善子「迷惑かけて! 今だって…!」
ルビィ「善子ちゃん、ルビィは迷惑だなんて思ってないよ」
ルビィ「だから、言いたいこと…言ってもいいんだよ」
ルビィ「泣いてもいいんだよ……だって」
ルビィ「ここにはルビィしかいないから、ね?」
善子「っ…!!」 善子「…本当はずっと引きずっていたの」
善子「平気な振りをしていただけなの、強がっていただけなの」
善子「本当はそんなこと、全然ないのに」
善子「仕方ないとか、優勝出来たからとか、そんな言葉で…」
善子「ずっと、ずっと! 自分の気持ちから私は逃げていたの!」
ルビィ「……うん」 善子「ルビィ! 私、もっとあの学校にいたかった!!」
善子「貴女や花丸と! 皆と! もっと一緒にあそこで過ごしていたかった!!」
ルビィ「…そう、だね」
善子「なのにっ……なのになんでよ! どうしてよ! こんなのってないわよ!!」
善子「こんなのって……!」
善子「嫌だ……終わりたくない……終わらせないで…」
ルビィ「…っ……」ポロポロ
善子「やだ…いやだ……うぅ…っ……ああああああああ!! わああああああああああん!!!」 1番浦女について想い入れが少ないだろうと思ってた善子ちゃんがこんなにも浦女のことを想ってたってのが余計に辛い…… あの時屋上で最後まで何も言わずに残っていたり扉を閉めようとしなかったり…寂しそうだったもんね 実は善子があの一年間で一番学校に対しての想いが強くなった説好きだけどこれは辛い ごめんなさいエイプリルフールなので嘘をつきました、更新します ……
…
善子「…………」スゥースゥー
ルビィ「寝ちゃった、そうだよね…疲れたよね」ナデナデ
ルビィ「今までずっと我慢してたんだから」
ルビィ「……善子ちゃん」 ──
─
『ルビィちゃん、本当に一人で大丈夫?』
『うん、大丈夫だよ』
『善子ちゃんはルビィが絶対に連れ帰ってみせるから』
『……でも』
『花丸ちゃん心配しないで……あっ、そうだ』
『あのね花丸ちゃん、お願いしたいことがあるの』
『お願い?』 『これ、預かってもらえるかな?』
『…手紙?』
『うん、善子ちゃんに言いたいこととか沢山あるんだけど、全部言えるかちょっと心配で』
『その手紙に書いておいたんだ』
『だからもし、帰ってきたときにルビィが忘れてることがあれば…その手紙を善子ちゃんに読ませてほしいの』
『そっか…うん、わかった』
『ありがとう花丸ちゃん、それじゃあ行ってくるね……みんなも』 『うん! 私たちちゃんと待ってるからね! ずっと!』
『頑張ってねルビィちゃん!』
『…気をつけてね、無理したら駄目よ』
『……いってらっしゃい』
『はい、ルビィ…いってきます!』
ピカッ 『……っ! ……いっちゃった』
『ええ…』
『…花丸ちゃん』
『……マルは大丈夫』
『…待ってるからね、ルビィちゃん…善子ちゃん』
──
─ ルビィ「……」ギュッ
ルビィ「……分かってる、約束したんだもん」
ルビィ「絶対に善子ちゃんと一緒にみんなのところへ帰るって」
ルビィ「でも……」
善子「……」スゥースゥー
ルビィ「ごめんね、花丸ちゃん、みんな」
ルビィ「あと少し…あと少しだけでいいから、もうちょっとだけ…待っててほしいの」
ルビィ「今はまだ……」 善子「……ん……」パチ
ルビィ「あっ、起きた?」
善子「…ルビィ? 私…」
ルビィ「うん、寝てたよ、ちょっと疲れてたみたいだったから」
善子「…そう、ごめんなさい」
ルビィ「ううん、それより…よく眠れた?」
善子「さっきよりは大分…スッキリしたかも」
ルビィ「よかった」ニコッ 善子「ねえ、今時間ってどのくらいなの?」
ルビィ「夕方あたりかなぁ」
善子「なら、今日のところはひとまず帰った方がよさそうね…遅くなるといけないし」
善子「これからの…学校のことは…また後で決めさせて」
ルビィ「…わかった」
善子「ありがとう、じゃあ行きましょうか」
ルビィ「うん」 ルビィ「……」スタスタ
善子「……あのさ、ルビィ」
ルビィ「なに?」クルッ
善子「今日も…泊まっていく?」
ルビィ「もちろん」ホホエミ
善子「! …………そう」クスッ
ルビィ「ほら早く行こう善子ちゃん」ギュッ
善子「はいはい、分かってるから引っ張らないの」 善子(…ねえルビィ、今日は色々あったわね)
善子(浦の星に来て学校のこととか、スクールアイドルのこととか、一気に思い出して…)
善子(私にとって楽しかった大切な記憶だったはずなのに、とても辛くて……)
善子(でも…そのとき私の傍には貴女がいた、貴女が私を支えてくれた)
善子(私の想いを受け止めてくれて、私と一緒に泣いてくれた)
善子(その優しさに、私は救われたの……ありがとう) 善子(……それと)
善子(…あのねルビィ、あの時は言えなかったんだけど)
善子(今一つだけ、私が思い出して嬉しかったものがあったことに気付いたの)
善子(ルビィ……私、貴女のことが─)
好きだったのね。 ルビィは善子の作り出した世界にダイブしてきてる感じか ─善子の部屋
ルビィ「ごめんね、ご飯までご馳走になっちゃって」
善子「気にしなくていいわよ」
ルビィ「えへへっ、でもなんか久しぶりだねこの感じ」
善子「寝泊まり自体ならついこの間もやってたけどね」
善子「ただ、そのときより今のほうが安心するわ」
善子「記憶が戻ったからかしらね?」
ルビィ「そうかも、ルビィも今の善子ちゃんのほうが好きだよ、いつものって感じがして」
善子「はいはい」 善子「ところでずっと気になってたんだけど」
ルビィ「ん?」
善子「ルビィがこっちに来れたのってもしかして」
ルビィ「うん、指輪を使ったからだよ」
善子「やっぱり…」
善子(そう言えば書いてあったわね、この指輪が使える力は確か……)
善子(記憶を基に使用者の理想とする世界を創りあげること、または指輪によるその世界への情報操作、介入……その全て、だったっけ)
善子(ここは私の世界だから、ルビィが使ってるのは多分後者のほうだけね) 善子「でももう一つあったなんて聞いてないわよ」
ルビィ「善子ちゃんが持ってた本の中にあったの、最後のページにね」
善子「本?」
その指輪の説明書みたいなものだと思ってください、それとその本の中にもう一つ……
…まあ、使わないのが一番いいんですけども…いざという時に
善子「! ……あれってそういうことだったのね」
ルビィ「だから少しの間だけ借りて、こっちに来たの」
善子「成程ね、よく分かったわ」 善子「……だけど、どうしてルビィは記憶を失ってないの?」
ルビィ「うーん、なんか大丈夫みたい…なんでだろうね?」ヘラッ
善子「なんかって……でも、特に何も起きないならそれに越したことはないわね」
ルビィ「うん、だから今はルビィのことよりも善子ちゃんのことだよ」
ルビィ「…明日、学校行くんだよね?」
善子「…ええ、そこで色々確かめたいことがあるの」
善子「私が前に進むためにも」
ルビィ「そっか」 善子「まあ正直、どっちも嫌だっていう気持ちは全然捨てきれてないんだけどね」
ルビィ「いいと思うよ、それでも」
善子「…そうね」
善子「さ、そろそろ寝ましょこれ以上起きてたら遅刻しそうだわ」
ルビィ「うん、おやすみなさい善子ちゃん」
善子「おやすみ…」
─フッ…… ルビィ「……」スッ
ルビィ(……記憶、ちゃんと覚えてる)
ルビィ(もしかしてって思ったけど、やっぱりこの指輪…そうなんだ)チラ
善子「……ぅうん…」ギュッ
ルビィ(………安心して善子ちゃん…ルビィは本当に大丈夫だから)
ルビィ(…………“まだ”ね) ─翌日 学校図書室
図書委員「あれ、今日は二人なんだ?」
善子「ええまあ」
ルビィ「はじめまして」ペコリ
図書委員「あなたがルビィちゃん? はじめまして、よろしくね」
図書委員「……」ジーッ
善子「…なに?」 図書委員「ん、やっぱり仲良しなんだな〜って」フフッ
善子「ええ、そうかもね」
図書委員「……意外、否定すると思ったのに」ポカン
善子「色々あったのよ、それより前に相談してたことなんだけど」
図書委員「相談って、前に言ってたスクールアイドルのこと? それならあったよ雑誌」 善子「ちなみに見つけたのはいつ?」
図書委員「今日の朝、本棚を整理していた時に見つけたの」
図書委員「でも結構分かりやすいところに置かれていたのに、どうして今まで気付かなかったんだろう?」
善子「…ふーん、やっぱりね」
図書委員「え?」
善子「なんでもない、ありがとね助かったわ」
善子「こっちも収穫があったからもう大丈夫よ」
図書委員「うん、どういたしまして」 善子「じゃあね、また来るわ」
図書委員「うん、またね」
善子「……ああそうだ、明日何するか考えておいた方がいいわよ」
図書委員「どうして?」
善子「明日は“臨時休校”になるから、それじゃ」
バタン
図書委員「……休校?」 善子「思った通りだったわね」
ルビィ「うん、善子ちゃんの記憶が戻ったことによって」
善子「こっちの世界にもその記憶が反映されるようになった…今はまだ存在している程度だけど」
善子「ここも近いうちに注目の的になるのは間違いないわね、スクールアイドル」
ルビィ「…それもあるけど、さっきの人」
善子「分かってるわよ、多分だけどあれも私の願望か何かなんでしょ」 善子「だからあの三人も本来は三年なのに私と同じ二年の教室にいたんだろうしね」
善子「ルビィも薄々気付いていたでしょ?」
ルビィ「……少しだけ」
善子「ふーっ…今思えばこの時点で、どこか救いを求めていたのかもしれないわね」
善子「きっと、千歌さんたちや花丸の面影を誰かに当てはめることで」
善子「誰もいない寂しさを、埋めようとしていたのかも」
ルビィ「……」
善子「そんな顔しないの、それはついこの間までの話なんだから」ポン
ルビィ「ん」 善子「それに重要なのはここからよ…ルビィも分かってるとは思うけど」
ルビィ「…もしこのまま記憶が反映されていくなら矛盾が生まれる、だよね?」
善子「ええ、私が創ったこの世界は浦の星の廃校がなかった世界」
善子「スクールアイドルがなかったことになっていたのは、私の中で廃校とスクールアイドルが密接に繋がっていたから」
善子「つまり廃校という事実を無くし続けていくためには、それをなかったことにしたほうが都合がよかったわけね」
善子「けど、昨日私が全てを思い出したおかげでこの世界にも修正がかかり始めた」
ルビィ「…スクールアイドルが出てくればきっとラブライブも」
善子「出るでしょうね、そうして元に戻っていけばいくほど」
善子「事実に近付けば近付くほど、この世界の根本である廃校の撤回という理想は剥がれ落ちていく」
善子「だから多分、ここにいられる時間も…もうそんなにない」 ルビィ「……」
善子「謝るんじゃないわよ、ルビィは悪くないんだから」
善子「それに、言いたいことは昨日思う存分言ったしね」
ルビィ「…ありがとう、善子ちゃん」
善子「別になんてことないわよ、これくらい」
善子「いつかは来ると思っていたもの」
ルビィ「…そっか」
善子「ええ、だからそろそろ本題に移るわよ」
善子「元の世界に帰る…………そのためにも」
善子「最後まで付き合ってよね、ルビィ」フッ
ルビィ「うん、もちろんだよ善子ちゃん」ニコッ 善子「というわけで今日も泊まっていきなさい」
ルビィ「え、今日も? ルビィは別にいいけど、どうして?」
善子「……」
ギュッ
善子「…言わなきゃ駄目?」
ルビィ「……ううん、いいや」
スタスタ
ルビィ「えへへっ、温かいね」
善子「…うん、温かい」
善子(…………最後、か) ─翌日
チュンチュン
ルビィ「ふわぁ〜……」
善子「おはようルビィ、よく眠れた?」
ルビィ「うん、善子ちゃんは起きるの早いね」
善子「そうでもないわよ…っていうか寝ぐせひどいわね、梳かしてあげるからこっち来なさい」
ルビィ「はーい」トテトテ 善子「座って」
ルビィ「ん」チョコン
善子「全く、本当に手間がかかるというか…」
ルビィ「ごめんね、でもルビィはちょっと嬉しいかも」
善子「言うと思った」
ルビィ「あはは…善子ちゃんはなんでもお見通しなんだね」
善子「ルビィが分かりやすいだけでしょ」
ルビィ「うーん、そうかも」 ルビィ「あっ、そういえば聞いていなかったけど」
善子「なによ」
ルビィ「今日はどこに行くのかなぁって、ほら学校お休みにしたから」
善子「秋葉原」
ルビィ「秋葉原かぁ、でもどうして?」
善子「だって、あの人たちがスクールアイドルを初めて知った場所ってあそこなんでしょ」
ルビィ「!」
善子「ほら、終わったわよ」ポンポン ルビィ「そうだね、あそこから始まって…それでAqoursが出来て、お姉ちゃんたちも…だから行くの?」スクッ
善子「それ以外にも理由はあるけどね」
ルビィ「?」
善子「後でわかるわよ、さあ準備して、そろそろ出掛けるから」
ルビィ「そうなの? じゃあ急がなくちゃ」トトトッ
善子「転ぶんじゃないわよー! ……さてと」スッ
キラッ
善子「あんたにも最後まで付き合ってもらうからね」
善子「皮肉なことに、この世界と決別するためにはどうしてもあんたの力が必要になるみたい」 善子「……でもまあ、それがけじめってものよね」
ルビィ「善子ちゃん、準備できたよー」ヒョコ
善子「今行くわ、ちょっと待ってて」
善子「…東京の私の部屋、僅かな時間しかいられなかったけど悪くなかったわよ」ガチャ
善子「さよなら、次は元の場所でまた会いましょう」
バタン
……
… そして…
─秋葉原
ルビィ「着いたね」
善子「そうね」
ルビィ「でも、本当によかったのかなぁ?」
善子「なにが」
ルビィ「指輪の力を使って勝手に休校にしたこと」
善子「今更ね、そもそも閉まった学校に不法侵入してる時点でやりたい放題やってるんだけど、そこはどうなの?」
善子「指輪の力を真っ先に披露したのはルビィなんだけど」
ルビィ「うぅ、それを言われると……」
善子「はあ…やっぱりどこか抜けてるわよねルビィって」 あまり話を進められず申し訳ありません
翌日には更新出来ると思うのでもうしばらくの間お待ちください 善子「いいのよ、ここは私の世界なんだから」
善子「…せめて私が望む形で終わらせたいの」
ルビィ「そっか…ねえ善子ちゃん」
ルビィ「どんな結果でもルビィは最後まで傍にいるからね」
善子「当然でしょ、貴女は私のリトルデーモンなんだから」
ルビィ「はい、ヨハネ様」
善子「フフッ、久々に聞いたわねそれ……さあ、いくわよ」 ザワザワ ガヤガヤ
ルビィ「あれ? ちょっと待って、善子ちゃん」
ルビィ「なんだかここにだけ人がたくさん集まってきてるよ?」
善子「それでいいのよ、私が集めたんだから」
ルビィ「…どういうこと?」
善子「すぐにわかるわ」 パッ
ルビィ「! 街頭ビジョンの映像が変わった…って……え?」
[ スクールアイドル部ー! 貴女も! 貴女も! スクールアイドルやってみませんか!? ]
[ 輝けるアイドル! スクールアイドルー! ]
ルビィ「ち、千歌さん!? どうして!?」
善子「……」 ルビィ「それに…」
[ これは今までのスクールアイドルの努力と、町の人たちの善意があっての成功ですわ ]
[ 勘違いしないように! ]
ルビィ「…お姉ちゃん」
[ 分かってます! ]
[ でも、でもただ見てるだけじゃ始まらないって! 上手く言えないけど ]
ルビィ「ねえ善子ちゃん、これ…」
善子「全ての街頭ビジョンをジャックしたわ、ここにいる人たち全員の目に留まるようにね」 [ 今しかない、瞬間だから ]
[ だから…輝きたい!! ]
善子「今流れているこの映像は私が見て、体験してきた記憶」
善子「そう…私たちしか知らない、Aqoursが描いてきた軌跡」
ルビィ「それって…」
善子「…ルビィ、私ね、あれからずっと考えていたの」
善子「私にとって本当に大切なものは何なのかって」 善子「私さ、多分最初は学校なんてどこでもよかったんだと思う」
[ そりゃ統合したほうがいいに決まってるわ! ]
[ 私みたいな流行に敏感な生徒も集まってるだろうし! ]
善子「リアルの充実に憧れもしたけれど、心のどこかでは」
善子「普通に学校に通って、学校行事もそれなりにやって、次の進路決めて、何事もなく卒業さえ出来れば」
善子「それでいいやって、きっとそう思ってた」
ルビィ「……うん」 善子「……だけど」
[ ただ、もしμ'sのようにラブライブを目指しているのだとしたら、諦めたほうがいいかもしれません ]
[ 馬鹿にしないで、ラブライブは遊びじゃない!! ]
[ なのに0だったんだよ!? 悔しいじゃん! ]
善子「千歌さんにスクールアイドルに誘われてから、何かが少しずつ私の中で変わってきて」
善子「いつからだろう、気付いたときには学校で過ごす日々がとても充実したものになっていたの」
善子「毎日が、楽しかった」
善子「こんな日がずっと続けばいいのにって、そんなことすら考えるようになって」
[ 実は、学校説明会は…中止になるの…… ] 善子「そこでね、ようやく分かったの」
善子「ああ…私、この学校が好きなんだ…って」
善子「そして学校を好きになれたのは…」
善子「私の周りにみんながいて、貴女がいて…一緒に同じ時間を過ごせたから」
[ 少なくとも私は、感謝しか… ]
[ り、リトルデーモンを増やしにAqoursに入っただけなんだし! ]
ルビィ「……」 [ だからマルたちが面倒みるずら、それが仲間ずら ]
[ だね、なんかいいなぁそういうの…支え合ってる気がする ]
[ そうずらね ]
善子「……だからこそ、廃校が」
善子「私たちの思い出の場所が無くなってしまうのが…嫌だったの」 善子「たとえ別の学校に行って、クラスメイトや先輩たちと離れ離れにならなかったとしても」
善子「前と同じようにだなんて、そんなの絶対に無理だって……知ってるから」
善子「通う学校が変わるだけとか、そういうのじゃないのよ」
善子「あの日、あの場所で湧き上がった感情や想い…涙も笑顔も全部」
善子「あそこでしか生まれなかったものだって、知ってるから」
善子「……だから、こんなに後悔するまで大切に想っていたのよね」 人混みの中、背後で思い出の風景が描写される中でルビィに心情を吐露する善子を想像するとなんかもう色々とヤバい… 善子「それに気付いてからは必死だったわ、ずっと…」
善子「何かを変えたくて……それこそ」
善子「こんなものに縋るくらいに」
ルビィ「善子ちゃん…」
善子「─でもね、やっぱり」 [ じゃあ、Aqoursを占ってください ]
[ この先、どんな未来が待ってるか ]
善子「それって違うわよね」
[ それなら占うまでもありません ]
[ 全リトルデーモンが囁いています、Aqoursの未来は……! ]
善子「そうじゃない、よね」 善子「…だって」
[ 私たちの心に、この学校の景色はずっと残っていきます ]
[ それを胸に、新たな道を歩めることを…浦の星女学院の生徒であったことを ]
[ 誇りに思います ]
[ 皆さんどうか、そのことを忘れないでください ]
善子「私にとって本当に大切なものは」 [ 私たちはやったんだ! ]
善子「私がスクールアイドルのAqoursとして、浦の星の生徒として…」
[ ラブライブで! ]
[ 優勝したんだ!! ]
善子「みんなと一緒に築き上げてきた、輝きだから」
ルビィ「!」
善子「ルビィ、見てよ…周りの人たちを」 善子「…この世界には何もなかった、自分にとって都合のいいものばかりで出来ていて」
善子「しかも誰もがそのことに対して何とも思っていない、それはそうよね、私が創った人形だもの」
善子「けど……今は違う」
善子「みんな、夢中になってる…今までの私たちを見て、何かを感じている」
善子「それは感激かもしれないし、もしかしたら同情かもしれない……だけど」
善子「全部、ここにはなかったものばかりよ」
善子「そしてもし…これを見てその感情が芽生えたっていうなら」
善子「それが……答えでしょ?」ポロポロ
ルビィ「……うん」 善子「本当…今更よね、最初から無くしてなんかいなかったのよ」
善子「大切なものはいつだって、私の中にあった」
善子「辛いことも、嬉しいことも、苦しいことも、楽しいことも……全部」
善子「私の大切な……もので…」
たとえ悲しい現実でも、それすら愛おしい思い出だから
善子「だから…やっぱり忘れることなんて、出来ないわよ」
善子「なかったことになんて、したくない……!」 善子「だから私は……」
善子「私は……っ…」
ルビィ「……善子ちゃん」ギュッ
善子「! …ルビィ」
ルビィ「ルビィは聞くよ、最後まで」
善子「……ええ」
善子「…私はこれからも…歩んでいきたい……作っていきたいの!」
善子「私の本当の居場所で! 大切な思い出を! みんなと!」 善子「もしまたこの先辛いことがあったとしても! 現実が立ちはだかっても!」
善子「それでも奇跡を、自分たちを信じて進んでいく! もう絶対に! 私は逃げない!」
善子「何かを失ったって、いつかは…いつかは1に変えてみせる!」
善子「だってそれが…私たちAqoursだから!!」
そうよね、ルビィ 善子「よく聞きなさい!これが私の最後の言葉よ!」
ほんの少しの間だけど、夢を見させてくれてありがとう。
善子「私は元の世界に帰るわ! だから…だからっ!!」
これからは私が、私たちが繋げていくから
善子「浦の星女学院は……っ…本日をもって!」
どうか見守っていてください。
善子「閉校する!!」
─さようなら。 今までありがとう。 第四話 ルビィからの手紙
─
善子「……消えた、全部」
善子「……そっか、ようやく終わったのね」
善子「やっと…」
ルビィ「…善子ちゃん」 善子「ルビィ、これでよかったのよね? …だって、私が選んだ答えは…」ダキッ
善子「間違ってない…もの……でも」
善子「ごめん、少しの間だけ……すぐに終わるから」
ルビィ「…うん、頑張ったね善子ちゃん…お疲れさま」ナデナデ
善子「…………ぅん……っ」 善子「─ルビィもういいわ、大丈夫……ありがと」
ルビィ「ん、わかった」パッ
善子「…それにしてもいつになったら帰れるのかしら」
善子「世界は全部消えて無くなったけどそれだけで、今いる場所は真っ白で何もないし」
ルビィ「うーん、帰るまで少し時間がかかってるだけじゃないかなぁ」
ルビィ「心配しなくてもちゃんと帰ることが出来るはずだよ」
ルビィ(だってルビィのお願いは……)
善子「そう? なら別にいいんだけど」 善子「…………じゃあ今のうちに言っておこうかしら」
ルビィ「?」
善子「ルビィ、ありがとう…今までずっと私の傍にいてくれて」
ルビィ「─!」
善子「貴女が来てくれなかったら、私は何も知らないまま自分の殻に閉じこもって一生を過ごしていた」
善子「貴女が支えてくれなかったら、きっと現実に耐えられずにまた逃げ出していた」
善子「この答えだって、自分一人だけじゃ出せなかったかもしれない」
善子「今私がここにいるのは…ルビィのおかげなの」
善子「だから、ありがとね」 ルビィ「そんな…ルビィは何もしてないよ、だって全部善子ちゃんが決めたことだもん」
善子「過程が大事なのよ、結果的にそうなったとしてもね…分かるでしょ?」
善子「ちゃんと素直に受け取っておきなさい」
ルビィ「…わかった、じゃあそうするね」
善子「フフッ…それでいいのよ」 善子「……あとね」
ルビィ「まだ何かあるの?」
善子「ええ、あともう一つだけいいかしら」
ルビィ「うん」
善子「ずっと言いたかったことがあるの、今まで言いたくても言えなかった言葉が…貴女に」
善子「ルビィ、私ね…あなたのことが好き」
ルビィ「っ!」 善子「どんくさくて、どこか抜けてて、泣き虫で、いつも自分に自信がなさそうで」
善子「でも、とても素直で真っ直ぐで…いつも誰かを想える強い人」
善子「そんな貴女が放っておけなくて、いつしか貴方のことをとても愛おしく感じていたの」
善子「ずっと傍にいたいって」
ルビィ「……」
善子「だからね、今ここにいるのがルビィで本当に良かったって思ってるの」
善子「もう自分が不幸だなんて言えないくらいにね」 善子「ねえルビィ、私は……って」
ルビィ「……」ポロポロ
善子「ちょ、ちょっと…どうして泣いてるのよ」
ルビィ「…ごめんね、うれしかったから…」グスッ
善子「え…? それって」
ルビィ「善子ちゃん、ルビィも善子ちゃんのことが好きだよ…だって」
ルビィ「好きな人じゃなかったら、ルビィはここまでしないもん」
善子「……あ…」 善子「…そう、そうよね」
ルビィ「クスッ、善子ちゃんってそういうところ鈍いよね」
善子「なっ…放っといてよもう」
ルビィ「えへへっ…ごめんなさい」
善子「でも…嬉しいわ」
ルビィ「うん、ルビィも」 善子「なら、さっきの続き…聞いてくれる?」ソッ
ルビィ「はい」ニコ
善子「ルビィ、私はこれからも貴女と一緒にいたい」
善子「ねえ、一緒にいてくれる? 私と」
ルビィ「もちろん、一緒だよずっと」
善子「……ありがとう」 サラサラ
ルビィ「! …そろそろ時間みたいだね」
善子「そっか、帰ったらまずは謝らなくちゃね」
善子「ママや、みんなに、ごめんなさいって」
ルビィ「そうだね、長い間待たせちゃったから」
善子「ええ……さあ帰りましょう」
善子「私たちの居場所へ」
ルビィ「うん、一緒にね」ギュッ ピカッ
善子「っ…! 眩しい……あの時と同じ…」
ルビィ「……」
スゥーッ…
ルビィ(! ……ああ、やっぱり)
ルビィ(そうなるよね…) ルビィ(でも…いいの、最初から分かってたことだから)
ルビィ(大丈夫、善子ちゃんの気持ちも聞けたし)
ルビィ(ルビィは何も後悔していないよ……それに)
ルビィ(信じているから…いつか……きっと……)
ルビィ(…ルビィを…………って……)
ルビィ(……だから…)
“またね”善子ちゃん。
善子「──ルビィ?」
フッ… ……
…
善子「………ん……」パチ
千歌「!! ………あ…」
善子「あれ…ここ……どこだっけ…」
曜「善子ちゃんっ…! 善子ちゃああああああん!!」ダキッ
千歌「よかった…善子ちゃん……本当に、よかったよ…っ…!」ポロポロ
善子「千歌さん…曜さん……それに…リリー?」
梨子「……おかえりなさい、心配したんだから」
善子(……そうか、私…帰ってこられたのね)
善子「……うん、ごめんなさい…」 ─
曜・千歌「……」スゥースゥー
善子「…二人とも寝ちゃったわね」
梨子「緊張の糸が切れたんでしょ、ここのところずっと睡眠不足だったもの…仕方ないわ」
善子「……そんなに」
梨子「言っておくけど私もだからね、善子ちゃん」フワァ
梨子「それに、貴女のお母さんだって……」
善子「……そう、よね」
「…全くずら、善子ちゃんは迷惑かけすぎだよ」
善子「! ……その声」 花丸「……」
善子「花丸…」
梨子「花丸ちゃん…」
花丸「ルビィちゃん、大丈夫そうだったから一回戻ってきたずら」
花丸「まだ眠ってるけど」
善子「! ルビィが…」
花丸「うん……だから今のうちに言っておくね」
善子「え…?」 花丸「……」フゥーッ
花丸「善子ちゃん、いい加減にしてよ」
善子「っ…!」
梨子「……」
花丸「勝手にマルたちの前からいなくなって、ずっと何の連絡もないし」
花丸「それにルビィちゃんまで巻き込んで、マルの心配増やしてばかりで……」
花丸「善子ちゃんは…みんなの気持ち……何も分かってない!」
花丸「……分かってないよ…っ…何も!!」グスッ 善子「花丸……ごめん」ダキッ
花丸「……うぅ……ずっ、と……心配して…たんだから…」
善子「……ええ、そうよね…」
善子「ありがとう、花丸」
花丸「善子ちゃん…っ…! うぅっ…わああああああああああん!!!」ポロポロ
……
… 花丸「……ぐすっ…それで、善子ちゃんこれからどうするの?」
善子「え?」
梨子「このまま千歌ちゃんのところで泊まるか、自分の家に帰るか…」
善子「あっ、ここって千歌さんの旅館だったのね」
梨子「皆で運んで連れてきたのよ、急に現れたからビックリしたけどね」
梨子「それで、ご両親はお仕事のこともあるし…目が覚めるまでは私たちに任せてくださいって千歌ちゃんが」
花丸「ルビィちゃんは黒澤家の人たちとマルが様子を見ていたんだ」
善子「…そうだったのね」 梨子「さてと、説明も終わったことだしさっきの話に戻るね」
梨子「もう結構いい時間だからここに泊まっていくのもありだとは思うけど……でもね」
梨子「私は帰った方がいいと思うわ、さっきも言ったけど善子ちゃんのご両親が一番心配してるはずだし」
花丸「マルも同じかな、早く帰って安心させてあげなきゃ駄目だと思う…」
善子「それは……そうかもしれないけど」 梨子「…何か気になることでもあるの?」
善子「ルビィ、まだ目が覚めていないんでしょ? 大丈夫かなって……」
花丸「それなら心配しなくても大丈夫ずら、マルがついてるから」
花丸「ルビィちゃんのお家の人にも許可はもらってるし」
梨子「善子ちゃんだって疲れてるでしょう? ルビィちゃんのことは私たちに任せて、ゆっくり休んだら?」
善子「……そこまで言うなら…分かったわ」
善子「ルビィのことお願いね、花丸」
花丸「もちろんずら」 善子「それじゃあ、また明日ね」
花丸「うん、また明日」
バタン
花丸「……行ったね」
梨子「そうね、お疲れ様花丸ちゃん」
花丸「ううん、そんなこと」 梨子「でも本当によかったわ…二人とも無事に帰ってくることが出来て」
花丸「……そうだね」
梨子「花丸ちゃん?」
花丸「……あっ、えっと…ルビィちゃん早く起きないかなあって」
梨子「そうね、目が覚めたのが善子ちゃんだけじゃ、まだ安心できないもの」
花丸「……うん」
花丸(ルビィちゃん…なんだろう、この不安……)
花丸(…………きっと気のせいだよね…?) ─そして翌日…
善子「……失礼します」バタン
善子「ふぅ、ようやく話が終わったわね」
善子「まあ一ヶ月ほど居なくなってたら、そりゃこうなりもするわよね」
善子「でも、今はそれよりも……早くあの子に会いに行かなくちゃ」
善子「待っててね、ルビィ…すぐ行くから」
……
… ─黒澤家、ルビィの部屋
バンッ!
千歌「花丸ちゃん! ルビィちゃんの目が覚めたって本当!?」
梨子「ちょっと千歌ちゃん落ち着いて、勢いつけ過ぎよ」
ルビィ「……あれ、梨子さんと曜さんと千歌さんだ」
ルビィ「こんにちは、学校から帰ってきたんですね」ニコッ
曜「よかった…! ルビィちゃんも無事だった…!!」
ルビィ「……無事? ああそっか、ルビィずっと眠っていたんだよね」
ルビィ「さっき花丸ちゃんに聞きました」
花丸「……」 梨子「そう、でも本当によかったわ…目が覚めて」
千歌「ルビィちゃん、具合とか悪くない? 大丈夫?」
ルビィ「うん平気だよ、ありがとう」
花丸「体調とかは特に問題ないって言われてたずら……ただ」
曜「花丸ちゃん?」
花丸「どうしてか分からないけど、ルビィちゃんはあの事件のこと…覚えていないみたいで」 梨子「事件って、二人が消えたときのこと?」
花丸「うん」
梨子「うーん…何かのショックで一時的に思い出せない、とかかしら?」
花丸「そこまでは分からないみたいだけど」
花丸(ただ、それよりも……なんだろう…どこも可笑しいところはないはずなのに)チラ 曜「そうだ! ルビィちゃん、これ差し入れで持ってきたんだ!」バッ
千歌「みかんだよ! たくさん食べて早く元気になってね!」
ルビィ「わぁ! ありがとうございます!」
梨子「ちょっと、どうして千歌ちゃんまで一緒に食べてるの!」
千歌「あはは…つい」
ルビィ「ルビィは気にしてないよ、みんなで食べよう?」
梨子「……まあルビィちゃんがそう言うなら」
花丸(どうして、今のルビィちゃんは変だって思っちゃうんだろう……) 曜「美味しいね!」
ルビィ「うん!」
花丸(……なんか、まるで……)
花丸(何かが一つだけすっぽりと抜け落ちてしまったような…そんな違和感が)
花丸「……」
梨子「花丸ちゃん、どうしたの? 昨日から何か考え込んでるみたいだけど」
花丸「梨子さん…」
花丸「……あの、実はマル…気になっていることが─」
バンッ 花丸「!」
善子「ごめん! 遅くなったわ!」ハァハァ
曜「善子ちゃん! やっと来た!」
善子「! ……あぁ……!」ジワ
ルビィ「?」
善子「ルビィ! よかった……っ! 目が覚めたのね! 私ずっと……」タッ
ルビィ「!?」ビク 善子「貴女のことが心配で…!」
ルビィ「……」サッ
善子「…………え?」
花丸「っ!?」
善子「ルビィ…? な、なんで……? ……なんで、避けるの…?」
ルビィ「……」ギュゥ
千歌「…ルビィちゃん? どうして花丸ちゃんの後ろに隠れたりなんか…」
ルビィ「…………あの」
ルビィ「あなた──誰ですか?」 ¶cリ ; ロ ;)| !!
まさかの…更新おつです! 善子「!」
曜「えっ……」
花丸「る、ルビィちゃん何言って……こんな時にそんな冗談笑えないよ…?」
ルビィ「?」キョトン
曜「ほ、本当に知らないの……? 嘘、だよね…ねえ?」
ルビィ「えっと……みんなはこの人のこと、知ってるの?」 梨子「……どうして」
千歌「そうだよ…こんなの可笑しいよ、だってルビィちゃん私たちのことは覚えてるのに!」
曜「なんで善子ちゃんのことだけ忘れて……」
ルビィ「……」チラ
善子「…っ……」
善子(その反応、知ってる……貴女が初対面の人にとるやつでしょ…)
善子(本当に…忘れたっていうの、ルビィ……どうして) ルビィ「……」キラッ
善子「! 貴女それ…その手に持ってるやつ」
ルビィ「え?」
花丸「善子ちゃん…?」
善子「……まさか…」 善子(その指輪のせいなの? ……そうよ、それ以外考えられない)
善子(けど、だとしても可笑しいわよ)
善子(だって、ルビィはあの時までちゃんと記憶が……)
善子(…………“まで”…?)
善子(……ちょっと…ちょっと待って) ─ただし、代償として
使用者は願いの対象となった事柄の記憶全てを失うことになる
善子(もし、記憶が消えるのが力を使った時点ではなく…願いが叶った瞬間だとしたら…?)
善子(…もし、そうだとしたら…)
善子(その願いが叶うまでの間は記憶を失わないでいられる……そして)
善子(ルビィは帰ってきてから…私のことを……忘れて……つまり)
善子(ルビィは…あの子が願ったことは……) 善子「……なんでよ」
善子(そんなの、もう分かりきってる…)
…だから、ルビィに出来ることなら力になってあげたくて……
お願いしたらね、何とかここに来ることが出来たんだぁ
善子(私を、助けたい…そう、願ったのよね? ………そうでしょ? ルビィ)
うーん、なんか大丈夫みたい…なんでだろうね?
善子(…大丈夫なわけないでしょ、これから自分の記憶がなくなるかもしれないってときに)
善子(…………意味、分かんないわよ)
貴女、どうしてそんなに笑ってられるの 善子(本当は、私なんかよりずっと…ずっと)
善子(帰りたくないって、そう思ってたはずなのに)
今はルビィのことよりも善子ちゃんのことだよ
善子(それでも、自分の気持ちを隠し続けたの?)
善子(私のために……)
あはは…善子ちゃんはなんでもお見通しなんだね
善子(…………馬鹿だ)
ルビィが分かりやすいだけでしょ
善子(……私、本当に…馬鹿じゃないの) 善子「……なんで、今まで気付かなかったのよ…」
善子「こんなこと、少し考えれば分かったはずなのに!!」
善子「なんで……っ……ルビィ…貴女も」
善子「どうして何も言わなかったのよ!! こんな…こんなことして…っ…!」ガシッ
善子「もっと自分を大切にしなさいよ!!」
ルビィ「…ひっ……」ビク
善子「!! ……ぁ…ちがっ……これは…」
善子「……ごめんなさい」パッ
梨子「善子ちゃん…」 千歌「…ルビィちゃん、こっちおいで」
ルビィ「え? はい」トテトテ
曜「千歌ちゃん?」
千歌「一回休もう? 花丸ちゃんは善子ちゃんをどこか落ち着ける場所に連れていって」
千歌「今は…そのほうがいいと思う」
曜「…そうだね、花丸ちゃんお願い出来る? ルビィちゃんは私たちが見ておくから」
花丸「……わかった、善子ちゃん…行こ?」
善子「…………ええ…」 バタン
「「…………」」
ルビィ「…あの」
梨子「…ねえルビィちゃん、Aqoursは何人?」
千歌「…梨子ちゃん?」
ルビィ「え? 9人…ですよね?」
曜・千歌「!!」
梨子「……全員の名前、言える?」
ルビィ「もちろん、千歌さん曜さん梨子さん、果南さんに鞠莉さんにお姉ちゃん、最後に花丸ちゃん」
梨子「…………」 ルビィ「あれ? 一人足りない……なんで?」
曜「梨子ちゃん、今はやめよう……私もう、この先を聞くのが怖いよ…」
千歌「……」フルフル
梨子「…そうね、ごめんなさい…少し軽率だったわ」
梨子「ルビィちゃんも、いきなり変なこと聞いてごめんね?」
梨子「さっきのことは……忘れて…っ」
ルビィ「…………はい」 大切なものを救うために大切なものを忘れる展開はホントキツイな… ─
善子「…………」
花丸「善子ちゃん…」
善子「……私、何も出来ないのね」
善子「ルビィにあれだけ救われていながら」
善子「あの子の記憶が無くなって、忘れられても……私にはどうすることも出来ない」
善子「…こんなの、最低よね」 花丸「……本当に方法はないのかな、もう一回指輪の力を使えば、もしかしたら…」
善子「…無理よ、まずもう一度この力を使うことが出来るかどうかも分からないし」
善子「それに、これは本来理想の世界を創るためのもの…現実の世界で起きていることは変えようがないわ」
善子「そして最後に……仮にルビィの記憶を取り戻したいと願って、それが叶ったとしても」
善子「その代償として、今度は願ったほうの記憶が無くなる…そうなれば完全にイタチごっこよ、キリがない」
善子「どうしようもないのよ……!」 花丸「…」
善子「だからもう、私には…」
花丸「……ねえ善子ちゃん、本当にそうかな」
善子「…どういうことよ」
花丸「それは……」ガサゴソ
花丸「…あった、善子ちゃんこれ見て」
善子「なに、手紙? …これがどうしたっていうのよ」
花丸「善子ちゃんを助けに行く前に、ルビィちゃんから預かったものだよ」
善子「!?」 花丸「善子ちゃんが戻ってきたら、読ませてほしいって」
花丸「さっきは驚いて、そのことに気付けなかったけど」
善子「……ルビィが…?」
花丸「…ルビィちゃん、その前にこうも言ってたよ」
花丸「善子ちゃんに伝えたいこと、たくさんあるけど全部言えるかどうか分からない」
花丸「だからもし、帰ってきたときに忘れてるようなことがあったら…読んでほしいって」
善子「!」
花丸「…ルビィちゃん、きっと最初から分かってたんじゃないかな」
花丸「こうなることも、全部……だから手紙をマルに預けた」 善子「……そんな」
善子「……ねえ、花丸……なんて、書いてあるの?」
花丸「いいの?」
善子「……お願い」
花丸「……じゃあ、読ませてもらうね」カサッ 花丸「……」
花丸「…………」
花丸「…………ぇ…?」
花丸「……! ……あ……そ…っか……ルビ……ちゃ…」ジワ
花丸「……うっ…ひぐっ……!」
善子「花丸…?」 花丸「なん……でも、ないっ……」ポロポロ
花丸「……うん…」ゴシゴシ
花丸「…………善子ちゃん、はい」スッ
善子「……私は」
花丸「善子ちゃん…これは善子ちゃんが読むべきだよ、この手紙には…ルビィちゃんの気持ち全部が詰まってる」 善子「ルビィの……気持ち…」
花丸「最後まで読んで、ちゃんとルビィちゃんの想いに応えてあげてほしいな……マルが言えるのはそれだけ」ニコ
花丸「行ってあげて善子ちゃん、ルビィちゃんのところに」
善子「……そうよね」
善子「分かったわ、ありがとう花丸」
花丸「ううん、どういたしまして」 バタン
花丸「……」
花丸「……ごめんね、善子ちゃん」
花丸「こんな時に言うのも不謹慎だけど……マルね」
花丸「ちょっとだけ、善子ちゃんが羨ましいと思っちゃった」 ─
「……」
ガチャ
「!」
善子「お邪魔するわよ」
曜「善子ちゃん…もう大丈夫なの?」
善子「ええ、少しだけ落ち着いたわ」
千歌「そっか、よかった」
ルビィ「……」
善子「……」 善子「それでね、皆にお願いがあるんだけど」
善子「ルビィと話をさせて貰えないかしら、私とルビィの二人だけで」
梨子「え? 私たちは別にいいけど……」
千歌「でも、ルビィちゃんは?」
ルビィ「…ルビィはいいよ、大丈夫」
善子「そう、ありがとう」
ルビィ「……」 梨子「じゃあ私たちは先に帰るね」
善子「ええ、今日は色々と助かったわ」
曜「気にしなくていいよ、それじゃあまたね善子ちゃん…ルビィちゃん」
千歌「また明日……」ガチャ
ルビィ「うん、また明日」 バタン
善子「……まずは謝らせて」
ルビィ「え?」
善子「さっきは悪かったわね、貴女を怖がらせるようなことして」
善子「ごめんなさい」ペコリ
ルビィ「あっ……ううん大丈夫、気にしてない…です」
善子「そう」
ルビィ「はい…」 善子「……」
ルビィ「……えっと、その」
ルビィ「み、みかん…食べますか?」
善子「…みかんは苦手なの」
ルビィ「……そう、ですか」
ルビィ「ごめんなさい、思い出せなくて」 善子「っ! どうして」
ルビィ「千歌さんたちから少しだけ、あなたのことを聞きました…」
善子「……そうだったのね」
ルビィ「ただ、聞いたって言っても津島さんが「善子」
ルビィ「え?」
善子「そう呼んでくれたほうが嬉しいわ」
ルビィ「…善子さんがAqoursのメンバーの一人で、ルビィたちと一緒に活動していたってことくらいですけど」 善子「……ええ、そうよ」
ルビィ「曲もちょっとだけ聞きました、ルビィの知らない…でもどこか懐かしくて」
ルビィ「だからすぐに善子さんの声だなって分かりました」
善子「他のみんなの声は、分かるものね」
ルビィ「はい…善子さんの声は透き通っていて、綺麗で、でも強く心に響くような歌声で」
ルビィ「その…とてもかっこよかったです」
善子「…ありがと」
善子「でも知ってるわよ、貴女…私によくそう言ってたから」
ルビィ「…そうですか」 ルビィ「えと、今のルビィが知ってるのはそれだけです」
善子「…………そっか」
ルビィ「はい…」
善子「……ごめんね、貴女の方から色々と喋らせて」
善子「私…まだ少し考えがまとまらなくて」
ルビィ「いえ…」 善子「……」
ルビィ「……あの、善子さん」
善子「なに?」
ルビィ「ルビィ、まだよくわからないけど」
ルビィ「あなたは、ルビィの大切な人…だったんですか?」
善子「っ……それは」 善子「…………分からない」
ルビィ「え?」
善子「…ううん、本当は分かってるの……ただ少し、自信がないだけ」
善子「私、あなたに何もしてあげられないのに…ってね」フッ
ルビィ「……」
善子(……だけどね)
だけどもし、貴女が私に何かを望んでいるって言うなら…わたしは
善子「……ねえ」スッ
それに応えてあげたいのよ。 貴女のように真っ直ぐに、強く。 ルビィ「は、はい」
私なりのやり方で…だから
善子「これ、貴女が書いた手紙なの、読ませてもらってもいいかしら?」
貴女の本当の気持ちを、私に聞かせて
ルビィ「…どうぞ」
善子「ありがとう」
善子「……」カサッ ─善子ちゃんへ
まず最初に……今ね、ルビィはとても安心しています。
だって善子ちゃんがこの手紙を読んでいるっていうことは、無事にこの世界に戻ってくることが出来たってことでしょ?
だからホッとしているの、ちゃんと帰ることが出来てよかったって
……あ、でも
多分、ルビィの記憶が無くなっていることにも気付いているんだよね
そしてきっと、それを知った善子ちゃんは自分を責めているんだと思う…
私のせいでルビィが…って、当たってるかなぁ? 今どうして分かるのよ、みたいな顔してるよね多分
分かるよ、善子ちゃんとずっと一緒にいればそれくらい分かっちゃうよ
ルビィは善子ちゃんのリトルデーモンだもん
…それにね
ルビィも、その気持ちはずっと持ってたから
だから、分かるんだ あのね善子ちゃん、ルビィもね
あの日、善子ちゃんが何処かへいなくなっちゃって
必死に探して……そして…そうなった理由を、原因を知ったときに
とても後悔したの、ルビィのこと…大嫌いになりそうだった
何でも知っているようなこと言いながら、善子ちゃんのこと、何も気付いてあげられなくて
少し考えれば分かったことなのにって、それに善子ちゃんもどうして何も相談してくれなかったの? って
自分のせいなのに八つ当たりして…それが一番、嫌だったの だから今の善子ちゃんの気持ちは痛いほどよく分かるんだ、だってルビィもそうだったから
でもね、それでも……ううん、だからこそかな
善子ちゃんには言わないでおこうって思ったの
どうしてだと思う? それはね、あのときの善子ちゃんと同じだよ
あなたのことが大切だから、ルビィのことで心配かけさせたくなかったの
たとえこうなるのが分かっていたとしても、ルビィは
あなたを、善子ちゃんを救いたかった ルビィ、悪い子だよね…善子ちゃんが傷つくの分かってて、それでも
こうすることを決めたんだから
だから…ごめんね、善子ちゃん
また迷惑かけちゃうかもしれないけど
記憶を無くしたルビィのこと、どうかよろしくお願いします ねえ、善子ちゃん
ルビィはね、幸せだったよ いつも貴女が傍にいたから
ああ……でも…ごめんなさい
本当は今…少しだけ、苦しいの
涙が出るくらい でも、大丈夫……今だけだから
ねえ
善子ちゃん
今まで貴女と過ごしてきた時間は私にとってかけがえのないものでした
例え記憶が消えてしまったとしても、それはずっと私の心の中に刻まれていることでしょう
決して色褪せることのない、大切なものだから そして最後に、これだけ言わせてください
親愛なる津島善子さん
私は貴女のことが──大好きです。
貴女のことを、好きになってよかった。
ありがとう。
─黒澤ルビィより 善子「…ルビィ…っ……」
─P.S.
善子「……!?」
でもね、善子ちゃん
もし……もし一つだけ、我がままを言っていいのなら──
善子「─!! …………あぁ……そぅか…」
善子「……フフッ………はははっ………なんだ」
善子(そういうことだったのね…) 善子「…馬鹿ね、我がままだなんて……今更よ」
善子「だって……知ってるもの……わた、しは…」
善子「だれよりも……ずっと……っ…ずっと!!」
ルビィ「…善子さん?」
善子「だから……!」
ダキッ
ルビィ「!? あ、あのっ…」 善子「ごめん……っ! でも……!!」
善子「おねがい…今だけ……!!」
ルビィ「……」ギュッ…
善子「ル、ビィ……わだし、やくそぐするからっ……! この…さきっ…どんなに時間が…かがっても……!」
それが、貴女の願いなら
善子「わた、しは……! あな、たをっ……絶対に……っ……!」
善子「ぅぐッ……! うう…! ああああああああああああ!わああああああああああん!!!」ボロボロ
いつか、きっと 善子「─そう、あれから十年……振り返ればあっという間に感じるわね」
ルビィ「えへへっ、そうだね」
善子「まあ振り返ったらってだけの話で、本当はそんなこと全然ないんだけど」
ルビィ「あはは…それでよっちゃん、告白ってその昔話のこと?」
善子「違うわよ、懐かしくなったから少し思い出してただけ」
ルビィ「え? それじゃあ何?」
善子「その前にルビィ、ちょっといい?」
善子「一緒に行きたいところがあるの」ニコッ ─最終話
ルビィ「ここって…」
善子「浦の星女学院……いや、元か」
善子「もう更地になっちゃったものね」
ルビィ「……うん」
善子「ルビィ…私ね、ここが取り壊されるって聞いたとき、あの時ほど感情を揺さぶられなかったの」
善子「もう未練なんてほとんど無かったからかしら、私たちが名前を残していこうって決めたときから」
善子「懐かしさはあれど、ここに囚われることはなかった」 善子「そして今はみんなが、それぞれ違う形で輝きを放っている」
善子「この学校で得た大切なものを胸に抱いて…強く」
ルビィ「……」
善子「フフッ…学生だったころは、門を閉めることにあれだけ戸惑ったのにね」
善子「まあ泣きはしたけど……嫌でも時の流れを感じたわ」 ルビィ「…よっちゃん」
善子「……ただ」
ルビィ「?」
善子「私の場合、それだけじゃないのよ」
善子「私が前に進むことが出来たのはね」
善子「時間が経って大人になったから、そんな理由だけじゃないの」
善子「それよりも、もっと大切なことがあったのよ…ねえ、何だと思う?」
ルビィ「……」
善子「貴女のことよ、ルビィ」
ルビィ「!?」 善子「貴女がここで、私の想いを受け止めてくれて…一緒に悲しみや苦しみを分かち合って」
善子「最後まで…私の傍に寄り添って、そして私を支えてくれた」
善子「だから今、こうしてここに立っていられる…前を向くことが出来る」
善子「貴女が私に、一歩踏み出す勇気を与えてくれたから」
善子「今の私がいるのは、ルビィのおかげなのよ」ホホエミ 結局記憶は取り戻せなかったんですかね…
新しい思い出を作っていくってのも素敵ですけど何だか切ない… ルビィ「……」
善子「ここで貴女と過ごした時間はわずか一年弱、今と比べるととても差があるように見えるけど」
善子「でも、私にとってはどっちも同じくらい大切なの」
善子「だって両方とも、ルビィとの思い出なんだから」
ルビィ「でも…ルビィは」
善子「だから、今度は私の番」
ルビィ「え?」 善子「…はぁ……しかしまあ、ここまで来るのに本当時間掛かったわね…」
善子「凄く高いし、おかげで貯めるのにも苦労したわ」スッ
善子「けど、一生ものだもの…これくらいはね」
ルビィ「! よっちゃん、それ…」
善子「覚えてる? この指輪」
善子「私と貴女だけしか知らない、記憶の欠片」 ルビィ「記憶…」
善子「ちょっと加工して形を変えさせてもらったけどね、ほら、宝石が付けられてるでしょ?」
善子「ルビーと、こっちはサファイア」
ルビィ「……綺麗」
善子「ずっとね、考えていたの…この指輪に込められた願いと、その本当の意味を」 ルビィ「意味?」
善子「私なりの解釈よ、十年前…私はこれを使って廃校が無い世界へと行った」
善子「学校で過ごした記憶と引き換えにね…けど」
善子「そこに貴女が現れて、私の記憶を思い出させてくれた」
善子「私と同じ、もう一つの指輪を使って…まあ今のルビィは知らないでしょうけど」
ルビィ「……」
善子「で、ここからが本題」
善子「私が気になったのはね、その“思い出した”ってところなのよ」 ルビィ「どういうこと?」
善子「あの後、私は何か手掛かりがないか、もう一度本を読み返したの」
善子「そうしたら気付いたことがあったわ、それがこの部分」
善子「使用者の記憶を辿るってところともう一つ…創られた世界に対する介入ってところ」
ルビィ「それがどうかしたの?」
善子「…重要なのは、この条件だとルビィは私を連れ帰ることが出来たとしても、記憶を取り戻すことは出来ないってこと」
ルビィ「!?」 善子「今思い返してみれば、確かにそんな感じはあったの、貴女は私の世界に割り込んで…言うなれば私とただ会話をしていただけ」
善子「そこに何か特別な力を使ったわけでもないし、寧ろそれは私のほう」
善子「門の鍵を開けたのも、臨時休校にしたのも、電波ジャックも、全て」
善子「私の意思で引き起こされたもので、ルビィは本当に何もしていないのよ」
ルビィ「……」
善子「それなら、どうして記憶が戻ったのか……私は考えた」
善子「そうして出した答えがこれよ」
キラッ
善子「指輪の共鳴…いや、もう少し正確にいうなら記憶の共有ね」 ルビィ「記憶の、共有?」
善子「さっき言ったでしょ、この指輪は使用者の記憶を辿って世界を映し出す力を持っている」
善子「それはつまり、私たちの記憶がここに刻まれているっていうことなの」
ルビィ「…その指輪に?」
善子「ええ、だって私たちには何の力もないもの、ただ願っているだけ」
善子「その力を行使しているのは他でもない、これ自身なのよ」
善子「だからこう思ったの、もしその考えが当て嵌まるのだとしたら」
善子「私が思い出すことが出来たのは、私とルビィに共通する記憶が互いの指輪を通して私に伝わったから」
善子「そしてルビィと私が接触することで、記憶が戻るきっかけが生まれたからなんじゃないかって」
ルビィ「!」 善子「だから持ってきたのよ、今…これをね」
ルビィ「それじゃあ…」
善子「ただね、これはあくまで私が立てた仮説…本当かどうか、その確証はないわ」
善子「けど、可能性は……0じゃない」
ルビィ「! あっ……」
善子「だから私は賭けた、この可能性に……そう、あのとき誓ったもの」
何かを失ったって、いつかは…いつかは1に変えてみせる!
だってそれが…私たちAqoursだから!!
善子「あの誓いを果たすことがあるのだとすれば…それはきっと」
善子「今…この瞬間なんでしょうね」クス
そうでしょ? ルビィ 乙でさー
長く楽しんでいたssが色々終わっていく
クールの切り替わり時期のような寂しさ 善子「さあ、やるわよ…準備はいい?」
ルビィ「…大丈夫って言いたいけど」
ルビィ「ちょっとだけ、怖いかな」
善子「そうよね……でも安心して」
善子「何があっても私はずっと貴女の傍にいるわ」
ルビィ「よっちゃん…」
善子「ルビィには私がいる、でしょ?」
ルビィ「…そうだね」ニコッ ルビィ「わかった、ルビィも…信じる」
善子「ありがとう、ルビィ」
善子「…大丈夫、絶対に取り戻して見せるから、貴女と過ごした思い出を」
ルビィ「うん、お願いね」
善子「…フゥーッ……よし」
善子「始めましょうか」 善子「指輪をはめるわよ…手、出して」
ずっと思っていたことがある
ルビィ「はい」
善子「いくわよ、ルビィ」スッ
あの日、あのとき……そう、転校生としてやってきた貴女に出会ったあの瞬間
私はこう感じたの
ルビィ「───!!」
─ 皆さん、はじめまして…転校生の黒澤ルビィです ─
ルビィ「……あぁ…ッ……!」
これが、運命なのかと ルビィ「……なに…あた、まが……ぃたい…っ…!」ズキ
善子「─!! ルビィ!」
高校一年の春、桜が舞い散る頃……同じような出会いがあった
音ノ木坂から浦の星にやってきた一人の転校生、そこから全てが始まって
あの人はそれを奇跡と、そう言っていた
ルビィ「ああああぁぁぁ!! 痛い! いたいよっ…!!」
善子「ルビィ……ルビィ!! 大丈夫! 私が傍にいる!! ずっと!」ギュッ だから二年の春、東京で貴女が私の前に現れたとき…どこか似たようなものを感じたの
今度は浦の星から音ノ木坂へと、まるで打ち寄せられた波が返っていくように
ルビィ「…よっちゃ……!」
善子「お願いルビィ! 思い出してっ!!」
善子「私のリトルデーモンとして一緒に儀式をしたこと! 貴女が初めてだったのよ!!」
善子「嬉しかったの!」
その繋がりはきっと偶然でしょう、でも 善子「最初は私と花丸が仲良くしてるところに入りづらそうにしていて! でも私もそうだった!」
もし、運命というものがこの世に本当にあるのなら
善子「貴女のこと何も知らなかったから! だけどっ!!」
今、この瞬間こそが…私にとっての運命で
今まで不幸だった私に舞い降りた奇跡なのだと…そう思わずにはいられなかった
善子「そこから少しずつ変わっていったじゃない! 一緒に練習して! 一緒に帰って!」
善子「休みの日はお互いの家で泊まったりして! そうやって私たちは……っ…!」
善子「仲良くなっていったのよ!! 好きになっていったのよ!」
そして、これを奇跡と呼ぶのなら……きっとあの時と同じように
ここからまた何かが、変わっていくんじゃないかって─変えていけるんじゃないかって
善子「それを全部……っ…! 忘れたなんて言わないでよ!!」
善子「なかったことになんてしないで!!」
そんな気がしたの ルビィ「あぁっ……ああああぁぁぁ!!」
善子「ルビィ! 前に貴女が私に言ってくれた言葉! 今そっくりそのまま貴女に返すわ!!」
善子「貴女本当にこのままでいいの!? それでルビィは幸せなの!?」
善子「私との思い出が無くなって! 一番苦しかったのは貴女じゃない!!」
善子「なのにそれすら忘れて! 嫌よそんなの! そのこともちゃんと思い出してよ!!」
ルビィ「……よ……し………ちゃ…」
善子「それで苦しくて辛いなら私に言ってよ!! そのときは私が貴女の傍にいるから! 貴女を支えるから!」
だからねルビィ、私は
もう自分の気持ちから逃げない
善子「どんな時でも! 何があっても!」
善子「だって私はっ…! 貴女のことを─!」
善子「愛しているから!!」
ピカッ
ルビィ「!! …………ぁ……」 ───
ずっと言いたかったことがあるの、今まで言いたくても言えなかった言葉が…貴女に
ルビィ、私ね…あなたのことが好き
(ああ…そっか)
どんくさくて、どこか抜けてて、泣き虫で、いつも自分に自信がなさそうで
でも、とても素直で真っ直ぐで…いつも誰かを想える強い人
そんな貴女が放っておけなくて、いつしか貴方のことをとても愛おしく感じていたの
ずっと傍にいたいって
(ルビィはもう…知っていたんだね)
(善子ちゃんの気持ちを…想いを) ねえ、一緒にいてくれる? 私と
(…そうだよね、忘れちゃ駄目だよね)
(ルビィにとって、善子ちゃんにとって…一番大切なことだもん)
もちろん、一緒だよずっと
(でも、もう大丈夫…忘れたりしない)
だってルビィも、善子ちゃんのことを
─愛しているから。
─── ルビィ「……」
善子「ルビィ! しっかりしてルビィ……っ…!」
ルビィ「……あ…」パチ
善子「ルビィ! 大丈夫!?」
ルビィ「…………うん、大丈夫だよ」
ルビィ「ありがとう…“善子ちゃん”」 善子「!! ……ルビィ…あな、た……」
ルビィ「えへへっ…………ただいま」
善子「る、びぃ……ほん、と…? ほんとうに……?」
ルビィ「ごめんなさい、遅くなって」ダキッ
善子「あ……あぁっ…! ……うぅ……ぇぐっ……!!」
善子「あああああぁぁぁ……!!!」
ルビィ「善子ちゃん…ルビィね、辛かったの……苦しかったの…」
ルビィ「でも…信じてたよ、ずっと……ずっと!!」ポロポロ
善子「ルビィ……っ…ルビィ…!!」
ルビィ「よ、しこちゃ……っ…!」
善子・ルビィ「うぅっ……うああああああああああぁぁぁぁああ!!!!わああああああああああん!!!」 …………
……
善子「─ぐすっ…ああもう、目…すごい痛い」
ルビィ「善子ちゃん、真っ赤だもんね」
善子「そういうルビィだって顔ひっどいわよ」
ルビィ「えぇ!? そこまで言わなくても…」
善子・ルビィ「……フフッ!」
善子「…おかえり、ルビィ」
ルビィ「うん、ただいま善子ちゃん」 善子「クスッ…そう呼ばれるのも、なんか久々ね」
ルビィ「そうだね、ずっとよっちゃんって呼んでたから」
善子「…ねえルビィ」
ルビィ「心配しなくても“よっちゃん”との思い出のこともちゃんと覚えてるよ」
善子「!」
ルビィ「それが聞きたかったんでしょ?」
善子「…見透かしたように」
ルビィ「分かるよ、それくらい」
善子「……ま、いいけど」 善子「記憶が戻ったら人格のズレとか出るんじゃないかって、ちょっと気になっただけだし」
ルビィ「大丈夫、変わらないよ…だって」
ルビィ「よっちゃんのおかげで変わらないルビィのままでいられたから」
善子「…そう」ニコッ
ルビィ「うん……あっ、呼びかた善子ちゃんの方がよかった?」
善子「それくらい好きにしなさいよ」
ルビィ「じゃあ、よっちゃんにするね!」
善子「はいはい」 ルビィ「あっ…そうだ、ねえねえよっちゃん、ルビィも聞きたいことがあったんだけど」
善子「なに?」
ルビィ「どうしてわざわざ指輪に宝石を付けたの? 思い出させるだけなら別に無くても」
善子「ん? ああ……そうだ、まだそれが残ってたわね」
善子「あやうく忘れるところだったわ」
ルビィ「よっちゃん?」
善子「ほら、最初に言ったでしょ、告白だって」
ルビィ「え? 確かに言ってたけど」
善子「うん、だからとりあえず一回それ返して」
ルビィ「えぇ!? なんでそうなるの!?」
善子「いいから」 ルビィ「……はい」
善子「それでこっち付けなさい」
ルビィ「これ、さっきよっちゃんが付けてた…」
善子「そ、サファイアの指輪ね…で、私はこっちをはめるから」
ルビィ「? どうしてわざわざ取り替えたの?」
善子「それもさっき言ったでしょ、その指輪には私たちの記憶が刻まれているの」
善子「だからお互いに相手の記憶が刻まれたものを持っておくのよ」
善子「もう二度と忘れないっていう、誓いの証としてね」
ルビィ「……そっか…うん、そうだね」 善子「でもね、それだけじゃないわよ」
善子「もう一つあるの、さっきよりももっと大事なこと」
ルビィ「まだあるの?」
善子「ええ、知ってるでしょ? 指輪交換の儀式」
ルビィ「!!」
善子「宝石を付けたのはそういう理由よ」
ルビィ「え? ……えぇっ!?」 善子「なによ、さっきから驚いてばかりね貴女」
ルビィ「…ぃや…だって……」
ルビィ「それって…つまり………えぇっと……あの、ルビィと…」
善子「…はぁーっ、貴女って普段は素直で真っ直ぐなのにこういうとき本当に駄目ね……全く」
善子「ルビィ」
ルビィ「は、はいっ!」
善子「これが貴女に応える私からの告白よ」スッ
善子「結婚しましょう」
ルビィ「……っ……はい」
ルビィ「喜んで」 もし───
善子「なら決まりね、はい左手出して」
もしも、自分の大切なものを失ったとして─
ルビィ「うん…でも、ビックリしたよ急に……結婚指輪なんて」
善子「別に急じゃないわよ、前々から決めていたもの」
たとえ、その先で何度も壁に阻まれ、困難に挫けそうになったとしても
ルビィ「え?」
善子「何とぼけた顔しているの、ルビィが願ったことでしょ」
それでも、私は一緒に運命を変えていきたいと思った。
─何故かって? それはね………
ルビィ「…ルビィが?」
善子「ええ、だって貴女が手紙で私に言ったんじゃない」 …………
─P.S.
でもね、善子ちゃん
もし……もし一つだけ、我がままを言っていいのなら
お願いがあるんだ。
どんなに時間がかかってもいい、ルビィはずっと待ってるから
だから、約束してほしいの 今度は善子ちゃんが
ルビィのこと、絶対に──
善子「─迎えに来て。ってね」
約束したからよ。 貴女と。
─ 最終話 P.S.の向こう側 ─ 終わりです
長い間保守してくださった方々、最後まで読んでくださった皆様方、本当にありがとうございました。 ハッピーエンドでよかった…
善子ちゃんとルビィちゃんの未来に幸あれ……! おつ!2人の素の善さが優しいお話で良かったです…!末永くお幸せに。 とうとう完結してしまったか…
最高のハッピーエンドで締めてくれたし面白かったよ、乙! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています