善子「ふたりのヨハネ」
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〜善子の部屋〜
善子「ククク……クフフフ……」
善子「買ってしまった……ふふ、買ってしまったわ」
善子「悪魔の鏡!」
【悪魔の鏡】※ヨハネ命名
学校の帰り道にたまたま見つけた怪しい骨董店で買った鏡。
小さな手鏡のように見えるけれど、鏡面じゃない方を光に翳すと鏡面がぼんやりと輝いて見えるの。謎のアイテム感がヨハネ的に高ポイント!
善子「店の主人が言うには……おのれの心を実体化させるらしいんだけど……」
善子「ふふ、そういう曰く付きなアイテムが一番ポイント高いのよね」
善子「明日ルビィとずらまるに自慢しよーっと」
『善子〜? そろそろ寝なさーい』
善子「善子言うなー! もう……分かってるわよ寝るわよ」
カチッ(消灯)
善子「わ、月明かりがすごい」
善子「ククク……このような夜は我が魔力が高ぶる夜……ふふふ、今宵はいかなる魔力を我がリトルデーモン達に授けようか……」
善子「んふふ、でも今日は自分の魔力を溜め込む日だけどね」 話自体はどこかでみたようなのだけど、キャラへの感情移にゅ〜がハンパないのだよ >>762-769
よく訓練されたリトルデーモン達だなw ヨハネと善子でオーバーレイ
闇と闇重なりしとき、冥府の扉は開かれん。光無き世界へ 〜翌日〜
不思議な夢を見た。
目の前に『私』がいて、私はその『私』と遊んでいる────
2人で街を歩き、映画を見て、クレープを食べて。
そしてケータイを買って……喜ぶ『私』
私はそんな『私』を見ている、まるで過去を追体験していると錯覚するほどにリアルな夢。
だが、こんな思い出は記憶にない。
そもそも私の目の前に『私』が存在している時点で夢確定。
どう考えたって妄想、幻の領域だ。
けれど、どうして。
私は懐かしい気持ちになっているのだろう。
────pipipipipi...
ガバッ
善子「…………」
善子「……………………」
善子「…………夢、か」
善子「…………」ポロ...
…………夢で泣くなんて、ガラでもないわね。
ふふ、堕天使が夢から覚めたら泣いてた────なんて、神様が聞いたら怒りそう。 ・・・
善子「いってきます」バタン
先に行く母を見送ってから、私も家を出る。
いつも通りのひとりの登校。
最近……ひとりでいることに感じる寂しさが、本当にひどい。
だからなのか────『ヨハネ』のことを常に考えてしまう。
昨日はマリーの家で痕跡を発見した。
けれど、あれから発展は何もない。私の家には、あの鏡とゲーム以上の痕跡はひとつもなかった。
私が持っている違和感を、親も同様に持っている……ことだけ。
やっぱり『ヨハネ』は私と暮らしていた────と見て間違いはなさそうだ。
そして、それが何らかの理由で消えた────もしくは、いなくなった。 そんな夢みたいな現象が、そもそも有り得るの?
堕天使ヨハネだからとか、魔法だとか……
普通に考えて、そんな摩訶不思議アドベンチャーが実際に起こるなんて────ね。
けれどAqoursも私も親も、みんな『ヨハネ』の存在を感じている。
記憶の残滓のようなものが、まだみんなの中に残っている。
だったら……
善子「……連れて帰らないとね」
今日は学校にも何かがないか探そうと思う。
特に部室は、私が家以外で滞在する時間が一番長い場所だから────
ブーッ!ブーッ!
善子「……メール?」
善子「差出人は……黒澤ダイヤ。何よ朝から……練習時間には間に合うってのに」
『善子さんと鞠莉さんは少し早く来るように』
善子「……」
善子「…………昨日サボったの怒られる」
朝から少し憂鬱な気分だった。 〜部室〜
ダイヤ「……」
よしまり『……』
ダイヤ「何か言うことは」
よしまり『サボってごめんなさい』(土下座)
ダイヤ「あなたたち2人、本当にわかっているんですか?」
ダイヤ「昨日は! 部室の! 大・掃・除!!」
ダイヤ「大掃除をやるって何回も言いましたよね! 前日も先週も1ヶ月前から何回も!!」
善子「……」
鞠莉「だってめんどくさかったんだもーん」
ダイヤ「あなた理事長でしょうが!」
鞠莉「り、理事長であり生徒で……」
ダイヤ「だったら尚更でしょう!?」
鞠莉「ゴメンナサイ……」 ダイヤ「善子さんもです! そこの理事長が適当なのですから、あなたがしっかりしなければならないと言うのに……どうして2人で遊びに行きますか」
ダイヤ「あの子がいた時はもっとしっかりしている印象だったのに、なぜこうなったんでしょう……」
善子「あの子って?」
ダイヤ「あの子? あの子なんて言いましたか、私?」
善子「……」
ダイヤ「はあ……」
ダイヤ「いいですか? ここはみんなの部室なのです。なら、みんなで綺麗するのは当たり前のことですわ」
ダイヤ「普段、あなたたちも使う部屋ならば、ちゃんと責任をもって、一緒に掃除するべきではないですか」
よしまり『はい……』
ダイヤ「……今回はこの辺にしておきます。来月の掃除の日は、ちゃんと来るんですよ」
善子「わかりました……」
鞠莉「sorry……」
ダイヤ「……よし。ではふたりとも、片付けてねBOXからご自分のものを回収してくださいな」 ダイヤ「今回は特に携帯電話など貴重品ががありましたので、必ず持ち帰ってくださいまし」
鞠莉「ケータイ?」
ダイヤ「ええ。あと、善子さんの手紙が」
善子「……えっ、手紙?」
ダイヤ「ええ、内容はよく分かりませんでしたが……文字が善子さんのものでしたから、おそらくあなたのものでしょう」
善子「……」ゴソゴソ
善子「……これ?」ペラリ
【Aqoursへ】
ダイヤ「ええ、綺麗に封をして引き出しに入っていました」
善子「……」パラ
ペラ……ペラ
善子「……」
ダイヤ「まったく……なんですの、それは? まるで別れの手紙のようじゃありませんか」
ダイヤ「その割には自分にもあててメッセージが書かれているし……不思議なことをしますわね。またいつもの地獄弁ですの?」
善子「……」ペラ
ダイヤ「もう、返事も忘れるくらい読み込むなんて……」 ダイヤ「ああ鞠莉さん、それは果南さんのですから持ち帰らないように」
鞠莉「あれ、ほんと? マリーも同じようなやつ持ってたと思うんだけど」
ダイヤ「あなたのとは模様が少し違うでしょう」
鞠莉「あれー?」
鞠莉「あ、ケータイ発見」
ダイヤ「ああ、それは……充電が切れていて画面がつかないんです」
鞠莉「それなら、マリーのbatteryで充電してみるわね」ガサガサ
善子「……ねえ、生徒会長」
ダイヤ「なんですか?」
善子「この手紙を読んで……何か、感じたりは、しなかった?」
ダイヤ「変な手紙だ────としか? ただ、胸にチクリと棘のようなものが刺さる感覚はありましたが……」
善子「……」
ダイヤ「花丸さんやルビィたちは、泣いてましたわね。やはり変な手紙ですわ……」
善子「……そう」
善子「泣いてたんだ……ふたりは」 ガチャッ
果南「おはよー」
ダイヤ「おはようございます」
鞠莉「good morning!」
果南「あれ、善子と鞠莉、早いね?」
ダイヤ「ふたりはお説教するために早く来てもらったんですの」
果南「あはは……そ、そっか」
果南「あ、善子、その手紙」
善子「……センパイ」
果南「あげた干物、食べてなかったの? なんのためにあげたと思ってるのさー」
善子「ち、ちがうわよ! ちゃんと食べたわよ、全部!」
果南「本当に食べたの? 善子は大丈夫そうだけど、あの子が不健康みたいだったから干物あげたのに」
果南「わざわざ食べてないです、なんて手紙にして……」
善子「……」
果南「こら、ちゃんと聞いてるの?」ダキッ
善子「は……ちょっ……!?」 鞠莉「か、果南お得意のお姫様抱っこ!」
果南「……うん、ちゃんとしっかり食べてるみたいだね! あとはヨハネが心配だけど…………」
果南「……あ、なんでもない」
ダイヤ「ヨハネ? 果南さん、ヨハネって」
果南「ううん、なんでもないから! ……なんか最近、たまに善子が2人いるみたいな変な錯覚しちゃうだけだからさ」
ダイヤ「……」
ダイヤ「……果南さんもなのね」
善子「えっ……」
善子「……もしかして、ふたりとm」
鞠莉「電源ついたわよー!」
ダイヤ「本当ですか?」ガタッ
鞠莉「ええ、いまロック画面を…………って、善子?」
善子「え?」 ダイヤ「ちょっと見せてください。…………確かに、善子さんの顔写真ですわね、しかも寝顔……」
善子「な、なっ……ななっ……」
果南「ほんとだ……あれ? ねえ、この写真…………」
鞠莉「what……?」
善子「ちょっと私にも見せて……!」
ダイヤ「……はい? な、なんですかこれは……」
鞠莉「あっ……も、もしかして善子、これ!」
善子「な、なに? ねえ、見せてよちょっと……ねーえー……」
ダイヤ「……善子さん、あなた、双子……とか、よく似た親族はいらっしゃいますか……?」
善子「えっ…………え?」
ダイヤ「こ、この写真……」
生徒会長がおそるおそる見せてきた、ケータイの画面。
映し出されていたのはひとつの写真。
そこに写っていたのは────
ふたりの『私』だった。 `¶cリ˘ヮ˚)|「第8話・完」
`¶cリ˘ヮ˚)|「短くてごめんね、今日はここまでよ」 9人じゃない……私たちが奏でるこの歌はっ!!
10人の……絶唱だぁぁぁぁぁぁ!!!!! 鞠莉「ねえ……善子、これ……」
善子「これ、って…………わたし、と……」
果南「善子が……ふた、いや……うぅ、なんだこれ……」
ダイヤ「善子さん……が、ふたり……?」
鞠莉「……ううん、きっと違うよ、ふたりとも」
ダイヤ「え?」
鞠莉「もちろん片方は善子……だけど、ねえ、善子。このもう片方は……」
善子「……うん、きっと…………『ヨハネ』だわ」
ダイヤ「よは……ね……?」
果南「ぁ、ぁあ……っ……」
果南「そう、そうなんだ……ヨハネ、やっぱり……」
鞠莉「果南?」
善子「センパイ、どうしたの?」 果南「……さっき、言ってたでしょわたし……善子が2人いる錯覚するって」
善子「……うん」
果南「でも、それは……やっぱり錯覚なんかじゃなかったんだよ」
果南「いたんだ、ここに。もう1人の善子……えっと、ヨハネだっけ? その子が……ここに」
ダイヤ「ま、まさか……そんな、これは善子さんがいつも堕天使ネタを言い続けるから、わたくしたちもそんな気になってしまっただけでは……」
鞠莉「違うよダイヤ。ヨハネはいたんだよ、ここに……私たちの目の前に」
鞠莉「善子の隣に」
鞠莉「その証拠がこの写真で……私たちがいつも感じている奇妙な感覚は、これだったんだ」
ダイヤ「では、あの手紙は……善子さんではなく、その『ヨハネ』さんが書いたもの……と考えると」
果南「……あんな風に書いたつじつまも合う、よね。何かの理由でいなくなってしまう前に……私たちに残したメッセージだ、ってさ」
善子「そっ、か……そっか……」ジワッ
鞠莉「……善子、泣いているの?」
善子「……泣いてなんか、いないわ。まだ……まだ会えたわけじゃないから」
鞠莉「……うん」
善子「……やっぱり居たのね、ヨハネ」
善子「ずっと探してたのよ、あなた。勝手にいなくなって……ほんとバカみたい。待ってなさいよ、本当に目の前まで引っ張り出してやるんだから」
ダイヤ「……」
果南「……」
鞠莉「……」 ダイヤ「……そのケータイは善子さんが持って帰ってください。その『ヨハネ』さんを探す手がかりになるかもしれませんから」
善子「……ありがとう生徒会長」
果南「もし私たちが力になれることがあったら、なんでも言ってよ! 少しくらい、センパイらしいことしなきゃねっ」
善子「センパイ……」
鞠莉「じゃあ、昨日言ってた鏡を見せてみたら?」
ダイヤ「鏡……?」
鞠莉「うん、善子の家にあった不思議な鏡……それを買った店を探すことが一番重要だと思ってるのよね?」
善子「ええ……その、不確定だけど……この鏡を買った後から、記憶が曖昧なのよ。何か奇妙な部分が抜けたりして」
ダイヤ「……なるほど」
ダイヤ「ではその鏡を見せてもらえますか?」 ・・・
ダイヤ「……店のことはだいたい分かりました」
果南「写真も撮ったし、あとは色々聞き込みしてみよっか」
鞠莉「内浦なら、やっぱりダイヤのおうちの情報網ですぐ見つけられたの?」
ダイヤ「そうですわね……ある程度は」
鞠莉「わーお……」
善子「ありがとうございます……先輩たち」
善子「私のために、ここまで……」
ダイヤ「何を言っているんです! 大切な後輩のためですわ、当たり前でしょう」
果南「そうだよ。後輩が困ってるのに無視するなんて、そんなの先輩じゃないじゃん」
鞠莉「よーするに、みんな善子の力になりたいって思ってるってコト♪」
善子「……ありがとう……ぐすっ」
果南「ど、どうしよう鞠莉……善子が泣いちゃう!」
鞠莉「Go 果南! 抱きしめる攻撃よ!」
果南「わ、わかった! 善子、ハグしよ!」ギュウッ
善子「わっ……」
善子「…………あったかい」ギュー
果南「……よしよし」ナデナデ
ダイヤ「…………」
ダイヤ「それにしても、沼津の怪しい店……どこかで聞いた、ような……」 〜教室〜
善子「……」
普通に考えたら、このケータイは私のものということになる。
けれど……私はこのケータイを見た覚えがない。なぜ今まで部室に放置していたのか────センパイの話によれば、これは部室の机の引き出しに、手紙とともに大切に保管されていたらしい。
誰も開けないように封をして、机の奥に追いやられて……いや、むしろそうすることで思い出さないようにしていた、とか。
善子「……」
この写真────私ともうひとりの『私』が写っている写真。
どう見てもこれは合成なんかではないし……これは私自身だ。
……多分、この恥ずかしそうに顔を背けているのが私だろう。
そして嬉しそうに笑っているのが多分……『ヨハネ』ということになる。
ここまで決定的な証拠を突きつけられたら……もう、信じるしかないわよね。
ヨハネはここにいた。
私と一緒に暮らしていた。
Aqoursのみんなとも仲良くしていた。
みんなから大切な仲間として受け入れられていた。
────だけどヨハネはいなくなった。 結局いなくなった原因は分からない────けれど、確実にここにいた。
なら……やることは決まっている。
善子「……」チャラ
この鏡を売っていた店を探す……だけ。
探したら会えるとは限らないけど……最後につながる手がかりはこの鏡しかない。
なら、これを作った人を見つけて、聞くしかない。
それしか────もう道はない。
花丸「善子ちゃ〜ん」
善子「ん」
花丸「あの〜……ちょっと数学を教えて欲しいずら」
善子「数学?」
花丸「今日、まるの列が当てられる日だから……教科書の問題だけ教えて欲しくて」
善子「んー……ルビィー」
ルビィ「はーいー?」
善子「ずらまるが数学教えてほしいんだって。因数分解について細かく知りたいみたい」
ルビィ「えぇ〜……なんでルビィなのぉ……」
花丸「国語は得意なんだけど、数学は苦手で……」
ルビィ「ぅゆ……ルビィも苦手なのに……」
善子「残念だったわね、私も苦手よ」
花丸「……ダメダメずら」
善子「あんたに言われたくないっての」 ルビィ「えっと、因数分解は……同じ文字をくっつけて……」
花丸「くっ……つけ……?」
ルビィ「なんでルビィの方がわかるの〜!」
善子「ずらまる、国語は神だけど数学はザルだから」
花丸「が、頑張ってるんだよこれでも!」
善子「……まあ頑張りなさいよ、私は高みの見物だわ」
花丸「むむむ……」
花丸「あ、そういえば善子ちゃん。昨日の大掃除なんだけど……」
ルビィ「そうそう! ケータイとお手紙……見た?」
善子「……ええ、見たわ。読んだし、ケータイもここに」
ルビィ「……そっか」
花丸「……まるたち、あの手紙を読んで、なんでか泣いちゃったずら」
ルビィ「……きっとヨハネちゃんは、いたんだよね? ルビィたちと一緒に」
善子「ええ、当然。……それに、まだ諦めてない。私は必ず会いに行く」
善子「……そのためにも、この鏡を売ってた店を探し出さないと」カチャ
ルビィ「うん、そうだね……」
花丸「……善子ちゃん、その鏡を売ってるお店を探してるの?」
善子「え、ああ……そうよ。これが手がかりになるはずだから」
花丸「……そのお店ってもしかして、魔法堂じゃないかな?」
善子「────え?」
花丸「あ、そこも教えてほしいずら……」
ルビィ「も〜……考えてよ〜」
花丸「数学だけはだめずら……」 善子「花丸……いま、なんて……?」
花丸「えっと、数学だけは……」
善子「……その前」
花丸「その前……あぁ、その鏡の売ってるお店でしょ? 魔法堂って言う────」
善子「どこっ!! その店、どこにあるの!!」ガタッ
ルビィ「ピギッ!?」
花丸「……よ、よしこちゃん?」
善子「その店の場所はどこって聞いてるのよ!」ユサユサ
花丸「ちょっ……や、やめてっ……」
ルビィ「よ、善子ちゃんちょっと落ち着いて!」
善子「はやく、はやく教えなさいよその店は────」
花丸「いっ……痛いよ善子ちゃん!」
善子「ぁ、ごっ…………ごめん……」パッ
花丸「はぁ、ふぅ……ふぅ……」
花丸「沼津の……バス停から帰る道を、少し逸れたところに────」
善子「………………────ぁ」 善子「…………そうだ」
善子「忘れ、てた…………」
ガツンと頭を殴られた────そう錯覚するほどの衝撃だった。
なぜ私は忘れていたのか? どうしてこんなにも近くにある店を?
それに、どうして花丸はその店のことを────
花丸「……ルビィちゃんから聞いたんだよ。前に、善子ちゃんから教えてもらったって、嬉しそうに話してくれたずら」
ルビィ「えっ……ほ、ほんとぉ? ルビィ覚えてないよ……」
花丸「……ほんとう?」
ルビィ「うゅ……」
花丸「で、でもほんとに教えてもらったのに……」
善子「……」ガタ
花丸「よ、善子ちゃん?」
善子「花丸、ルビィ……先生には適当に言っといて」
ルビィ「どこ行くつもり!?」
善子「……早退する」
花丸「……善子ちゃん」
善子「花丸」
花丸「ん……」
善子「ありがと。それと、思いっきり引っ張ってごめん、また後でお詫びするから」
花丸「う、うん……!」
善子「うん。じゃあ、よろしく────」ダッ
ルビィ「あ、善子ちゃんカバn」
ピシャッ!
ルビィ「置いてっちゃった……」
花丸「……善子ちゃん、いってらっしゃい」
タッタッタッ──── タッタッタッ!!
ダイヤ「善子さん!」
善子「生徒会長……!?」
ダイヤ「思い出しましたわ……あの、鏡のお店! ルビィが以前、話してくれたんです!」
善子「それなら今聞いたわ! ありがとう、行ってくる!」
ダイヤ「えっ、ちょっ……授業がもうすぐ始まりますわよ!?」
善子「早退するから!」タッタッタッ
ダイヤ「っ……あぁ〜もう! 今回だけですからね!」
……ありがと、生徒会長。 ・・・
全速力で学校を飛び出し、足を止めることなく道を駆け抜ける────が。
走り出して10分ほどは興奮が頂点に達していたためか、なりふり構わず学校を抜け出してしまったけれど……よくよく考えれば、バスの時間があった。
時間は今────8時35分。
田舎も田舎にある、このバス停は登校時間、下校時間以外にバスはないのだった。
結局私は沼津まで3時間強を歩き続ける羽目になり、私がいつも利用するバス停付近に来る頃には12時を回ろうかという時間になっていた。
……大馬鹿をやってしまったわ。
カバンを置いてきて正解だった。
鏡と携帯と財布だけをポケットに忍ばせて飛び出したのは、テンションが上がりすぎたせいだけど……結果的には良かったのかな。余計な荷物を持たなくて済んだし。
……と言っても、3時間のお散歩は死ぬほど辛かったわけだけどね。おかげで足が痛いわ。
────そして、私はついに辿り着いた。
ビルとビルの間。とても薄暗い閉所────立地のせいか、昼間だというのに寒い風が吹いている。
魔女の館を小さくしたものか、もしくは魔女の工房か。
看板は文字がかすれてほとんど読めず。
窓は埃まみれで中の様子は伺えない。
その館すべてから溢れる空気が、人を拒んでいるように見えた。
けれど────そう、私はここを探していた。
善子「……どれだけ冷たい歓迎でも、行くしかないでしょ」 コンコン
ギィィ…
善子「……」
扉は開いていた。
初めてきた時と同じように軽く私を迎え入れた。
そして────
「いらっしゃい」
初めてきた時と同じように女性の声が語りかける。
「ようこそ魔法堂へ。よほど切実な願いを持つと見える」
全てを見透かしているかのような物言い。まるでここに来る人は全て何か悩みがあるかのようだ。
それとも、悩みがある人を寄せ付ける何かがあるのか────今はそれを考える意味はないわね。
善子「こんにちは」
「ひっひ────そろそろ来る頃だと思っておったぞ」
善子「……会うのは2回目ね」
「なに?」
善子「え?」
「────そうか、忘れたんじゃな」
善子「……」 忘れた、か……私はここに来たのは、記憶の上では2回目。
だけど、ほんとうは……
「おまえがここに来るのは3回目じゃ。あの鏡を買ったとき、おまえの分身が消える前、そして今のな」
善子「……分身」
「今日おまえが来たのは、その分身を探しに来たからじゃろう?」
善子「……」
善子「……ヨハネってやつのことね」
「やはり、忘れておるようじゃ。それも当然か、奴は魔法の力で生まれた存在……消えてしまえば世界の修正力によって記憶も失われるものじゃ」
善子「世界……? 魔法……? 何を言ってるの、全くわからないんだけど」
「ふむ……おまえ、あの鏡は持ってきておるか」
善子「……ええ」
「それはわしが造った魔法の鏡」
善子「まほう……」
「持ち主の心を写し、それを見せる力を持っておる。今は使えぬがな」
善子「……」 少しずつ思い出してきた。
初めてここに来た時、この女性の話を聞かずに私はこの鏡を購入したんだ。
ゆらゆらと溢れ出す怪しげなオーラと、鏡という魔法のアイテムっぽい感じがとても気に入ったから……
そして。
「購入したその夜か……鏡はおまえの心を写した。そしておまえの心の奥に眠る願い────」
「わしは知らぬが、それを叶えんとした鏡は、おまえの分身を作り上げた」
鏡に込めてあった魔力を全て使ってな────と言った。
魔法。
心の願い。
分身。
買った夜のこと。
そこから分かる、ひとつのこと────
善子「鏡によって生み出された分身が……『ヨハネ』」
「うむ」
その通り、と頷いて続ける。
「魔法の力で生み出されたそやつは、おまえの願いを叶えるためにおまえをそばで支えておった」
「消える前も言っておったぞ、おまえの望むことはできる限りしてやった、と。幸せに、笑顔にしてやれた、と」
善子「……」
私の知らない話、だ。
こんな胡散臭い話を、どうして信じられる? 私の記憶では、会ったのは2回目で……こんなに話し込むほどの知り合いなんかじゃない。
ましてや魔法って……サタンとか堕天使とか、そんなのいるわけがない。全部私の中二病……設定だ。
だけど、だけど……その話を嘘だとは思えなかった。
全て真実だ────と、心が叫んでいるような気がするから。 善子「……そのヨハネは」
「消えたよ」
善子「……」
「分身は、あくまで鏡の魔力を媒体に作り上げられた。一挙手一投足すべてに魔力を消費し、魔法を使えばその消費量は段違い」
「魔力はいわば、その分身にとっての寿命じゃ。生きながらにして寿命を削っているようなもの」
善子「でも、魔力っていうからには、回復したり……」
「食事から魔力を微量に摂取することはできるが……魔力の塊である分身には、魔力を作る能力はない。言うなれば水道の蛇口を常に開け放っている状態じゃな」
善子「……」
「そして魔力を使い果たせば、当然消える」
善子「でも、それでどうして……記憶が消えるの? その、ヨハネとの……私たちの記憶が」
「これは特殊な事例なんじゃが……まあ、世界には修正力というものがあってな」
「イレギュラーが起こると、それを不可思議な力で消し去ってしまう。分身との記憶も、それじゃろう」
「まだ研究が進んでおらんから、わしにも分からんが……まあ、そういうものなんじゃ」
善子「……それは、もう思い出せないの?」
「…………」
女性は何も答えない。 善子「……なんで、答えてくれないの? もう思い出せないの? じゃあ、それなら……どうして私たちの脳裏に時々ヨハネの存在がよぎるの!?」
善子「私の家には、あいつが買ったゲームがあった! 学校にはケータイと手紙が!」
善子「それを見て、私は……私たちは、忘れていたことを思い出したような気がした……」
「待て、落ち着け。なんも言っておらん」
善子「じゃあ……」
「思い出すことは可能じゃ。記憶は消えても、思い出は違う。心の奥深くまで刻み込まれた暖かな思い出は、記憶が消えようとも残っているものじゃ」
「現におまえも、分身に関連する刺激を受けて思い出してきたじゃろう?」
「時間をかければ、分身との直接的な記憶は保証できんが、おおよそ思い出せるじゃろう」
善子「じゃあ……その子のことも」
「うむ」
善子「!!」 「だが、それには覚悟がいるぞ。忘れた記憶を刺激し、一気に取り戻すということは……脳に大きなダメージを負う可能性もある」
「ひっひっひ────そうなったら悲惨じゃぞ。廃人になってのたれ死ぬことだってある、家族や友達も驚くじゃろうなあ?」
「小娘……それでもやるか?」
善子「やる」
「」
善子「私は何したらいいの? 精一杯思い出そうとすれば?」
「待て待て待て待てぇえええ!!」
善子「なによ耳元でうるさいわね!」
「本気で言っとるんか!? 死んでもいいのかおまえ!」
善子「死なないわよ。それくらい耐えてみせるわ」
「それだけじゃないんだぞ!? 思い出すのに、まずダメージがあって……おまえはその後、分身を取り戻したいというじゃろう!」
善子「……当たり前でしょ。私はそいつに会いたい、思い出したいからここまで来たのよ? あなたの魔法の話を聞いて、いまさら代償なく取り戻せるとは思ってないわ」
「ぐぬ……おまえ、子供のくせに変に気合が入っとるな……」 善子「……それで、どうしたらいいの?」
「……そこのテーブルにペンダントがあるじゃろ」
善子「これ?」
「それをひとつ持って椅子に座れ。ちなみに売り物じゃから後で金はもらうぞ」
善子「はいはい……っと、へえ。綺麗ね」
「それはなんでも願いの叶うペンダントじゃ。わしが魔力を込めて作った逸品、それを売っておる」
善子「なるほどね……店に入った時の文句はこれを買わせるためのものなのか」
「ま、そういうことじゃ」
「だが注意しろ。そのペンダントは願いを叶えるが……その願いの大きさによって代償が異なる」
善子「?」
「大きな願いは身を滅ぼす、ということじゃ」
善子「……なるほどね」
「持ったら、わしの目の前に座れ」
善子「……」スッ
「そしてペンダントと鏡を胸の前に持ち、強く祈れ。鏡の力を借りておまえの思い出を刺激する。そしてペンダントの力で分身を取り戻す」
善子「でも、鏡にもう力はないって」
「わしは製作者だぞ? 鏡に新たな魔力を与えればそれくらい造作もないわ」
善子「……すごいわね、魔法って」
善子「わかったわ。……お願いします」
「目を閉じ、強く念じろ。記憶を取り戻したいと────」
善子「…………」スゥー
────やっとここまで来た。 私が知らない間に出会い、忘れてしまったもう1人の私。
あなたにもうすぐ追いつけるから……待ってて。
いま、そっちへ行くから────
善子「……私たちが忘れてしまった記憶、ヨハネがいた時の記憶を返して」
善子「そして────消えてしまったヨハネを返して。ずっとずっと一緒にいさせて」
そう願い、鏡を握る手に力を込めた瞬間だった。
カッ────とペンダントが強く輝いたかと思えば。
善子「──────────────────ぁ」
善子「ぁぁぁぁああああああああ─────────!!!!」
落ちる。
落ちる。
落ちる。
世界が全て反転し。
空へと加速しながら落ちていく。
眼に映るのは景色と呼べるほど美しいものではなく。
ただ流れるだけの閃光────いや、記憶の本流。
私が取り戻したいと願った記憶。
それが光となって世界を流れていく。
私を通り過ぎて彼方へ消えていく。 善子「まって────」
私はそれを追いかけようと空を落ちる。
加速は止まらない。
光に追いつくにはまだまだ足りない。
もっと速く。
もっと強く願わなくては、たどり着けない。
なぜなら私は、記憶だけではなくヨハネ自身も取り戻さなくてはいけないのだから。
だから止まるわけにはいかない。
この先にヨハネがいると信じて、私は加速し続ける。
やがて光を追い求める私の速度は音を超えた。
だが、届かない。
まだ届かない。 もっと────
もっと速く────
もっと強く────
だって、私は会いたいから。
あの手紙を読んだら、思ってしまったから。
私が幸せになれたのは、あの子がいたからだと。
あの子がいたからみんなと仲良くなれた。
あの子がいたからみんなと一緒に歩けるようになった。
あの子がいたから、私は笑えた。
だから、私はあの子に会いたい。
会うだけじゃなくて、もっと……もっと話をして、もっと一緒にいて、もっと遊びたい──── 善子「────────」
もう少し。
もう少しで届く。
あと少しで、あの光に追いつく────
手を伸ばす。
必死に手を伸ばす。
手を伸ばせば届く距離に光がある。
あと少し。
あと10センチ、5センチ、2センチ、1センチ────
────そして私は光を超えた。
掴んだと思った。
その光はあふれるような輝きを放ち、私へと向かう。
まるで鏃のような鋭さを持った光が向かってくる。
善子「ぁぁぁぁああああああああ─────」
刃となった輝きが私を刺す。
腕を。脚を。手を。頭を。首を。喉笛を。
全身のあらゆる場所を刺す。
痛い。痛い。痛い。
刺さったところから何かが流れ込んでくる。
突き刺さるような痛みと共に流れ込んでくるそれは────記憶だ。
ヨハネと過ごした記憶が私の中に流れ込んでくる。
忘れてしまっていた記憶が私の中へ落ちてくる。 善子「────ァぁああああァアあああぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁあぁあぁあああ!!!!」
いたい。いたい。いたい。
光が過っては消えていく。
目の中を閃光がほとばしる。
かつて見た記憶が。
忘れてしまっていた記憶が毒となり、行き場を求めて私の身体を蹂躙する。
光の奔流が暴れ馬のように私の身体を崩壊させていく。
皮膚を突き刺し血管を破壊し心臓を破る。
骨を砕き肉を潰し脳を破裂させる。
そこまでされても私の意識は鮮明になったまま消えない。
そうぞうをぜっする痛みだけが私のなかにのこっている。
しこうすらできない。
いまめの前を通り過ぎた記おくがいつのものかすらりかいできない。
なんでわたしがこんな思いをしなくちゃいけないの?
どうしてこんなにも苦しいの?どうしてわたしのからだがぐちゃぐちゃになっているの?
いたイ。イタい。いタい。
やメて。ヤメテ。やめて。
もうたえられない。だれかたすけて。もうさけんでもさけんでもいたいの。
もうやめて。
こんないたいのはいや。
しんジャう、いたくてしんじゃウ
やめてもうムリなのイタイのはいやなのおねがいしますたすケて────
たすケテたすけてたすけてタスケてたすけてたすケてたすけてたすケテたすけて────
たすけてたすけてタスけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて────── 『大丈夫ずら。善子ちゃんは1人じゃないよ』
いたみのなかで、あたたかいこえがきこえた。 『ルビィたちがついてるから!』
ちいさなてが、わたしのせなかをおしてくれる。
『そうだよ!みんなで会いに行こうよ!』
たよれる声が、私といっしょにあるいてくれる。
『前方確認異常なし!ヨーソロー!』
力強いゆびさきが、いく先をおしえてくれる
『善子ちゃんの帰りを、みんなで待ってるからね』
やさしい旋律が、私をまってくれる。
『無茶は良くないよら そんな時くらいセンパイを頼らないと!」
おおきな背中が、ふらついていた私を支えてくれる。
『1人でこんなところまで……あと少しですわ、諦めないで』
慈愛にあふれたまなざしが、傷ついた私の心を癒してくれる。
『ほら、あっちで待ってるよ? perfect smileでlet's go!』
美しい笑顔が、私に一歩を踏み出させてくれる。 善子「────あぁ」
私には────みんながついていてくれる。
みんなが私を、あの子を待ってくれている。
私はもうひとりじゃない。
Aqoursが、みんながいるから。
闇の中へ一歩、また一歩と足を進める。
闇の奥で蠢く影が見える。
痛みはない。
もうすべて思い出したから。
あなたと出会った日。
2人でケータイを買いに行ったこと。
毎朝空を飛んで学校まで送り迎えをしてくれたこと。
あなたを助けたくて、どんなことでもしようとしたこと。
すべて、すべて思い出しているから。
────だから、はやく。
こっちへ──── 『…………なんでここにいるのよ』
影が囁いた。
善子「会いに来たのよ、あなたに」
『どうして? どうして来ちゃったのよ!』
善子「会いたかったからよ」
『ダメよ、私はあなたと同じ世界にはいけない。また消えてしまう、またあなたを悲しませてしまう!』
善子「消えないわ、私がもう消えさせない」
『……無理よ、魔力で編まれた肉体だもの。いつか消えてしまうわ』
善子「弱気になるなんてあんたらしくないわね。いつもの自信たっぷりはどうしたの?」
『……バカね、ほんと。こんなところまで来たのに、笑ってるなんて』
善子「……舞い上がってるのかもね。また会えて嬉しいから」
『……』
善子「それにしても……ここ、真っ暗ね。ゲームも漫画もないし暇じゃない?」
『さあ……? 消えたと思ったら、今ここでいきなり覚醒させられたからね。私にも分からないわ』
善子「ふうん……じゃあ、あんたを連れて帰れば……復活ってことよね?」
『……善子』
善子「なに?」 『……私は覚悟を決めて消えたのよ? 手紙も書いて……みんなに、ごめんなさいって、泣きながら……泣きながら書いた』
『それなのに……のこのこみんなの前に帰れないわよ』
善子「……バカはそっちでしょ」
『……』
善子「いい、あなたは私の憧れ……堕天使ヨハネでしょう? それならいつもみたいに自信満々でいなさい」
善子「あんたが私を守ってくれたように……私も、あんたを守るから。ほら……いつまで座ってるの? 手を伸ばして」
『……善子。私がそっちに言っても……大変かもしれないのよ? 私を維持するためには、とっても苦しくて辛くて、嫌になるかもしれない』
『私を取り戻そうと足掻いたことを後悔するかもしれない。私は……私はあなたにそんなふうに思ってほしくない。あなたには、常に笑顔でいてほしい』
『だから私は自分の運命に従って────』
善子「……言ってくれたじゃない」
『え…………?』
善子「私とあなた……2人が一緒になれば無敵、ってね」
善子「さあ手を伸ばして! あなたの運命は……私が変える!」
『……っ!!』
そして、私は力なく伸ばされたヨハネの腕を──── ・・・
善子「────っは」ガタ
ドタン
善子「はあっ────、はあっ、ひゅっ……ひゅぅ、っ……はぁ、っあ」
「おい、大丈夫か!? しっかり落ち着いて息をしろ、もう全て終わったんじゃ!」サスリサスリ
善子「ひゅぅ……はぁ、はぁ、ぐ、っは……はぁ、はぁ……」
「よし、よし……ようやったな。おい、水を持ってきてやれ」
「はい!」
善子「……はあ、ぅふ……はぁ」
善子「こ、こは…………?」
「魔法堂じゃ……まだ喋るな、呼吸を整えろ」
善子「はぁっ……は、っは……」
「お水持ってきた! 善子、ほら……飲んで」
善子「ん、っく……んく、ごく……」 「しかし、本当にやってしまうとは思わんかったぞ……それほどに思い入れが強かったんじゃな」
「我がことながらお恥ずかしい……」
「とりあえずおまえ、服を着んか」
「……タオルとかでも貸してもらえます?」
善子「…………」
「……善子どうしたの?」
善子「ぁ、あ……あぁ……」
善子「よはね……」
ヨハネ「……あぁ」
ヨハネ「……あなたのおかげで帰ってこれたわ」
善子「……うぅ、ぅぁ……」フラフラ
「おい! まだ立てる状態じゃ……」
善子「よは、ね……よはね……」グッ…
ヨハネ「……」スッ
ギュウッ
ヨハネ「…………ただいま」
善子「ぉ、か……え゛りぃ……」ボロボロ
ヨハネ「……ぅん、うん……っ」ポロポロ ・・・
善子「……それにしても、本当に……取り戻せたのね」
ヨハネ「そうよ……あなた、あんなところまで来て……」
善子「……えへ」
ヨハネ「な、なによ……ニヤニヤして」
善子「し、してないし! ……えへ〜」
ヨハネ「な……なんなのよ……」
善子「ちょっと……ほら、ちょっと、ね?」
ヨハネ「?」
善子「うれしい……なあ、って」
ヨハネ「!! ……///」
「……なんじゃこの空間」
善子「あ、いたの」
「ずっとおるわ! わしの店じゃぞ!」
ヨハネ「ありがとうございます、善子に力を貸してくださって……」
「ん、ああ……それくらいは構わん。ペンダントも買ってくれたことじゃからな」
善子「……いつの間にか手の中に3個握らされてたんだけど」
「はて、なんのことやら。1個では魔力が足りんかったから、おまえが無意識に取ったんじゃないか?」
善子「……ありがとうございます」
「……ふん、そのぶん、ちゃんと料金はいただいたわい」
善子「やさしいのね、あなたって」
「……リカじゃ」
善子「え?」 リカ「巻機山リカ……で通しておる。そう呼べ」
善子「まきはたやま……って、変な名前」
リカ「なんじゃとぉ!?」
善子「ふふ、ありがとうリカさん。あなたのおかげで、大切なものに出会えて……取り戻せた」
リカ「ぉ、ぉう……まあ、よいよい、うむ」
善子「それよりヨハネ」
ヨハネ「?」
善子「身体に何か変わったところとか、ない? 前と比べて」
ヨハネ「……そういえば、魔力が減らないような」
善子「……おお、成功してるのねそれも」
リカ「なんじゃ、勝手に変なことしたのか?」
善子「実は、ずっと一緒にいさせてって祈ったから……もしかしたらと思って」
リカ「……おい、身体をちょっと見せろ」ポゥ
ヨハネ「は、はい……」
リカ「…………」
リカ「!!!???」ガタッ
ヨハネ「えっ……えっ!?」
リカ「な、なぜじゃ……なぜ体内に魔力を生成する機関が……」
ヨハネ「えぇぇぇえぇぇぇぇえ!!??」
善子「まさかそんな風に叶うなんてねぇ……うんうん、やってみるもんだわ」
ヨハネ「な、ななっ……善子に、そんな才能が……」
リカ「世界改変レベルの願いで、なんの代償もないじゃと……」
善子「?」 ヨハネ「……ほんとに、私が守ってあげないと……狙われるかもしれないわね」
善子「えっ……狙われるって何!? 機関なの、機関の策略なの! コングルゥなの!」
リカ「いいや、おまえはもうわしの元で修行しろ! 才能がある、わしが鍛えてやる!」
善子「え、なに! 私も魔法使いになるの!? 魔法使いの弟子なの!」
ヨハネ「守るってあんたみたいな人からよリカさん!」
リカ「なにぃ!? わしは真っ当な使い方をだな!」
ヨハネ「いいや許さないわ! 善子は私と一緒に幸せに過ごすの! Aqoursのみんなも一緒にね!」
リカ「ならばそのアクアとかいうやつら全部ひっくるめて面倒見てやるわい!」
ヨハネ「巻き込みすぎでしょあんたー!?」
善子「……結局どうなるの?」
結局ヨハネが逃げるように引っ張って店から出ました。 ・・・
ヨハネ「んーっ! シャバの空気は美味しいわねー!」
善子「仮釈放された模範囚かあんたは」
ヨハネ「ふふ、えへへ……嬉しいのよ」
善子「……まあ、私も嬉しいけど」
ヨハネ「よしこ〜♪」ギュウッ
善子「もぉ……抱きつかないでよ歩きにくい……」
ヨハネ「いいじゃない? 消える前はあんなに抱きしめてくれてたのに」
善子「い、言わなくていいから……///」
ヨハネ「ふふ、でも……あなたがね」
善子「?」
ヨハネ「忘れたはずの私に……会うために、頑張ってくれたなんて……信じられない」
善子「……ふん、当たり前よ。堕天使ヨハネは執念深いの」
ヨハネ「ヨハネは私!」
善子「……ええ、あなたに会いたかった。勝手に消えて……文句言いたかったんだから」
ヨハネ「ご、ごめん……」
善子「それはまあ帰ってからね! ちなみにみんなの記憶も戻してもらえるよう願ったし……多分大丈夫でしょ」
善子「帰りましょ、私たちの家に!」
ヨハネ「っ…………」
ヨハネ「うんっ! おなかすいた〜!」
善子「私もおなかすいた……って、ちょっともう23時!? やばい、はやくヨハネ!」
ヨハネ「わかったわ!」バサッ!
────ゴウッ!
久しぶりにヨハネに抱かれて飛んだ空は、とても美しくて。
この子が帰ってきたんだって、本当に実感できた気がして。
少し泣いてしまった。 〜翌日・部室〜
ルビィ「ヨハネ様〜!!!」
花丸「よはねちゃ〜ん!!」
ヨハネ「ルビィ、花丸……」
ヨハネ「ぁぁ……うぅ、た……ただいま〜!!」
よはるびまる『うわ〜ん!』
ダイヤ「そ、騒々しいですわよ! ヨハネさんが帰ってきたからって……」
鞠莉「なーんて言ってるダイヤもハグしたいんじゃない?」
ダイヤ「だ、だれが!」
ヨハネ「せいとかいちょぉ……」
ダイヤ「はぅっ……! さ、っ……サファイア〜!!」ギュウッ
ヨハネ「ただいま〜!!」ムギュー
鞠莉「ヨハネ! マリーも混ぜて!」ガバッ
ヨハネ「まりぃ〜……!」 善子「……」
果南「……善子?」
善子「なに、センパイ」
果南「……えいっ」ギュウッ
善子「むぐっ……な、なに!? なんで私!?」
果南「ヨハネを取られて寂しそうだったから……かなん♪」ナデナデ
善子「べ、別に……寂しくはないけど」ギュウッ
果南「素直じゃないな〜」
善子「違うから! センパイのぬくもりを感じようとしてるだけっていうかなんていうか……!」
果南「……余計恥ずかしいこと言ってないかなそれ?」 千歌「善子ちゃん!」
善子「!?」
果南「おっと千歌」
千歌「びっくりしたよ! 昨日いきなりヨハネちゃんのこと全部思い出してさ!」
梨子「しかも夜中だよお……? 起こされて大変だったんだから」
善子「リリー……お、お疲れ様」
千歌「善子ちゃんは電話でないしさー」
善子「だ、だって……多分その時間はまだ店に居たっていうか……」
千歌「む?」
曜「ヨーシコー!」
ヨハネ「だからヨハネよっ!」
善子「なんであんたが答えるのよ!」
ヨハネ「久しぶりに言いたいじゃない♪」
千歌「ヨハネちゃんだ!本物だ!」
ヨハネ「リーダー! 帰ってきたわよ私!」
千歌「元気そうだね〜! よしよしまた会えて嬉しいよ!」
曜「うんうん! あの日……話した後すぐ消えちゃうんだから、びっくりしたよ本当に」
ヨハネ「ああ……それは、本当にごめん……なさい」
曜「でも、もう消えないよね?」
ヨハネ「ええ! 私の身体は完璧よ、ご都合主義か!ってくらいにね」 ダイヤ「……よく分かりませんが、もう心配はない、と?」
ヨハネ「そうね!」
鞠莉「じゃあまたうちに遊びにきても大丈夫よねっ! gameやりましょ、game!」
ヨハネ「やるやる! マリーがどれだけ強くなったか見てあげるわ!」
果南「おっ! じゃあ今日は練習休みにしてみんなで遊ぼっか!」
ちかるび『さんせ〜!』
花丸「おらも、賛成……ずら!」
ダイヤ「ちょっ……な、何を勝手に……」
曜「はい! 曜ちゃんも賛成であります!」
梨子「それじゃあ……私もお邪魔しちゃおっかな……?」
善子「……って感じみたいだけど、どうする?」
ダイヤ「〜っ!! わかりました、わたくしもいきます!」
ちかなまり『いぇ〜い!』
ヨハネ「じゃあ善子! 早速飛んで……」
善子「私のことはヨハネと呼びなさいこらー! あと授業、授業はサボれないから!」
────こうしてヨハネは私たちの元へ帰ってきた。
前よりも私は素直になれる、と思うし。
もう、みんなもついているから……怖い事なんてひとつもない。
だからこれから先、ヨハネと暮らすことで何が起こっても大丈夫って言い切れる。
あの子と一緒に、みんなと一緒に乗り越えていける。
だって、私たちはヨハネだから。
そう────ふたりのヨハネは無敵だから!
最終話・完 `¶cリ˘ヮ˚)|「これでおしまいよ」
¶cリ˘ヮ˚)|「今まで見てくれてありがとう。心からお礼を言わせてもらうわ」
¶cリ˘ヮ˚)|「またどこかで会ったらよろしくね」
`¶cリ˘ヮ˚)|「そういえば善子、私のケータイはどうしの?」
¶cリ˘ヮ˚)|「私が持って……って、そういえばあんた、なんで勝手に人の寝顔をロック画面にしてんの!?」
`¶cリ˘ヮ˚)|「み、見たわね中を!?」
¶cリ˘ヮ˚)|「すぐ消しなさいすぐ!」
`¶cリ˘ヮ˚)|「おことわりしますぅー!」
ほんとにおしまい! ホントにMAHO堂のマジョリカで笑った
善子とヨハネに幸あれ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています