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曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その3

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0001名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:30:26.94ID:oMcc4SEV
おしっこ大好き曜ちゃんと、曜ちゃん大好き善子ちゃんのお話です。


*前々スレ(1さんが立て逃げしたネタスレを乗っ取りました)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1513854343/
(堕天)

*前スレ(立てて貰ったのにうっかり落としましたごめんなさい)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その2
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1517118470/
(堕天)

↑の続きですが読んでなくても大丈夫です。


【前回のラブライブ!】

*おね正月編

お父さんに会うため実家に行っていた曜ちゃん。戻ってきて早々、善子ちゃんは男装をさせられて初詣に行きます。

一日彼氏。巫女さんをナンパする曜ちゃん。ランチデート。おばさんごめんなさい。

ショッピングモールで千歌ちゃん梨子ちゃんに会った善子ちゃんは、梨子ちゃんが男装善子ちゃんにドキドキしているのを知り、曜ちゃんを嫉妬させようと試します。

付き合ってわずか二週間で訪れた別れの危機でしたが、Aqoursメンバーの協力もあって何とか仲直りできた二人。しかし善子ちゃんは何だか熱っぽいようで……。



前スレに少し書きましたが、落ちてしまったので再放送します。
(所々手直ししてありますがほぼ同じです)
0003名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:32:04.05ID:oMcc4SEV
【不治の病編】

……

 保健室

曜「降ろすよ」スッ

善子「ええ」

曜「よいしょっと……」ギシ

善子「……その、ありがと」

曜「え? こっちがありがとうって感じだよ」アハハ

善子「そうでしょうね」

曜「善子ちゃんさえよければ、毎日でもしてあげたいな」

善子「やめてよ。私、お姫様なんかじゃないもの」

曜「じゃあ私をお姫様抱っこする?」

善子「しない」

曜「昨日してもらっとくんだった……」ハァ

善子「で、飲むの?」

曜「え?」

善子「飲みたいって言ってたじゃない」

曜「何を?」

善子「は?」

曜「私に何を飲ませたいのかな? 言ってくれなきゃ分かんないよ」

善子「私は飲ませたいわけじゃないんだけど」

曜「そっか。無理にとは言わない」

善子「曜さんが素直に聞き入れるなんて珍しいわね」

曜「善子ちゃんの嫌がることはしないって決めたから」

善子「そう」

曜「もしこの先善子ちゃんが二度とおしっこを飲ませてくれないとしても……」

曜「私は大好きだからね」

善子「ありがと」

曜「善子ちゃんのおしっこのこと」

善子「私のことは?」
0004名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:32:42.14ID:oMcc4SEV
曜「善子ちゃんのことももちろん好きだよ」

善子「何で私がおしっこのついでなのよ」

曜「あー、そうじゃなくて。善子ちゃんのことなんて言うまでもないでしょ?」

善子「言ってくれないの?」

曜「言われたい?」

善子「当たり前でしょ」

曜「えへへ……大好き♡」ギュ

善子「私も」

曜「うん。私のはいつでも飲ませてあげるからね」

善子「おしっこじゃなくて曜さんのことがよ」

曜「おしっこは?」

善子「そんなに好きじゃない」

曜「がーん……」

善子「そんな高望みされても困るんだけど」

曜「まあ、少しずつ好きになってもらえればいいよ」

善子「ならないと思う」

曜「私のことは、会った瞬間から好きだった?」

善子「は? 何よ急に」

曜「私はほとんど一目惚れだったけど善子ちゃんはどうかなーって」

善子「ごめんなさい。全く何とも思ってなかったわ」

曜「えー」

善子「だって私と曜さんじゃキャラが違いすぎるっていうか……接点なんてないじゃない」

曜「同じバスだよね?」

善子「同じバスってだけでしょ」

曜「私はずっと後ろの席から『あの子可愛いな』って見てたよ」

善子「それ、私に限ったことじゃないでしょう?」

曜「うっ……善子ちゃんの可愛いは特別だもん」

善子「嘘つかなくてもいいわよ。私のことなんて眼中になかったでしょうが」

曜「……」

善子「曜さんの目にはもっとキラキラした子しか映ってなかったわよね」
0005名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:33:21.22ID:oMcc4SEV
曜「何で私、善子ちゃんのこと見えてなかったんだろう? 幽霊かな?」

善子「そもそも私、不登校だったじゃない」

曜「あ、そっか」

善子「曜さんがいかに適当なこと言ってるかよく分かるわね……」

曜「善子ちゃんの不登校解除とAqoursに入るのはほとんど同時だったんだよね」

善子「そうよ。だからAqoursに入る前の私なんて、曜さんが知っているわけないの」

曜「私の知らない善子ちゃんか……見てみたかったな」

善子「酷いもんだったわ」

曜「そんなことないんじゃない? 事故紹介、もとい自己紹介で事故ったくらいで大げさだよ」

善子「毎日カップめんばっかり食べてたし……今よりげっそりしてたわね」

曜「そんな姿見たら毎日ご飯作ってあげないと気がすまなくなっちゃう」

善子「はいはい」

曜「もし私と会ってたら不登校にならなかった?」

善子「え? 関係ないと思うわよ」

曜「私に会いたくて学校に来るんじゃない?」

善子「……」

曜「あれ? 私何か変なこと言った?」

善子「別に」

曜「もしかして今も? 私に会うために学校来てるの?」

善子「今は学校に来るの嫌じゃないもの」

曜「私は毎日楽しくて仕方がないよ」

善子「まあ、そうでしょうね。学校行くのが嫌っていう気持ちが理解できなかったりして」

曜「善子ちゃんがいなかったら嫌だな」

善子「私がいなくても曜さんなら楽しいでしょ。明るい性格してるし」

曜「あっ、さては私がいつもこんな風に明るいと思ってるね?」

善子「学校で沈んでるところ、滅多に見ないわよ」

曜「それは明るい曜ちゃんを演じてるだけだよ」

善子「そうなの?」

曜「いつも明るい私が急に暗くなってたら、みんなも暗くなっちゃうでしょ?」

善子「さすがに自意識過剰じゃないかしら」
0006名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:33:58.52ID:oMcc4SEV
曜「善子ちゃんだって、周りからこう見られたい、ってのあるんじゃない?」

善子「え……まあ、なくはないけど」

曜「私だって思うよ。インテリ系美少女キャラで通ってる私としては……」

善子「能天気おバカキャラが何ですって?」

曜「善子ちゃん辛辣だね……」

善子「私だって、自己紹介のときは失敗しちゃったけど、今ではちゃんと『天界を追放されたヒトならざるモノ』として通ってるわよ」

曜「本当かな?」

善子「本当よ」

曜「でも私の前では『ヨハネよ!』って言わないよね」

善子「曜さんが好きなのは私でしょ?」

曜「あ、うん」

善子「何その『別にどっちでもいいけど』みたいな反応」

曜「いや、だってどっちも善子ちゃんだし……」

善子「ヨハネと私は別人なんだからね。いくら曜さんでも浮気はダメ」

曜「えぇ……」

善子「あっ、ほら面倒くさそうな顔した」

曜「し、してないよ!」

善子「心配しなくても曜さんの前では私でいるから……」

曜「みんなの前でも善子ちゃんでいればいいのに」

善子「何よそれ。ヨハネ全否定?」

曜「あ、そうじゃなくてさ。私には善子ちゃんのままでいてくれるんだから、善子ちゃんって自分のこと嫌いなわけじゃないんだよね?」

善子「……今はそんなに嫌いじゃない」

曜「前は嫌いだった?」

善子「そうよ。こんな人間みたいな体捨てて天使の姿に戻りたかったもの」

曜「人間の姿だからできることもあるよね」

善子「例えば?」

曜「え? 私と付き合うとか」

善子「天使の姿だったら嫌なの?」

曜「人間なんかと恋したらそれこそ羽を折られちゃうんじゃないの」

善子「まあ、確かに」
0007名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:34:32.03ID:oMcc4SEV
曜「でも善子ちゃんは今も天使だもんね」

善子「曜さんにとって?」

曜「そうだよ。天使と恋なんてしたら地獄行きかな?」アハハ

善子「そのときは私も一緒に行ってあげるわ」

曜「それじゃ天国だね」フフッ

善子「曜さんって地獄に落ちても笑ってそうね」

曜「善子ちゃんと一緒ならどこだって天国だよ」

善子「私と一緒じゃなかったら?」

曜「一人で地獄は嫌だなぁ」

善子「私も嫌ね」

曜「まあ、でもそんな先の話しても仕方ないよね。今こうして善子ちゃんといられるだけで十分かな」

善子「ん、まあね」

曜「今のうちにたくさん聖水を浴びておくことにするよ」

善子「聞こえはいいのに、やってることは地獄行き待ったなしよね」

曜「かなり罪深いね。特に学校でするなんて」

善子「そう思ってるならやめなさいよ」

曜「やめないよ」

善子「地獄に落ちても知らないわよ」

曜「死んだ後のことなんて死んでから考えればいいんじゃないかな?」

善子「その前向きさはどこから出てくるのかしら」

曜「もちろん、善子ちゃんからだよ」

善子「私?」

曜「善子ちゃんと話してると、何でもできそうな気がしてきちゃう」

善子「曜さんは本当に何でもできちゃいそうだから怖いわね」

曜「大抵のことならね。いくら私でもできないことはあるし……」

善子「そう? 自分で分かるようになっただけでもよかったわ」

曜「誰かさんが激辛生姜を食べさせたおかげでね」

善子「まだ根に持ってるの?」

曜「そりゃ持つよ。それだけショックだったもん」

善子「ふーん……」
0008名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:35:03.66ID:oMcc4SEV
曜「あ、根っこだけに、とかいうツッコミはないんだね」

善子「ないわね」

曜「善子ちゃんと話してると、どうも調子狂っちゃうんだよねぇ」アハハ

善子「私も曜さんと話してると疲れるわ」

曜「分かった、今から喋るの禁止にしよっか」

善子「え?」

曜「私と話すの疲れるんでしょ? ならお互い黙ってようよ」

善子「いや、別にそこまでじゃ」

曜「声出した方が負けね」

善子「いいけど……」

曜「それじゃゲームスタート!」

善子「……」

曜「……」

善子「……」

曜「あ、そうだ」

善子「はい、曜さんの負け」

曜「ルール説明してなかったから説明するね」

善子「何よ、勝手に始めておいて勝手に負けたんじゃない」

曜「何されても声出しちゃダメだよ」

善子「ええ」

曜「声出した瞬間恐ろしい罰ゲームが待ってるからね」

善子「何よ」

曜「えーと、それはあとのお楽しみで」

善子「思いつかなかっただけじゃない」

曜「それでは改めて、ゲームスタート!」

善子「……」

曜「……」ニヤニヤ

善子「……」ビクッ

曜「……」スッ

善子「っ!?」ガタッ
0009名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:35:41.86ID:oMcc4SEV
曜「……」パクパク

善子「??」

曜「…………」パクパク

善子「???」

曜(おしっこ飲ませて)

善子(は!? ダメに決まってるじゃない)

曜(何で? さっきは飲ませてくれるって言ったじゃん)

善子(ベッド汚したくないし……)

曜(私を誰だと思ってるの? 善子ちゃんのおしっこなんてこぼすわけないじゃん)

善子(……)

曜(さ、体調悪いんでしょ? 横になった方がいいよ)

善子(そう思うなら寝かせてよ)

曜(トイレ行くのも大変だもんね。私に任せて)

善子(トイレくらい行けるわよ)

曜(まあまあ、遠慮せずに)スッ

善子(下着脱がそうとしないで!)バッ

曜(そのままするの? さすがにこぼさない自信ないなぁ)

善子(分かったわよ、そこの紙コップにするから……)

曜(直飲みは?)

善子(絶対にダメ)

曜(何で? 確実じゃん)

善子(絶対変なことしてくるでしょ? びっくりして溢れるのが目に見えてるわよ)

曜(じゃあ見てるよ)

善子(別に見なくてもいいんだけど……)スッ

曜(下着、脱げる?)

善子(脱げるわよ)スルッ

曜(おぉ……)ドキドキ

善子(あ、あんまり見ないで……)カァアア

曜(なかなか大胆な下着だね)
0012名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:38:30.59ID:oMcc4SEV
善子(勝負下着だから)

曜(何の勝負?)

善子(曜さんと仲直りするためのよ!)

曜(なるほどね。こんな可愛いの見たら許しちゃうよ)

善子(見せるつもりで履いてきたわけじゃないわよ)

曜(またまたー、こうなることを期待してたんじゃないの?)

善子(してないわよ)

曜(いいから早くして)

善子(えぇ……)スッ

曜(……)

善子(ん……)チョロロ

曜(すー……はー……)

善子(うわっ、気持ち悪いわね……)チョロロ

曜(んんー! いい匂い!)クンクン

善子(そんな至近距離にいたら顔にかかるかも)チョロロ

曜(え!? 本当?)ワクワク

善子(かけないわよ! こぼしたら嫌だって何度も言わせないで)チョロロ

曜(……)シュン

善子(もう少し……)チョロ

ポタッ ポタッ

曜(コップ一杯ぴったりで溢れないなんて、いつの間にこんな技術を……?)ジッ

善子(いや、もう出ないから)

曜(私、教えてないのに……。ってことは善子ちゃんのママかな?)ジー

善子(だからもう出ないって)

曜(私のいない間に親子で何してたの……!? とんでもない変態じゃん)ヒキ

善子(え……何かごめんなさいこれしか出なくて)シュン

曜(まあ、とりあえず頂くとしますか……)スッ

ゴクッ

曜(うへぇ……♡)ウットリ

ゴクッゴクッ
0013名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:39:03.37ID:oMcc4SEV
善子(幸せそうな顔して………)

ゴクッゴクッ

曜(ぷはー! やっぱり善子ちゃんのおしっこは最高だよ)ニコニコ

善子(よかったわね……)ハァ

曜(お代わり!)スッ

善子(ん? ごちそうさま?)スッ

曜(お代わりくれるの!? やった!)

善子(このコップどうしよう……)

曜(お代わり♡ お代わり♡♡)ウキウキ

善子(いや、飲んだんだから自分で片付けなさいよ)スッ

曜(……?)

善子(ほら! 自分で飲んだんでしょ!?)スッ

曜(あっ!!)スッ

曜(私のも飲みたいってことだね!? いいよ!)スルッ

善子「え!!?」ガタッ

曜(でも出せるかなぁ? うーん……)

善子「ちょ、ちょっと曜さん? 出さなくていいから……」

曜(しまった、今日はあんまり水分補給してないから出そうにないぞ……)

善子「って言うか私もう喋っちゃったわ。私の負けよ」

曜(いや、善子ちゃんが飲みたいって言ってるのに出せないなんて恋人失格だ……)

善子「曜さん? 聞いてる?」

曜(善子ちゃんのこと好きなんだよね? なら出せるよ私!)モゾモゾ

善子「だめだ、自分の世界に入っちゃってる……」ハァ

曜(善子ちゃんへの気持ちをおしっこに込めればきっと……!)モゾモゾ

善子「あ、あの……出ないなら無理に出さなくても」

曜(……)モゾモゾ

善子「……」

曜「私の負けです」

善子「ん?」

曜「参りました」ペコッ
0014名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:39:40.24ID:oMcc4SEV
善子「いや、私とっくに喋っちゃってるから……」

曜「そういえば昨日から飲まず食わずだったの忘れてたよ。これじゃ出ないわけだ」

善子「よく今まで平気だったわね」

曜「善子ちゃんに嫌われたと思ってたから……もうおしっこする意味もないしね」

善子「おしっこって好きな人のためにするものじゃないんだけど」

曜「ちょっと飲み物買ってきてもいいかな? 少し飲めば出せると思うから……」スタッ

善子「飲み物買うのはいいけど、出さなくていいからね」

曜「ごめんね、体調悪いのに待たせちゃって……。すぐ行ってくるから」

ガラッ

善子「私の話聞こえてる?」

曜「……」

ストンッ

善子「……」

善子「何なのよ……」ハァ

善子「やっぱり曜さんといると疲れるわ」

善子「自分勝手で私のことなんてお構いなし」

善子「……」

善子「おっと……急に眠気が」

善子「あっ、そういえばまだ拭いて……」フラッ

善子「なかったような……」

ポスッ

善子「……」スー

……

ガラッ

曜「お待たせ。自販機だと二リットルのペットボトル売ってなかったからコンビニまで行ってきたんだ」

ストンッ

曜「善子ちゃんの分も買ってきたからね」ゴトッ

曜「あれ? もしかして寝たふりしてる?」

曜「まあいいや、ちょっと水分補給させてね」キュッキュッ

ゴクッゴクッ
0015名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:40:14.63ID:oMcc4SEV
曜「ぷはー! これでよしと」キュッ

曜「善子ちゃんも飲む?」

善子「……」スー

曜「え? 口移し? なかなか甘えん坊さんだねぇ」

曜「って言ってもまだおしっこは出せそうにないから普通の飲み物で我慢してね」キュッ

ゴクッ

曜(いくよ……)チュッ

チュル……

善子「げほっ!!?」ビクッ

曜「あ、むせちゃった?」

善子「げほっ、こ、げほっ、殺す気!!?」

曜「もしかして本当に寝てた!?」ガシッ

善子「最悪だわ……げほっ、おしっこが変なところに入っちゃったじゃない」ゲホッ

曜「安心して! 普通のお茶だよ!!」

善子「え? よかった……」ホッ

曜「ごめん……。まさかこんな短時間で寝ちゃうと思わなくて」

善子「寝不足なのよ。言わなかったかしら?」

曜「言ってたね」

善子「曜さんとだからつい楽しくお喋りしちゃったけど、こう見えてけっこう熱もあるみたいだし……」

曜「さっきより顔が赤いような? 何かあった?」

善子「どう考えても今のでしょ!?」

曜「熱、測ってみたほうがいいんじゃない?」

善子「そうね……」

曜「普通の体温計と曜ちゃん体温計、どっちがいい?」

善子「普通ので」

曜「はい」ピトッ

善子「普通のって言ったんだけど」

曜「んー、これはかなりある感じかな」

善子「朝から寒気が止まらなくて……。ただの寝不足かと思っていたけれど、本当に風邪かもしれないわ」

曜「これは……インフルエンザかもしれないね」
0016名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:40:50.15ID:oMcc4SEV
善子「え? そうかしら……」

曜「ちゃんと検査してもらわないとだよ」

善子「そうね、放課後になったら行くから連れて行ってくれる?」

曜「何言ってるの!? 今行かなきゃダメだよ!」

善子「そんなこと言われても……曜さんだって講習全部サボるのはマズいでしょ」

曜「大丈夫。私、今日は出席してないから」

善子「何も大丈夫じゃないし」

曜「いいから、病院行こう」

善子「気持ちは嬉しいけど……。曜さん、勉強の方はいいの?」

曜「後で一緒にやればいいよ。ね?」

善子「学年違うわよ」

曜「私が留年すれば同じ学年か」

善子「えっ……やめてよ?」

曜「善子ちゃんと同じクラスで同じ勉強ができる……」ゴクリ

善子「私は嫌よそんなの」

曜「何で? 私と一緒なのに?」

善子「少しは自分のことも考えなさいよ」

曜「……」

善子「留年なんて絶対しないでよね」

曜「そっか。うん、そうだね。さすがに留年するような恋人は嫌だよね」

善子「だから自分のことを考えなさいって」

曜「善子ちゃんも」

善子「私? 私はそこまで成績悪くないし……」

曜「自分のこと考えてさ、病院行っとこうよ」

善子「……ずるくない?」

曜「え?」

善子「曜さんって人を丸め込むの上手よね」

曜「そうかな? えへへ」

善子「褒めてないわよ」
0017名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:41:27.88ID:oMcc4SEV
曜「まあいいや、行こうか」スタッ

善子「そうね」スタッ

フラッ

曜「おっと……」ガシッ

善子「ごめんなさい」

曜「本当に大丈夫? さっきよりフラフラしてない?」

善子「あれ……何か床、斜めってない?」

曜「平らだよ」

善子「壁も何だか曲がってるような……」

曜「平らだよ?」

善子「……」

曜「大丈夫、善子ちゃんの胸はちょっとあるから」

善子「は?」

曜「嘘! 平らだよ」

善子「何ですって!?」ガタッ

曜「あっ、今のは素で間違えた! 平らじゃないよ!」

善子「視界が歪むってのは……それなりに重症ってことなのかしら……」

ピピッ

曜「えーと、三十九度? だいぶ熱もあるみたい」スッ

善子「え、いつ測ったのよ」

曜「さっき体温計の話したじゃん。覚えてないの?」

善子「あ……あれ、ちゃんと普通の体温計で測ってくれてたのね」

曜「善子ちゃんが普通のでって言ったんだよ?」

善子「ちなみに……曜さん体温計だとどんな測り方をするのかしら」

曜「それはね……ふふ♡」ニヤリ

善子「何よ」

曜「そんなこと聞いちゃうんだ? 善子ちゃんてば変態さん」カァアア

善子「え!? せめてキスとかじゃないの!?」

曜「仕方ない、そこまで言うなら測ってあげるよ。脱いで」

善子「嫌よ!! 病院連れて行ってくれるんでしょ? 早く行きましょう」スタッ
0018名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:42:01.22ID:oMcc4SEV
曜「ちぇ……」

善子「肩、貸してくれる?」

曜「もちろん。というかお姫様抱っこは?」

善子「恥ずかしいからいいわよ」

曜「んー、病人なんだから遠慮しないでいいのに」

善子「特に遠慮はしてないわ」

曜「じゃあ肩で」スッ

善子「ええ」

曜「近所の診療所でいいよね? 内科ならすぐ診てくれるはずだよ」

善子「私、そこ行ったことない」

曜「いつもどこ行ってるの?」

善子「えーと、堕天使は風邪なんて引かないから……」

曜「真面目に答えて。かかりつけの病院があるならそっち行ったほうがいいから」

善子「ないわよ。病院なんてもう何年も行ってないわ」

曜「なら近くのところにしよう。大丈夫、ちゃんと女の先生だよ」

善子「あ、そういうの気にしてくれてるんだ……」

曜「当たり前でしょ」

善子「優しいのね」

曜「私がおじさん先生の前で裸になってたらどう思う?」

善子「命の保証はしかねるわ」

曜「怖っ……」

善子「冗談……。先生は仕事なんだから裸なんて見たって何とも思わないでしょう」

曜「そうだよ。一日にたくさんの人を診てるんだから」

善子「それでも、あんまりいい気はしないわね」

曜「私ですらちょっと抵抗あるんだもの、善子ちゃんはもっと抵抗あるかなと思って」

善子「何よもう……。普段からこのくらい優しくしてくれればいいのに」ボソッ

曜「やっぱりお姫様抱っこでいい? 歩きにくいや」ヒョイ

善子「わっ、降ろして! 恥ずかしいから!」

曜「病人なんだから大人しくして」

善子「う……」
0020名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:43:31.85ID:oMcc4SEV
曜「大丈夫、パンツは見えてないよ」

善子「あっ、そういえば拭いてなかった!」

曜「え? じゃあ舐めるから待ってて」

善子「普通に拭いて! ううん、自分で拭くわ」

曜「もう乾いちゃってるでしょ。舐めたほうが綺麗になるって」

善子「ウェットティッシュあるから大丈夫よ」

曜「善子ちゃんの?」

善子「は? 他に誰のがあるのよ」

曜「そっか……うん」ドキドキ

善子「??」

曜「あ、何でもないよ。拭いてあげたいのは山々だけど、早いところ病院へ行かないとだからごめんね」

善子「待って? まさか歩きながら拭くわけ?」

曜「その方が早く着くでしょ?」

善子「お願いだから先に拭かせて」

曜「じゃあ私が拭くよ」スッ

善子「え、いいわよ。自分で拭けるから……」

曜「遠慮しないで」スッ

善子「あっ……」ビクッ

曜「ちゃんと拭かないとカブれちゃうからね」フキフキ

善子「っ……」

曜「ん? また顔が赤くなってきたかな。熱上がった?」

善子「だ、誰のせいだと……」カァアア

曜「……っと、こんなものでしょう」クンクン

善子「何嗅いでるのよ!」

曜「うん、善子ちゃんの匂いだ」

善子「それ拭けてないってことじゃ」

曜「まだしてほしいの? 我慢できなくなりそうだから遠慮しとくよ」

善子「どうしておしっこを拭くだけなのに我慢できなくなるのかしら? ねぇ?」

曜「いいから行くよ」ヒョイ

善子「わっ……」
0022名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:45:14.72ID:oMcc4SEV
曜「歩いてそんなにかからないから寝ててもいいよ」

善子「……」

……

 診療所

曜「インフルエンザかもしれないので検査してほしいんですが」

看護師「熱はありますか?」

曜「さっき測ったら三十九度ありました」

看護師「寒気や体の痛みは?」

曜「私に抱きついてないと凍え死んじゃうそうです」

善子「ちょっと! 変なこと言わないでよ」

看護師「えっと……」

曜「あ、診てもらいたいのは私じゃなくてこっちの子です」

看護師「それではこちらの問診票を書いてください。インフルエンザの疑いがあるのであちらの隔離スペースでお願いします」

善子「はい……」

曜「行こっか」

善子「え? いいわよ、一人で行くから。曜さんが行ってもウイルスを貰ってくるだけじゃない」

曜「一人で寂しくない?」

善子「別に」

曜「私は寂しいよ」

善子「せめてマスクくらいしなさいよ?」

曜「入り口にあったね。善子ちゃんの分も貰ってきてあげる」

善子「ありがと」

曜「それとも私がマスクになろうか?」

善子「え?」

曜「私が鼻と口を塞げば……」

善子「死ぬわよ」

曜「確かに」

善子「問診票書いてるから、その間に行ってきて」

曜「うん」スタッ

スタスタ
0023名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:46:09.18ID:oMcc4SEV
善子「……」

善子「ふぅ……」

善子「思ったより視界がグニャグニャで気持ち悪いわね……」

善子「一人じゃ真っ直ぐ歩くのすら難しいかも」

善子「曜さんがいてくれて助かったわ」

善子「……」ブルッ

善子「うぅ……寒い」ガタガタ

善子「曜さん早く戻ってきて……」

善子「……」

善子「意識が……」

善子「」バタンッ

……

……

「善子ちゃん」ユサユサ

「善子ちゃん大丈夫?」ユサユサ

善子「うぅ……」

「すごい汗……」フキフキ

善子「曜さん……?」

「ん?」

善子「診察まだ……?」

「もう終わったよ」

善子「そう……私寝ちゃってたのね」

「先生には私が説明しといたから」

善子「何から何まで悪いわね」

「目、開けられる?」

善子「眩しいから嫌……」

「部屋の中なのに?」

善子「すごく眩しく感じるの……目がチカチカして頭が痛くなるから」

「そっか……。熱出てるとね、あるよねそういうの」

善子「こんなに出たのいつぶりかしら?」
0024名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:46:52.20ID:oMcc4SEV
「代わってあげられなくてごめんね」

善子「ママみたいなこと言わないでよ」

「善子ちゃんが辛い思いしてるのに、何もできない自分が嫌になるよ……」

善子「十分してくれてるじゃない」

「そうかな……」

善子「私のそばにいてくれて……病院にも連れてきてくれて」

「恋人だもん」

善子「きっと恋人じゃなくてもしてくれたでしょうね」

「善子ちゃんだからしてるんだよ?」

善子「曜さんは優しいから……誰にでもしてあげるでしょ」

「こんなときまでヤキモチ? 調子が悪いときくらい休もうよ」

善子「……そうね」

「……」

善子「……」

「こんなときに言うのは変かもしれないけどさ……」

善子「私も好きよ」

「おしっこしたくなったらいつでも言ってね」

善子「……は?」

曜「あっ、その、変な意味じゃなくてね!? トイレ行くの大変でしょ。遠慮なく私を使っていいから」

善子「……」ハァ

「それとも私が連れて行こうか」

善子「できればそっちでお願いするわ」

「うん……」

善子「こんなときくらい我慢できないの? 私、これでも体調悪いんだけど」

「善子ちゃんはそのまま寝てればいいよ。私が飲みに行くから」

善子「……」

「自分でトイレ行くより楽だよね!? 私だけかな!?」
0025名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:47:26.21ID:oMcc4SEV
善子「分かったから大きな声出さないで」

「やった!」グッ

善子「飲ませるとは言ってないんだけど……まあいいわ」

「……」

善子「……」

「私、うるさいかな?」

善子「え?」

「ゆっくり寝たいかと思って」

善子「ううん。そこにいてくれてるって分かるから……」

「そっか、目を瞑ったままだから見えてないんだ」

善子「……」

「善子ちゃんってまつげ長いよね。羨ましいな」

善子「何よ急に」

「見てると吸い込まれそうだよ……」

善子「吸い込まれるの?」

「自分をこう、抑えてないとね」

善子「……」

「キスはダメだって言われちゃったからなぁ」

善子「は?」バサッ

曜「キス。先生に止められちゃった」

善子「あっ……頭が」フラッ

「無理しちゃダメだよ」

善子「先生に何言ったのよ」

「え? 診察のとき善子ちゃんが寝てたから、起こさないように診察してもらっただけだよ」

善子「それで、どうしてキスの話が出てくるの」

「どこまでならしてもいいですか? って聞いたの」

善子「えぇ……」

「過度な身体接触は控えるように言われちゃった」

善子「ならこんな近くにいたらダメじゃないの」

「特に粘膜の接触がダメらしいよ」
0026名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:48:01.41ID:oMcc4SEV
善子「つまり……キス?」

「それと、善子ちゃんが想像したようなこと」

善子「べ、別に想像なんてしてないし!」

「おしっこ飲むのはセーフなのかなぁ? 聞きそびれちゃった」

善子「ダメだと思うわよ……」

「そっか……そうだよね」シュン

善子「そんなに落ち込むようなことなのかしら……」

「そういえば、インフルエンザじゃなかったみたいだよ」

善子「えっ、そうなの!?」バサッ

曜「よかったじゃん」

善子「う……また頭が」フラッ

曜「急に飛び起きるから……」

善子「ただの風邪じゃ公休にならないじゃない……」

「冬季講習は欠席にならないから大丈夫だよ」

善子「ただでさえ短い冬休みがほとんど残らないわね」

「始業式の後はテストだからね、勉強もしておかないと」

善子「確か……講習でやった内容が出てくるんだっけ」

「そうだよ。講習を真面目に受けてればほとんど満点取れる簡単なテストらしいけどね」

善子「『らしい』って何よ」

「梨子ちゃんが言ってた」

善子「それは曜さんとは別の意味で信用ならないわね……」

「梨子ちゃんは私と頭の作りが違うんだよきっと」

善子「でも梨子さん、毎日欠かさず勉強してるって聞いたわよ」

「絶対嘘だよ。あれだけ頭よかったら勉強なんてする必要ないでしょ」

善子「逆よ。勉強してるから頭がいいの」

「うーん」

善子「曜さんだって真面目に勉強したら絶対いい成績取れるわよ」

「勉強しないと頭がよくなれないでしょ? でも頭がよくないと勉強はできないよね」

善子「だから?」

「勉強が先か、頭が先か……」
0027名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:48:40.64ID:oMcc4SEV
善子「やる気が先よ」

「なるほど。天才かな?」

善子「私はやる気がないからできない。曜さんもそんな感じするわね」

「私はやる気はあるんだよ? でもいざ机に向かうとさぁ」

善子「関係ないことばかり気になってきちゃうのね。あるあるだわ」

「善子ちゃんのこととかね」

善子「わ、私も曜さんのこと……思い出しちゃったりして」

「善子ちゃんも? だったら一緒に勉強すれば解決だ」

善子「そうかしら……」

「あっ、もちろん勉強中は変なこと禁止だからね? 分かってるとは思うけど」

善子「曜さんこそ変なこと言ってこないでよ。おしっこ飲まないとやる気が出ないとか」

「私はやるときはやるタイプだからね。そういうところはしっかりしてるよ」

善子「やらないときはやらないタイプなのね」

「どうしてそんなに後ろ向きなの」

善子「さあ? 風邪のせいかしら」

「私もそれなりに面倒くさいけど、善子ちゃんもけっこう面倒くさいね」

善子「何よ、急に悪口?」

「善子ちゃんが家庭教師雇っても、みんなやめちゃいそうだなぁ」

善子「曜さんが頭よかったらお願いしたのに」

「私が頭よかったら……?」

……

…………

 善子の部屋

コンコンッ

曜『こんにちは善子ちゃん』

善子『あ、先生来たんだ?』

曜『今日はね、ちょっとお話があるの』

善子『いつもの授業じゃないの?』

曜『善子ちゃん、もう少し真面目に勉強してくれると嬉しいな』

善子『勉強なんてやめて私と遊びましょ?』ギュッ
0028名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:49:18.37ID:oMcc4SEV
曜『そういうわけにはいかないよ。私は家庭教師として雇われてるんだから』

善子『家庭教師なんてやめちゃえば?』

曜『うっ……どうしてそんなこと言うの? 私のこと嫌い?』

善子『家庭教師じゃなくて……普通に遊びに来てくれたら……』ボソボソ

曜『善子ちゃん、授業が分からないから学校行くの嫌なんでしょ。一緒に勉強して、早く学校行けるようになろうよ』

善子『私が学校へ行けるようになったら……嬉しい?』

曜『もちろんだよ! そのために私は来てるんだからね』

善子『なら勉強なんてできないままでいいわ』

曜『そんなぁ』

善子『先生が毎日来てくれるなら……学校なんて行かなくても寂しくないもの』

曜『……』

…………

……

「善子ちゃんとは一緒にいたいけど、一緒にいると善子ちゃんのためにならないなぁ」

善子「どんな想像したのよ」

「ううん、不登校の善子ちゃんの元に私が家庭教師に行ったらって話」

善子「来なくていいわ」

「善子ちゃんは私のことに夢中になりすぎて勉強をしなくなっちゃって」

「私もいけないとは思いつつも善子ちゃんを好きになっちゃって……」

「そのうち、いつまで経っても不登校が直らないのは私のせいだってバレちゃうんだ」

善子「学校に行かなかったのは私の意思なんだから、誰のせいでもないわよ」

「まあでも、今はもう不登校じゃないんだし。私が家庭教師でもいいのかな?」

善子「真面目に教えてくれるならありがたいわね」

「教えるよ! 私に教えられればだけど……」

善子「ところで曜さんって成績どの位?」

「え?」

善子「聞いたことなかったから」

「千歌ちゃんよりは上で梨子ちゃんよりは下かな」

善子「千歌さん、今の聞いたら怒るわよ」

「具体的には、赤点ギリギリ回避するくらいの成績かな」
0031名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:52:09.83ID:oMcc4SEV
善子「そんなので私に教えられるのかしら……」

「いい成績が取りたいなら、私じゃない人に教わったほうがいいかもね」

善子「梨子さんとか?」

「それかダイヤさん。厳しそうだけど」

善子「そうね……」

「二人が暇ならだけどね? たぶん忙しいからやめた方がいいよ」

善子「……」

「でも二人とも優しいから、善子ちゃんがお願いすれば教えてくれるかな」

善子「それは何だか申し訳ないわね」

「私でよければいつでも暇だからね?」

善子「どこがよ。次の衣装、まだできてないんでしょ?」

「あ……うん」

善子「いいわよ、自分で頑張るから」

「……」

善子「そもそも、講習だって半分出てるから50点は取れると思うわ。赤点レベルの曜さんに教わることなんてないわよ」

「うっ……」

善子「だけど曜さんがどうしてもって言うなら……教えてあげてもいい」

「善子ちゃんが?」

善子「曜さんが赤点取って補習漬けになったら、練習に出られなくなるでしょ?」

「そうだけど……」

善子「それに、周りが満点近く取ってるのに私だけ50点なんて……」

「素直に『元気になったら一緒に勉強しましょ』って言ってくれればいいのに」

善子「言わない」

「私とじゃ嫌?」

善子「『善子ちゃんがしたいって言ったんだよ……?』とか言って変なことしてくるから」

「むぅ」

善子「だから私からは言わない」

「じゃあ……私から言うよ」

「一緒に勉強しよう」
0032名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:52:48.77ID:oMcc4SEV
善子「ええ」

「いいの?」

善子「私としたいんでしょ? いいわよ」

「善子ちゃんとしたい! 勉強だけじゃなくて色んなことしたいよ!」

善子「そういうのはダメ」

「えー? お菓子作ったり食べたりしようよ……」

善子「あ、そういうの? ならいいけど」

「期待させちゃったかな? ごめんね」

善子「してないから」

コンコンッ

ガラッ

「失礼します」

曜「あ、看護師さん」

看護師「点滴、終わりましたか?」

曜「えっと……はい! 確か三十分くらい前に」

善子「あっ……いつの間にか空っぽだわ」

点滴「」カラーン

看護師「終わったら声かけてくださいねって言いましたよね」

曜「忘れてたのそっちじゃないですか」アハハ

善子「ちょっと、やめなさいよ」

看護師「体調悪そうだから少し休ませてあげようと思ったら、楽しそうにお喋りしてるし……」

看護師「学校サボりたいだけなら帰ってもらえるかしら」

曜「は? 善子ちゃんは本当に体調悪いんですけど!? こんなに汗びっしょりだし! いい匂いするし!!」

善子「本当にやめなさいって」ガシッ

看護師「まあいいわ。次の患者さんが待ってるから、荷物まとめて」

ガラッ

ストンッ

曜「……」

善子「よほど話し声がうるさかったのね」

曜「酷くない? あれでも看護師??」
0033名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:53:30.94ID:oMcc4SEV
善子「向こうも仕事なんだから仕方ないわよ」

曜「ちょっと美人でナース服が似合ってるからって何言っても許されると思ったら大間違いだよ」

善子「べた褒めじゃない」

曜「善子ちゃんが注射されてるの見て」

曜「『いいなぁ……私もこのお姉さんに注射(意味深)されたいなぁ』」ニヤニヤ

曜「なーんて思った私がバカだったよ」

善子「それは本当にバカね」

曜「くっ……どうせ彼氏持ちのくせに!」

善子「関係ないでしょ」

曜「こうなったらナース服善子ちゃんを見せてギャフンと言わせてやる」

善子「私を巻き込まないで」

曜「あー、ムカついたら喉乾いた! おしっこ!!」

善子「あのねぇ……」ハァ

曜「早くしないと『まだですか?(イライラ』って来ちゃうよ」

善子「ここでするの!? 次の患者さん来てるって言ってたし、とりあえず出ないと……」

曜「じゃあトイレで飲む!」

善子「いいから、早く荷物持って。できれば私の分も持ってくれるといいんだけど」

曜「はい」スッ

善子「何?」

曜「お姫様抱っこ」

善子「大丈夫よ。点滴打ってもらったら少し楽になったわ」スタッ

善子「……っと」フラッ

曜「ほら! 無理しないで」

善子「じゃあ、肩だけ……」

曜「背中貸そうか」

善子「……」

曜「病院だもん、恥ずかしくないよ」

善子「そうよね……」グイッ

曜「よっと……」ヒョイ

善子「曜さん温かいわね」
0034名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:54:08.17ID:oMcc4SEV
曜「え? 善子ちゃんすっごく熱いけど」

善子「まだ熱あるのかしら? 自分だと分からないわね」

曜「このまま家まで帰れる? バスの中で大丈夫かな」

善子「……」

曜「分かった、一旦保健室に戻って休もう。落ち着いてから帰ればいいよ」

善子「曜さんは講習出てきなさいよ。帰りに迎えに来てくれればいいから」

曜「そんなこと言わないで。側にいさせてよ」

善子「赤点取っても知らないわよ」

曜「善子ちゃんに教わるから大丈夫」

善子「それでも先輩? プライドとかないわけ?」

ガラッ

看護師「……」

曜「あっ、今から出るところなんで大丈夫です」

看護師「さっきはごめんなさい。患者さんにクレームつけられて八つ当たりしちゃった」

曜「え?」

看護師「本当に大丈夫? お家まで帰れる? 何なら保護者の方に連絡して……」

曜「私、この子の恋人なので」

善子「……」カァアア

曜「このまま家までは心配なので、とりあえず学校の保健室に戻ります。どうしても帰れなそうなら電話して迎えに来てもらうつもりです」

看護師「そう……」

曜「あ、あの……私もごめんなさい。病院なのにうるさくして、迷惑かけたのはこっちなのに……」

看護師「ううん。ちょっとうるさかったのは事実だけど……」

善子「ごめんなさい……」

曜「ナース服、とっても似合ってますね」

看護師「え?」

曜「私にも注射してくれますか?」

善子「曜さん?」

曜「あ……えっと、変な意味じゃなくて。私が調子悪くなったら、そのときはお姉さんに注射してほしいんです」

看護師「私に……?」
0035名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:54:44.78ID:oMcc4SEV
曜「注射するときのお姉さん、すっごく楽しそうな顔してたので……」

善子「えっ」

看護師「そ、そんなことないと思うわよ?」

曜「人に針刺すの好きなんですよね? 私も刺されたいなぁ」アハハ

善子「」

看護師「……」

曜「えぇ……割りと真面目にドン引きされてる……」

善子「私も正直引いたわよ」

看護師「針を刺すときにね……いつも思うのよ」

看護師「ここで血管じゃないところに刺したらどうなるんだろう……って」

善子「そんなこと思ってたの!? 怖っ……」

看護師「患者さんの苦痛に歪む顔を想像して……それから刺すの」

看護師「もちろん現実ではちゃんと、血管の真ん中にそっと刺すわよ」

看護師「痛くないように、そっと……」

曜「優しいんですね」

善子(そうかしら!?)

看護師「どんなに丁寧にやっても、針を刺すってことは患者さんを傷つけること」

看護師「体は傷つけちゃうけど……心までは傷つけたくないって、そう思ってるの」

看護師「そう思っていたいの……」

曜「私なら好きに刺してくれてもいいですよ」

善子「えっ」

曜「もちろん顔とかは嫌ですけど……目立たないところなら」

看護師「ほ、本当!? あ……ううん! そんなこと全く思ってないから!」

善子「……」ヒキ

看護師「診察室出たら会計窓口までお願いします! それじゃお大事に!!」ガラッ

ピシャッ!

曜「……」

善子「何なの」

曜「本気にされちゃったかな?」アハハ

善子「冗談だったの!?」
0036名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:55:23.07ID:oMcc4SEV
曜「さすがの私も針で刺されるのは嫌だよ……」

善子「たぶん本気にされてるわね」

曜「えぇ……」

善子「曜さん、いつか痛い目に遭うわよ……」ハァ

曜「私が針まみれになっても好きでいてくれる……?」

善子「黙って刺されるつもり? 誤解を解く努力はしないの?」

曜「今さら『さっきのは冗談だったんです、刺さないでください』なんて言ったらそれこそ刺されるよ」

善子「それはしないでしょ。もう殺人未遂じゃない」

曜「でも、実際私が風邪とか引いて病院へ行くことなんてないし、ましてや注射されることなんてないから大丈夫だね」

善子「どうかしら」

曜「さ、次の患者さんも待ってるみたいだし出ようか」

善子「ええ」

曜「今さらなんだけどさ……善子ちゃんパンツ見えてない?」

善子「え?」

曜「ほら、今は私に抱きついてる状態でしょ。足を開いてるわけだから……もしかすると後ろからだと丸見えなのかな……と」

善子「そ、そういうことは早く言いなさいよ!! さっきの看護師さんに丸見えだったじゃない!!」バシッ

曜「いてっ! 私が悪いの? 善子ちゃんも女の子なんだから気にしようよ」

善子「熱出てて頭も痛いのにそこまで気が回らないわよ!」

曜「じゃあ……やっぱりお姫様抱っこかなぁ。それなら私がうまく隠せるし」

善子「う……」

曜「善子ちゃんがみんなに下着を見てもらいたい変態さんなら話は別だけどね?」ニヤニヤ

善子「もう! 本当にいじわるなんだから!」

曜「はいはい。それじゃ一旦下ろすね」ヒョイ

善子「……」ムスッ

曜「それではお姫様、お城までお連れしましょう」ヒョイ

善子「え……」

曜「目覚めのキスは必要ですか?」

善子「い、いらない!」カァアア

曜「あれ、また熱出てきた? 困ったなぁ……」

善子「もう嫌……早く帰りたい」カァアア
0037名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:55:59.78ID:oMcc4SEV
……

 学校 保健室

曜「ふぅ……」ストンッ

善子「お疲れ様。薬局が微妙に遠かったわね」

曜「大きい病院なら出てすぐのところに薬局があるんだけどね」

善子「確かこの薬、食後なんだっけ」

曜「あ、そうだったね。何か食べないとだ」

善子「お弁当忘れちゃった」

曜「え? 善子ちゃんのお弁当分けてもらえばいいやって思ってたのに」

善子「ママが作ってはくれてたんだけど……それどころじゃなかったから」

曜「そんなに私に会いたかった?」

善子「違うわよ。会いたくなさすぎて忘れてたの」

曜「……」シュン

善子「曜さんだってそうでしょうが! 私に会いたくないから朝練サボったくせに」

曜「そのまま学校も来なくていいやって思ったよ」

善子「何で来たのよ」

曜「赤点取りたくないし……」

善子「は?」

曜「休み明けのテストだよ。ほら、私こう見えて大学はスポーツ推薦で行くつもりだからさ。あんまり内申下げたくないんだよね」アハハ

善子「そう……」

曜「やっぱり善子ちゃんに会いたくなったから、とかの方がよかった?」

善子「別に。嘘つかれるよりは本当のこと言ってくれた方がいいわね」

曜「本当は会いたかったよ」ギュッ

善子「だからそういうのいいってば」

曜「本当に……会いたかったよ?」ギュ

善子「なら朝練来ればよかったじゃない」

曜「そのときは会いたくなかったもん。でも、忘れようとするほど善子ちゃんの顔ばっかり浮かんできてさ」

曜「これはもう一度会って謝らなきゃダメだって……許してもらえないのは分かってたけど……」

善子「髪型がボサボサだったのもそう?」

曜「謝ってそれで帰ればいいやって思ってた」
0039名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:57:45.40ID:oMcc4SEV
善子「会いたくなかったんじゃない」

曜「正直に言えば、私の気持ちがスッキリしないからって理由だけで来たのは事実」

善子「自分勝手ね」

曜「そうだよ。本当は私、自分のことしか考えてないもん」

曜「みんなに優しくするのは、『みんなに優しい私』が好きなだけ……」

曜「善子ちゃんといたときも『善子ちゃんに優しい私』が好きなだけだったんじゃないかなって」

曜「でも昨日でそれも終わっちゃった」

曜「だからちゃんと、もう恋人じゃないんだってはっきりさせたかったの」

曜「善子ちゃんの口から言ってほしかったの……」

曜「『大嫌い』って」

善子「……」

曜「私って嫌な子だよね……」

善子「……」

曜「善子ちゃんの恋人じゃなくなれば、こんな思いしなくてよくなるんだって……それで来たの」

曜「善子ちゃんのことなんて本当は一ミリも考えてなかったよ」

曜「最低だよね」フフッ

善子「今もそうなの?」

曜「え?」

善子「こうして私といるのも、『病人に優しい自分』が好きだから?」

曜「そんなわけないじゃん」

善子「本当のことを言って」

曜「……」

曜「来る途中のバスでね、夢を見たの」

曜「善子ちゃんと出会ってから昨日までの夢」

曜「あぁ、こんな子と付き合ってたんだなって思いながら見てたんだけど……」

曜「目が覚めたらね……私、泣いてたんだ」

曜「ブラウスの襟が濡れるくらいに……」

曜「これも『善子ちゃんに好かれてる私』が好きなだけだったのかな……?」

善子「……」

曜「でも今はね……はっきり言えるよ」
0040名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:58:33.27ID:oMcc4SEV
曜「善子ちゃんのことが好き。善子ちゃんが私を嫌いでも……」

曜「『善子ちゃんに嫌われてる私』でもいいから……」

曜「私は善子ちゃんを好きでいたい」グスッ

曜「嫌いになんてなれないよ」

善子「……」

曜「ごめんね? やっぱり自分勝手な理由だった」フキフキ

善子「はぁ……」

曜「だからね、善子ちゃんも本当の気持ちを聞かせてほしいな」

善子「私の?」

曜「どうして私に会いたくなったのか、とか」

善子「そんなの……」

曜「私に遠慮なんてしないで、本当に思ったことを言ってくれたら嬉しい」

善子「曜さんに会うつもりなんてなかったわよ」

曜「……」

善子「朝練に来たときも鞠莉さんに『曜は?』って聞かれたんだけど……」

善子「私、何て答えたと思う?」

曜「え? うーん、『あんなバカ知らないわよ』とか?」

善子「言いそうね」フフッ

曜「何て言ったの?」

善子「『誰?』って言った」

曜「『誰?』」

善子「完全に無視することにした、ってこと」

曜「……」

善子「だから朝練に曜さんが来てようが来てまいがどうでもよかったの」

善子「もし話しかけられたって、空耳か何かだと思って気にしなければいい」

善子「そんな人、私は知らなかった」

曜「……」

善子「まあ、いなくてホッとしたのは確かね」

曜「そうなんだ……」
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2018/02/11(日) 11:59:07.02ID:oMcc4SEV
善子「それともう一つ……私も最低なことをしたわ」

曜「……」

善子「梨子さんにね、私と付き合わないか聞いたのよ」

曜「えっ……」

善子「今思えば、梨子さんが私を引っ叩かなかったのが不思議なくらいね」フフッ

善子「みんなの前だから抑えたのかしら?」

曜「……」

善子「昨日、男の子になった私を見てドキドキしてくれてるの分かってたし……」

善子「手を繋いたときもこっちまでドキドキしちゃうくらい熱かったし」

善子「キスしたときなんて……本当に」カァアア

曜「……」シュン

善子「と、とにかく! 私は曜さんのいなくなった穴を埋めようと梨子さんに声かけたの!!」

曜「それは……何て言うか、私が言えることじゃないけど……」

曜「かなり最低だね」

善子「うっ……。いいのよ、はっきり言ってもらえて嬉しいから」

曜「でも……私ももしかしたらそうしたのかな」

善子「梨子さんに?」

曜「ううん」

善子「じゃあ誰によ」

曜「誰だろう? よく分かんないや」アハハ

善子「何それ」フフッ

曜「たぶん誰でもいいんだと思う」

曜「私のことを好きでいてくれる人なら、誰でも……」

善子「私もその一人?」

曜「まさか。善子ちゃん以外なら、誰でも同じってこと」

善子「バスの中で夢を見なかったらそうしてた?」

曜「かもね」

善子「……」

曜「後で梨子ちゃんに謝りに行こうか」

善子「ええ。千歌さんにも」
0042名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 11:59:45.67ID:oMcc4SEV
曜「千歌ちゃんに?」

善子「昨日、あんなに強くぶたれたのに忘れたの?」

曜「あ……」

善子「曜さんは何もしてないかもしれないけど……千歌さんは私のためにああしてくれたんだもの」

善子「私は二人に謝らなくちゃ」

曜「私もだね」

曜「あそこまで千歌ちゃんが怒るなんて、滅多にないんだよ」

善子「私は初めて見たわ」

曜「私も久しぶりかな。前に怒らせたときは何だったっけ……」

善子「あ、前も曜さんが原因だったのね」

曜「って言ってもずいぶん昔の話だよ? 小学生とか、そのくらいの」

善子「何となく理由は想像つくわ」

曜「もう忘れちゃったけどね」

善子「……」

曜「少し楽になった?」

善子「え? ま、まあね。曜さんと話すと疲れるけど、溜まった気持ちがすーっと消えてく感じがする」

曜「あ、そうじゃなくて体調の方」

善子「あ……うん、点滴が効いてるからかしらね。今は目を開けててもそこまで眩しくない」

曜「それはよかった」

善子「曜さんが病院連れて行ってくれてなかったら、私倒れてたかも」

曜「今にも倒れそうなくらいフラフラしてたし赤い顔してたよ」

善子「そんな状態の私をよく止めなかったわね……あの二人は」

曜「花丸ちゃんとルビィちゃんのこと? あんまり心配かけちゃダメだよ」

善子「二人にも謝らなきゃか……」

曜「何だかみんなに迷惑かけて申し訳ないね」

善子「元気になったら何かお返ししましょ」

曜「そうだねぇ」

善子「……」グゥ

曜「ん?」

善子「よ、曜さん? 全く食いしん坊なんだから」フフッ
0044名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:01:18.47ID:oMcc4SEV
曜「……」ジー

善子「悪かったわね! 昨日から何も食べてないのよ!」

曜「私もだよ」

善子「よくそんなに元気でいられるわね」

曜「善子ちゃんに会えたからかな」アハハ

善子「私、そんなにカロリー高そうな顔してる?」

曜「豆腐ハンバーグみたいな顔してる」

善子「えぇ……」

曜「カロリーの話ね」

善子「曜さんはプリンみたいな顔してるわよ」

曜「それは『今すぐにでも食べちゃいたい』って意味かな?」

善子「カロリーの話じゃなかったの?」

曜「豆腐ハンバーグ食べたくなってきた」

善子「普通のハンバーグじゃなくて?」

曜「体調悪いのに普通のハンバーグは胃に悪そうだよね」

善子「私、別にハンバーグ食べたいなんて言ってないわよ」

曜「でもプリンじゃあまり栄養にならないよ」

善子「プリンも……いや、食べたいけど」

曜「仕方ない、曜ちゃんが買ってきてあげよう」スタッ

善子「え?」

曜「お昼。食べないと治らないよ」

善子「いいわよ、そこまでしてくれなくても」

曜「何言ってるの? 早く元気になってもらわないと困るんだけど」

善子「……」

曜「講習出ないと本気でテストがヤバそう」

善子「私のことなんて放っといて出てくればいいじゃない」

曜「そうはいかないよ。善子ちゃんと一緒に勉強する約束したもん」

善子「私のことはいいから……」

曜「プリンだけじゃ足りないだろうから、他にも買ってくるよ。何がいい?」

善子「……」グイ
0045名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:02:26.04ID:oMcc4SEV
曜「ん?」

善子「ここにいて」

曜「え、でもお昼が……」

善子「お願い」ギュ

曜「……」

善子「お昼食べたいのは分かるけど……今は我慢して」

曜「何で?」

善子「『何で?』」

曜「うん」

善子「曜さんにいてほしいからよ。ダメ?」

曜「ダメじゃないよ」

善子「ならもう少し、ここにいて」

曜「じゃあお昼は……私でもいい?」

善子「……」コクッ

曜「えへへ」

善子「ってやっぱりダメ! 風邪がうつるから」

曜「キスしなければいいんでしょ」

善子「そういう問題じゃないわよ」

曜「おしっこはもう飲んじゃったけど」

善子「……」

曜「いいよ。善子ちゃんがどうしても私に側にいてほしいって言うなら」

曜「いつまでもここにいてあげる」ギュッ

善子「……」ギュ

曜「少し熱、下がったかな?」

善子「曜さんのせいで……また上がってきそう」

曜「じゃあ離れる?」

善子「……」

曜「離れ……」

善子「離れない」ギュ

曜「だよね」フフッ
0046名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:03:01.22ID:oMcc4SEV
善子「うつしたらごめんなさい」

曜「私、こう見えて免疫は丈夫だから」

善子「バカは風邪引かないって言うものね」

ガラ……

曜「ん?」

ルビィ「あ、あの……」

花丸「あっ……!」

ススッ ストンッ

善子「え? 今誰か来たの?」

曜「ルビィちゃんと花丸ちゃんがね、一瞬だけ来て帰ってったよ」

善子「あっ! 私と曜さんが抱き合ってるの見られたんじゃないの!?」

曜「見られたね」

善子「早く追いかけて連れ戻しなさい!」

曜「でも私と離れたくないんだよね?」

善子「一分以内に戻ってくること! いいわね!?」

曜「おっけー。待ってて!」ダッ

ガラッ ピシャッ!

善子(ふぅ……)

善子「まだ視界がグニャグニャするわね……」

善子(熱は下がったのかしら……? よく分からないけど)

善子(曜さんの暖かさがもう……)

善子(……)ブルッ

善子(寒い……)ガタガタ

善子(……)

善子(早く戻ってきて……)

善子(私のこと好きなんでしょ? だったら今すぐ……)

善子(そこのドアを開けて、私に『お待たせ』って言いなさいよ……)

善子(……)

善子(ねぇ、これって……本当に風邪?)

善子(病院の先生、何て言ってたのかしら……)
0047名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:03:37.84ID:oMcc4SEV
善子(インフルエンザじゃないとは聞いたけど……)

善子(……)

善子(私、死んじゃうのかな)

善子(このまま誰にも気づかれずにここで……)

善子(最後に曜さんの顔が見たい……)

善子(大好きって言ってほしい……)

善子(もう一度だけ……キスしてほしい)

善子(うつったらごめんなさい)

善子(曜さん……)

善子(……)

ガクッ

……

……

ガラガラ

曜「お待たせー! もう、二人ともあんなに足速かったっけ? なかなか捕まえられなかったよー」アハハ

花丸「見つかって十秒もなかったような……」ハァハァ

ルビィ「曜さん足速すぎだよ……」ハァハァ

曜「うん、一分以内だね。善子ちゃん、約束は守ったよ」

ルビィ「お弁当忘れたって聞いたから……ルビィたちのでよければ分けて食べようよ」

花丸「曜さんも一緒に食べる?」

曜「いいの!? 二人とも大好き」ギュッ

ルビィ「わわっ!? 善子ちゃんの前ではダメだよー!」カァアア

花丸「曜さんちっとも反省してないずら……」カァアア

曜「今のはわざと。ごめんね善子ちゃん」

シーン

曜「善子ちゃん?」

善子「」

曜「何だ、寝ちゃったのかぁ」

ルビィ「善子ちゃん、すごい辛そうだったから……」

花丸「お昼食べて、薬を飲んでから寝ないとよくならないよ?」
0048名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:04:14.56ID:oMcc4SEV
曜「そうだよね。善子ちゃんには悪いけど一旦起こそう」

曜「起きて」ユサユサ

曜「お昼、分けてくれるって」ユサユサ

ルビィ「一緒に食べようよ」

花丸「ちょっと様子が変じゃないかな」

曜「起きないとキスしちゃうよー?」

ルビィ「キス……」ドキドキ

花丸「善子ちゃん、息してる?」

曜「え」

花丸「……」

善子「」

ルビィ「ど、どうしたの花丸ちゃん」

花丸「わっ……すごい熱! 呼吸も弱くなってるし……」スッ

曜「……嘘でしょ?」

ルビィ「ええと……救急車、救急車はいくつだっけ……」

花丸「119だよ! 曜さんは善子ちゃんを呼んで! 起こして!!」

曜「息してるよね……? 大丈夫だよね……??」

プルル

『もしもし、ルビィ? 何の用ですの?』

ルビィ「あっ、間違えてお姉ちゃんにかけちゃった」

花丸「ちょっとルビィちゃん! 貸して!」パッ

ルビィ「あ……」

花丸「鞠莉さんいますか!?」

『いますけど……』

花丸「今すぐヘリコプター貸してください! 沼津総合病院まで!!」

『ちょ、ちょっと何ですのいきなり……』

花丸「善子ちゃんが大変なんです! お願いします!」

『鞠莉さん、今の聞こえましたか?』

『ええ、ええ……。救急車より早いでしょう。お願いします』

曜「そ、そこまでしなくても大丈夫だと思うよ? ほら、心臓だって普通に動いてるし……」
0050名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:05:46.23ID:oMcc4SEV
花丸「善子ちゃん、どんな症状か言ってなかった?」

曜「熱っぽいのと、寒気がするのと、フラフラして歩けないのと……」

曜「でも、お医者さんもインフルエンザじゃないって言ってたしさ」

花丸「他には? 他には何か言ってなかった!?」

曜「え……? あっ、そういえば……視界がグニャグニャするとか何とか」

花丸「!!?」

曜「で、でもそんなの、熱が出ればよくあることだよね?」

花丸「……」ガサゴソ

花丸「あった」スッ

ルビィ「体温計? 病院で測ったんじゃ……」

曜「うん。三十九度で変わらずだよ」

花丸「三十九度……」

曜「ね、ねぇ本当にヘリ出すの? 病院に怒られないかなぁ……」

ピピッ

花丸「えっと……四十二度」

ルビィ「ピギッ!?」

曜「え!? そんなに出てた!?」

花丸「解熱剤は? 飲んだ?」

曜「ううん、お昼食べてないから……」

花丸「今すぐ飲ませなきゃ」

曜「お昼食べてないよ?」

花丸「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」

ルビィ「あ……これだ。はい」つ

花丸「寝ててうまく飲めるかは分からないけど……」プチッ

曜「わ、分かった。私が飲ませる」

キュッ ゴクッ

ルビィ「え!? 曜さんが飲むの!?」

曜「口移しならいけるでしょ」グイ

善子「」グッタリ

曜「ちょっと苦しいかもだけど……我慢してね」チュッ
0051名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:06:22.35ID:oMcc4SEV
ルビィ「……」カァアア

花丸「善子ちゃん……」

曜「飲んで!」グッ

善子「」ゴクッ

花丸「やった!」

曜「ええと……後は熱冷ましかな? どこにあるんだろ……」

ルビィ「あ、熱冷ましなら……」ガサゴソ

ルビィ「はい! でもおでこの汗拭いてからじゃないとくっつかないかも……」

曜「ありがと!」フキフキ

曜「……」ペタッ

『もしもし!? ヘリの準備はできたわ! 今果南がそっちに向かってるから……』

ガラガラッ!

果南「大丈夫!? すぐ屋上まで運ぶよ!」

曜「うん!」

ガシッ

タッタッ

ルビィ「ね、ねぇ先生たちには連絡しなくていいのかな?」

『それは私に任せてください。善子さんの保護者にも連絡しておきます』

ルビィ「お姉ちゃん大好き!」

『わ、わたっ……私もですわ』

花丸「ルビィちゃん」

ルビィ「ごめん」

果南「こんなに熱いのに何してたの?」

曜「ええと……四十度いってないから休んでいれば大丈夫かなって」

果南「バカ! あんたは大丈夫でも善子は大丈夫じゃないの!!」

曜「うぅ……」

花丸「善子ちゃん……」スッ

善子「」

ルビィ「すごい汗だね……」

果南「やっと屋上だ……!」キィッ
0052名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:07:05.13ID:oMcc4SEV
バババ

曜「わっ……すごい風圧」

鞠莉「早く乗って! すぐ出るわよ!」

ルビィ「えぇ!!? 鞠莉さんが操縦するの!? パイロットさんは!!?」

鞠莉「今日は休みよ。大丈夫、私も何度も飛ばしてるから」

花丸「アウトローずら……」

果南「えーと、ヘリには全員は乗れないから……」

ルビィ「ルビィたちはお留守番してるね。果南さんは一緒に行ってあげて」

果南「え?」

花丸「善子ちゃんを運ぶのに、曜さんだけじゃ大変だよね?」

鞠莉「果南! アシスタントお願い!」

果南「えぇ……私ヘリの操縦なんて全く知らないんだけど」

曜「よいしょっと……」グイッ

善子「」

曜「シートベルトしてね……あ、変なところ触ってごめん」カチャカチャ

ダイヤ「い、今、善子さんのお母様には連絡しましたわ……。病院にも今から連絡します」ハァハァ

ルビィ「お姉ちゃん!」

花丸「曜さん、善子ちゃんをお願い」

曜「うん!」

鞠莉「それじゃ、みんな離れて! 離陸するわよー!」

バババ

果南「えっ、嘘、浮いてる!? 降ろして! 私じゃなくて他の人にしてよ!!」

鞠莉「何言ってるの。ダイヤにこんなことさせられないわよ」

果南「私はいいの!? 高いところダメなんだってばー!!」

バババ

ルビィ「気をつけてねー!」ブンブンッ

花丸「鞠莉さんー!」フリフリ

ダイヤ「そ、そういえば鞠莉さん、操縦免許なんて持っていましたのね」

ルビィ「高校生なのにすごいよねぇ」

花丸「一応、十七歳以上で取れるみたいだよ」
0054名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:08:49.63ID:oMcc4SEV
ダイヤ「しかし鞠莉さんが持っているかは……」

ルビィ「ま、まあ緊急だからね! 仕方ないよ!」

花丸「お留守番で心底よかったずら……」ホッ

……

 上空

バババ

果南「もう嫌だよ……降ろしてよ……」メソメソ

鞠莉「うーん! 気持ちのいい空ねぇ」

曜「善子ちゃん見える? あれが富士山……」

善子「」

果南「何でヘリって床が透明なの!? 考えた人バカじゃないの!?」

鞠莉「下が見えないと着陸のとき困るでしょ?」

果南「そうだけどさ……」ガタガタ

曜「少し薬が効いてきたかな? 熱冷ましのおかげかな?」スッ

鞠莉「大丈夫そう? できるだけ飛ばすけど……」

果南「お願いだからゆっくり行こう!? 危ないよ!」

鞠莉「早く着けばその分早く降りられるわよ」

果南「そ、そうだけど……」

鞠莉「じゃあ百五十ノットまで行きましょうか」

曜「大丈夫なの?」

果南「時速三百キロ……あああ落ちたら死ぬ」ガクガク

曜「善子ちゃん見える? 今新幹線と同じスピードで飛んでるんだよ?」

善子「」

鞠莉「百四十……百五十……」

果南「百五十超えてる! やめよう!」

鞠莉「ねぇ知ってる? このヘリ、ただのヘリだと思ったら大間違いよ」

曜「そういえば……普通のとちょっと違うね」

鞠莉「ふふ……」グイッ

バババ
0055名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:09:35.03ID:oMcc4SEV
果南「嫌ぁぁあ!!!(悲鳴)」

曜「ひゃああ!!(興奮)」

善子「うるさい!!!」

曜「あ、ごめんね寝てたのに」

鞠莉「まあ……私もこんなに出すのは初めてだしやめておきましょうか」スッ

果南「初めてだったの!!?」

善子「え……何なのこの状況……」キョトン

曜「熱は? ちょっと測ってみようか」スッ

善子「え、ええ」スッ

鞠莉「善子の意識も戻ったことだし、少しスピード落として行くわね。通り過ぎちゃわないようにしないとだし」

果南「こ、怖かった……」

曜「果南ちゃんだって水上バイクで百キロとか出してるよね」

果南「あれは海じゃん! 波さえ読めれば安全だよ!」

鞠莉「空だって風さえ読めれば安全よ?」

果南「無免許のくせに!!」

曜「無免許なの!!?」

善子「えっと……もしかして、今って無免許運転の現行犯なの?」

鞠莉「飛行禁止区域さえ気をつければ捕まらないわよ」

曜「果南ちゃんは水上バイクの免許持ってるの?」

果南「当たり前だよ! ウチは商売でやってるんだから!!」

ピピッ

善子「あ、鳴ったわ……」スッ

曜「ん……? 三十九度、最初と同じかぁ」

鞠莉「でもさっきは四十二度あったんでしょう? 少し下がったじゃない」

善子「え、私そんなに出てないわよ。病院で測ったときから三十九度で……」

曜「花丸ちゃんがすごく頑張ってくれたからね」

果南「曜がついていながら全く役に立たなかったからね!」

曜「わ、私だって薬飲ませたし!」

善子「薬? そういえば早く何か食べて飲まないと……」

曜「口移しで飲ませたから大丈夫!」
0056名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:10:18.39ID:oMcc4SEV
鞠莉「マウス・トゥ・マウス? やるじゃない♡」

果南「曜はみんなの体も自分と同じだと思わない方がいいよ……」

鞠莉「あら、果南は思ってるんじゃない?」

果南「思ってないよ! 鞠莉にだって優しく……って何言わせるの!」カァアア

善子「もしかして二人って付き合ってたりする?」

鞠莉「ええ♡」

果南「ないから」

曜「どっち?」

果南「ない。本当にないよ」

鞠莉「果南ってノリ悪いよね? ここはキスの一つくらいしてくれても……」スッ

果南「前見て! 前!!」

鞠莉「あら、もう着いちゃったの。もう少しゆっくり飛べばよかった……」ハァ

善子「えっと……私が寝てる間に熱が上がったから、鞠莉さんのヘリで病院まで連れてきてくれたってことでいいのかしら」

曜「そうだよ。救急車より全然速いからね」

鞠莉「ざっと三倍以上ね。救急車はマックス八十キロだから」

果南「病院が海の上だったらなぁ……」

善子「いや、悪いけど水上バイクで百キロの方が遥かに危険よ。一般的には」

曜「善子ちゃん、いつものキレが戻ってきた感じかな?」

鞠莉「ツッコミ不在だったものね。果南はいい歳してメソメソ泣いてたし」

果南「高いところは本当にダメなんだって……」

鞠莉「着陸するわよ。首の骨やらないように気をつけて」

果南「え」

曜「善子ちゃんの首は私が守るよ!」ギュッ

善子「いいからシートに体くっつけときなさいってば!!」

バババ

果南「地面が! 死ぬ!! 死んじゃう!!」

鞠莉「よっと……」

スッ

バババ……
0057名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:10:52.48ID:oMcc4SEV
曜「おお……」

善子「本当に無免許?」

鞠莉「風がなくてラッキーだったわね」

果南「」

鞠莉「さっ、曜は善子を連れて行ってあげなさい。病院にはダイヤが連絡してくれたから」

曜「ありがと!」

善子「えっと……果南さん、大丈夫?」

鞠莉「軽く死んでるけどノープロブレム☆ 人工呼吸すればすぐに……」

果南「死ぬ!! 降ろして!!!」

曜「あ、起きたよ」

果南「あれ……?」

善子「果南さん大丈夫?」

果南「だ、大丈夫……善子こそ大丈夫?」

善子「さっきよりは」

鞠莉「よかった。果南も起きたことだし行きましょうか」スタッ

果南「あっ、待って……」フラッ

ズテッ

曜「果南ちゃん!!」

果南「やばい……ヘリ酔いした」

善子「初めて聞いたわ」

鞠莉「まったくもう……だらしないんだから」スッ

果南「うぅ……気持ち悪い……」

曜「果南ちゃんもついでに診てもらおうよ」

鞠莉「ヘリ酔いですって言えば吐き気止めくらいなら貰えるかしら?」

善子「無免許バレたくなかったらバス酔いにしときなさい」

曜「そういえば酔い止めの薬って、電車と車と飛行機と……船は書いてあった気がするけど、ヘリでも効くのかな?」

鞠莉「ん?」

善子「バカなこと言ってないで行くわよ。ほら早く」

曜「帰り、飲んでみてくれる?」

果南「バスで帰るからいい……」
0058名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:11:30.27ID:oMcc4SEV
……

 診察室

先生「一旦は別の病院で診てもらって、インフルエンザじゃないと言われたのね?」

曜「はい。その時も熱は三十九度だったんですけど……」

善子「私が寝ている間に……四十二度まで上がったみたいです」

先生「そんなに出て大丈夫だった?」

曜「大丈夫じゃないから来てるんですよ」

先生「ま、まあそうよね」

善子「あんまり覚えてないんです……どうやって病院へ行って帰ってきたのかとか」

曜「視界がグニャグニャするって言うから私がお姫様抱っこして……」

先生「え?」

曜「お姫様抱っこです」

先生「そっちじゃなくて。視界がグニャグニャするって?」

善子「今も……何だか部屋が黄色く見えるし」

曜「やばいね! それはおしっこだ!」

善子「絶対違うわよ」

先生「えっと……」

曜「こんな感じに今は落ち着いてツッコミ入れてくれます」

善子「疲れるわ……」ハァ

先生「ちょっといいかな……目を開けてもらって」

善子「え? はい……」パチ

先生「……」スッ

善子「きゃっ!? 眩しいわよ!」ブンッ

曜「おっと、危ない」ガシッ

善子「あ……曜さんありがと」

曜「先生にビンタ食らわせたら大変だからね」

先生「瞳孔が少し開いちゃってるわね……これじゃまともに見えないでしょ」

善子「さっきは少し落ち着いてたんですけど……今は眩しくて」

曜「そういえばフラッシュも苦手だったね」

先生「それはたぶん関係ないかな」
0060名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:13:17.89ID:oMcc4SEV
善子「私もそう思います」

曜「そういえば花丸ちゃん、善子ちゃんの症状を聞いた途端びっくりしてたけど……あれ何だったんだろう?」

先生「?」

曜「あ、ええと、実は私が善子ちゃんの側にいて看病してたんですが」

曜「花丸ちゃんっていう可愛い子がいて……私の後輩なんですけど、その子が善子ちゃんの症状を聞いてきたんです」

善子「可愛いは言わなくていい」

曜「熱っぽいのと、寒気がするのと、フラフラするのと、視界がグニャグニャするって言ったんです」

曜「でも、どれも熱が出るとよくあることですよね?」

先生「……」

善子「先生?」

曜「一通り風邪の薬は貰ったし、食べて飲んで寝るしかないかなって……思ったんですけど」

先生「ちょっと詳しい検査をしてみましょうか」

善子「えっと……私、どこか悪いんですか?」

曜「頭かなぁ」

善子「失礼ね! 曜さんほど悪くないわよ!」

曜「ううん。そうじゃなくて、熱が出ると頭が痛くなるでしょ。検査するとしたら頭しかないじゃん」

先生「一応、血液の検査と、そうね……MRIかな」

曜「あのうるさいやつ!? ダメです! 善子ちゃんは頭が痛いんですよ!? あんなの聞いてたらそれこそおかしくなっちゃうよ!!」

善子「え……そんなにヤバい検査なの? やったことないんだけど……」

先生「昔のMRIは動作音がうるさくて大変だったけど、今のはだいぶ静かになって時間もそれほどかからなくなったのよ」

曜「そうなんですか? でもなぁ……」

善子「私のこと気にしてくれるのは嬉しいけど、検査しないことには悪いのか悪くないのか分からないじゃない」

曜「入れ墨してると受けられないんですよね?」

先生「えっ」

善子「してません!!」

曜「すみません、お金がないので後で払うのでもいいですか?」

先生「え、ええもちろん。そういえば親御さんは? まだいらしてない?」

曜「私が親です」

先生「えーと、まだいらしてない?」
0061名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:14:08.31ID:oMcc4SEV
善子「はい。何かすみません……」

曜「今は私が親です! え、おっぱいが飲みたい? ごめん無理」

善子「ちょっと黙ってられないの?」

曜「……」シュン

先生「そ、それでは血液検査お願いします」

「はーい、今行きます」スタスタ

曜「おっ、こっちのお姉さんもナース服似合ってるなぁ……」

看護師「それでは腕を出してもらって」

曜「はい」スッ

善子「私よ」

曜「だ、だよね」

看護師「あら? こっちは……」

善子「点滴打ってもらったので」

看護師「じゃあ仕方ないわね。同じところに刺すわけにはいかないし」スッ

曜「一つ聞いてもいいですか?」

看護師「え、私?」

曜「人に針を刺すのって楽しいですか?」

看護師「……」

善子「やめなさいよ」

曜「心配じゃん」

看護師「楽しくはないけど……」

曜「もし刺したくなったら私にしてください。善子ちゃんにはしないで」

善子「変な心配してくれてありがとう」

看護師「えっと、いいかな?」

善子「お願いします」

スッ プス

善子「っ……」ビクッ

曜「いい顔してるね」

善子「気持ち悪いわよ」
0063名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:15:49.61ID:oMcc4SEV
看護師「本当に仲がいいのね」フフッ

曜「はい! 恋人なので!」

看護師「ん?」

善子「あ、えっと! 部活の先輩と後輩です!」

看護師「そ、そうなの。何部?」

曜「そんなこと聞いちゃうんだ……?」カァアア

善子「スクールアイドル部です」

看護師「アイドル! すごいわね。歌って踊るあのアイドルでしょ?」

曜「曲や衣装も自分たちで作るんだよ」

看護師「はぁ……。今の子たちってすごいのねぇ」

曜「やだな、看護師さんも若いじゃないですか」アハハ

善子「ちょっと曜さん?」

曜「私の制服着てみます?」

看護師「……遠慮しておくわ」

曜「ところでご結婚は?」

看護師「一応ね。子どもも二人いるわ」

曜「」

善子「曜さん」ツンツン

曜「」

看護師「これで終わり。しばらく押さえておいてね」

善子「はい」

看護師「ええと、次はMRIだっけ? ここを出て左に進むと放射線科があるから、そっちの方へ行ってもらえば分かると思うわ」

善子「ありがとうございます」

曜「」

善子「行くわよ」

看護師「大丈夫? 生きてる?」

善子「軽く死ん……いえ、大丈夫です」

看護師「そう……」

ガラッ
0064名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:16:25.48ID:oMcc4SEV
ストンッ

善子「危うく言っちゃいけない冗談を飛ばすところだったわ……」

曜「まだ二十代前半だよね? なのに子ども二人もいるのかぁ……」

善子「あのねぇ」

曜「あ、心配しなくてもそういう目では見てないよ」

善子「見てたでしょ。見てなかったらあんなこと言わない」

曜「いや、さすがに結婚してて子持ちの人にこの制服を着せるのはまずいかなって思っただけだよ」

善子「何で着させる前提なの」

曜「たぶんあの人、浦女の出身だからね」

善子「え?」

曜「私たちの制服見て、懐かしそうな目で見てたから」

善子「よく観察してるわね」

曜「むしろ観察されてたんだけどね」

善子「いいから、早くMRIだか何だかの部屋まで行きましょ」

曜「はい」スッ

善子「よっと……」

曜「私が最後に受けたときは酷い音と振動で吐きそうになったよ」

善子「そんなに?」

曜「んーとね、例えるなら耳元でファクスが百台くらい動いてる感じ」

善子「……イマイチ分かりにくい例えね」

曜「受けてみれば分かるよ。そうとしか表現しようがないもん」

善子「そもそもファクスってどんな音だったか忘れちゃったわ。今の時代使わないじゃない」

曜「『ぴーー』『がーー』」

曜「みたいな音だよ」

善子「全く分からなかったわ」

曜「今度学校の職員室で聞いてみるといいよ」

善子「別に聞きたくないけど」

曜「そう……」

善子「とにかく、嫌な音だってのは伝わってきたわ」

曜「精神衛生上よくないねアレは」
0066名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:18:01.43ID:oMcc4SEV
善子「……」

曜「おっと、もう着いちゃった。部屋の中には私は入れないからここでお別れだね」

善子「えっ……側にいてくれないの?」

曜「うっ……そんな可愛いこと言われたらいてあげたくなっちゃうよ」

曜「でもダメなの。動いてる途中は検査技師の人ですら部屋に入れない」

善子「……」

曜「怖い?」

善子「怖くない……わけない」

曜「そうだ、今のうちにトイレ行っておこうよ。始まったら最後、終わるまでトイレなんて言い出せる雰囲気じゃないからね」

善子「分かったわ」

……

 トイレ

キィ バタン

ガチャ

曜「さて、私が見ててあげるからしていいよ」

善子「見なくていいわよ。そこにいてくれればそれで」

曜「本当は私が飲んであげたいくらいなんだけど……ダメって言われちゃったからなぁ」

善子「それなら仕方ないわね。潔く諦めなさい」

曜「煮沸したら飲めると思う?」

善子「臭そうね」

曜「いい匂いすぎて頭おかしくなっちゃいそう」

善子「変なこと言ってないで、あっち向いててよ」

曜「はいはい。あんまりいじわるしたら可哀想だし……」クルッ

善子「……」スッ

ショワァ……

曜「あー、いい音」

善子「気持ち悪いわね……」

ジョボボ

善子「ふぅ……」

ジョボボ
0067名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:18:40.51ID:oMcc4SEV
曜「ごめん、やっぱり私もする」クルッ

善子「え? こっち向かないでって言ったじゃない」

曜「善子ちゃんの上からしてもいい?」スッ

善子「は?」

曜「大丈夫、善子ちゃんにはかけないから」

善子「ちょ、ちょっと何私の上に座ろうとしてるわけ?」

曜「重かったらごめんね」ズシッ

善子「うっ……」

曜「そんなに重い?」

善子「重い」

曜「すぐ終わるから」

ジョボボ

善子「う……曜さんの匂いがする」

曜「やっぱりそっち向いてしてもいいかな」

善子「もう出てるんだから無理よ」

曜「そっか……こぼしたら嫌だしなぁ」

ジョボボ

善子「……」

曜「何かさ、これって二人羽織りみたいだよね」

善子「何?」

曜「二人羽織り。蕎麦を二人で食べるやつ」

善子「あぁ……」

曜「というわけだから、拭くのは善子ちゃんがやってね」

善子「何でよ」

曜「私は善子ちゃんの目隠しを」スッ

善子「あっ、こら見えないでしょ!」

曜「そんなに私の見たい?」

善子「そうは言ってない」

曜「見たくない?」

善子「見たくないわよ」
0068名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:19:18.17ID:oMcc4SEV
曜「じゃあどうしてこんなにドキドキしてるのかな」

善子「こ、これは……熱っぽいだけだから」カァアア

曜「私とそういうことしたいんじゃないの」

善子「べ、別にいいでしょ? 今は関係ないし」

曜「見えないと可哀想だからトイレットペーパーは渡してあげる」スッ

善子「……」

曜「さ、早く拭いて」

善子「病人にこんなことさせるなんて、酷い恋人ね」

曜「どうしても嫌ならいいよ」

善子「どうしても嫌」

曜「本当に?」

善子「本当に」

曜「うぅ……」スタッ

善子「あぁ……足がフワフワする」

曜「そんなに重くないよ! 失礼だね!」

善子「……」

曜「嫌なんでしょ?」

善子「嫌よ」

曜「じゃあ自分で拭いて」

善子「……」

曜「私が拭くのはいいのかな」

善子「……」

曜「いいんだね?」スッ

善子「っ……」ビクッ

曜「言っておくけど善子ちゃん、私、そこまでこういうことしたいわけじゃないからね」

善子「……」

曜「おしっこは大好きだけど、セクハラは趣味じゃない」

善子「どの口が言うのよ」

曜「着せ替えだって衣装係の血がそうさせるだけで、決して変な気持ちではないよ」

善子「嫌な血」
0069名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:19:53.90ID:oMcc4SEV
曜「おしっこ拭いてあげるのも善子ちゃんだからしてあげるよ。誰にでもこんなことするわけじゃないから」

善子「他の子にしてたら大変よ」

曜「あんまり強く拭くと粘膜傷つけちゃうからこのくらいで」

善子「……」

曜「善子ちゃん、してほしいのは分かるけどさ、この後検査なんだからね?」

善子「拭いてくれてありがと。早く行きましょ」

曜「まだ私が拭いてない」

善子「早く拭いて」

曜「善子ちゃん拭く?」

善子「……そういうこと、好きじゃないんじゃなかったの?」

曜「善子ちゃんならいいよ」

善子「でも嫌なんでしょ?」

曜「嫌じゃないよ」

善子「ほんの少しでも嫌だと思うなら言って」

曜「……嫌」

善子「そう。なら自分で拭いていいわよ」

曜「ここでは嫌」

善子「は?」

曜「私だって我慢してるんだからね」ボソッ

善子「そ、そう……」カァアア

曜「早く元気になって、またおしっこ飲ませてよ」

善子「元気になっても飲ませない」

曜「じゃあ元気にならなくてもいい? そんなわけないよね」

善子「どうしておしっこを飲ませるイコール元気なのよ。大丈夫?」

曜「それで、私は誰に拭いてもらえばいいのかな」

善子「自分」

曜「分かった」スッ

フキフキ

善子「……」

曜「見すぎ」
0070名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:20:30.78ID:oMcc4SEV
善子「えっ、あ……だって目の前でされたら見るしかないじゃない」

曜「そういうのはまた後で」フキフキ

ポイッ ジャー

善子「……」

曜「さ、早く検査行こ」

善子「そうね……」

……

 MRI室前

看護師「あっ、どこ行ってたの? もしかして迷っちゃった?」

曜「ちょっとお花を摘みに」

看護師「え? あぁ、お花……」

善子「……」

看護師「準備がよければ中で検査を受けてもらうけど……大丈夫?」

善子「……」

曜「怖い?」

善子「少し」

看護師「残念だけど、付き添いの方は部屋に入れないの。ここで待っててね」

曜「頑張って行ってらっしゃい」

善子「う……」

看護師「大丈夫よ。初めてだと訳が分からないうちに終わるから」

曜「善子ちゃんをお願いします」ペコッ

看護師「ええ。それじゃ入りましょうか」

善子「……」

曜「怖いんだね。分かるよ……」ギュ

善子「ここで待っててよね」

曜「もちろん」

善子「すみません、待たせてしまって」

看護師「大丈夫よ。それにしても、本当に恋人みたいに仲がいいのね……」ガラッ

スタスタ

トスッ
0071名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:21:04.34ID:oMcc4SEV
曜「……」

曜「何ともないといいけど……」

曜(それにしても、頭が痛いときにあの音は本当にキツいよねぇ)

曜(しかも変な機械で頭を固定されちゃうし)

曜(でも……頑張ってね)

……

 十分後

ドタンッ ダッダッ ドシーン!

曜「!!?」ガタッ

「あっ、ダメよ津島さん!」

「うるさい! 早くここを開けて!!」

ドンドンッ

「今開けるから……」ガチャ

ガラッ!

善子「曜さん!」ダッ

ギュッ

曜「よ、善子ちゃん……?」

善子「ううっ……」ポロポロ

曜「大丈夫? 何があったの?」

看護師「ふぅ……。何とか検査は終わりました」

曜「すごい音がしましたけど……」

看護師「変な声が聞こえるらしくて……急に泣き出してしまったの」

曜「変な声……?」

善子「死ぬかと思ったわよバカ!!」

看護師「……」

曜「すみません」ペコッ

看護師「いえ……」

善子「もう二度とごめんだわ」グスッ

曜「怖かったね……」ナデナデ

善子「もう嫌……帰りたい」
0073名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:22:34.83ID:oMcc4SEV
曜「検査の結果聞いてから帰らないと」

看護師「落ち着いたら、先ほどの診察室の前でお待ちください」

曜「はい。ありがとうございます」

看護師「……」

曜「すみませんでした」ペコッ

看護師「ううん、そうじゃないの」

看護師「……まあ、先生からお話があるでしょう。それでは」

ガラ……

ストンッ

曜「えぇ……」

善子「ううっ……」グスッ

曜「あれ……」クンクン

曜「もしかして善子ちゃん、漏ら……」

善子「……してない!」

曜「トイレ、行こうか」

善子「漏らしてないってば」グスッ

曜「うん……私が行きたくなっちゃったんだよ。善子ちゃんも来るでしょ」

善子「……」グスッ

 トイレ

曜「さ、そこ座って」

善子「……」ストッ

曜「スカートでよかったね」スッ

善子「やっ……」

曜「ごめんね」スルッ

善子「や、やめてよこんなところで……」

曜「あー、やっぱり……」

善子「漏らしてないから……トイレもちゃんと行ったし」

曜「そうだね。トイレに行ってなかったら大惨事だった」スッ

フキフキ

曜「検査室に私も入れればよかったんだけどね」
0074名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:23:11.13ID:oMcc4SEV
善子「曜さん、あんな検査だって知ってたのよね」

曜「……知ってたよ」

善子「何で言ってくれなかったの」

曜「言ったよ? 耳元でファクスが百台動く音だって」

善子「違うわよ! 変な声がたくさん聞こえて……すごく怖かったんだから!」

曜「変な声……? どんな?」

善子「そ、それは……」

曜「……」

善子「思い出したくない」

曜「そう……。無事に終わってよかったよ」

善子「全然よくないし……」グスッ

曜「診察室行こうか」

善子「……」

曜「よいしょっと」ヒョイ

善子「……」

……

 診察室

コンコン

「どうぞー」

曜「失礼します」ガラッ

先生「あら、ラブラブね」

曜「あはは、そうなんです」

善子「……」

先生「えっと……それじゃ津島さんはこちらで寝てもらっていいわよ」

曜「はい」スッ

善子「……」ストンッ

先生「検査、大変だったって聞いたけど……落ち着いた?」

曜「何とか」

善子「……」グスッ

先生「それじゃ、検査の結果ね……」スッ
0075名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:23:44.06ID:oMcc4SEV
カチッ カチッ

先生「これが脳のMRI画像……」

曜「んん!!? これは!!」

善子「えっ!?」バサッ

曜「さっぱりわからん」

先生「……」

善子「何よ……」

先生「特に異状はないわね」

曜「よかった……」ホッ

先生「ただ……ちょっと気になることが」

曜「何ですか?」

先生「検査の途中、変な声がたくさん聞こえたって言う話……」

曜「どんな声なんですかね」

先生「津島さん、何が聞こえたか教えてくれる?」

善子「……嫌」

曜「善子ちゃん。先生が聞いてるんだから答えなきゃ」

先生「言葉かな? そもそも人の声?」

善子「……」コクッ

先生「男の人? 女の人?」

善子「そんなの……分からないわよ」

曜「何て言ってた?」

善子「……」

先生「ごめんね。無理に話さなくてもいいわ」

曜「……」

先生「血液検査の結果も特に異状はなし。白血球の数値は基準より高めだけど……風邪を引くと誰でも上がるから心配しなくても大丈夫」

先生「もちろん、インフルエンザではなかったわ」

曜「そうですか……」

先生「それで……お母様が来てくださると聞いたんだけど」

曜「え? そういえばまだ来てないのかな」

善子「ママは……学校の先生なのよ」ボソッ
0076名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:24:21.52ID:oMcc4SEV
先生「あらそう。それじゃあ抜けられないわよね」

曜「娘がこんなに辛い思いしてるのに……」ハァ

善子「無茶言わないで」

曜「私の方から連絡しておきます」

先生「ええ。お願い」

善子「……」

先生「ねぇ、この後時間はある?」

曜「ランチのお誘いですか!? 行きます!」

善子「……」

先生「……」

曜「じょ、冗談ですよ」アハハ

先生「私、こう見えて心療内科医なの。今の段階ではっきりした診断は出せないけど……」

善子「……」

先生「急性ストレス障害の疑い濃厚、ってところかしらね」

曜「何ですかそれ」

先生「心に強いストレスがかかるとね、それが体の症状に出てくるのよ」

先生「最もよくあるのは頭痛や腹痛。大事な会議の前にお腹が痛くなったりしない?」

曜「学生なので会議は……」

先生「あー、そうね。じゃあ何かの発表とか。ものすごく緊張するような場面」

曜「え? じゃあ善子ちゃんは緊張しすぎて?」

善子「ないわよ」

曜「トイレ我慢しすぎて?」

善子「ないわよ!」

先生「緊張とは限らないの。とにかく強いストレスを感じれば、ストレス反応は起こるわ」

曜「……」

先生「何か心当たりでも?」

曜「私とケンカしたことかな」

善子「……」

先生「そう……」

曜「で、でも仲直りしたよね!?」
0077名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:24:54.41ID:oMcc4SEV
善子「ええ」

先生「……」

曜「でも治ってないどころか酷くなってるってことは」

曜「私以外にあるってこと?」

善子「他に何があるのよ」

曜「私のこと許せないから……それがストレスなの?」

善子「あ、あれはその……。許せないってそういう意味で……本当に許さないつもりで言ったわけじゃないわよ」

曜「じゃあ許してくれてるの?」

善子「許さないわけにはいかないでしょ。曜さんの恋人でいるって決めたんだもの」

先生「え?」

曜「あ、すみません。私たち付き合ってるんです」

先生「そ、そうなの……」

曜「私のために、無理して恋人でいてくれてるのかな」

善子「そんなわけないじゃない!」ガタッ

先生「落ち着いて」

曜「……」

善子「さっき言ったこと……本当に本心だったんだけど!?」

曜「さっきのって?」

善子「曜さんの恋人でいたいからいるの。無理なんてしてないし、曜さんにもしないでほしい……」

曜「……」

先生「キスはした?」

善子「えっ!? な、何ですって? よく聞こえなかったわ」

曜「い、いえ今日はまだ」

先生「ふむ……」カキカキ

善子「それが何の関係があるのよ」

曜「キスしたら治るのかな?」

善子「そんなわけないでしょ」

先生「相手のこと、どのくらい好き?」

曜「善子ちゃんのこと……世界でいちばん好きです」

善子「わ、私も……」カァアア
0078名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:25:31.78ID:oMcc4SEV
先生「もう少し具体的にお願い」

曜「というと?」

先生「あー、こういうのは相手の目の前じゃ話しにくいわよね。それじゃ次の質問」

先生「もし相手に別れを切り出されたらどうする?」

曜「私は……私のどこが嫌になったのか聞いて、それを直してもう一度好きになってもらえるように努力するかなぁ」

先生「津島さんは?」

善子「え? えっと……。まず曜さんが別れを切り出してくる様子が想像できないわね」

曜「ん? じゃあやってみようか」

善子「いや、やらなくていいでしょ」

先生「そうね、せっかくだからやってみて」

善子「え」

曜「じゃあいくよ……」

曜「ごめん善子ちゃん。私、好きな人ができたんだ」

善子「……は?」

曜「あ、いやそこは乗ってよ。意味が分からなくてもいいからとりあえず話を合わせなきゃ」

善子「えっと……」

曜「善子ちゃんのことも好きだよ? でも二股はよくないと思ってさ」

善子「相手は誰?」

曜「気になる? ふふ……秘密♡」

善子「梨子さんね?」

曜「ち、違うよ」

善子「千歌さん?」

曜「ううん」

善子「じゃあ誰よ」

曜「……男の人だよ」

善子「え……」

曜「すごく優しくてカッコいい人なの……。お金持ちで、欲しいものは何でも買ってくれるんだ」

善子「そ、そんなの騙されてる! ねぇ、まさかお金貰って……!?」

曜「一回デートするだけで十万円もくれるんだよー」アハハ
0079名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:26:10.74ID:oMcc4SEV
善子「っ!!」ガタッ

グイッ

曜「あぐっ……」

善子「曜さんがそんなことするなんて……!」ググッ

曜「よ、善子ちゃ……苦しい」

善子「私はお金持ちじゃないから……曜さんの欲しいものなんて買ってあげられないかもしれないけど……!」グッ

曜「……っ」

善子「お金じゃ『好き』は買えないのよ!?」グイッ

曜「……」ピクピク

先生「ストップ。もういいわ」

善子「何とか言いなさいよ! このっ!!」グッ

曜(先生助けて……!)チラッ

先生「津島さん。一旦離れましょう?」

善子「ふふ……」ニヤリ

曜「」ビクッ

善子「曜さんなら私の手なんて簡単に振りほどけるのに」

善子「そうしないってことは……そうなのね?」

善子「私に殺されたいってことね??」ググッ

先生「津島さん!!」ガシッ

善子「……はっ!?」ビクッ

先生「本当に死んじゃうわよ」

曜「」

善子「あぁ!? ごめんなさい!! 私……どうして」パッ

曜「げほっ!! おぇっ!!」ハァハァ

先生「大丈夫?」

曜「本当に……死ぬかと思った……」ゲホッ

善子「わ、私……」

先生「ふぅ……危なかったわね」

善子「ごめんなさい! でも……いくら演技とはいえあんなこと言う?」

曜「せめて別れを切り出させてよ……」ゼェゼェ
0082名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:28:54.78ID:oMcc4SEV
善子「……」

先生「二人は、付き合ってどれくらい経つの?」

曜「二週間くらいですかね」

先生「今までにケンカは?」

曜「昨日派手にやらかしました」

先生「派手に、というと?」

善子「殴り合いとか、そういうのはないわよ」

曜「私は思い切り引っ叩かれたけど」

善子「それは私じゃないし」

先生「ケンカの原因……聞いてもいい?」

曜「私です」

善子「はい」

先生「そ、そう……」

先生「いつ仲直りしたの?」

曜「今日の午前中かな。私が会ったときにはもうフラフラでした」

善子「昨日から全く眠れてなくて……」

先生「なるほど」カキカキ

曜「それで、その……ストレス何とかは治るんですよね?」

先生「治るわよ。それに……まだ昨日のできごとなら、むしろ正常とも言えるわね」

曜「正常!? これが!!?」ガタッ

善子「曜さん落ち着いて……」ガシッ

先生「一ヶ月以上続くようだと心的外傷後ストレス障害……つまりPTSDに該当するけれど」

先生「そこまで続くことはほとんどないわ。たいてい一週間もすれば自然に収まる」

曜「一週間も我慢しろと? こんなに辛そうなのに!」

先生「待って。何もしないとは言ってないわ」

曜「ならいいですけど……」

先生「そうね……光に過敏になったり、一晩中寝付けないというのは、神経が異常に興奮しているからで間違いないでしょう」

曜「……」

先生「大切な人との別れや災害などで心に酷いダメージを受けたとき、自我を保つために起こる反応よ」

先生「だから……これは病気ではないわ」
0083名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:29:37.59ID:oMcc4SEV
善子「病気じゃない……?」

先生「熱が出たりフラフラしたり、風邪に似た症状が出ているのもそのせいね」

先生「もし今の津島さんが抗生物質を飲んだところで治るものじゃないのよ」

先生「とりあえず発熱は酷いみたいだから、解熱剤を出しておくわね。それで様子を見てちょうだい」

曜「ちょっと! それだけですか!?」

善子「あの……解熱剤ならさっきの病院で貰いました……」

先生「そう? じゃあ解熱剤はなしで」

曜「もっと他に……何か根本的に治す方法はないんですか?」

先生「ないわ」

曜「そんな……」

先生「時間が経つにつれて落ち着いていくとは思うけれど……」

曜「……」グスッ

善子「まあ……病気じゃないって分かっただけでもよかったわよ……」

善子「ママには高い検査費用を払ってもらわなきゃだけど」

先生「一応言っておくけれど、儲けるために高い検査をしてもらったわけではないのよ」

先生「外科的内科的要因がないとはっきりしたからこそ、急性ストレス障害だって言えるんだから」

先生「中には脳にできた腫瘍のせいだったり、脳梗塞だったりするケースもあるからね」

善子「そうなったら大手術よね……」

先生「症状も、今はだいぶ落ち着いているみたいね? 熱は相変わらずだけど」

善子「はい……。さっき解熱剤を飲んだので」

先生「もし心配なようなら、また三日くらいしたら来てちょうだい」

曜「善子ちゃんが死んじゃったら責任取れるんですか?」

先生「え?」

善子「バカなこと言わないで。病気じゃないんだし、死んだりしないわよ」

曜「風邪なら私が看病してあげるよ? でもまたさっきみたいに呼吸が弱くなったりしたら……」

曜「私、どうしたらいいか分かんないよ……」グスッ

先生「……」

善子「さっきのは熱が上がったせいよ。解熱剤が効いてるうちは大丈夫だから」

曜「私だって二十四時間善子ちゃんを見ててあげられるわけじゃないんです」

曜「もし私がトイレに行ってるとき、お風呂に入ってるとき、善子ちゃんの症状が悪くなったら?」
0084名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:30:11.43ID:oMcc4SEV
曜「……他に誰もいなかったら??」

曜「善子ちゃんのママだってお仕事だし、学校の先生が休めないのは私だって分かるよ」

曜「だから……」

先生「入院させろって? それは無理」

曜「どうして!?」ガタッ

先生「無茶言わないで。入院は本人や家族の希望でできるわけではないの」

先生「一定の診断基準があって、必要であれば入院してもらうけれど」

先生「今回の例ではその基準は満たさない……」

曜「くっ……」

善子「そもそも私、入院はしたくないわ」

曜「その急性何とかで入院してる人はいないんですか」

先生「いるわよ。普通の病棟ではないけれど」

善子「それって……」

先生「かなり重度で……自分や周りの命が危険な場合ね」

曜「危険じゃん! 善子ちゃんだってさっき……」

曜「私を殺そうとしたよ!!」

善子「っ!?」ビクッ

先生「あれは……」

曜「演技だったように見えますか!? どう見ても本気の目をしてた!」

善子「本気なわけないでしょ!?」

善子「私……よく分からないうちに曜さんの首を絞めてて……」

善子「曜さんを殺そうなんて、一度も思ったこと……」

先生「……」

曜「だからお願いです。善子ちゃんを……」

先生「あんまりこういうことを言いたくないのだけど」

先生「精神病棟の患者さんがどんな待遇か、あなたは知らないのね」

曜「え……」

善子「私は知ってるわ。手足をベッドに縛り付けられて……病室って名前の檻に閉じ込められるのよね」

先生「ええ。あなたが想像しているような、ナースが二十四時間付きっきりで看病してくれるようなところじゃないわ」

曜「そ、そんな……」
0085名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:30:47.34ID:oMcc4SEV
善子「曜さん、もういいわ。帰りましょう」

曜「……」

先生「ごめんなさい、キツい言い方をしてしまって」

先生「あなたから見たら今の津島さんは普通じゃなく見えるでしょう」

先生「でも私から見れば……これでも心療内科医として見れば、今の津島さんは至って正常」

先生「発熱は解熱剤で抑えつつ、経過を見るのが正しい判断ね」

先生「どうしても納得が行かないのなら、別の病院で診てもらってもいいけれど……」

先生「たぶん同じことを言われるでしょうね」

曜「……」

善子「曜さん。もういいでしょ」

曜「も、もし……」

先生「分かったわ。ベンゾジアゼピンを出しておくから……どうしてもというときにだけ飲んで」

善子「ベン……何ですって?」

先生「向精神薬。分かってると思うけど……用法用量は必ず守ること。それが条件」

曜「それで善子ちゃんはよくなりますか?」

先生「だから……何度も言うようだけれど」ハァ

善子「時間が経つのを待てってことね」

先生「これは治療薬じゃないのよ。そこのところ勘違いしないでね」

曜「はい……」

善子「何だかごめんなさい」ペコ

先生「ううん。本当は保護者の方に説明をした上で出すべきとは思うのだけれど」

先生「薬剤師の方から薬について説明があるから……保護者の方にも伝えてあげて」

善子「分かりました」

曜「……」

先生「それでは、お大事に」

曜「……」

善子「ほら、行くわよ。一人じゃ歩けないから手伝って」

曜「うん……」

コンコン

「失礼します」
0086名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:31:24.31ID:oMcc4SEV
ガラッ

看護師「車椅子を用意したので、そちらを使ってください」

善子「わざわざすみません」

曜「……」

看護師「あら? さっきはあんなに元気だったのに」

先生「……」ジッ

看護師「いえ、何でもありません……」

善子「ありがとうございました……」ペコリ

看護師「お大事にしてください」フリフリ

ストンッ

善子「よっと……」

曜「……」

善子「車椅子、押してくれないの?」

曜「押すよ」

善子「悪いわね、心配かけて」

曜「ううん。先生に失礼なこと言っちゃったかな」

善子「そうね」

曜「一応薬は貰えたから……本当に辛くなったら飲まなきゃだめだよ?」

善子「私より曜さんが飲むべきじゃないかしら」フフッ

曜「え……」

善子「冗談よ」

曜「うん……」

善子「私のほうが病人なのに、何で私が曜さんを元気づけなきゃならないのよ」

曜「そうだよね。ごめん」

善子「熱だけは気をつけましょ」

曜「そうだね」

善子「でも、結局インフルエンザでも風邪でもなかったのよね」

曜「これが正常だって言ってたね」

善子「どう見ても病気よね?」

曜「うん……」
0087名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:32:02.91ID:oMcc4SEV
善子「ふふ……そういうこと」

善子「ヒトの体が抱えし不治の病……」

善子「心という欠陥を持った代償ってことね」ニヤリ

曜「……何言ってるの?」

善子「う……いいでしょたまには」

曜「善子ちゃん思ったより元気だね」

善子「本当は曜さんが元気を分けなきゃいけないんだけど?」

曜「そっか。うん」

善子「私は大丈夫だから。安心して側にいてくれていいわよ」

曜「私も病気かな」

善子「え?」

曜「恋って名前の病気」

善子「いや、曜さんの場合は……」

曜「治療薬は、善子ちゃんのキス」

チュッ

善子「んっ……」

曜「好きだよ」

善子「キスはダメなんじゃなかったの」

曜「病気じゃないんだもん。関係ないよ」

善子「……そうね」

曜「安心しておしっこも飲めるね」

善子「曜さんっておしっこが好きすぎる病気……というか精神障害かも」

曜「冗談きっつ……」

善子「割と真面目に」

曜「でも、善子ちゃんはお医者さんじゃないからね」

善子「ええ。それに、たぶん診断はされないでしょうね」

曜「そう?」

善子「診断基準は決まってるわ……『生活に支障をきたしていること』」

曜「きたしてないね」

善子「きたして……ないのかしら?」
0090名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:34:38.35ID:oMcc4SEV
曜「それも含めて私のこと好きでいてくれてるんだよね」

善子「まあね。私は心が広いから」

曜「なら大丈夫。私もどんな善子ちゃんでも好きでいるから」

善子「じゃあさっき何で檻にぶち込もうとしたわけ?」

曜「あれは知らなかっただけだし……。って言うかその言い方は入ってる人に失礼だよ」

善子「私が曜さんを殺そうとしたですって? そんなことあるわけないじゃない」

曜「いや、あれは目が本気だったってば……」

善子「ないわよ。少なくとも、私が私でいるうちはね」

曜「善子ちゃんが善子ちゃんでいるうちは……?」

善子「曜さんが私でいていいって言ってくれるうちは」

曜「それなら心配ないね」

善子「ええ」

曜「善子ちゃんじゃない善子ちゃん、かぁ……」

善子「想像しなくていいから」

曜「見てみたい、気がしないでもないな」

善子「そんなに死にたいの?」

曜「善子ちゃんに殺されるなら恋人冥利に尽きるね」

善子「それこそ檻にぶち込まれちゃうわよ」

曜「あはは。善子ちゃんうまいね」

善子「何もうまくないし、曜さんは少しは反省してよね?」

曜「反省? 何を?」

善子「少しは周りを見て行動して」

曜「してるつもりだけどな」

善子「いつもはね。でも、余裕がなくなると周りが見えなくなるでしょう」

曜「そんなことあったっけ?」

善子「……もういいわ。帰りましょ」

曜「ねぇいつ? 教えてよー」

……

 会計後

曜「ひぇー。MRIってあんなに高いんだ……」
0091名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:35:14.17ID:oMcc4SEV
善子「これはママもびっくりするでしょうね」

曜「今すぐ払えって言われたらどうしようかと思ったよ」

善子「そんなこと言わないでしょう」

曜「『払えないなら体で……♡』とかさ」

善子「いや、意味が分からないわ」

曜「たぶん病院らしく血液を五リットルくらい抜かれるね」

善子「そんなに血液ないから」

曜「それとも臓器提供? さすがに今すぐは嫌だなぁ」

善子「それ闇病院」

曜「現実的な範囲だと……一生ナースさんたちのペットにされるとか?」

善子「うわ……」ヒキ

曜「win-winじゃん」

善子「気持ち悪い」

曜「大丈夫? 洗面器借りてこようか?」

善子「曜さんが気持ち悪いのよ! ってこの流れ前にもやった!」

曜「心配しなくても私は善子ちゃんだけのペットだからね」

善子「はいはい。『おしっこしたくなったら言ってね』でしょう?」

曜「うん」

善子「ペットボトルじゃないの」

曜「喉が乾いたらいつでも……あ、さっきは出せなくてごめん」

善子「え?」

曜「保健室で。善子ちゃんは出してくれたのに、私は出してあげられなくて……」

善子「な、何の話?」

曜「覚えてないの?」

善子「変な事言ってないで帰るわよ」
0092名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:35:47.45ID:oMcc4SEV
曜「本当に覚えてないの??」

善子「そういえばそんなことをしたような……。ううん、その手には乗らないわ!」

曜「……」

善子「何よ」

曜「ふふっ」ニヤリ

善子「あっ、また変なこと考えてる」

曜「体調悪いときの善子ちゃんは記憶がない……と」メモメモ

善子「いや、本当に体調悪いときは休ませて?」

曜「分かってるよ」

善子「本当かしら……」ハァ

曜「帰ろうか」

善子「そうね」

曜「えっと……次のバスは」

善子「あ」

曜「どうしたの?」

善子「そういえば私たち、ヘリでここまで来たのよね」

曜「鞠莉ちゃんと果南ちゃん!」

善子「すっかり忘れてたわ」

曜「電話……は病院だからやめておくとして、メールしてみようか」スッ

 曜♡善子ちゃん:鞠莉さーん

 Mari☆:診察終わった? 善子の調子はどう?

曜「おっ、返信が早い。ってことはもう終わってるね」

善子「乗り物酔いくらいでまだ診察終わってなかったら問題よ」

 曜♡善子ちゃん:熱も少し下がったし、検査も問題なかったよ

 Mari☆:よかった☆ 心配してたのよ?

 曜♡善子ちゃん:それはそうと、果南ちゃんは大丈夫?

 Mari☆:果南は……ええと

 Mari☆:すごく言いにくいんだけどね

 Mari☆:果南はもういないの。遠くに行ってしまったわ

曜「え」
0093名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:36:23.18ID:oMcc4SEV
善子「どうしたの?」

曜「果南ちゃん……死んじゃったって」

善子「」

曜「嘘だよね?」アハハ

スッ

プルル……

鞠莉『もしもし? 曜?』

曜「鞠莉ちゃん? 果南ちゃんが死んじゃったって……」

鞠莉『果南は先にバスで帰ったわ』

曜「そう……バスで……」

曜『んん!!?』

善子「そんなことだろうと思った……」ハァ

鞠莉『最後まで何とか引き留めようとしたのよ。でも……』

鞠莉『手の届かないところに』グスッ

曜「えぇ……」

鞠莉『あ、もう終わったのよね? ヘリポートで待ってるから来て』

曜「う、うん……」

善子「すごく今更なんだけど、ヘリポートってドクターヘリ用なんじゃないの?」

曜「それなら大丈夫。小原家専用のヘリポートが別であるみたいだから」

善子「何のために?」

曜「さぁ?」

鞠莉『酷いわね。せっかく助けてあげたのに』

善子「あっ……まだお礼も言ってなかったわ。本当にありがとう」

鞠莉『いいわよ。その代わりたっぷりお話を聞かせてもらうから♡』

曜「検査のこと? 大変だったよー? 善子ちゃんったらさぁ」

善子「こら! 余計なことは言わなくていいから!」ガシッ

曜「もごもご」

鞠莉『何? 検査がどうしたの?』

曜「善子ちゃんに殺されかけたりね」

善子「誤解されるからやめなさいって!」
0094名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:36:56.66ID:oMcc4SEV
鞠莉『それならいつものことじゃない』

善子「え?」

鞠莉『曜はいっつも善子のことが好きすぎて死にかけてるわ♡』

曜「そうなんだけどさー」アハハ

善子「待って!? 私の知らないところで何してるの!?」

曜「それは秘密だよ」

鞠莉『シークレット♡』

善子「は?」

曜「さーて行こう行こう。鞠莉さんが一人で寂しそうだし」

善子「ちょっと私車椅子なんだけど!? 押しなさいよ!」

曜「負けた人はジュースおごりだよ!」タッ

善子「こら! 待ちなさいってば!」

タッタッ……

善子「え……嘘でしょ」

善子「あのバカ、私を置いていくなんて」

善子「……」グイッ

キィ キィ

善子「何よこれ、全然進まないじゃない!」

キィ キィ

善子「車椅子って楽そう、なんて思ってごめんなさい……」

キィ……

善子「って曜さん本当に行っちゃったの?」

善子「はぁぁ……」

キィ キィ

「タクシーをお待ちですか?」

善子「え? 待ってないわよ……」

曜「ちょうど空車ですけど」

善子「あっ、曜さん! 酷いじゃないの置いていくなんて!」

曜「車椅子じゃ階段は登れないからね。私が連れて行ってあげるよ」グイッ

善子「ひゃあ!?」
0095名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:37:31.66ID:oMcc4SEV
曜「行き先はどちらで?」

善子「エレベーター使えば行けるわよね」

曜「車椅子戻しに来るの面倒だし」

善子「それは……確かにね」

曜「で、どちらに?」

善子「もう着いたわ」

曜「え?」

善子「もう着いた」ギュッ

曜「うん」

善子「……温かい」

曜「私も」ギュ

善子「さて、行きましょうか。階段じゃなくてエレベーターでね」

曜「善子ちゃん軽いから階段でも余裕だよ!」ダッ

善子「あっ、ちょっと!」

曜「屋上までヨーソロー!」

善子「私頭痛いんだけど!!?」

曜「あ……そっか」

善子「エレベーターでお願いね」

曜「うん」

善子「それと、車椅子も戻さないと」

曜「忘れてた」キィ

善子「しっかりしてよもう」

曜「うん……」

「あ、終わったんだ?」

善子「え?」

果南「どうだった? 見た感じ元気そうだけど」

曜「バスで帰ったんじゃ……」

果南「乗ろうと思ったらちょうどバスが行っちゃってさ。次のバスが一時間も後なんだもん」

善子「ヘリで帰るの?」

果南「う……そうだね。鞠莉一人の操縦じゃ心配だし」
0096名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:38:04.88ID:oMcc4SEV
曜「酔い止めは?」

果南「一応飲んだよ」

善子「準備万端ね」

果南「ねぇ、この薬ヘリには対応してないみたいだけど大丈夫かな?」

善子「えっ」

曜「大きいドラッグストアじゃないと売ってないのかなぁ」

善子「本気で言ってるの? だとしたらつける薬なんてないわよ」

曜「病院なんだからあるんじゃないの?」

善子「何とかにつける薬はないって言うじゃない」

果南「?」

曜「手の施しようがないってことかな?」

果南「そんな……私死んじゃうの?」

善子「……鞠莉さん助けて」ハァ

……

 屋上 ヘリポート

鞠莉「遅かったじゃない。あれ……?」

果南「鞠莉一人に可愛い後輩は任せられないからね」

鞠莉「そんなに信用ないかな……」シュン

善子「少なくともヘリの操縦に関してはね。無免許だし」

果南「私もヘリのことはよく分かんないし全くの素人だけど……」

鞠莉「おまけに高所恐怖症だけど?」

果南「それは仕方ないでしょ」

曜「高所恐怖症の治療薬とかあるのかな?」

善子「ないわよ」

曜「そっか。じゃあ私が開発すれば大儲け間違いなしだ」

鞠莉「そんな薬なくても簡単じゃない♡」

果南「あるの!?」

鞠莉「アルコールよ♡」

善子「はぁ……」

曜「ね、ねぇまさか飲酒……」
0098名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:39:37.36ID:oMcc4SEV
果南「飲んでないから! 何なら確かめて貰ってもいいよ」

鞠莉「あら? 曜と果南がキス? 見たい見たい!」

果南「えっ、そういう意味じゃ……」

曜「……」ドキドキ

善子「おい」

曜「善子ちゃんごめんね? これも安全のためだから……」スッ

果南「え……本当にするの?」

曜「しないの?」

果南「……したいの?」

曜「それはもちろんした……」

善子「え? ヘリの下に乗りたいですって? 途中で落ちないように気をつけてね」

鞠莉「オゥ、嫉妬ファイヤーね」

果南「さすがに善子の前ではやめようよ」

曜「わ、わかった……」ドキドキ

善子「果南さんもよ!」

鞠莉「だいぶ元気になってきたみたいね?」

善子「え? そうね、熱も下がってきたみたいだし……」

曜「やっぱり私のキスが効いたのかな?」

果南「わーお」

鞠莉「キスは禁止されたんじゃなかった?」

曜「あ、それがね。病気じゃないって分かったから遠慮なくしていいって」

善子「遠慮はして」

曜「おしっ……」

善子「遠慮はして!!」バシッ!

曜「うん……」ヒリヒリ

果南「なかなか強烈なビンタだね」アハハ

鞠莉「曜のほっぺ赤くなってる……」

善子「自業自得よ」フンッ

曜「元気な善子ちゃんならこんなものじゃ済まないからね」

果南「そうなの?」
0099名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/11(日) 12:40:09.12ID:oMcc4SEV
善子「私がいつも暴力振るってるみたいな言い方しないでよ!」

鞠莉「曜はそういうの好きそうね」

曜「うん!」

善子「本当に気持ち悪いからやめて」

果南「あはは。それじゃあ私はそろそろ……」

鞠莉「あ、どうぞ乗って」スッ

果南「曜、ヘリの操縦は分かるよね?」

曜「分からないよ」

果南「善子は? ゲームと同じだよ(たぶん)」

善子「ゲームでなら……まあ」

果南「それでは良い旅を!」ゞ

曜「ヨーソロー!」ゞ

鞠莉「果南も乗るのよ」

果南「嫌だよ怖いもん」

善子「酔い止め飲んだのよね? 気持ち悪くはならないはずよ」

果南「だからヘリ対応じゃないんだってばー!」

鞠莉「いいから早く乗って!」グイッ

果南「わっ、そんな無理やり……」ズルズル

曜「善子ちゃんもヘリ飛ばせるの?」

善子「なわけないでしょ」

果南「お願いだからバスで帰らせてください……」

鞠莉「もう……仕方ないわね」

果南「本当!? やった!」

鞠莉「後ろの席でいいわ。隣には善子に乗ってもらうから」

善子「えっ」

曜「私、善子ちゃんと隣がいいな」

鞠莉「じゃあ善子がパイロット、曜がアシスタントね」

果南「嫌だ! 本当に死ぬ!!」

鞠莉「なら隣に乗って」

果南「分かった、分かったから……ゆっくり飛んでよね?」
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